僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第二十九話

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いつもどおりに洋服を着て、スカートの端をチェックする。
服装に乱れはない。
──よし。大丈夫だ。
楓との待ち合わせの時間には十分に間に合う。

「あとは何もなければ予定通りにいけるかな」

おっと。
思っていたことが口をついて出てしまった。
楓とのデートがあまりにも嬉しいから、舞い上がってしまったようだ。

「どこか出掛けるの? お姉ちゃん」

それを聞きつけた花音が、思案げな表情でそう訊いてくる。
なんでもないって言える雰囲気ではない。

「あー、うん。楓とね。ちょっとお出掛けかな」
「なるほど。デートか。ふむふむ……」

何を思ったかは知らないが、邪魔をしてこなければ無害だろう。
こちらも、どこへ行くかなどは言っていないのだから。
せっかくの楓とのデートなんだから、色んなところへ行きたいし。

「ついてこないでよ」

私は、一応花音に注意する。
花音は、興味なさげに答えた。

「行かないよ。お姉ちゃんと楓の邪魔はしたくないし。行くなら個人的に楓を誘うし」
「そう」

それって、花音も楓に興味があるってことなの?
色々聞きたい気もしたが、ここではやめておく。個人的なことだしね。
とりあえず、楓との約束の時間があるので、家を出よう。

「とにかく。ちょっと出掛けてくるね」
「いってらっしゃい」

花音にそう言われるのは癪だが、私は家を後にした。
なんか嫌な予感がするな。
変なことをしなきゃいいけど……。

待ち合わせ場所は、ショッピングモールからちょっと離れた先にある大きな公園だ。
少し早めに来たのだが、やはり男の人たちの視線が気になってしまう。
声をかけられたらどうしよう。
いや。はっきりと断ればいいのだが、なかには強引な人もいるから心配だ。
楓がやってくるまで我慢しなきゃ。
しばらく待っていると、楓がやってきた。

「香奈姉ちゃん。お待たせ」
「うん」

たいして待ってない。
時間どおりだ。
約束した時間よりも30分も前にやってきた私が悪い。
ちなみに、楓は約束した時間の10分前にやってきていたから問題はない。
時間にはルーズなタイプじゃないのは、私としては合格点だ。

「それじゃ、行こっか?」
「うん」

楓に促されて私は返事をする。
そして、すぐにカップルである証拠をまわりに見せつける。
楓の腕に手を回したのだ。
まわりにいた男の人たちは、残念そうに私から視線を外し、私のことを諦めていた。
なかには

「なんであんな奴なんかを……」

と、嘆いていた人もいるくらいだった。
裸の関係っていうのは恐ろしいなって、今さらながらに思う。
まだ楓とのスキンシップに満足できてない私がいるのだから。

「今日は、たしかブティックに行くんだっけ?」
「そうだよ。弟くんにも、ぜひ見てほしいなって思って」
「香奈姉ちゃんは、何を着ても似合うから、もう見慣れてしまったかな」
「それって、見る価値もないってこと?」
「そういうわけじゃなくて……。綺麗だなっていう意味で──」
「そっか。ありがと」

まだ店についてもいないのに、なぜかお礼を言ってしまう。
楓はすごいなって思ってしまった。
これから、楓のことをどんどん好きになっていくんだと思ったら、ドキドキしてしまう。
私も、楓のことをちゃんと考えられるくらいの女の子にならなくちゃ。嫌われないように……。
ブティックまで、まだ距離がある。
楓は、どんな話題が好きなんだろう。
やっぱりバンドのことが気になるのかな。

「弟くんは、ほかのバンドには興味があったりするの?」
「いや、特にはないかな。香奈姉ちゃんのバンドで満足してるよ」
「ベース担当はなかなかいないからね。私からしたら貴重な存在かも」
「そうなんだ。なんか嬉しいな」

楓は、嬉しそうな表情でそう言っていた。
そんな顔を見たら、私の方が意識してしまうかも。

「と、とりあえず、弟くんは私たちにとても愛されているの。そこはちゃんと理解してほしいの」

だからこそ、抜けることは絶対に許さない。
楓にも、そこだけはわかってほしい。

「それは、前に奈緒さんにも言われたな」
「やっぱり奈緒ちゃんに言われたか。だったら、なおさら抜けられないよね?」
「うん。最後までやり通す覚悟ができたっていうか。それしかないっていうか」
「そうだよね」

奈緒ちゃんたちは、そんなことを楓に言っていたみたいだ。
だったら、私も覚悟を決めないと。

「弟くんには、最後まで私たちに付き合ってもらうんだからね」

私は、楓にそんなことを言っていた。
奈緒ちゃんとのこともあっての相乗効果もある。
私も覚悟を決めて楓と向き合わないといけないし。
私は、楓の腕をぎゅっと掴み、一緒に歩きだす。
ちょっと強引だったかな。

「ちょっ。香奈姉ちゃん!」

楓が何かを言いかけたが、あえては聞かないでおく。
まわりの男の人たちも、これで声をかけにくくなるだろうから。
実際、声をかけるタイミングを伺っていた人もいただろうし、ちょうどいい。

「これをされて困る人はいないでしょ?」
「たしかに困らないけど……。ちょっと恥ずかしいかな」
「私と一緒に歩いているんだから、胸を張りなさい。弟くんは、しっかりした男性なんだから──」
「うん。わかった」

楓は、ちょっと緊張しながらもしっかりと歩きだした。
我ながら、恥ずかしいことを言ったかもしれないと思う私だが、引く気はない。
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