ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第二章

第七話 ピグレット宣言

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~リュシアン視点~



 遡ること数十分前。

「たく、人がせっかく心配して言ってやったのに、あの態度なんだよ」

 俺はテレーゼとケンカ別れをしたあと、一人でハンター寮に向かっていた。

 まぁ、今日一日の付き合いだったからよしとしよう。明日以降は二度と関わり合うことはないだろうからな。

 心の中で呟いていると、俺の足は歩幅が短くなり、次第に立ち止まる。

 俺一人で帰ってきたら、エレーヌさんはなんて思うのだろう。

 彼女から受けた依頼は、今日一日テレーゼのサポートをすること。無事にギルドマスターに依頼完了を報告するまで、依頼は継続し続けている。

 ここで帰ったら依頼失敗扱いになってしまうじゃないか。そんなの、俺自身が許せない。

「仕方がない。不本意だけどここは俺が大人になって、あのジャジャ馬歌姫を連れ帰るとするか」

 彼女と一緒になって帰るには、俺が上手く言葉を選んで彼女を説得しないといけない。

 難しいけど、ここはやるしかないよな。
 歩いて来た道を引き返し、中央広場に戻る。

 小屋の前に来ると、俺はドアノブに手をかけた。

「あれ? 空いている」

 試しに回してみると、鍵が掛かっておらず、扉は簡単に開く。

 小屋の中を覗いてみると、テレーゼの姿はどこにも見当たらなかった。

「いない」

 ハンターギルドや寮に戻るには、俺が来た道を通らないといけない。なのですれ違いになることは決してない。

「どこかに寄り道でもしているのか?」

 中央広場周辺を探してみるも、どこにも歌姫の姿は見当たらなかった。

「いないな。中央広場にはいないのか?」

 一度小屋の前に戻ってくると、何かを踏んだ。拾ってみると、それは黄色いリボンだった。

 このリボン、テレーゼの衣装に付いていたものじゃないか。

 どうしてリボンが落ちているんだ?

 疑問に思いながらも黄色いリボンを見ていると、ピンクの液体が付いていることに気づいた。

「これはマーキング玉の中に入っている塗料じゃないか」

 マーキング玉の塗料は、夜間でも討伐対象を逃さないように発光する液体を使ってある。

 周辺を見てみると、地面に一定の間隔で塗料が落ちていることに気付いた。

 もしかして、テレーゼに何かあったのか!

 俺は地面に落ちている塗料の後を追う。

 しばらく歩くと町の外れにある家に辿り着いた。

「ここにテレーゼがいるのか」

 なるべく足音を立てないように気をつけつつ、家に近づく。そして窓から中の様子を伺った。

 だが、目に映る光景を見た瞬間、俺は大きくを目を見開く。

 テレーゼが縄で高速され、半裸の男が彼女に迫っていた。

 鼓動が激しくなる中、居ても立っても居られなかった俺は、咄嗟に太刀を抜くと扉を真っ二つにする。

「その子から離れろ! ゲス野郎!」

 声を張り上げると、半裸の男は振り返る。

「お、お前! 帰ったんじゃなかったのか! それにどうしてここが分かった!」

「まだ任務中だったのを思い出したから戻ってきた。それとここに来られたのは、テレーゼがハンターにしか分からないメッセージを残してくれていたからだ」

 まぁ、格好よく言ってみたけど、本当はマーキング玉の塗料を追って来ただけなんだけどな。

「クッ、か、勝手に人の家に入って来るなよ! 不法侵入だぞ!」

「拉致、監禁しているお前にだけは言われたくない」

 正論を言うと、男は顔を歪める。

「ま、まぁいいさ。お前のことは知っている。ハンターである以上、お前は俺に危害を加えることができない。し、死ね!」

 テーブルの上に置いてあったナイフを半裸の男が掴む。そして刃先を俺に向け、突進してきた。

 まるでブルボーアの突進だな。そんな攻撃、ハンターの俺には簡単に避けられる。

 横に避けて攻撃を躱すと、俺は鞘を抜いて男の手首に叩きつける。

「ガアッ!」

 腕に痛みを覚えた半裸の男は、そのままナイフを落とす。

 やつは直ぐに拾おうとしたが、それよりも早く俺は男の背後から手刀を放つ。

「グエッ!」

 首筋に攻撃を受けた半裸の男はそのまま床に倒れ、起き上がってこなかった。

「何があったのかは知らないが、女の子はもっと大事に扱いやがれ!」

 床に落ちているナイフを拾うと俺はテレーゼのところに向かう。

 そして彼女を縛っている縄を切り、テレーゼの拘束を解いた。

「ほら、立ち上がれるか」

 テレーゼに手を差し伸ばすと、彼女は無言で俺の腕を掴んで立ち上がる。そして直ぐに俺の体に腕を回して抱きついてきた。

「どうして、どうしてあんなに酷いことを言ったのに助けに来てくれたのよ!」

「まだ今日と言う日は終わっていないからな。テレーゼと一緒にギルドに帰ることで、初めてこの依頼は達成される。テレーゼがいないとダメなんだ」

 俺は優しく彼女の体を抱きしめ返す。

「俺の方こそごめん。無事でよかった」

「うわああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 テレーゼが無事で良かったと言うと彼女は大声で泣いた。

 彼女は拘束されている最中、涙を流していなかった。テレーゼは捕まった後も、あの男と戦っていたんだ。

 だけど俺が助けたことで緊張の糸が切れて、今まで我慢していた感情が爆発したのだろう。

 俺は彼女が泣き止むまで抱きしめ続け、落ち着きを取り戻した頃に二人でギルドに帰る。





「ピグレット、ピグレット! ねぇ、無視しないでよ!」

 翌日、俺は貰った依頼を確認していると、横からテレーゼの声が聞こえてきた。

「ピグレットって俺のことか?」

「そうよ! あんた以外に誰がいるって言うのよ」

 俺のことを言っていたのか。でもピグレットってなんだ? 言葉の雰囲気からしてブタ関連のようなこと気がするのだけど。

「ピグレット、その……昨日はありがとう」

 なんだ。お礼を言いに来たのか。別にそんなことはわざわざ言わなくてもいいのに。

 でも、なんだか今日のテレーゼは様子がおかしくないか? 体をモジモジとさせてらしくない。

「どうした?」

 訊ねると、テレーゼは頬を赤くしながら顔を俯かせる。

「覚悟を決めたじゃないのよ、あたし。こんなところで尻込みしていたら、せっかくの覚悟が無駄になっちゃうじゃないの」

 テレーゼがブツブツと言っているが、あまりにも声が小さすぎて聞き取れない。

「何か言ったか?」

「な、なんでもないわよ! それよりも一ミリも体を動かすんじゃないわよ! 動いたらぶん殴るわよ」

 いや、それってムリじゃね。

 脅迫されて身動きが取れないでいると、彼女はつま先立ちをして顔を近づける。そして俺の唇に自身の唇を押し付けた。

 突然キスをされ、ファーストキスを奪われた俺は、何がどうしてこうなったのかが分からず、鼓動が激しくなる。

 数秒が経って、俺から唇を離すと、彼女は後に下がって俺に指を向ける。

「いい! あんたは今からあたしの愛豚ピグレットよ! これは決定事項! 異論は認めないわ!」










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