僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
248 / 382
第二十話

6

しおりを挟む
今日は、バレンタインデーだ。
そのこともあってか女子校内にいる女の子たちは、いつもよりテンションが高めである。
チョコレートを渡す相手のことを考えているんだろう。
中には、そんな態度をおくびにも出さずにいる女の子もいるけど、恥ずかしそうに頬を赤らめているのを見れば丸わかりである。
今日が大事な日だというのは、ちゃんとわかっているんだろうな。
そんな私も人のことが言えず、若干テンションが高めだった。
楓に渡すのチョコのことで、頭がいっぱいだ。
もちろん本命チョコ…になるんだけど。
恥ずかしいから、そんなことは他の人には言えない。
奈緒ちゃんと会う前には、なんとか平常心を保たないと。
そんなこんなで、いつもどおりに教室に入り自分の席に着くと、奈緒ちゃんが私のところにやってきて話しかけてきた。

「おはよう、香奈」
「おはよう、奈緒ちゃん」

私は、普段と変わらぬ態度で挨拶をする。
今日はバレンタインデーだから、絶対に奈緒ちゃんから何かあるだろう。
そう思って少しだけ様子を見ていたら、案の定、奈緒ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめ、緊張気味に言ってきた。

「き、今日は、バレンタインデーだね」
「うん。そうだね」
「香奈は、チョコレートを渡す予定とかってある?」
「突然どうしたの?」
「いや、その……。聞いてみただけ…かな」
「そっか」

私は、奈緒ちゃんの突然の質問になんて答えたらいいのかわからず、つい相槌をうっていた。
渡す予定があるかと聞かれたら、『ある』と答えてしまいそうだけど、それも何か違う気がするし。
ちなみに、楓に渡すチョコレートは持ってきているが、まだ渡してはいない。
朝の時点で渡せたのではないかって?
女子校では、チョコを渡すタイミングすらも大事なイベントになっているからだ。

「香奈はどうか知らないけど、あたしは渡すつもりだよ。楓君にね。美沙と理恵も、同じなんじゃないかな」
「そう…なんだ」
「香奈は、もう渡したんじゃないの?」
「ううん。まだだけど……」
「そっか。そこのところだけは、対等なんだね」

奈緒ちゃんは、安心した様子で笑顔を浮かべそう言っていた。
朝、途中まで楓と一緒に学校に行ったのは、フラグ作りのためだ。
楓には、私という存在を意識させておいて、他の女の子のところに行かないようにするのだ。
ごく自然な流れに演出すれば、さらに良い効果がある。
私の姿を撮影させてしまったことについては、なんとも言えないけれど。確実に私のことを意識しているはず。

「対等って……。私は別に……」
「隠さなくてもいいって。あたしには、ちゃんとわかっているから」
「もう! 奈緒ちゃんったら! そんなんじゃないのに……」
「まぁまぁ。今日は、バレンタインデーなんだし。少しくらいは大目に見ないと。せっかくの美人が台無しだよ」
「むぅ~」

私は、なんて言っていいのかわからず押し黙ってしまう。
だからといって、ここで引き止めたら、私一人が悪いっていう流れになってしまいそうだし。
ここは、静かに見守るしかないのかな。

やっぱり、楓のお姉ちゃん的な存在の私としては、誰からのチョコレートが一番嬉しいのかはっきりしてもらいたい。
そうは思うのだが、これは楓にとっても初めてのことだと思うから、私の気持ちだけが先走ってもダメなんだよなぁ。
この場合は、どうしたらいいんだろう。

「どうしたの、香奈ちゃん? 忘れ物でもしちゃったの?」

お昼休みの時間になって、お弁当を食べている時に、美沙はそんなことを訊いてきた。
きっと今日がバレンタインデーだということをわかっていてそう言ってきたに違いない。
さすがに勘だけはすさまじく鋭いな。美沙ちゃんは。
こんな時は、どう言えば誤魔化せるのか。
私は、苦笑いを浮かべて言う。

「ううん。なんでもないよ。ちょっとね……」
「ふ~ん。ちょっと…か。ひょっとして、バレンタインデーのチョコのことで悩んでるのかな?」
「そ、そんなことは──。私は、ただ──」
「みなまで言うなって。私には、ちゃんとわかっているんだから」

美沙ちゃんは、なにかを悟ったかのようにそう言った。
なぜだか不安しかないんだけど。
信用していいのかな。

「わかってるって、何を?」
「香奈ちゃんが楓君に、一生懸命アプローチしているっていうのは、よくわかっているんだよ」
「それは……。弟くんは、一人にしたら何をするかわからないから。それで──」

私は、そう言っているうちにしどろもどろになってしまう。
それを面白そうに見ているのが美沙ちゃんだ。

「そうだよね。愛しの弟くんは、結構モテるからね。一人にはしておけないよね。香奈ちゃんの気持ちは、よくわかるわ」
「もう! 他人事だと思って! 私にとっては、一大事なんだからね」
「そっかぁ。なら、私が楓君にチョコレートを渡すのもいけない事なのかな?」
「いけなくは…ないけど……」

悪戯っぽい笑みを浮かべて言う美沙ちゃんに、私はもやもやっとした気持ちでそう言う。
なんだろう、これは……。
ひょっとして、やきもち?
だとしたら、なんで美沙ちゃんにやきもちを妬いているの。
奈緒ちゃんになら、わかるんだけど。
私の気持ちは、どんどん沈んでいく。
それを見てなのか、美沙ちゃんは笑顔で言った。

「そんな顔しなくても大丈夫だよ。私のバレンタインデーのチョコレートは、『本命チョコ』じゃないから」
「『本命チョコ』じゃないの? …だったら何の──」
「それはね。やっぱり秘密かな」
「秘密って……」
「香奈ちゃんには、楓君っていう本命彼氏がいるからね。私の場合は、常日頃の感謝の気持ちを込めて…になるのかな」
「感謝か……」
「あはは。ちょっと、くさい台詞になるね」
「そうだね」

私には、これ以上何も言えなかった。
彼女が誰のことを想っていようと自由だし、なによりもバレンタインデーなんていうのは、その日限りの無礼講みたいなものだと思うからだ。
さすがにチョコポッキーでアレをやるのはどうかと思うけど、それ以外なら許される範囲だろう。
私は、もやもやとした気持ちを胸の中に押し込めつつ、お弁当の残りを食べた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...