【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい

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⑤激甘溺愛への反撃は(4)

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 リードネストは、突然訪ねてきたリンツ・マクラーヴィンとともに、庭園に出ていた。


 さっさと要件を聞いて帰そうと思っていたが、リンツ本人がリードネストの家の庭を見たいと言い出して、気は進まなかったが断りきれず案内したのだ。


 リンツが訪ねてきた理由こそ王から預かった大切な仕事について話を詰めるためだが、早々に仕事を終えたら、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、庭園を見せろと言ってきた。



 リードネストは、ため息を吐いた。


 どうせ、最近番が現れたリードネストのことをからかうためだろうとわかっていたからだ。



 リードネストが女性に興味がないのは、邸の者はもちろん、王城で働く者たちにも周知の事実だ。



 だが、そんなリードネストに、つい最近やっと愛する番が見つかったようだと、話題になっているらしい。



 リードネストとよく仕事をする仲のリンツはちょうどその噂を聞き、仕事のついでにひやかしてやろうと企んだ。


 久しぶりに来たら、邸の雰囲気も以前とガラッと変わっており、玄関に入る時ちらっと見えた庭に関してはさらに驚いたため、リンツはカーヴィンに尋ねた。


 すると、リードネストは番が可愛すぎて庭にガゼボを作ったり、番の好きな花をたくさん植えて手入れしていることを知り、かなり尽くしていることがうかがえた。


 リードネストのあの仏頂面を崩せるかもしれない、とリンツのイタズラ心がむくむくわきあがる。




「すごいじゃないの。こんなに綺麗に手入れして。前は、見られればそれでいいって、必要最低限の花しか植えてなかったのに。あんなガゼボまで作って....」




 何故かリードネストの腕に絡みついてジロジロ庭を眺めるリンツに内心苛立ちながら、リンツのしたいようにさせる。


 気が済んだら、早く帰ってもらうためだ。



 .....リンツが帰ったら、モモネリアを久しぶりに食事に誘おうか。

 ......会わないのも、俺の方が限界だ。....会いたい、モモネリア。



 心ここにあらずという空気を察知したのだろう。


 リンツがむぅとむくれて、さらに身体を押し付けてきた。



「ちょっと。聞いてる?....もう、どうせ愛しい番のことでも考えてたんでしょう。全く。....それで?どんな子なの?その.....モモネリアって子は」



 今まで無表情を貫いていたリードネストが、明らかにムッとして鋭くリンツを睨みながら低い声を発する。



「.....俺のモモネリアを勝手に名前で呼ぶな」



 リンツは、呆れ顔になりゆるゆると首を振る。


「....わかったわよ。そんな怖い顔で怒らないでよ。独占欲の強い男は嫌われるわよ」




「.....ふん」



 嫌われる、と言われて一瞬狼狽えたのが手に取るようにわかって、リンツはさらにニヤニヤと笑みを深める。



「そんなに、大切なの?番ちゃんが」



「.....あぁ。もうモモネリアなしでは生きていけない。俺は、あんなに可憐で繊細で美しい生き物を知らない。彼女は、俺が大切に....大切に守っていきたい。こんな気持ちを教えてくれたことにも感謝してもしきれないよ」



 その瞬間、リードネストがふんわり甘く笑った。


 モモネリアに見せる、あの柔らかい笑顔だ。



 リンツは、目を瞬かせる。



「.....へぇ。あなたのそんな表情が見られるとはね。.....まぁ、あれね。おめでとう、とでも言っておきましょうか。せいぜい嫉妬心と独占欲をむき出しにしすぎて、愛想を尽かされないようにね」



 ふふん、と意味ありげに笑って見せたリンツに、リードネストは何か言おうと口を開きかけた。


 その時ーーーー。


 ガサッ。



 後ろで何か小さな音がして、リードネストは振り返った。


 そこに、リードネストが見間違うはずのない背中が遠ざかっていくのが見えたのだ。



「.......モモネリア?」


 リンツはその声に、リードネストの顔を見上げる。


「....なに?どうしたの?」


「.....モモネリア!.......泣いて、いるのか?.....離せ!追いかける」


「....えっ!?ちょっ.....なに!?どうしたのよーーー!」



 リードネストは、いきなりリンツの腕をすごい力で振り払い、その問いかけにも答えずに一目散に走っていく。



 リンツは、ただ呆然とその後ろ姿を見送っていた。







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