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第十九話
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本日は元旦だ。
新年を迎えたという気持ちは、こんなにも清々しいものなんだなって思う。
こんな日くらいは、ゆっくりしたいものである。
しかし、家の呼び鈴が鳴った音で、それは無理だなって思えてしまう。
香奈姉ちゃんたちは、約束どおり僕のことを迎えにきた。
わざわざ僕の家までである。
香奈姉ちゃんの他に誰が来たかと言われれば、言うまでもなくいつものバンドメンバーだ。
これまた、いつもの服装ならよかったんだが。
「あけましておめでとう。楓君」
「さっそく、来ちゃった」
「今年もよろしくね」
「初詣…もちろん一緒に行くよね?」
各々、晴れ着姿の4人は、笑顔で僕にそう言ってくる。
約束したことだから、断れるはずがない。
「うん。もちろんだよ。ちょっと待っててね」
僕は、すぐに初詣に行く準備をする。
準備って言ったって、おでかけ用の服にジャケットを羽織るだけなんだけど。
それにしても。
4人の晴れ着姿を見るのは、なんとも新鮮な光景だな。すごく似合ってるし。
間違っても『馬子にも衣装』って言ったら、怒るだろうな。
こんな普段着に近いような服装で晴れ着姿の4人と一緒に歩いて大丈夫なんだろうか。
なんとなく、僕だけ仲間外れになってるんじゃ……。
「弟くん。まだ準備できてないの~?」
と、いつの間にか香奈姉ちゃんが僕の部屋に覗きにやってくる。
どうやら、待たせてしまったみたいだ。
待たせたといっても服は着ていたので、あとはジャケットを羽織るだけなんだけど。
「ごめん。すぐに行くよ」
「うん。待ってるから」
香奈姉ちゃんは、いつもの笑顔でそう言った。
やっぱり香奈姉ちゃんにとって僕の存在は、大切な弟であり恋人なんだな。
僕は、自分の部屋を後にすると、階段を降りてまっすぐに玄関に向かっていく。
そこにいるのは、いつものバンドメンバーなんだろうけど。
玄関先で待つくらいなら、居間の方にいてもよかったのに……。
だけど──
4人の晴れ着姿はとても綺麗だった。
神社にて。
初詣というのは、普通は家族で来るものだと思うけど、バンドメンバーたちで来るのもいいかもしれない。
そう思えてしまうのは、僕も楽しみだと思っているからかも。
「弟くん。手を繋いで歩こうか?」
「楓君。手を繋いで歩こう」
香奈姉ちゃんと奈緒さんが、ほぼ同じタイミングで手を差し出してくる。
ひょっとしてナンパ防止かな?
だけどこの場合は……。
「あの……。えっと……」
僕は、どちらの手を取ればいいのかわからず、困ったような表情を浮かべて2人に視線を向けた。
2人とも引く気はないみたいで、どちらも迷いなく僕の手を取ってくる。
僕の左側には奈緒さんがきて、右側には香奈姉ちゃんがきていた。
まるで、そこが定位置だと言わんばかりの態度だ。
それを見ていた美沙先輩が、笑いだす。
「2人とも、ホントに素直って言うかなんていうか──」
「何よ? もしかして、美沙ちゃんもやりたかったの?」
香奈姉ちゃんは、なぜかムスッとした表情になる。
その表情の意味がわからないんだけど。
正月早々、そんな顔をしていたら『福』が逃げちゃいそうだ。
それを思ったかどうかはわからないが、美沙先輩は僕にそっと寄り添う。
「私は、この際どっちでもいいんだ。楓君のことが好きなのは確かなことだし。──理恵も同じだよね?」
「え……。わたしに振られても……。たしかに、楓君のことは好きだけど……」
理恵先輩は、恥ずかしそうに頬を赤く染めてそう言った。
美沙先輩に煽られたら、当然のことながらそうなるよね。
「ほらね。理恵もこう言ってるんだし。楓君は、意外とモテるんだから! もう少し、自信を持っていいんだよ」
美沙先輩は、自信満々にそう言ってくる。
その自信はどこからくるんだろうって思うくらいに。
「はは……」
僕は、思わず苦笑いをしていた。
自信を持っていいって言われてもな。
そこまで自信過剰な人間じゃないよ。
よく友達に心配されてしまうほどだ。
香奈姉ちゃんは、ギュッと僕の腕にしがみついてくる。
「ダメだよ! 弟くんは、私だけのものなんだから!」
「香奈姉ちゃん。それって……。もはや告白だよね?」
「告白じゃないよ。事実を言ってるだけだよ。…ねぇ、奈緒ちゃん」
「そうだよ。楓君は、あたしたちの大事なバンドメンバーなんだから。ちゃんと可愛がってあげないとダメなんだよ」
奈緒さんは、微笑を浮かべてそう言っていた。
「それは……」
僕は、つい言葉をもらす。
微妙に答えが香奈姉ちゃんのものと異なってるんだけど……。
香奈姉ちゃんがそれでいいなら別にいいか。
「そうだよね。楓君は、私たちにとっての弟みたいな存在だから。責任を持って可愛がらないとね」
「うんうん」
そこで美沙先輩と理恵先輩が同調する。
僕のことを可愛がるって……。
それって、バンドとは関係ないような気がするんだけど。
一つ年上というだけで、お姉さんぶることができるというのはどうなんだろう。
僕的には、普通に接してほしいんだけどな。
参拝を済ませると、僕は4人に訊いていた。
「とりあえず、どこを回ろうか?」
「ん~、そうだなぁ。弟くんと一緒なら、どこだって構わないよ」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情でそう言う。
その返答が一番困るんだけど……。
「あたしも、どこでもいいよ」
左側にいる奈緒さんも、香奈姉ちゃんの返答に同調していた。
美沙先輩と理恵先輩も、特に異論はないみたいだ。
「私も、どこでもいいかな。ねぇ、理恵?」
「うん。香奈ちゃんがいいのなら、わたしは全然構わないよ。それよりも──」
「ん? どうかしたの?」
美沙先輩は、思案げな様子で理恵先輩を見る。
理恵先輩は、真面目な表情で僕のことを見てきた。
「楓君は、わたしたちに言うことがあるんじゃない?」
「え? 理恵先輩たちに…ですか?」
「うん。そう。わたしたちに、だよ。わたしたちは、まだ楓君の感想を聞いていないよ」
「僕の感想?」
香奈姉ちゃんたちに対しての感想。
一体、なんだろう。
よくわからない。
たぶんそれは、僕の表情にも出ているんだろう。
理恵先輩は、恥ずかしそうに頬を赤く染めて訊いてきた。
「とても簡単だよ。わ、わたしたちの晴れ着姿は、どうなのかなって──。に、似合っているかな?」
「………」
理恵先輩の質問に、美沙先輩も、奈緒さんも、香奈姉ちゃんも一様にして神妙な表情になる。
どうやら、4人とも本当に僕の感想が気になるみたいだ。
「あの……。えっと……」
「そんなに答えにくいことなの?」
と、香奈姉ちゃん。
答えにくいってことはないけど、それって告白に近いような気がする。
「そんなことはないんだけど。その……」
「何よ? そんなに似合わなかったの?」
「ううん。とっても似合っているよ。とても綺麗だよ」
僕の言葉に、4人とも頬を赤くする。
「そ、そんな褒め言葉を言われたって……。う、嬉しくなんかないんだからね!」
「そ、そうだよ。楓君に言われたって…ねぇ。嬉しくなんか……」
「う、うん……」
「………」
香奈姉ちゃんたちは、そう言って僕から視線を逸らす。
感想を言ってほしいっていうから言っただけなんだけど。
怒らせてしまったかな。
う~ん……。女心って、むずかしい。
「と、とりあえずおみくじでも買いに行こっか。今年の運勢はどうかなぁ、と──」
香奈姉ちゃんは、そう言って先に歩き出した。
まるで話題を変えようと必死な感じだ。
まぁ、香奈姉ちゃんが先に行動してくれたから、よかったんだけど。
みんな、香奈姉ちゃんの後をついていく。
「おみくじかぁ……。去年は、最悪だったなぁ……」
「美沙は、たしか『凶』だったよね?」
「やめてよ、理恵。ただでさえ、あんまり思い出したくないのに……」
「ごめんね。美沙が去年のことを言ったから、つい……」
「まぁ、いいけどさ。おみくじなんて、必ずしも的中はしないものだから」
「そうだよね。その時の気分みたいなものだと思う」
理恵先輩のフォローが、どこまで美沙先輩の気持ちを落ち着かせるのか気になるが……。とりあえずは、大丈夫だろう。
僕の方も、気を取り直しておみくじを引こうかな。
僕は、香奈姉ちゃんの後ろに並んでいた。
新年を迎えたという気持ちは、こんなにも清々しいものなんだなって思う。
こんな日くらいは、ゆっくりしたいものである。
しかし、家の呼び鈴が鳴った音で、それは無理だなって思えてしまう。
香奈姉ちゃんたちは、約束どおり僕のことを迎えにきた。
わざわざ僕の家までである。
香奈姉ちゃんの他に誰が来たかと言われれば、言うまでもなくいつものバンドメンバーだ。
これまた、いつもの服装ならよかったんだが。
「あけましておめでとう。楓君」
「さっそく、来ちゃった」
「今年もよろしくね」
「初詣…もちろん一緒に行くよね?」
各々、晴れ着姿の4人は、笑顔で僕にそう言ってくる。
約束したことだから、断れるはずがない。
「うん。もちろんだよ。ちょっと待っててね」
僕は、すぐに初詣に行く準備をする。
準備って言ったって、おでかけ用の服にジャケットを羽織るだけなんだけど。
それにしても。
4人の晴れ着姿を見るのは、なんとも新鮮な光景だな。すごく似合ってるし。
間違っても『馬子にも衣装』って言ったら、怒るだろうな。
こんな普段着に近いような服装で晴れ着姿の4人と一緒に歩いて大丈夫なんだろうか。
なんとなく、僕だけ仲間外れになってるんじゃ……。
「弟くん。まだ準備できてないの~?」
と、いつの間にか香奈姉ちゃんが僕の部屋に覗きにやってくる。
どうやら、待たせてしまったみたいだ。
待たせたといっても服は着ていたので、あとはジャケットを羽織るだけなんだけど。
「ごめん。すぐに行くよ」
「うん。待ってるから」
香奈姉ちゃんは、いつもの笑顔でそう言った。
やっぱり香奈姉ちゃんにとって僕の存在は、大切な弟であり恋人なんだな。
僕は、自分の部屋を後にすると、階段を降りてまっすぐに玄関に向かっていく。
そこにいるのは、いつものバンドメンバーなんだろうけど。
玄関先で待つくらいなら、居間の方にいてもよかったのに……。
だけど──
4人の晴れ着姿はとても綺麗だった。
神社にて。
初詣というのは、普通は家族で来るものだと思うけど、バンドメンバーたちで来るのもいいかもしれない。
そう思えてしまうのは、僕も楽しみだと思っているからかも。
「弟くん。手を繋いで歩こうか?」
「楓君。手を繋いで歩こう」
香奈姉ちゃんと奈緒さんが、ほぼ同じタイミングで手を差し出してくる。
ひょっとしてナンパ防止かな?
だけどこの場合は……。
「あの……。えっと……」
僕は、どちらの手を取ればいいのかわからず、困ったような表情を浮かべて2人に視線を向けた。
2人とも引く気はないみたいで、どちらも迷いなく僕の手を取ってくる。
僕の左側には奈緒さんがきて、右側には香奈姉ちゃんがきていた。
まるで、そこが定位置だと言わんばかりの態度だ。
それを見ていた美沙先輩が、笑いだす。
「2人とも、ホントに素直って言うかなんていうか──」
「何よ? もしかして、美沙ちゃんもやりたかったの?」
香奈姉ちゃんは、なぜかムスッとした表情になる。
その表情の意味がわからないんだけど。
正月早々、そんな顔をしていたら『福』が逃げちゃいそうだ。
それを思ったかどうかはわからないが、美沙先輩は僕にそっと寄り添う。
「私は、この際どっちでもいいんだ。楓君のことが好きなのは確かなことだし。──理恵も同じだよね?」
「え……。わたしに振られても……。たしかに、楓君のことは好きだけど……」
理恵先輩は、恥ずかしそうに頬を赤く染めてそう言った。
美沙先輩に煽られたら、当然のことながらそうなるよね。
「ほらね。理恵もこう言ってるんだし。楓君は、意外とモテるんだから! もう少し、自信を持っていいんだよ」
美沙先輩は、自信満々にそう言ってくる。
その自信はどこからくるんだろうって思うくらいに。
「はは……」
僕は、思わず苦笑いをしていた。
自信を持っていいって言われてもな。
そこまで自信過剰な人間じゃないよ。
よく友達に心配されてしまうほどだ。
香奈姉ちゃんは、ギュッと僕の腕にしがみついてくる。
「ダメだよ! 弟くんは、私だけのものなんだから!」
「香奈姉ちゃん。それって……。もはや告白だよね?」
「告白じゃないよ。事実を言ってるだけだよ。…ねぇ、奈緒ちゃん」
「そうだよ。楓君は、あたしたちの大事なバンドメンバーなんだから。ちゃんと可愛がってあげないとダメなんだよ」
奈緒さんは、微笑を浮かべてそう言っていた。
「それは……」
僕は、つい言葉をもらす。
微妙に答えが香奈姉ちゃんのものと異なってるんだけど……。
香奈姉ちゃんがそれでいいなら別にいいか。
「そうだよね。楓君は、私たちにとっての弟みたいな存在だから。責任を持って可愛がらないとね」
「うんうん」
そこで美沙先輩と理恵先輩が同調する。
僕のことを可愛がるって……。
それって、バンドとは関係ないような気がするんだけど。
一つ年上というだけで、お姉さんぶることができるというのはどうなんだろう。
僕的には、普通に接してほしいんだけどな。
参拝を済ませると、僕は4人に訊いていた。
「とりあえず、どこを回ろうか?」
「ん~、そうだなぁ。弟くんと一緒なら、どこだって構わないよ」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情でそう言う。
その返答が一番困るんだけど……。
「あたしも、どこでもいいよ」
左側にいる奈緒さんも、香奈姉ちゃんの返答に同調していた。
美沙先輩と理恵先輩も、特に異論はないみたいだ。
「私も、どこでもいいかな。ねぇ、理恵?」
「うん。香奈ちゃんがいいのなら、わたしは全然構わないよ。それよりも──」
「ん? どうかしたの?」
美沙先輩は、思案げな様子で理恵先輩を見る。
理恵先輩は、真面目な表情で僕のことを見てきた。
「楓君は、わたしたちに言うことがあるんじゃない?」
「え? 理恵先輩たちに…ですか?」
「うん。そう。わたしたちに、だよ。わたしたちは、まだ楓君の感想を聞いていないよ」
「僕の感想?」
香奈姉ちゃんたちに対しての感想。
一体、なんだろう。
よくわからない。
たぶんそれは、僕の表情にも出ているんだろう。
理恵先輩は、恥ずかしそうに頬を赤く染めて訊いてきた。
「とても簡単だよ。わ、わたしたちの晴れ着姿は、どうなのかなって──。に、似合っているかな?」
「………」
理恵先輩の質問に、美沙先輩も、奈緒さんも、香奈姉ちゃんも一様にして神妙な表情になる。
どうやら、4人とも本当に僕の感想が気になるみたいだ。
「あの……。えっと……」
「そんなに答えにくいことなの?」
と、香奈姉ちゃん。
答えにくいってことはないけど、それって告白に近いような気がする。
「そんなことはないんだけど。その……」
「何よ? そんなに似合わなかったの?」
「ううん。とっても似合っているよ。とても綺麗だよ」
僕の言葉に、4人とも頬を赤くする。
「そ、そんな褒め言葉を言われたって……。う、嬉しくなんかないんだからね!」
「そ、そうだよ。楓君に言われたって…ねぇ。嬉しくなんか……」
「う、うん……」
「………」
香奈姉ちゃんたちは、そう言って僕から視線を逸らす。
感想を言ってほしいっていうから言っただけなんだけど。
怒らせてしまったかな。
う~ん……。女心って、むずかしい。
「と、とりあえずおみくじでも買いに行こっか。今年の運勢はどうかなぁ、と──」
香奈姉ちゃんは、そう言って先に歩き出した。
まるで話題を変えようと必死な感じだ。
まぁ、香奈姉ちゃんが先に行動してくれたから、よかったんだけど。
みんな、香奈姉ちゃんの後をついていく。
「おみくじかぁ……。去年は、最悪だったなぁ……」
「美沙は、たしか『凶』だったよね?」
「やめてよ、理恵。ただでさえ、あんまり思い出したくないのに……」
「ごめんね。美沙が去年のことを言ったから、つい……」
「まぁ、いいけどさ。おみくじなんて、必ずしも的中はしないものだから」
「そうだよね。その時の気分みたいなものだと思う」
理恵先輩のフォローが、どこまで美沙先輩の気持ちを落ち着かせるのか気になるが……。とりあえずは、大丈夫だろう。
僕の方も、気を取り直しておみくじを引こうかな。
僕は、香奈姉ちゃんの後ろに並んでいた。
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