最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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ディセプション・メモリー編

砂漠の雨姫(5)

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ゾルア・ガウスは酒を飲み干すと唖然とするクロード、フィオナ、ゼクスに構うことなく酒場を出た。

早朝の町は茶色の大地が太陽を浴びて眩しいほどだ。
強く風が吹くと砂埃が宙を舞っていた。

この町を一刻も早く出て北へ向かうつもりだったが、今はどうだっていい。
そんなことよりもゾルアの脳裏をよぎるのは昨日戦った"青髪の女性"だ。
彼女のことを考える度に胸の高鳴りを感じる。
妙な感覚に口元が緩んで笑みを浮かべた。

「あれほどの強者と出会うのは幸運と言うべきだな」

現状、パーティの中でも戦って自分よりも上手うわてなのは"クロード"と"グレイグ"のみ。
特に"グレイグ"のワイルドスキルは相性が最悪で戦いにすらならない。

そこに突破口を見つけるため北へ赴き強い魔物と戦うことを最優先と考えていた。

「それより、まずは武具だな」

武具は昨日の戦いで壊れてしまった。
ゾルアは様々な種類の武具を扱うが、結局は波動を使うとすぐに壊れてしまうため買い替えが大変である。
最後は小型のダガーに落ち着いた。
持ち運びやすいし、小回りも効くためだ。


ゾルアは1人、黒いコートを風に靡かせながら町を歩く。
向かう先は武具屋だった。

少し歩くと家と家の間の暗がりに人の気配を感じた。
何気なく視線を送った先に長い青髪の女性が背を向けて立っている。

「あの女……」

それは間違いなく昨日戦った相手だった。
その向かいには誰かもう1人いるようだ。

ゾルアは身を引いて覗く。
いつもなら絶対にこんなことはしないが彼女のことが気になったのだ。

青髪の女性と少女との会話の声が聞こえる。

「またなの?」

「はい。これを」

「まさか……本当に、あなたって何者?」

「それは言えません。あと、"これで最後"ですので」

「最後?」

「ええ。これ以上、あなたの前には現れないです」

「それは助かるわね。気味が悪かったのよ」

「それは申し訳ありませんでした」

「別に頭を下げなくてもいいわ。この"壊れない武具"もあなたがいなかったら作れなかったから」

「恐縮です」

「でも彼らに武具のことを教えてよかったの?」

「いいんですよ。そうしないと"アレ"を倒せませんから」

「誰のこと?」

「"死神"です」

青髪の女性は眉を顰めた。
少女は構う事なく彼女に手紙のようなものを渡す。
そしてペコリとお辞儀をして暗がりから出てきた。
少女はゾルアの横を通り過ぎてパタパタと走り去っていった。

再びゾルアは青髪の女性の方を見ると、彼女は少女から受け取った手紙をまじまじと見つめているようだ。

その横顔は驚愕したかのような表情だった。

________________

その夜、ゾルアは再び酒場へと向かった。
朝の出来事は気になったが自分には関係ないことだろうと思った。

夜となれば酒場は賑わっているだろうと思ったが、なぜか全く客がいない。
ただ1人だけ青髪の女性が店のど真ん中にある4人掛けのテーブル席で飲んでいるだけだった。

ゾルアは構わずカウンター席へ向かった。
酒場の入り口に背を向けている青髪の女性を通り過ぎる。

「あら、生きてたの。よかったわ」

不意に声をかけられて立ち止まるゾルア。
今度は彼女に背を向ける形だが振り向くことなく口を開く。

「なぜ、お前のように強いヤツがこんなクソみたいな町にいる?」

「知ってどうするの?」

「別に。話したくなきゃいいさ」

そう言ってゾルアはカウンター席に向かうと、店主に酒を頼んでから座る。
するとすぐに青髪の女性はゾルアの背に言った。

「私はだから」

「どういう意味だ?」

ゾルアは店主から酒の入ったグラスを受け取りながら聞いた。
やはり背を向けたままだ。

「私の力は魔物相手には無力なのよ。それに能力的に他人とチームを組むことができないから」

「無力だと?波動を発動して他人の技を使って魔物を倒したらいい」

「それができれば最初からやってるわ。私の能力には条件があるのよ」

「そうかい。まぁ確かに魔物と戦えないうえに他人の波動も封印しちまうんじゃ。役立たずだろうな」

「そうよ。私は役立たずだったの。だからここにいるのよ」

青髪の女性は全くトーンを変えずに言った。
そこに怒りや悲しみなどの感情はない。
もう全てを受けて入れているかのようだ。

「だが一対一の対人では最強だろう。ずっと対策を考えているが全く思い浮ばまん」

「対策なんて簡単よ」

「なんだと?」

「波動を使わなければいい」

ゾルアはフッと吹き出すように笑う。
青髪の女性は眉を顰めた。

「何かおかしいこと言ったかしら?」

「いや……それなら馬乗りになって殴り続けたら俺の勝ちなのか?」

「それでもいいけど」

やはり彼女の言葉からは何か諦めのようなものが感じられた。
確かに波動を使わずに戦えば"男の力"で圧倒できる可能性がある。

ゾルアはグラスに入った酒を一気に飲み干すとカウンターに数枚のコインを置く。
そして勢いよく立ち上がると女性が座るテーブルへと向かった。

青髪の女性を睨みつけるように見たゾルア。

「明日、再戦する。もちろん波動は使うからな。アンタも本気でやってくれ」

「誰がやると言ったのよ」

「何か条件が必要か?欲しいものがあるなら、くれてやるよ」

「そう……なら……」

「なんだ?」

「あなた達のパーティ全員と会ってみたいわ。昨日いた四人意外にもいるのでしょ?」

「なんでだよ」

「単なる興味よ。もし会わせてくれるなら何度だって戦ってあげるわ」

「いいだろう」

困惑しながらもゾルアはこの条件を呑んだ。
勝手だとも思ったが、自分が楽しめるならなんでも利用した方がいい。
フィオナあたりが怒りそうだが、クロードがどうにか治めてくれるだろう。

ゾルアは深く考えることなく満足気に酒場を出て行った。

青髪の女性はマントの中にあった手紙を取り出して文章を読む。

"あなたが戦った男たちのパーティの中に死神がいる。死神を見つけなさい。そうすればあなたの願いは叶う"

少女はこれが最後だと言った。
受け取った手紙は全部で"四通"あったが、それは未来を予知するような内容で、その全てが本当になった。

「ようやく……私はこれで……」

今までの事があっての期待感。
しかし同時に、この手紙の内容には少しだけ違和感があった。

その違和感が掴めないまま、青髪のアクエリアはクロードが率いるパーティの中にいる"死神"を見つけることになる。
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