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第十六話
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買い物に出かけたにしては、ずいぶんと長すぎる。
そう思った私は、ポケットからスマホを取り出して楓にメールを送ってみる。
『ずいぶんと時間かかってるみたいだけど……。何してるの?』
しばらく待ってみるが、返信はない。
──なんだろう。
返信がないのが、逆に気になる。
今までなら、ものの数分もしないうちに返信が来るんだけど……。
別に楓と何かを約束したわけではない。
なんとなく気になってしまうのだ。
もしかして他の女の子にナンパされて、そのままデートしてるとか。
あんまり考えたくはないけど、楓ならあり得るかも。
「返信がないっていうのも、なんか寂しいな……。何か一言くらいあってもいいんじゃないの⁉︎ もう!」
私は、一人ブツクサとそう言っていた。
楓がいないっていうだけで、こんなにイライラするなんて……。
こんなことなら、私も一緒に行けばよかったかな。
そんな風に考えていた時、誰かが部屋のドアをノックしてきた。
こんな時に私の部屋にやってくる人物は、一人しかいない。花音だ。
「はーい。鍵なら開いてるよ」
私の一言に反応したのか、花音はゆっくりと部屋のドアを開けて、そのまま入ってくる。
「お姉ちゃん。今、いいかな?」
「どうしたの、花音?」
私は、思案げに首を傾げてそう聞き返す。
そんな不安そうな表情を浮かべていたら、何があったのか気になるじゃない。
「あのね。バンドのことで相談があるんだけど……」
「バンドのこと? 一体、どうしたの?」
花音がバンドのことを聞いてくるのは、とてもめずらしい。
何かあったんだろうか。
「いや、その……。どうやったら、メンバーを集めることができるのかなって……。お姉ちゃんなら、何かいい方法を知っているかなって思ってさ」
「花音もバンドやるの?」
「うん。そのつもりなんだけど……」
「そっか。それでメンバーを集める方法を……てわけかぁ」
バンドのメンバー集めかぁ。
私には、気の許せる親友がいたから、メンバー集めに関しては、そんなに苦労はしなかったが。
「すぐに集まらなくてもいいんだけどね。なんとなくアドバイス的なものが欲しいっていうか……」
「アドバイスかぁ」
私のアドバイスなんか聞いても、なんともならないかと思うんだけど……。
それでも花音のためになるのなら、別に構わないか。
花音は、目をキラキラさせて顔を近づかせてくる。
「うん。アドバイス! 何かないかな?」
「う~ん……。それなら、まず花音の友達とかに相談してみるのが一番いいと思うけど……」
「私の、友達……」
「うん。友達なら、気軽に声をかけてみるのもいいかもだよ。私の時も、まず最初に友達から誘ってみたんだよね」
私の時はそうだったけど、花音の時はどうだろうか。
きっとバンドを組んでる人たちって、そんな感じだろうと思うし。
「なるほど……。それで、うまくいったというわけか……」
花音は、真剣な表情になる。
花音の友達がバンドに興味あるかどうかは別として、花音の熱意がきちんと伝わればやってくれると思う。
「とりあえず、今できることをやってみるといいよ」
「わかった。やってみるね。──ありがとう、お姉ちゃん」
花音は、そう言って私の部屋を後にした。
それからしばらく経った後で、楓からメールが来たのは、花音には黙っていよう。
楓が買い物から帰ってくる時には、私は楓の家のキッチンで料理をしていた。
さっそく玄関先の方から、楓の声が聞こえてくる。
「ただいま~」
「おかえり、楓。買い物にしてはずいぶんと時間がかかったみたいね」
「そ、そうかな? 普通だと思うんだけど……」
「そっか。普通なんだ」
楓の取り乱した様子を見ていて、ちょっと苛立ちを感じてしまう。
昔から楓は、ちょっとした事でも我慢してしまう癖がついている。だから、ちょっと苦しいことがあっても、あまり感情には出さないのだ。
だから『取り乱した様子』と言っても、普通の人が見てもわからないと思う。
だけど、私の場合はすぐにわかる。
なぜなら、楓は私の恋人なのだから。
家族ぐるみで付き合いのある家だと、こういうことはもはや当たり前の光景だ。
逆に楓が、私の家のキッチンで料理をしている場合もあるのだから。
やはりというべきか、今回も楓のお母さんから頼まれて料理を作っている。
「どうしたの、香奈姉ちゃん? なんだか不機嫌そうだけど……」
「そんなことないわよ。ただ、楓からの返信のメール。ずいぶんと時間がかかったなって思ってね」
「それは、その……。色々とあったものだから……」
楓は、言葉を詰まらせてしまう。
あ……。その返答は、確実に何かあったな。
楓の顔を見たわけじゃないけど、きっと私から視線を逸らしているんだろう。
私の方も料理中なものだから、そっちに視線を向けるわけにはいかないし。
誰かと一緒にいたんだろうけど、楓のことだから、きっと答えてはくれないんだろうな。
私としては、楓と一緒に行動していた『誰かさん』は、きっと女の子だと思う。
なぜそれがわかるかというと。ズバリ、女の感だ。
「色々と…ねぇ。それって、私には説明しにくい事なの?」
「そんなことは…ないけど……。ちょっと……」
楓は、何か言いづらそうな微妙な表情を浮かべている。
そんな顔をする時点で、言いにくい事があるっていう証拠じゃないの。
だからといって、それをツッコむ気にはならないんだけどね。
「まぁ、どっちでもいい事だけど、誤解を招く行動はやめてね。さすがの私も、楓以外の男の子とデートに行くことはないんだから──」
「う、うん。…気をつけるね」
その時の楓の言葉が、なぜか図星を突かれたかのような感じがしたのだが。気のせいだろうか。
そんな焦り気味に言われたら、余計に気になっちゃうよ。
私は、今日の夕飯を作りながら、そんな風に考えていた。
ちなみに今日の夕飯は、オムライスだ。
卵がたくさんあったから、腕によりをかけて作ってみたのだが──。楓やみんなの口に合うだろうか。
私の不安は、その辺りだけだ。
そう思った私は、ポケットからスマホを取り出して楓にメールを送ってみる。
『ずいぶんと時間かかってるみたいだけど……。何してるの?』
しばらく待ってみるが、返信はない。
──なんだろう。
返信がないのが、逆に気になる。
今までなら、ものの数分もしないうちに返信が来るんだけど……。
別に楓と何かを約束したわけではない。
なんとなく気になってしまうのだ。
もしかして他の女の子にナンパされて、そのままデートしてるとか。
あんまり考えたくはないけど、楓ならあり得るかも。
「返信がないっていうのも、なんか寂しいな……。何か一言くらいあってもいいんじゃないの⁉︎ もう!」
私は、一人ブツクサとそう言っていた。
楓がいないっていうだけで、こんなにイライラするなんて……。
こんなことなら、私も一緒に行けばよかったかな。
そんな風に考えていた時、誰かが部屋のドアをノックしてきた。
こんな時に私の部屋にやってくる人物は、一人しかいない。花音だ。
「はーい。鍵なら開いてるよ」
私の一言に反応したのか、花音はゆっくりと部屋のドアを開けて、そのまま入ってくる。
「お姉ちゃん。今、いいかな?」
「どうしたの、花音?」
私は、思案げに首を傾げてそう聞き返す。
そんな不安そうな表情を浮かべていたら、何があったのか気になるじゃない。
「あのね。バンドのことで相談があるんだけど……」
「バンドのこと? 一体、どうしたの?」
花音がバンドのことを聞いてくるのは、とてもめずらしい。
何かあったんだろうか。
「いや、その……。どうやったら、メンバーを集めることができるのかなって……。お姉ちゃんなら、何かいい方法を知っているかなって思ってさ」
「花音もバンドやるの?」
「うん。そのつもりなんだけど……」
「そっか。それでメンバーを集める方法を……てわけかぁ」
バンドのメンバー集めかぁ。
私には、気の許せる親友がいたから、メンバー集めに関しては、そんなに苦労はしなかったが。
「すぐに集まらなくてもいいんだけどね。なんとなくアドバイス的なものが欲しいっていうか……」
「アドバイスかぁ」
私のアドバイスなんか聞いても、なんともならないかと思うんだけど……。
それでも花音のためになるのなら、別に構わないか。
花音は、目をキラキラさせて顔を近づかせてくる。
「うん。アドバイス! 何かないかな?」
「う~ん……。それなら、まず花音の友達とかに相談してみるのが一番いいと思うけど……」
「私の、友達……」
「うん。友達なら、気軽に声をかけてみるのもいいかもだよ。私の時も、まず最初に友達から誘ってみたんだよね」
私の時はそうだったけど、花音の時はどうだろうか。
きっとバンドを組んでる人たちって、そんな感じだろうと思うし。
「なるほど……。それで、うまくいったというわけか……」
花音は、真剣な表情になる。
花音の友達がバンドに興味あるかどうかは別として、花音の熱意がきちんと伝わればやってくれると思う。
「とりあえず、今できることをやってみるといいよ」
「わかった。やってみるね。──ありがとう、お姉ちゃん」
花音は、そう言って私の部屋を後にした。
それからしばらく経った後で、楓からメールが来たのは、花音には黙っていよう。
楓が買い物から帰ってくる時には、私は楓の家のキッチンで料理をしていた。
さっそく玄関先の方から、楓の声が聞こえてくる。
「ただいま~」
「おかえり、楓。買い物にしてはずいぶんと時間がかかったみたいね」
「そ、そうかな? 普通だと思うんだけど……」
「そっか。普通なんだ」
楓の取り乱した様子を見ていて、ちょっと苛立ちを感じてしまう。
昔から楓は、ちょっとした事でも我慢してしまう癖がついている。だから、ちょっと苦しいことがあっても、あまり感情には出さないのだ。
だから『取り乱した様子』と言っても、普通の人が見てもわからないと思う。
だけど、私の場合はすぐにわかる。
なぜなら、楓は私の恋人なのだから。
家族ぐるみで付き合いのある家だと、こういうことはもはや当たり前の光景だ。
逆に楓が、私の家のキッチンで料理をしている場合もあるのだから。
やはりというべきか、今回も楓のお母さんから頼まれて料理を作っている。
「どうしたの、香奈姉ちゃん? なんだか不機嫌そうだけど……」
「そんなことないわよ。ただ、楓からの返信のメール。ずいぶんと時間がかかったなって思ってね」
「それは、その……。色々とあったものだから……」
楓は、言葉を詰まらせてしまう。
あ……。その返答は、確実に何かあったな。
楓の顔を見たわけじゃないけど、きっと私から視線を逸らしているんだろう。
私の方も料理中なものだから、そっちに視線を向けるわけにはいかないし。
誰かと一緒にいたんだろうけど、楓のことだから、きっと答えてはくれないんだろうな。
私としては、楓と一緒に行動していた『誰かさん』は、きっと女の子だと思う。
なぜそれがわかるかというと。ズバリ、女の感だ。
「色々と…ねぇ。それって、私には説明しにくい事なの?」
「そんなことは…ないけど……。ちょっと……」
楓は、何か言いづらそうな微妙な表情を浮かべている。
そんな顔をする時点で、言いにくい事があるっていう証拠じゃないの。
だからといって、それをツッコむ気にはならないんだけどね。
「まぁ、どっちでもいい事だけど、誤解を招く行動はやめてね。さすがの私も、楓以外の男の子とデートに行くことはないんだから──」
「う、うん。…気をつけるね」
その時の楓の言葉が、なぜか図星を突かれたかのような感じがしたのだが。気のせいだろうか。
そんな焦り気味に言われたら、余計に気になっちゃうよ。
私は、今日の夕飯を作りながら、そんな風に考えていた。
ちなみに今日の夕飯は、オムライスだ。
卵がたくさんあったから、腕によりをかけて作ってみたのだが──。楓やみんなの口に合うだろうか。
私の不安は、その辺りだけだ。
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