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第二十二話
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楓はどんなものが好きなんだろう。
今まで隆兄ちゃんのことばかり見てきたから、楓の好きなものや趣味については、まったく知らない。
「ねぇ、楓」
「ん?」
「楓は、お姉ちゃんのことをどう思ってる? やっぱり好きなの?」
そんなことを聞かれたら当然の答えが帰ってきそうな質問をしてしまうのは、私も私なりに楓のことが気になっているからだと思う。
「突然どうしたの? 花音がそんなことを聞くなんて、めずらしいね」
「いいから答えなさいよ。どうなの? 好きなの?」
「ずいぶんと単刀直入だね。花音には、もうわかってるんじゃないの?」
「それは……。楓の口から、直接聞くまでは……」
諦めが悪いと言われても、そんなことを訊いてしまうあたり、私も相当な意地悪な人間だな。
楓は、すっきりしたような笑みを浮かべて言った。
「香奈姉ちゃんのことは大好きだよ。この想いだけは、誰にも譲れないかな」
「そ、そうなんだ。それじゃ、私のことは?」
わかりきってはいたものの、一応訊いてみる。
楓にとって、私はどんな存在なんだろう。
もしかしたら──
「大事な妹って感じかな。それ以上の感情は、さすがに……」
「そうなんだ。大事な妹、か……。まぁ、そうだよね」
私は、無理矢理に苦い笑みを浮かべていた。
楓とはそんな関係になれないのは、なんとなくわかっていたことだけど、彼の口からはっきりと言われてしまったら、それはそれで傷ついてしまう。
やっぱり隆兄ちゃんしかいないのかな。私のことを理解してくれるのって……。
でも隆兄ちゃんは、まだお姉ちゃんのことが……。
「それにしても遅いね? 何してるんだろう。お姉ちゃんは──」
「たぶん買い物じゃないかな」
「買い物って……。制服姿のままで?」
「香奈姉ちゃんのことだから、わりと普通かと──」
楓は、それが当たり前のことのように言う。
たしかにお姉ちゃんは、どこか家庭的な一面がある。
「わりと普通か……。お姉ちゃんは、いつもそんなことをしてるんだ」
「家に食材が無い時とかは、大抵そうしてるかな。僕も人のことは言えないから、何も言わないけど……」
「なるほど」
学校帰りに買い物って、校則で許されていただろうか。
そんな細かいことは、さておいて。
ホントに楓もお姉ちゃんも、そういうところは家庭的で共通点があるな。
「──ただいま」
その声は、玄関の方から聞こえてきた。
噂をすれば…というやつだ。
楓の家だというのに、わざわざそう言って入ってくるあたり、お姉ちゃんも楓のことを気にしているんだろう。
お姉ちゃんは、そのまま居間の方にやってきて私たちの姿を確認すると、安心したように笑顔を見せる。
「やっぱりね。花音も一緒だったか」
「うん。校門前で待っていたからね」
楓は、自然な笑みを浮かべてそう返していた。
お姉ちゃんの前でしかしないような、安心しきったその表情。
私に対しては、絶対にしない表情だ。
お姉ちゃんの方も、楓の顔を見て安堵の笑みを浮かべている。
そんな2人を見ていると、何かの赤い糸で繋がってるとしか思えない。
「ずいぶんと遅かったけど、なにかあったの?」
「うん。ちょっとね。食材がなかったのを思い出したから、買い出しに行っていたのよ」
「そうなんだ。てっきり、ナンパにでもあったんじゃないかと思って、心配していたところだったよ」
「へぇ~。弟くんが、私のことを心配ねぇ」
お姉ちゃんは、なにを思ったのか意味深な笑みを浮かべる。
それを見た楓は思案げな表情で首を傾げ、お姉ちゃんを見ていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
「ううん。別に何もないよ。ただ、最近ちょっとね」
「ちょっと、か……。なんか一緒に帰れなくてごめん……。今日は、なんとなく花音と一緒に帰っちゃって……」
「ごめんね、お姉ちゃん。隆兄ちゃんがいなかったから、まっすぐ楓のいる男子校に行っちゃったんだ」
「そうなんだ。隆一さんが女子校にいたのって、そういうことだったのか。なるほど──」
なにやら納得したかのように、そう言うお姉ちゃん。
隆兄ちゃんは、女子校の校門前にいたのか。
全然、気づかなかったな。
いたとしても、一緒に帰ってくれたかどうか疑問だけど。
「兄貴が、女子校にいたの?」
楓は、驚いた様子だった。
そんな楓を見ても、お姉ちゃんは落ち着いた様子である。
「うん。なぜかはわからないけどね」
「ひょっとして、私のことを待っていた感じ?」
私は、不安そうな表情でそう訊いてみる。
だけど、お姉ちゃんの思案げな様子を見て、そうではないということだけはわかった。
「どうだろう。よくわからないけど、あれは花音のことを待っていたというより、私のことを待っていた感じだったよ」
「それで、一緒に帰ってきたの?」
「ううん。運良く古賀さんが声をかけてきたから、古賀さんと一緒に帰ってきちゃった感じかな」
「そうなんだ」
楓は、安堵の息を吐く。
隆兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒に帰るのって、楓にとっては不安なのかな。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。一緒に帰ったって言ったって途中までだから。古賀さんとは帰り道が違うから、買い物のためにスーパーに立ち寄ったところで別れたわよ」
「………」
何も言わないのが、かえって緊張する。
お姉ちゃんは、嘘を言うような人じゃない。
「もしかして、怪しんでる?」
「いや。そういうわけじゃ……。ただ、ちょっと──」
「なによ? 弟くんらしくないわね。言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさいよ」
「う~ん……。それは……」
楓にも、言いにくい事があるみたいだ。
やっぱり、いくら兄弟間のこととはいえ、聞きにくいことはあるみたい。
ましてや、お姉ちゃんのことに関しては──
「言いにくい事なら、無理して言わなくてもいいけど。私の気持ちだけは、弟くんには理解してほしいな」
「う、うん。それは、よくわかっているつもりだよ」
「それなら、いいんだ。弟くんは、私以外の女の子を好きになっちゃいけないんだから!」
お姉ちゃんは、きっぱりとそう言った。
楓は、なにやら微妙な表情になっていたけど、私は見なかったことにしておこう。
今まで隆兄ちゃんのことばかり見てきたから、楓の好きなものや趣味については、まったく知らない。
「ねぇ、楓」
「ん?」
「楓は、お姉ちゃんのことをどう思ってる? やっぱり好きなの?」
そんなことを聞かれたら当然の答えが帰ってきそうな質問をしてしまうのは、私も私なりに楓のことが気になっているからだと思う。
「突然どうしたの? 花音がそんなことを聞くなんて、めずらしいね」
「いいから答えなさいよ。どうなの? 好きなの?」
「ずいぶんと単刀直入だね。花音には、もうわかってるんじゃないの?」
「それは……。楓の口から、直接聞くまでは……」
諦めが悪いと言われても、そんなことを訊いてしまうあたり、私も相当な意地悪な人間だな。
楓は、すっきりしたような笑みを浮かべて言った。
「香奈姉ちゃんのことは大好きだよ。この想いだけは、誰にも譲れないかな」
「そ、そうなんだ。それじゃ、私のことは?」
わかりきってはいたものの、一応訊いてみる。
楓にとって、私はどんな存在なんだろう。
もしかしたら──
「大事な妹って感じかな。それ以上の感情は、さすがに……」
「そうなんだ。大事な妹、か……。まぁ、そうだよね」
私は、無理矢理に苦い笑みを浮かべていた。
楓とはそんな関係になれないのは、なんとなくわかっていたことだけど、彼の口からはっきりと言われてしまったら、それはそれで傷ついてしまう。
やっぱり隆兄ちゃんしかいないのかな。私のことを理解してくれるのって……。
でも隆兄ちゃんは、まだお姉ちゃんのことが……。
「それにしても遅いね? 何してるんだろう。お姉ちゃんは──」
「たぶん買い物じゃないかな」
「買い物って……。制服姿のままで?」
「香奈姉ちゃんのことだから、わりと普通かと──」
楓は、それが当たり前のことのように言う。
たしかにお姉ちゃんは、どこか家庭的な一面がある。
「わりと普通か……。お姉ちゃんは、いつもそんなことをしてるんだ」
「家に食材が無い時とかは、大抵そうしてるかな。僕も人のことは言えないから、何も言わないけど……」
「なるほど」
学校帰りに買い物って、校則で許されていただろうか。
そんな細かいことは、さておいて。
ホントに楓もお姉ちゃんも、そういうところは家庭的で共通点があるな。
「──ただいま」
その声は、玄関の方から聞こえてきた。
噂をすれば…というやつだ。
楓の家だというのに、わざわざそう言って入ってくるあたり、お姉ちゃんも楓のことを気にしているんだろう。
お姉ちゃんは、そのまま居間の方にやってきて私たちの姿を確認すると、安心したように笑顔を見せる。
「やっぱりね。花音も一緒だったか」
「うん。校門前で待っていたからね」
楓は、自然な笑みを浮かべてそう返していた。
お姉ちゃんの前でしかしないような、安心しきったその表情。
私に対しては、絶対にしない表情だ。
お姉ちゃんの方も、楓の顔を見て安堵の笑みを浮かべている。
そんな2人を見ていると、何かの赤い糸で繋がってるとしか思えない。
「ずいぶんと遅かったけど、なにかあったの?」
「うん。ちょっとね。食材がなかったのを思い出したから、買い出しに行っていたのよ」
「そうなんだ。てっきり、ナンパにでもあったんじゃないかと思って、心配していたところだったよ」
「へぇ~。弟くんが、私のことを心配ねぇ」
お姉ちゃんは、なにを思ったのか意味深な笑みを浮かべる。
それを見た楓は思案げな表情で首を傾げ、お姉ちゃんを見ていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
「ううん。別に何もないよ。ただ、最近ちょっとね」
「ちょっと、か……。なんか一緒に帰れなくてごめん……。今日は、なんとなく花音と一緒に帰っちゃって……」
「ごめんね、お姉ちゃん。隆兄ちゃんがいなかったから、まっすぐ楓のいる男子校に行っちゃったんだ」
「そうなんだ。隆一さんが女子校にいたのって、そういうことだったのか。なるほど──」
なにやら納得したかのように、そう言うお姉ちゃん。
隆兄ちゃんは、女子校の校門前にいたのか。
全然、気づかなかったな。
いたとしても、一緒に帰ってくれたかどうか疑問だけど。
「兄貴が、女子校にいたの?」
楓は、驚いた様子だった。
そんな楓を見ても、お姉ちゃんは落ち着いた様子である。
「うん。なぜかはわからないけどね」
「ひょっとして、私のことを待っていた感じ?」
私は、不安そうな表情でそう訊いてみる。
だけど、お姉ちゃんの思案げな様子を見て、そうではないということだけはわかった。
「どうだろう。よくわからないけど、あれは花音のことを待っていたというより、私のことを待っていた感じだったよ」
「それで、一緒に帰ってきたの?」
「ううん。運良く古賀さんが声をかけてきたから、古賀さんと一緒に帰ってきちゃった感じかな」
「そうなんだ」
楓は、安堵の息を吐く。
隆兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒に帰るのって、楓にとっては不安なのかな。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。一緒に帰ったって言ったって途中までだから。古賀さんとは帰り道が違うから、買い物のためにスーパーに立ち寄ったところで別れたわよ」
「………」
何も言わないのが、かえって緊張する。
お姉ちゃんは、嘘を言うような人じゃない。
「もしかして、怪しんでる?」
「いや。そういうわけじゃ……。ただ、ちょっと──」
「なによ? 弟くんらしくないわね。言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさいよ」
「う~ん……。それは……」
楓にも、言いにくい事があるみたいだ。
やっぱり、いくら兄弟間のこととはいえ、聞きにくいことはあるみたい。
ましてや、お姉ちゃんのことに関しては──
「言いにくい事なら、無理して言わなくてもいいけど。私の気持ちだけは、弟くんには理解してほしいな」
「う、うん。それは、よくわかっているつもりだよ」
「それなら、いいんだ。弟くんは、私以外の女の子を好きになっちゃいけないんだから!」
お姉ちゃんは、きっぱりとそう言った。
楓は、なにやら微妙な表情になっていたけど、私は見なかったことにしておこう。
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