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第十七話
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最近、奈緒さんが積極的に迫ってくるようになったけど、何かあったんだろうか。
たぶん、本人に訊いても
『気のせいだよ』
としか答えないと思うし。
だからといって香奈姉ちゃんに相談するのは、見当外れな気もする。
ここは一つ、慎吾にでも聞いてみようかな。
いいアドバイスでも貰えそうな気もするし。
ダメだ。
慎吾には、彼女はいないからまともなことは返ってきそうにない。
「どうしたんだ、周防? 悩み事か?」
僕が軽くため息を吐きながらお弁当を食べていると、慎吾は不思議そうな表情でこちらを見てきた。
ちょうどお昼休みということもあり、慎吾は校内にある購買で買ってきただろう焼きそばパンを食べている。
その傍には紙パックのコーヒーが置いてあった。
どうやら、今日はお弁当は持ってこなかったみたいだ。
僕は、お弁当のおかずを一口食べた後に答える。
「悩みって言うほどのことじゃないよ。…ちょっとね」
「もしかして、いつものアレか?」
「たぶん、慎吾が考えてるとおりだと思う」
「まぁ、西田先輩は独占欲が強いからな。しょうがないんじゃないか」
慎吾には、大体のことはわかっているみたいだ。
だけど、今悩んでいることは香奈姉ちゃんの事じゃない。
「それだけなら、いいんだけどね」
「まだ何かあるのか?」
「最近、奈緒さ…いや、北川先輩との距離感が近いような感じがしてさ」
「北川先輩って、あの北川先輩か? クールで男子になんて、まるで興味を持たないってことで有名なあの──」
「うん。今までは、少し距離を置いた付き合いをしていたんだけど……」
「俺にはよくわからんけど、北川先輩にも恋心って言うものがあるんじゃないのか」
「それなのかな……。たしかに奈緒さ…いや、北川先輩から、アプローチらしきことはしてきてはいたけど」
「アプローチしてきたんなら、間違いないだろ。北川先輩は間違いなくお前に好意を抱いているぞ。何か前兆となるようなこと、してこなかったのか?」
「してこなかったかって言われれば、してきたかもしれない……」
思い当たる事があったので、僕はそう言っていた。
興味があったのか、慎吾はさらに聞いてくる。
「ほほう。例えば、どんなことをしてきたんだ?」
「例えば──。その……」
僕は、言いかけて口ごもってしまう。
とてもじゃないけど、奈緒さんがあんなことをしてきたなんて言えない。
今も、僕の机の引き出しの中に入っているというのに……。
「どうしたんだ? 言いづらい事なのか?」
「あー、うん。とにかく、アプローチをしてきたんだよ。北川先輩からね」
「そうか。言いづらいのなら、俺も敢えては聞かないが……。それにしたって、北川先輩からのアプローチは、きっとすごいんだろうな。きっとあんな事やこんな事を──」
慎吾は、一人で妄想の中に浸ってしまう。
妄想するのは自由だけど、あまり過激なのはやめてほしいな。
近くで見ていて、変人かと思われかねないから。
「はいはい。そんな、しょーもない妄想はいいから。はやくお昼ごはんを食べてしまおう」
僕は、そう言って自分のお弁当のおかずを食べる。
箸が止まってたっていうのもあるが、慎吾の話を聞いていたら、せっかくのお昼休みが無くなってしまう。
慎吾にとっては、奈緒さんの存在も高嶺の花になっているからな。
奈緒さんのことを羨望の眼差しで見ているのかもしれない。
「そうだな。俺なんかが北川先輩や西田先輩にはお近づきになれそうにもないしな。こうして妄想するのが手一杯だよ。正直、お前が羨ましいよ」
「………」
僕には、何も言えなかった。
たしかに香奈姉ちゃんと奈緒さんは高嶺の花だが、それを言わせたら美沙先輩や理恵先輩もそうじゃないだろうか。
この二人も、充分に可愛いと思うし。
まぁ、個人的な感想になるので、口に出しては言わないけど。
「そういえば、まだバンドはやってるのか?」
「うん。やってるよ。奈緒さ…いや、北川先輩が意外と乗り気でさ」
「そうか。俺も、何か楽器でも弾ければいいんだが……」
慎吾は、残念そうにそう言う。
慎吾は、バンド活動などには興味がなかっため、ギターなどの楽器を弾いたことはもちろんない。
そんなことを言い出してしまうのは、やっぱり奈緒さんの事があるのかもしれないが。
「慎吾は、そういうのには興味なかったからね。今から始めるにしたって遅くはないけど、タイミングがね……」
「そうなんだよなぁ。バンドを組むって言ったって、メンバーが肝心だよな」
たしかにメンバーも問題だけど。それ以前に……。
「メンバーも重要だけど、それ以上に練習が大事だと思うよ」
「練習…か。今まで、運動の練習しかしてこなかったからな……。楽器の練習って、何が一番簡単なんだ?」
「う~ん……。なんだろう」
簡単な楽器って訊かれてもな……。
一概には答えられないよ。
どの楽器も弾くのには、ある程度の技術は必要だと思うし。
「楓が弾いてるベースっていうのは、どんな感じなんだ? あんまり目立つようなところには思えないが──」
と、そんなことを訊いてきた。
ベースにはベースで、ちゃんとした役割があるんだけどな。
バンドではどうしても、ギターやドラム、ボーカルといったところが目立ってしまうから、ベースの役割がどれだけ重要か理解できないんだろう。
「ベースは音源の中心とまではいかないけど、結構重要なところだよ。甘く見てると、足元をすくわれてしまうかも……」
「なるほどな。どれも簡単じゃないってことか……。それなら、やっぱりやめておこうかな」
「そこは、慎吾が思ったとおりでいいんじゃないかな」
別に強要しているわけでもないしね。
「北川先輩にお近づきになりたかったからバンドを組みたいだなんて、理由が安直すぎるしな……」
そう言って慎吾は、残っていた焼きそばパンをたいらげる。
まだ紙パックのコーヒーが残っていたが、それも続けて飲み干していた。
そろそろ、お昼休みも終わりみたいだ。
僕の方も、お弁当を食べてしまわないと……。
僕は、できる限り早めにお弁当を食べていった。
たぶん、本人に訊いても
『気のせいだよ』
としか答えないと思うし。
だからといって香奈姉ちゃんに相談するのは、見当外れな気もする。
ここは一つ、慎吾にでも聞いてみようかな。
いいアドバイスでも貰えそうな気もするし。
ダメだ。
慎吾には、彼女はいないからまともなことは返ってきそうにない。
「どうしたんだ、周防? 悩み事か?」
僕が軽くため息を吐きながらお弁当を食べていると、慎吾は不思議そうな表情でこちらを見てきた。
ちょうどお昼休みということもあり、慎吾は校内にある購買で買ってきただろう焼きそばパンを食べている。
その傍には紙パックのコーヒーが置いてあった。
どうやら、今日はお弁当は持ってこなかったみたいだ。
僕は、お弁当のおかずを一口食べた後に答える。
「悩みって言うほどのことじゃないよ。…ちょっとね」
「もしかして、いつものアレか?」
「たぶん、慎吾が考えてるとおりだと思う」
「まぁ、西田先輩は独占欲が強いからな。しょうがないんじゃないか」
慎吾には、大体のことはわかっているみたいだ。
だけど、今悩んでいることは香奈姉ちゃんの事じゃない。
「それだけなら、いいんだけどね」
「まだ何かあるのか?」
「最近、奈緒さ…いや、北川先輩との距離感が近いような感じがしてさ」
「北川先輩って、あの北川先輩か? クールで男子になんて、まるで興味を持たないってことで有名なあの──」
「うん。今までは、少し距離を置いた付き合いをしていたんだけど……」
「俺にはよくわからんけど、北川先輩にも恋心って言うものがあるんじゃないのか」
「それなのかな……。たしかに奈緒さ…いや、北川先輩から、アプローチらしきことはしてきてはいたけど」
「アプローチしてきたんなら、間違いないだろ。北川先輩は間違いなくお前に好意を抱いているぞ。何か前兆となるようなこと、してこなかったのか?」
「してこなかったかって言われれば、してきたかもしれない……」
思い当たる事があったので、僕はそう言っていた。
興味があったのか、慎吾はさらに聞いてくる。
「ほほう。例えば、どんなことをしてきたんだ?」
「例えば──。その……」
僕は、言いかけて口ごもってしまう。
とてもじゃないけど、奈緒さんがあんなことをしてきたなんて言えない。
今も、僕の机の引き出しの中に入っているというのに……。
「どうしたんだ? 言いづらい事なのか?」
「あー、うん。とにかく、アプローチをしてきたんだよ。北川先輩からね」
「そうか。言いづらいのなら、俺も敢えては聞かないが……。それにしたって、北川先輩からのアプローチは、きっとすごいんだろうな。きっとあんな事やこんな事を──」
慎吾は、一人で妄想の中に浸ってしまう。
妄想するのは自由だけど、あまり過激なのはやめてほしいな。
近くで見ていて、変人かと思われかねないから。
「はいはい。そんな、しょーもない妄想はいいから。はやくお昼ごはんを食べてしまおう」
僕は、そう言って自分のお弁当のおかずを食べる。
箸が止まってたっていうのもあるが、慎吾の話を聞いていたら、せっかくのお昼休みが無くなってしまう。
慎吾にとっては、奈緒さんの存在も高嶺の花になっているからな。
奈緒さんのことを羨望の眼差しで見ているのかもしれない。
「そうだな。俺なんかが北川先輩や西田先輩にはお近づきになれそうにもないしな。こうして妄想するのが手一杯だよ。正直、お前が羨ましいよ」
「………」
僕には、何も言えなかった。
たしかに香奈姉ちゃんと奈緒さんは高嶺の花だが、それを言わせたら美沙先輩や理恵先輩もそうじゃないだろうか。
この二人も、充分に可愛いと思うし。
まぁ、個人的な感想になるので、口に出しては言わないけど。
「そういえば、まだバンドはやってるのか?」
「うん。やってるよ。奈緒さ…いや、北川先輩が意外と乗り気でさ」
「そうか。俺も、何か楽器でも弾ければいいんだが……」
慎吾は、残念そうにそう言う。
慎吾は、バンド活動などには興味がなかっため、ギターなどの楽器を弾いたことはもちろんない。
そんなことを言い出してしまうのは、やっぱり奈緒さんの事があるのかもしれないが。
「慎吾は、そういうのには興味なかったからね。今から始めるにしたって遅くはないけど、タイミングがね……」
「そうなんだよなぁ。バンドを組むって言ったって、メンバーが肝心だよな」
たしかにメンバーも問題だけど。それ以前に……。
「メンバーも重要だけど、それ以上に練習が大事だと思うよ」
「練習…か。今まで、運動の練習しかしてこなかったからな……。楽器の練習って、何が一番簡単なんだ?」
「う~ん……。なんだろう」
簡単な楽器って訊かれてもな……。
一概には答えられないよ。
どの楽器も弾くのには、ある程度の技術は必要だと思うし。
「楓が弾いてるベースっていうのは、どんな感じなんだ? あんまり目立つようなところには思えないが──」
と、そんなことを訊いてきた。
ベースにはベースで、ちゃんとした役割があるんだけどな。
バンドではどうしても、ギターやドラム、ボーカルといったところが目立ってしまうから、ベースの役割がどれだけ重要か理解できないんだろう。
「ベースは音源の中心とまではいかないけど、結構重要なところだよ。甘く見てると、足元をすくわれてしまうかも……」
「なるほどな。どれも簡単じゃないってことか……。それなら、やっぱりやめておこうかな」
「そこは、慎吾が思ったとおりでいいんじゃないかな」
別に強要しているわけでもないしね。
「北川先輩にお近づきになりたかったからバンドを組みたいだなんて、理由が安直すぎるしな……」
そう言って慎吾は、残っていた焼きそばパンをたいらげる。
まだ紙パックのコーヒーが残っていたが、それも続けて飲み干していた。
そろそろ、お昼休みも終わりみたいだ。
僕の方も、お弁当を食べてしまわないと……。
僕は、できる限り早めにお弁当を食べていった。
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