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第二十一話
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ランジェリーショップの中で彼女のことを待つのはすごく恥ずかしい。
僕としては、1秒たりともここにはいたくない。
本心ではそう思っていても、なかなか口に出せないのがもどかしい。
──しかしだ。
だからといって、もし先にお店を出ちゃったら、後で香奈姉ちゃんになんて言われてしまうだろう。
まず確実に怒られるだろうな。
「香奈姉ちゃん。まだ決まらないのかな……」
僕は、店の出入り口付近で香奈姉ちゃんのことを待っていた。
男としては、ランジェリーショップにいることの方が苦痛なんだけど。
なにより、周囲の人たちの視線が痛い。
やっぱり、店の外で待っていようかな。
「やっぱり場違いだよな……。香奈姉ちゃんには悪いけど、店の外で待とうかな」
僕は、独り言のようにそう言って店を出ようとする。
すると──
「あ……。ちょっと待って」
すぐに女性店員がやってきて、僕を引き止めてきた。
何かあったのかな?
僕が思案げな表情で、やってきた女性店員さんを見る。
「あの……。何か?」
「君は、あの女の子の彼氏さんだよね?」
女性店員さんの言う『女の子』というのは、香奈姉ちゃんの事だ。
その証拠に、女性店員さんは香奈姉ちゃんの事を見ている。
彼氏だということは僕自身にはわからないが、香奈姉ちゃんがそう言うのだから間違いないだろう。
「あ、はい。そうだけど……。何かありましたか?」
「あの女の子が、あなたのことを呼んでるの。はやく行ってあげて」
「あ、はい。わかりました」
香奈姉ちゃんは今、下着選び中だよね?
そうした疑問を持ちつつも、僕は香奈姉ちゃんのいる場所に向かっていく。
ただでさえ、ここにいるのは恥ずかしいのに、何なんだろうか。
「どうしたの、香奈姉ちゃん? 何かあった──」
「え……」
香奈姉ちゃんは、キョトンとした表情で僕のことを見てくる。
まるで僕がここに来たなどという事は、思ってもみなかったみたいにして──
その証拠に、香奈姉ちゃんが入っていた試着室のカーテンは、開いたままだ。
その試着室の中で、今まさに下着を試着している最中だったとしたらどうだろう。
当然のことながら、僕は何も知らない。
女性店員さんに言われたから、ここに来ただけなのだから。
僕は、慌てて後ろを向いて香奈姉ちゃんに言う。
「あ、ごめん。試着の途中だったなんて……」
普通の女の子だったら、悲鳴があがるだろう。
しかし、香奈姉ちゃんからは悲鳴はあがらない。
むしろ、優しい笑顔で僕のことを見る。
「やっぱり私のことが心配になったの? 楓は、優しいね」
「いや、その……」
こんな時、なんて言えばいいのかわからない。
もしかしたら、駆けつけてきたことが嬉しかったのかな。
なんにせよ、何もなかったのなら戻っても問題なさそうだ。
しかし香奈姉ちゃんは、さも嬉しそうに──
「せっかくここまで来てくれたんだから、ちゃんと見てくれるよね?」
「いや、僕は……」
「まさか、ここまで来て見ないなんてことはないよね?」
「それは……」
笑顔でそんなことを言ってくるあたり、計算してたのかもしれない。
あの女性店員さん。僕に嘘をついたな。
香奈姉ちゃんが呼んでいたなんていう話は、まったくのデタラメじゃないか。
僕は、チラッとその女性店員さんの方に視線を向ける。
女性店員さんは、バツが悪そうに僕から視線を逸らし、そのまま他の場所に移動していく。
あ、逃げた……。
わざわざ、店の奥に誘導するような真似をしてなんの得があるんだろう。
こんな所で、香奈姉ちゃんの下着姿なんて見たくはないんだけど……。
「もう! ここまで来たんだから、はっきりしなさい!」
「あ、うん。ごめん……」
結局、謝るハメになってしまうんだよな。
香奈姉ちゃんには、敵わないから。
「とりあえず、2~3枚は買っていくから、どれがいいか楓も選んでね」
笑顔でそんなことを言われても……。
見てるだけじゃ、ダメなのか。
「それで、サイズは?」
「70のEだよ」
「Eって……。そんなに大きかったっけ?」
「成長したのよ。よくある事でしょ」
「あー、うん……。よくある事だね……」
僕は、そう相槌をうつ。
Eって、カップのことだよね。
香奈姉ちゃんのおっぱいって、そんなに大きいのか……。
見るのに慣れすぎてしまって、あんまり気にしたことはなかったな。
僕だって、女の子のおっぱいの大きさの基準くらいはわかる。
Eカップは、結構な巨乳だ。
触るとはっきりとわかるくらいにして……。
「お姉さんに合う下着は、こちらになります。可愛いものを選びましょうね」
香奈姉ちゃんを接客していた女性店員さんは、微笑を浮かべて僕を下着コーナーに案内する。
可愛いものって……。
それを僕に選ばせるつもりなのか。
悩んでも仕方がない。
僕は渋々、香奈姉ちゃんが指定したサイズのブラジャーを何枚か選ぶ。
比較的、香奈姉ちゃんが好きそうな色合いのものを……。
こんなものを僕が選んでいいものなのか、躊躇してしまうけど。
店員さんが見ているのなら、問題はないか。
僕としては、1秒たりともここにはいたくない。
本心ではそう思っていても、なかなか口に出せないのがもどかしい。
──しかしだ。
だからといって、もし先にお店を出ちゃったら、後で香奈姉ちゃんになんて言われてしまうだろう。
まず確実に怒られるだろうな。
「香奈姉ちゃん。まだ決まらないのかな……」
僕は、店の出入り口付近で香奈姉ちゃんのことを待っていた。
男としては、ランジェリーショップにいることの方が苦痛なんだけど。
なにより、周囲の人たちの視線が痛い。
やっぱり、店の外で待っていようかな。
「やっぱり場違いだよな……。香奈姉ちゃんには悪いけど、店の外で待とうかな」
僕は、独り言のようにそう言って店を出ようとする。
すると──
「あ……。ちょっと待って」
すぐに女性店員がやってきて、僕を引き止めてきた。
何かあったのかな?
僕が思案げな表情で、やってきた女性店員さんを見る。
「あの……。何か?」
「君は、あの女の子の彼氏さんだよね?」
女性店員さんの言う『女の子』というのは、香奈姉ちゃんの事だ。
その証拠に、女性店員さんは香奈姉ちゃんの事を見ている。
彼氏だということは僕自身にはわからないが、香奈姉ちゃんがそう言うのだから間違いないだろう。
「あ、はい。そうだけど……。何かありましたか?」
「あの女の子が、あなたのことを呼んでるの。はやく行ってあげて」
「あ、はい。わかりました」
香奈姉ちゃんは今、下着選び中だよね?
そうした疑問を持ちつつも、僕は香奈姉ちゃんのいる場所に向かっていく。
ただでさえ、ここにいるのは恥ずかしいのに、何なんだろうか。
「どうしたの、香奈姉ちゃん? 何かあった──」
「え……」
香奈姉ちゃんは、キョトンとした表情で僕のことを見てくる。
まるで僕がここに来たなどという事は、思ってもみなかったみたいにして──
その証拠に、香奈姉ちゃんが入っていた試着室のカーテンは、開いたままだ。
その試着室の中で、今まさに下着を試着している最中だったとしたらどうだろう。
当然のことながら、僕は何も知らない。
女性店員さんに言われたから、ここに来ただけなのだから。
僕は、慌てて後ろを向いて香奈姉ちゃんに言う。
「あ、ごめん。試着の途中だったなんて……」
普通の女の子だったら、悲鳴があがるだろう。
しかし、香奈姉ちゃんからは悲鳴はあがらない。
むしろ、優しい笑顔で僕のことを見る。
「やっぱり私のことが心配になったの? 楓は、優しいね」
「いや、その……」
こんな時、なんて言えばいいのかわからない。
もしかしたら、駆けつけてきたことが嬉しかったのかな。
なんにせよ、何もなかったのなら戻っても問題なさそうだ。
しかし香奈姉ちゃんは、さも嬉しそうに──
「せっかくここまで来てくれたんだから、ちゃんと見てくれるよね?」
「いや、僕は……」
「まさか、ここまで来て見ないなんてことはないよね?」
「それは……」
笑顔でそんなことを言ってくるあたり、計算してたのかもしれない。
あの女性店員さん。僕に嘘をついたな。
香奈姉ちゃんが呼んでいたなんていう話は、まったくのデタラメじゃないか。
僕は、チラッとその女性店員さんの方に視線を向ける。
女性店員さんは、バツが悪そうに僕から視線を逸らし、そのまま他の場所に移動していく。
あ、逃げた……。
わざわざ、店の奥に誘導するような真似をしてなんの得があるんだろう。
こんな所で、香奈姉ちゃんの下着姿なんて見たくはないんだけど……。
「もう! ここまで来たんだから、はっきりしなさい!」
「あ、うん。ごめん……」
結局、謝るハメになってしまうんだよな。
香奈姉ちゃんには、敵わないから。
「とりあえず、2~3枚は買っていくから、どれがいいか楓も選んでね」
笑顔でそんなことを言われても……。
見てるだけじゃ、ダメなのか。
「それで、サイズは?」
「70のEだよ」
「Eって……。そんなに大きかったっけ?」
「成長したのよ。よくある事でしょ」
「あー、うん……。よくある事だね……」
僕は、そう相槌をうつ。
Eって、カップのことだよね。
香奈姉ちゃんのおっぱいって、そんなに大きいのか……。
見るのに慣れすぎてしまって、あんまり気にしたことはなかったな。
僕だって、女の子のおっぱいの大きさの基準くらいはわかる。
Eカップは、結構な巨乳だ。
触るとはっきりとわかるくらいにして……。
「お姉さんに合う下着は、こちらになります。可愛いものを選びましょうね」
香奈姉ちゃんを接客していた女性店員さんは、微笑を浮かべて僕を下着コーナーに案内する。
可愛いものって……。
それを僕に選ばせるつもりなのか。
悩んでも仕方がない。
僕は渋々、香奈姉ちゃんが指定したサイズのブラジャーを何枚か選ぶ。
比較的、香奈姉ちゃんが好きそうな色合いのものを……。
こんなものを僕が選んでいいものなのか、躊躇してしまうけど。
店員さんが見ているのなら、問題はないか。
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