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第十七話
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──昼休み。2年C組の教室。
あたしと香奈はいつもどおり机を並べ、持ってきたお弁当を食べる。
香奈のお弁当は、たぶん彼の手作りのお弁当だろう。
香奈が大好きな彼特製の唐揚げが入っているから、間違いない。
「ねぇ、奈緒ちゃん。今日も、楓と一緒に帰ろうと思ってるんだけど。…奈緒ちゃんは、どうする?」
香奈は、お弁当のおかずを一口食べた後、あたしにそう聞いてきた。
いきなり、どうしたんだろう。
せっかく、二人きりになれるチャンスだというのに。
あたしを誘ってくるという行為が、まったく意味がわからない。
「う~ん。どうしようかな……。香奈が『いいよ』って言うのなら、あたしも一緒に帰りたいな」
「わかった。それじゃ、今日の授業が終わったら、そのまま教室で待っててくれるかな?」
香奈は、そう言って好物の唐揚げを食べる。
そう言うってことは、生徒会の仕事があるんだろう。
生徒会に入っているわけじゃないのに……。
まぁ、香奈の場合はただの手伝いだから、まだいいんだけど。
おそらく香奈の性格を考えると、断りきれなかったんだろうな。
「別にいいよ。なんなら、あたしが先に楓君のところに行ってても……」
「それは絶対にダメだよ。奈緒ちゃんは、油断ならないから」
そう言って、香奈はあたしのことをジト目で睨んでくる。
さすがに抜け駆けはする気はないので、微苦笑して言った。
「冗談だよ。香奈にそう言われてしまったら、そんなことするわけにはいかないじゃないの」
「ホントかなぁ。奈緒ちゃんは、放っておくとグイグイ楓に迫っていくから、油断できないんだよ」
香奈は、まだ疑っているのか訝しげな表情でそう言ってくる。
「あたしは、肉食動物か!」
あたしは、つい大声でそう言っていた。
らしくないことはするべきじゃない。
周りにいる女子からの視線がこちらに集中する。
「なになに?」
「どうしたんだろう?」
「北川さんが取り乱すなんて、めずらしい……」
と、女子たちの声が聞こえてきた。
普段、あたしはクールな女の子に見えているらしく、こうして取り乱す姿はめずらしかったみたいだ。
あたしは軽く咳払いをして、誤魔化すようにお弁当を食べる。
「──とにかく。あたしも、楓君には好意を持っているんだから、多少なりとも…ね」
「わかってるよ、そんなこと。でも楓は、私の大切な人なんだから──」
「ちゃんとわかってるって。香奈の思ったとおりには、ならないよ。今のところはね。ホント、香奈は心配症なんだから」
「今のところは…か。それって、いつかはそうなるんだよね?」
香奈は、真面目な表情でそう訊いてきた。
そんな顔をされたら、不真面目な返答はできない。
「それは、まぁ……。楓君があたしのことを好きでいてくれたら…だけど」
あたしはそう答えるが、一番大事なのは、彼があたしのことをどう見ているのかだ。
たぶん彼は、あたしのことを恋愛の対象としては見ていないだろうけど。
「楓が奈緒ちゃんのことを……。どうなんだろう」
香奈は、なぜか深刻な表情を浮かべてそう言っていた。
いや、まさか──。彼に限って、そんなことはないと思うんだけど。
「大丈夫だって。楓君は、ちゃんと香奈のことを見ているよ」
あたしは、すかさず香奈のフォローをする。
彼の恋愛の対象は、間違いなく香奈だろうし。
「そうかな。最近、私に隠し事をしているのか、よそよそしいし……」
「それは……」
彼がよそよそしいのは、ちゃんとした理由があるんだけど。
そもそも隠し事なんて、できるような性格はしてないと思う。
たしかに、とある日に香奈をビックリさせたくてそうしてるのは否定できないが。
今日から5日後の、12月20日は香奈の誕生日なのに。
本人は忘れてるんだろうか。
香奈は、あたしに訊いてきた。
「奈緒ちゃんは、何か心当たりある?」
「さぁ、あたしにはさっぱりわからないな……」
あたしは、わざと惚けてみせる。
こういうのは、当日になるまで言わないでおくのが、正解だと思う。
香奈は、表情をさらに曇らせる。
「奈緒ちゃんにもわからないか……。う~ん……。なんだろう。もしかして、他に好きな人でもできたのかな……」
「楓君に限って、それはないんじゃないかな」
「どうして、そう言いきれるの?」
「だって、楓君だよ。そこまで積極的な性格はしてないでしょ」
あたしは、彼の性格を鑑みた上でそう言っていた。
わざわざ手作りのお弁当を作って、香奈に持たせるくらいの男の子だ。
それは絶対にないと思うんだけど。
香奈も、それはわかっているみたいである。
「たしかに積極的な性格はしてないけど……。だけど……」
それでも心配なのか、香奈はお弁当を食べながらそう言う。
これだけ心配症のお姉さん的存在な女の子を持つと、大変だな。
彼は、よく香奈と一緒にいられるなって思ってしまう。
「とにかく。もう少しだけ様子を見てみようよ。ひょっとしたら、良いことがあるかもしれないよ」
「良いこと…かぁ。なんだろうな……」
香奈は、また思案げな表情になる。
細かいことを気にするなとは言わないけれど、これはさすがに重症かもしれない。
はやく誕生日当日にならないかな。
そうすれば、香奈の悩みも解決になるんだけど……。
あ~あ……。
これじゃ、せっかくのお昼ごはんが、美味しいと感じなくなってしまうよ。
やっぱり香奈には、サプライズなんてするべきじゃないのかもしれない。
でも誕生日プレゼントは、大抵はサプライズになってしまうから不可抗力だよね。
あたしは、小さくため息を吐いた。
あたしと香奈はいつもどおり机を並べ、持ってきたお弁当を食べる。
香奈のお弁当は、たぶん彼の手作りのお弁当だろう。
香奈が大好きな彼特製の唐揚げが入っているから、間違いない。
「ねぇ、奈緒ちゃん。今日も、楓と一緒に帰ろうと思ってるんだけど。…奈緒ちゃんは、どうする?」
香奈は、お弁当のおかずを一口食べた後、あたしにそう聞いてきた。
いきなり、どうしたんだろう。
せっかく、二人きりになれるチャンスだというのに。
あたしを誘ってくるという行為が、まったく意味がわからない。
「う~ん。どうしようかな……。香奈が『いいよ』って言うのなら、あたしも一緒に帰りたいな」
「わかった。それじゃ、今日の授業が終わったら、そのまま教室で待っててくれるかな?」
香奈は、そう言って好物の唐揚げを食べる。
そう言うってことは、生徒会の仕事があるんだろう。
生徒会に入っているわけじゃないのに……。
まぁ、香奈の場合はただの手伝いだから、まだいいんだけど。
おそらく香奈の性格を考えると、断りきれなかったんだろうな。
「別にいいよ。なんなら、あたしが先に楓君のところに行ってても……」
「それは絶対にダメだよ。奈緒ちゃんは、油断ならないから」
そう言って、香奈はあたしのことをジト目で睨んでくる。
さすがに抜け駆けはする気はないので、微苦笑して言った。
「冗談だよ。香奈にそう言われてしまったら、そんなことするわけにはいかないじゃないの」
「ホントかなぁ。奈緒ちゃんは、放っておくとグイグイ楓に迫っていくから、油断できないんだよ」
香奈は、まだ疑っているのか訝しげな表情でそう言ってくる。
「あたしは、肉食動物か!」
あたしは、つい大声でそう言っていた。
らしくないことはするべきじゃない。
周りにいる女子からの視線がこちらに集中する。
「なになに?」
「どうしたんだろう?」
「北川さんが取り乱すなんて、めずらしい……」
と、女子たちの声が聞こえてきた。
普段、あたしはクールな女の子に見えているらしく、こうして取り乱す姿はめずらしかったみたいだ。
あたしは軽く咳払いをして、誤魔化すようにお弁当を食べる。
「──とにかく。あたしも、楓君には好意を持っているんだから、多少なりとも…ね」
「わかってるよ、そんなこと。でも楓は、私の大切な人なんだから──」
「ちゃんとわかってるって。香奈の思ったとおりには、ならないよ。今のところはね。ホント、香奈は心配症なんだから」
「今のところは…か。それって、いつかはそうなるんだよね?」
香奈は、真面目な表情でそう訊いてきた。
そんな顔をされたら、不真面目な返答はできない。
「それは、まぁ……。楓君があたしのことを好きでいてくれたら…だけど」
あたしはそう答えるが、一番大事なのは、彼があたしのことをどう見ているのかだ。
たぶん彼は、あたしのことを恋愛の対象としては見ていないだろうけど。
「楓が奈緒ちゃんのことを……。どうなんだろう」
香奈は、なぜか深刻な表情を浮かべてそう言っていた。
いや、まさか──。彼に限って、そんなことはないと思うんだけど。
「大丈夫だって。楓君は、ちゃんと香奈のことを見ているよ」
あたしは、すかさず香奈のフォローをする。
彼の恋愛の対象は、間違いなく香奈だろうし。
「そうかな。最近、私に隠し事をしているのか、よそよそしいし……」
「それは……」
彼がよそよそしいのは、ちゃんとした理由があるんだけど。
そもそも隠し事なんて、できるような性格はしてないと思う。
たしかに、とある日に香奈をビックリさせたくてそうしてるのは否定できないが。
今日から5日後の、12月20日は香奈の誕生日なのに。
本人は忘れてるんだろうか。
香奈は、あたしに訊いてきた。
「奈緒ちゃんは、何か心当たりある?」
「さぁ、あたしにはさっぱりわからないな……」
あたしは、わざと惚けてみせる。
こういうのは、当日になるまで言わないでおくのが、正解だと思う。
香奈は、表情をさらに曇らせる。
「奈緒ちゃんにもわからないか……。う~ん……。なんだろう。もしかして、他に好きな人でもできたのかな……」
「楓君に限って、それはないんじゃないかな」
「どうして、そう言いきれるの?」
「だって、楓君だよ。そこまで積極的な性格はしてないでしょ」
あたしは、彼の性格を鑑みた上でそう言っていた。
わざわざ手作りのお弁当を作って、香奈に持たせるくらいの男の子だ。
それは絶対にないと思うんだけど。
香奈も、それはわかっているみたいである。
「たしかに積極的な性格はしてないけど……。だけど……」
それでも心配なのか、香奈はお弁当を食べながらそう言う。
これだけ心配症のお姉さん的存在な女の子を持つと、大変だな。
彼は、よく香奈と一緒にいられるなって思ってしまう。
「とにかく。もう少しだけ様子を見てみようよ。ひょっとしたら、良いことがあるかもしれないよ」
「良いこと…かぁ。なんだろうな……」
香奈は、また思案げな表情になる。
細かいことを気にするなとは言わないけれど、これはさすがに重症かもしれない。
はやく誕生日当日にならないかな。
そうすれば、香奈の悩みも解決になるんだけど……。
あ~あ……。
これじゃ、せっかくのお昼ごはんが、美味しいと感じなくなってしまうよ。
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