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第二十話
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2月は女の子にとってとても重要な月だ。
それは、もちろん奈緒ちゃんたちにとっても例外ではない。
──2年C組の教室にて。
「ねぇ、香奈」
「なに? 奈緒ちゃん」
「ちょっと、相談したいことがあるんだけど……。いいかな?」
そんなかしこまった様子で訊いてくるあたり、奈緒ちゃんにとってはとても重要なことなんだろう。
なんて言ったって、バレンタインデーが近づいているのだから。
「相談の内容にもよるけど、別にいいよ。私で解決できることなら協力するよ」
「ありがとう。それじゃ、さっそく聞きたいんだけど。香奈は、楓君にバレンタインデーのチョコレートを渡す予定はあるの?」
奈緒ちゃんは、そんなことを訊いてきた。
どちらかというと、渡すかどうかの『確認』なんだろうな。これは。
当然だけど、バレンタインデーの本命チョコレートは渡すつもりだ。
義理だけど隆一さんにもね。
ちなみにバレンタインデーの前日は、なぜか楓本人もチョコレートを作っていたりする。
「う~ん……。どうだろうな。楓は、自分でチョコレートを作るからなぁ。最近だと、渡しても意味があるのかどうかわからなくなってるかも……」
「え……。楓君って、自分でチョコレートを作るの?」
奈緒ちゃんは、驚いた様子でさらに訊いてくる。
そりゃ、女の子が作るものを男の子が作っていたら驚きもするか。
去年の私ならドン引きしてしまうレベルだけど、今の私なら純粋にすごいなって思えることだ。
尊敬してしまうくらい。
「うん。材料があれば自作ですごいものを作ってしまうくらいだよ」
「そうなんだ。それは、あたしも負けてられないな」
「そんな対抗意識なんか燃やさなくても大丈夫だよ。楓なら、真心のこもったものなら、素直に受け取ってくれるよ」
「そうなの? でもなぁ。普段から料理などをしてる人にチョコを贈るとなると……」
そんな緊張しなくても大丈夫なのにな。
まさか理恵ちゃんたちも、楓にチョコレートを作るなんてことはないよね?
ただでさえ楓は、甘いものが苦手なのに。
甘いものは苦手だけど、調理することに対しては凝り性で最後までやらないと気が済まないっていう楓本人の性格が出ているから、なんとも言えない。
「奈緒ちゃんは心配しすぎだよ。想いのこもったものなら、楓だってきっと喜ぶはずだよ」
「そうかなぁ。う~ん……。あたしのチョコなんて受け取ってくれるかどうか……」
「大丈夫だって! 私が保証するよ」
万が一、そうならなかったら、楓に折檻の一つでもやってやるつもりだけど。
私の言葉を聞いて安心したのか、奈緒ちゃんは安堵の笑みを見せる。
「香奈がそう言うのなら、安心かな」
きっと理恵ちゃんも美沙ちゃんも、楓にチョコレートを渡すつもりなんだろうな。
そんなことを思っていたら、美沙ちゃんと理恵ちゃんがこちらのクラスにやってくる。
「ねぇ、香奈ちゃん。ちょっと相談があるんだけど。…いいかな?」
「なに? 相談って?」
「うん。楓君のことについてなんだけど……」
「楓がどうかしたの?」
「ほら。その……。そろそろバレンタインデーだよね? だからその……」
まさに、噂をすればなんとやらっていうやつだ。
バレンタインデーのチョコレートの話題となれば、私に聞いてくるんじゃないかと思っていたんだけど。
正解だったか。
「なるほどね。理恵ちゃんたちも、楓にチョコを渡したいってことなんだね?」
「う、うん。ダメ…かな?」
理恵ちゃんは、おそるおそるといった様子でそう訊いてくる。
そんな顔をされたら、はっきりと『ダメ』っていうわけにもいかない。
「全然ダメなんかじゃないよ。好きな人に想いのこもったものを渡したいっていうのは、ごく自然なことだと思うし。とっても素敵なことだよ」
「香奈ちゃんにそう言われると、渡そうっていう勇気が湧いてくるよ」
「私も、男の子にチョコを渡すこと自体は初めてだからね。香奈がそう言ってくれるんなら、楓君のために作ってみようかな」
理恵ちゃんも美沙ちゃんも、今までで男の子にチョコレートを作って渡したことはないらしい。
そういう私も、バレンタインデーの日にチョコレートなんて渡したことはないかも……。
作ることはするけど、結局自分用になっちゃうし。
「せっかくだから、誰のチョコレートが一番なのか勝負してみよっか?」
私は、そう提案してみる。
あくまでも冗談のつもりで言ってみただけだ。
そもそもの話、バレンタインデーっていうのは、意中の男の子に素直な気持ちを伝えるのが、本来の趣旨なのではないかと思うんだけど。
しかし3人は、乗り気みたいだ。
「いいね、それ。やってみようか?」
そう言ったのは、奈緒ちゃんだった。
冗談で言ってみただけなんだけど、奈緒ちゃんはやる気まんまんの様子である。
おまけに理恵ちゃんや美沙ちゃんまで、やる気みたいだ。
「わたしも参加してあげてもいいかな。楓君のためなら頑張れそう──」
「理恵が参加するなら、私も参加してみようかな。男の子にチョコレートをあげるのなんて初めてだし」
「え、いや……。私は、冗談で言ってみただけで、参加するとかそういうんじゃなくて……」
「いやいや。言った時点でダメでしょ。香奈は強制参加だよ」
「そんな……」
私は、あまりのことに何も言えなくなってしまう。
誰のチョコが一番美味しいかっていう話でもないでしょうに……。
問題なのは、相手に対しての『気持ち』だよ。
「大丈夫だよ。あたしは、香奈が言いたいことはちゃんとわかっているから」
呆然としている私の肩にポンっと手を置いて、奈緒ちゃんはそう言った。
ホントにわかっているのかな?
その微笑を見ていると、逆に不安なんだけど。
ちなみにバレンタインデーまでには、後数日はある。
だから余裕をもって、チョコレート作りをしよう。
それは、もちろん奈緒ちゃんたちにとっても例外ではない。
──2年C組の教室にて。
「ねぇ、香奈」
「なに? 奈緒ちゃん」
「ちょっと、相談したいことがあるんだけど……。いいかな?」
そんなかしこまった様子で訊いてくるあたり、奈緒ちゃんにとってはとても重要なことなんだろう。
なんて言ったって、バレンタインデーが近づいているのだから。
「相談の内容にもよるけど、別にいいよ。私で解決できることなら協力するよ」
「ありがとう。それじゃ、さっそく聞きたいんだけど。香奈は、楓君にバレンタインデーのチョコレートを渡す予定はあるの?」
奈緒ちゃんは、そんなことを訊いてきた。
どちらかというと、渡すかどうかの『確認』なんだろうな。これは。
当然だけど、バレンタインデーの本命チョコレートは渡すつもりだ。
義理だけど隆一さんにもね。
ちなみにバレンタインデーの前日は、なぜか楓本人もチョコレートを作っていたりする。
「う~ん……。どうだろうな。楓は、自分でチョコレートを作るからなぁ。最近だと、渡しても意味があるのかどうかわからなくなってるかも……」
「え……。楓君って、自分でチョコレートを作るの?」
奈緒ちゃんは、驚いた様子でさらに訊いてくる。
そりゃ、女の子が作るものを男の子が作っていたら驚きもするか。
去年の私ならドン引きしてしまうレベルだけど、今の私なら純粋にすごいなって思えることだ。
尊敬してしまうくらい。
「うん。材料があれば自作ですごいものを作ってしまうくらいだよ」
「そうなんだ。それは、あたしも負けてられないな」
「そんな対抗意識なんか燃やさなくても大丈夫だよ。楓なら、真心のこもったものなら、素直に受け取ってくれるよ」
「そうなの? でもなぁ。普段から料理などをしてる人にチョコを贈るとなると……」
そんな緊張しなくても大丈夫なのにな。
まさか理恵ちゃんたちも、楓にチョコレートを作るなんてことはないよね?
ただでさえ楓は、甘いものが苦手なのに。
甘いものは苦手だけど、調理することに対しては凝り性で最後までやらないと気が済まないっていう楓本人の性格が出ているから、なんとも言えない。
「奈緒ちゃんは心配しすぎだよ。想いのこもったものなら、楓だってきっと喜ぶはずだよ」
「そうかなぁ。う~ん……。あたしのチョコなんて受け取ってくれるかどうか……」
「大丈夫だって! 私が保証するよ」
万が一、そうならなかったら、楓に折檻の一つでもやってやるつもりだけど。
私の言葉を聞いて安心したのか、奈緒ちゃんは安堵の笑みを見せる。
「香奈がそう言うのなら、安心かな」
きっと理恵ちゃんも美沙ちゃんも、楓にチョコレートを渡すつもりなんだろうな。
そんなことを思っていたら、美沙ちゃんと理恵ちゃんがこちらのクラスにやってくる。
「ねぇ、香奈ちゃん。ちょっと相談があるんだけど。…いいかな?」
「なに? 相談って?」
「うん。楓君のことについてなんだけど……」
「楓がどうかしたの?」
「ほら。その……。そろそろバレンタインデーだよね? だからその……」
まさに、噂をすればなんとやらっていうやつだ。
バレンタインデーのチョコレートの話題となれば、私に聞いてくるんじゃないかと思っていたんだけど。
正解だったか。
「なるほどね。理恵ちゃんたちも、楓にチョコを渡したいってことなんだね?」
「う、うん。ダメ…かな?」
理恵ちゃんは、おそるおそるといった様子でそう訊いてくる。
そんな顔をされたら、はっきりと『ダメ』っていうわけにもいかない。
「全然ダメなんかじゃないよ。好きな人に想いのこもったものを渡したいっていうのは、ごく自然なことだと思うし。とっても素敵なことだよ」
「香奈ちゃんにそう言われると、渡そうっていう勇気が湧いてくるよ」
「私も、男の子にチョコを渡すこと自体は初めてだからね。香奈がそう言ってくれるんなら、楓君のために作ってみようかな」
理恵ちゃんも美沙ちゃんも、今までで男の子にチョコレートを作って渡したことはないらしい。
そういう私も、バレンタインデーの日にチョコレートなんて渡したことはないかも……。
作ることはするけど、結局自分用になっちゃうし。
「せっかくだから、誰のチョコレートが一番なのか勝負してみよっか?」
私は、そう提案してみる。
あくまでも冗談のつもりで言ってみただけだ。
そもそもの話、バレンタインデーっていうのは、意中の男の子に素直な気持ちを伝えるのが、本来の趣旨なのではないかと思うんだけど。
しかし3人は、乗り気みたいだ。
「いいね、それ。やってみようか?」
そう言ったのは、奈緒ちゃんだった。
冗談で言ってみただけなんだけど、奈緒ちゃんはやる気まんまんの様子である。
おまけに理恵ちゃんや美沙ちゃんまで、やる気みたいだ。
「わたしも参加してあげてもいいかな。楓君のためなら頑張れそう──」
「理恵が参加するなら、私も参加してみようかな。男の子にチョコレートをあげるのなんて初めてだし」
「え、いや……。私は、冗談で言ってみただけで、参加するとかそういうんじゃなくて……」
「いやいや。言った時点でダメでしょ。香奈は強制参加だよ」
「そんな……」
私は、あまりのことに何も言えなくなってしまう。
誰のチョコが一番美味しいかっていう話でもないでしょうに……。
問題なのは、相手に対しての『気持ち』だよ。
「大丈夫だよ。あたしは、香奈が言いたいことはちゃんとわかっているから」
呆然としている私の肩にポンっと手を置いて、奈緒ちゃんはそう言った。
ホントにわかっているのかな?
その微笑を見ていると、逆に不安なんだけど。
ちなみにバレンタインデーまでには、後数日はある。
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