大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫

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6 次元迷宮

41 切り札

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「嘘……でしょ……」

「おい、倒せてないじゃねえかよ……」

 状況は思ったよりもよろしくないようだ。このダンジョン内で使えるメルの最大火力の魔法でもダメージを与えられないとなると、いよいよ打つ手が無い。
 いや待て、俺には即死付与がある。あの魔物のレベルが俺以下であれば即死付与でこの場を収めることが出来る。経験値は得られなくなってしまうが、このまま倒せないよりかはマシだろう。

 俺はレベルを確認する魔法を使い魔物のレベルを確認する。しかしその数値に目を疑った。レベルが1なのだ。そんなわけはないと何度も確認するが、何度見ても数値が1から変わることは無かった。

「どうしたんだ……?」

「あの魔物のレベルを確認したんだが、どうやらレベル1のようなんだ……」

「そんなはずは無いだろう!? 本当にレベル1ならあの威力の魔法を受けて立っていられるはずが無い!」

 俺だってそう思う。でも実際に見えたレベルは確かに1だったんだ。推測だが、ここの魔物たちはレベルとは違う要素であの驚異的な硬さを保っている。そうなって来るともはや何が通用するのかもわからない。
 ただ、レベルが1だと言うのなら即死付与の良いカモだ。

 俺は短刀に即死魔法をエンチャントして魔物へと投げつける。その短刀は魔物に命中した。したのだが、即死は発動しなかった。何が起こったのかわからなかった。レベルが俺よりも低いため即死の発動は確実のはずなのだ。その後も短刀を投げ続けたが、何度当てても即死は発動しない。訳が分からないことだらけだった。

「何をしているんだお前は? あの魔物にそんな短刀が効くと思っているのか?」

「ただの短刀じゃない。即死魔法を付与しているんだ」

「即死魔法だって? あんなもの、相手のレベルが自分より低くないと使えないお荷物魔法だろう」

「わからないのかバルド。サザンは俺たちが手も足も出せなかった魔人を倒した男だ。当然レベルだって高いはずだ」

「そう言われればそうか……」

「でも駄目みたいだ。何故かあの魔物には即死魔法が発動していない」

「発動はしている」

 急に割り込んできたのはルネアだった。

「……それはどういう意味だ?」

「さっきから短刀が当たるたびに即死魔法の発動はしている。でも即死自体が効いていない。たぶんあの魔物は生き物では無い」

「何だって?」

 生き物では無い……いや、そんなことはあり得ない。魔物だって生き物であるはずだ。
 しかし魔法について詳しいエルフで、それも勇者パーティの魔術師の言葉であるなら信じるしか無いだろう。即死魔法が発動していてなおその効果が無いのなら、最初から生きていないか死んでいながら動いているかのどちらかだ。
 どちらであったとしても即死魔法が機能しないことに変わりはない。

「どうやらサザンの切り札も尽きてしまったようだな」

「助けに来ておいてこんなことになってしまうとは、情けない限りだ」

 物理攻撃も魔法攻撃も即死も効かないのでは打つ手が無い。こうなれば最後の手段を取るしか無いのかもしれない。
 ……龍転身だ。
 ここまで何もかも通用しないのであればもはや他に手は無い。しかしこんなダンジョンの奥深くで龍転身の力を使えば間違いなくここは崩壊する。俺は何とかなっても皆は生き埋めだ。それでは意味が無い。

 せめて規模を小さくして龍転身を使えれば別なのだが……。
 そう考えた時、このダンジョンに入ったばかりの時に見た本の内容を思い出した。片腕が武器になっている少年。それと同じように俺も部位ごとに龍転身できないだろうか。

 ……試してみる価値はある。このままではジリ貧であることに変わりはないのだから、もう一か八かに賭けるしか無い。

「ぐぁあぁぁっぁあ!!」

「急にどうした!? あの魔物以外にも何かいるのか!?」

 ルカは急に苦しみだした俺に驚いたようだ。
 そんなことを言われても、今の俺は苦痛を耐えることで精いっぱいであり受け答えが出来る状態では無かった。

 体の一部分、今回は右腕のみを龍転身させるために体中の魔力を右腕に集中させる。龍転身を行う際には全身から魔力が溢れるような感覚があるため、逆説的に一部分に魔力を凝縮させればそこだけを龍化出来ると考えたのだ。
 そしてその考えは正しかった。
 苦痛が収まったころには肩の辺りから右腕全体が大きくなっており、硬い鱗や鋭い爪などが見て取れた。ぶっつけ本番ではあったようだが、何とか成功したようだ。

「な、なんだそれは!? 呪いの類か!?」

「いや、俺のもう一つの切り札だ。龍転身という魔法を使って、俺は龍になることが出来るんだ」
 
「そんなことが……でも実際にこうなっている以上はそうなんだろうな」

「たぶん本当。彼の右腕が放つ魔力量は明らかに常軌を逸している。幻覚とかの類でも無いのは確実」

 勇者パーティの魔術師にもお墨付きをもらった。改めて完全に成功したと言って良いだろう。
 後はこの右腕であの魔物を倒すことさえ出来れば全部解決なんだが。

 俺は大きな右腕で魔物を掴み、握りつぶそうとする。抵抗する魔物だが、徐々に全身にひびが入っていった。

「効いている……効いているぞ!」

「うぉぉぉ潰れろぉぉ!!」

 全力で魔物を握りつぶす。あれほど硬かった魔物は鈍い音を立てながら圧縮され、じきに動かなくなったのだった。

「倒した……のか?」

「どうやらそうみたいだな」

「待て、何か様子がおかしい!」

 緊張を解いたのもつかの間、魔物を中心に雷が発生し始めた。魔物を掴んだままの俺の右腕はそのまま雷に包まれた。
 とは言え、雷耐性を付与している俺にはほとんど効果は無かった。改めて俺の能力はぶっ飛んでいると思うよ。

「最後の足掻きか?」

「たぶん違う。既に魔力は霧散していたから、この魔物の意思ではないと思う」

「だとしたら何が起こったんだ……?」

 俺は右腕をゆっくりと離す。ルネアの言葉が正しいのなら再度動き出すことも無いだろう。
 魔物は強い力で潰されたことにより一部分がちぎれていた。それだけなら不思議なことは無い。問題なのはそこから見える中身だった。先ほどルネアがこの魔物は生きていないと言っていたが、その言葉もこの中身を見れば納得できる。

 この魔物の中には筋肉や内臓と言った生物なら皆が持っているようなものが一切入っていなかったのだ。
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