最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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英雄達の肖像編

強さの弱点

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荒野、雨足が強くなる中でメリル・ヴォルヴエッジは目の前に立つ少年を凝視する。

数メートル先に立つガイ・ガラードと名乗った少年。
後方には大きな杖を構える赤髪の少女の姿もあった。

メリルは右手に持つレイピアを前に構える。
鞘は左手に持ったままだ。

ガイという少年は波動値65万の氷壁を突破してくるほどの強さを持っている。
だが、その波動数値はたった"7"だという。

この矛盾はメリルの思考をかき乱すものとなっているが、悩んでいる暇などなかった。

とにかく目の前の敵を早急に処理しなければ……と焦る気持ちがメリルを即座に動かした。

「"氷結潜光フリージング・ダイバー"」

メリルは一歩踏み込むと右手に構えたレイピアを擦り付けるように地面を斬る。
下から上への切り上げる攻撃によって氷の線がガイへ向かって走った。

それはガイの足元を通り過ぎると、後方に立つメイアへと走った。

「メイア!!」

ガイは瞬時に気づく。
この攻撃の標的は自分ではないと。

「先に後衛を倒す」

「クソ!!瞬炎絶走!!」

高速で地面を走る氷のはメイアの足元へと到達する。

「"氷結刃フリージング・ブレイド"」

その言葉と同時に地面の氷が剣に形状に変え、メイア目掛けて斜めに突き上がる。
メイアの心臓目掛けて突き出した氷剣だったが、一瞬でその目の前に到達したガイはダガーの刃でガードした。

「速いわね。でも、どれだけ耐えられるかしら?」

メリルの攻撃は始まったばかりだった。
地面を切り上げる斬撃を数回繰り返すと、その度に氷が走り、ガイに到達後に氷剣となって突き上がる。

ガイは炎を纏って防ぐが、そのたびに手に持ったダガーが歪んでいく。

「どういう原理だかわからないけど、あなたの波動値は私より高い。それは認める。だけど、それは弱点でもあるわね」

「クソ……!!」

メリルは簡単にガイの力を認めた。
その上で弱点を思考していたのだ。
それは最初の攻撃で使った黒焦げで歪んだダガーを見れば一目瞭然だった。

「波動量が多すぎて武具が耐えきれてないわね。このまま"フリージングダイバー"だけで制圧できる」

ニヤリと笑うメリルは斬撃を繰り返した。
もう氷剣が突き上がるまで時間差が無くなり、ガイへと次々に襲いかかる。

一本一本を炎を纏ったダガーで破壊していくが、限界が近かった。

「メイア、下がれ!!」

「ガイ……!!」

メイアは目を閉じて杖を前へ構える。
前方にはガイが立ち、メリルの姿はよく見えなかったが、それでもよかった。
ある一つのイメージを具現化させるために集中する。

「波動は必ず……イメージ通りになる」

「メイア!!」

メイアの杖は炎を纏い、そこから2本の曲線が放たれた。
炎の線はガイをかわし、高速でメリルへと向かう。
それは火球でなく、炎の弓矢のようだった。

「その若さで球体以外も作れるとは……」

通常、波動の属性変換での形は決めてしまえば、その一つだけになることは多い。
人間の脳のキャパシティの問題で、形のイメージを複数作り、それぞれを具現化させることは容易ではないことだ。

メリルは、この少女の場合"火球を前に飛ばす"という属性変換の他に、さらに"曲がる炎の矢を放つ"という2つの属性変換をおこなったことに少し驚いた。

貴族でもない平民の冒険者が2つ以上の形状変化をさせるのは見たことがなかったのだ。

「でも、さっきも言ったように、私の氷壁は崩せないわよ」

メリルは地面を切り裂く行動をやめ、右手に持つレイピアを一気に地面に突き刺した。

「"氷結壁フリージング・ウォール"」

メリルの前方に氷の壁が作られる。
それは曲がる炎の矢に対応するようにメリルの体を一周して覆った。

着弾する炎の矢はメリルの壁を貫くことはできなかった。

「無駄なことを……ん?なに?」

だが、正面から凄まじい熱量を感じ、メリルは一瞬にして表情をこわばらせた。

「"サラマンダー"!!」

高熱が氷壁を全て溶かす。
氷壁が溶けたことで水蒸気が周囲に巻き上がり、視界が遮られるが、真正面、空中に今まで感じたことのない殺気を感じる。

「"瞬炎絶走"!!」

「速いわね……」

ガイのジャンプ攻撃。
メリルは地面に剣を突き刺したままだ。
勝利を確信したガイは逆手で持ったダガーをメリルの左肩目掛けて振り下ろす。

だが瞬間、メリルは左手に逆手持ちした鞘を前に掲げてガイのダガーをガードする。
二つがぶつかった勢いで風圧が周囲に広がった。

「ダガーはもうそれしかないと見たわ。これが最後の攻撃で間違いない」

メリルの氷剣を防ぐのに一本。
サラマンダーで一本。
現在、持っているダガーで最後だった。

「確かにあなたの炎は厄介だわ。でも、それは武具があることが前提で成り立ってる。波動を使用する度に持っている武具が次々に壊れていくなんて。欠陥だらけね」

メリルはそう言い放つと、左手の鞘を振り抜いて体を一回転させる。
ガイは後方へ吹き飛ばされた。
その際、地面に突き刺さったレイピアを引き抜き、回転しながら地面を切り上げた。

「"氷結刃フリージング・ブレイド"」

ガイはレイピアの斬撃間合い外だ。
だが、メリルの目的は斬撃による追撃ではない。

氷剣は吹き飛ばされたガイを狙って、斜めに長く突き上がる。
心臓付近を貫くと、ガイの体は炎へと変わり消える。

「!!」

メリルの判断は早かった。
後ろを振り返ることもせず、左手に逆手持ちした鞘を勢いよく背中のほうへ突き出した。

「がはぁ!!」

「殺気が強すぎる。移動が一瞬だったとしても、これだと行動が筒抜けよ」

ガイはメリルの背後へと高速移動していた。
だが、メリルが持つ鞘の先端がガイの腹を直撃していたのだ。

メリルは、そのまま回転し、鞘をガイの首筋に当てて吹き飛ばす。
ガイは数十メートル地面を転がった。

「ガイ!!」

悲痛に叫ぶメイアは大きな杖を前に構える。
しかし、一瞬でメイアの周りを氷の壁が覆った。
完全に閉じ込められる形となってしまった。

「これで終了ね。男の方は首だけ刎ねて、女の方は凍らせておきましょうか」

無表情でそう言い放つメリル。
ガイが吹き飛ばされた方向へとゆっくりと歩く。

「なんだかわからないけど、あなたはここで殺しておかなければならない……そんな気がする」

「クソ……」

地面に手をつき、なんとか立とうとするガイだが、体に全く力が入らなかった。
倒れるガイの目の前まで来たメリルは右手に持ったレイピアを振り上げる。

「小汚い平民風情が高貴なる者に逆らった罰よ」

そう言ってメリルがレイピアを振ろうとした瞬間だった。
周囲の状況に違和感を覚える。

「なに?この気配は……それに、雨が……」

雨粒が空中で停止し、ブルブルと震えていた。

この状況にメリルは息を呑んだ。
それは感じたことのある気配。
自分が絶対に敵わないと思った存在の気配だ。
いや、それが近づいて来るたびに、その気配は強くなっていく。

その存在はゆっくりとメリルに近づいて来る。

「メリル・ヴォルヴエッジ……あたしを見なさい」

正面に人影があった。
その気配はメリルが憧れ、恐れたゼニア・スペルシオを完全に超越していた。

「お前は……」

それ以上、言葉を発することができなかった。
目の前にいたのは自分が蔑むべき存在。
貴族でありながら出来損ないの低波動。

白いキャミソールにホットパンツ、ブラウンのブーツを履いた女性。

ローラ・スペルシオ。

両腕に装着された竜を模ったガンドレットに付いた波動石が蒼く光り輝く。
さらに、ローラのショートカットの青髪は強く発光していた。
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