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⑥嫉妬と、その先の真実(2)
しおりを挟むハッと気づいた時には、遅かった。
全て、ハッキリと、リードネストの耳に届いてしまった。
モモネリアは、青ざめて、アタフタと慌てふためく。
そんなモモネリアを見て、リードネストはポカンと口を開けたままだ。
しばらくして、リードネストの口がゆっくり動く。
「.....もしかして、泣いていたのは.....俺が、リンツと一緒にいたから、か?」
「....うぅっ」
言い逃れできない状況に、言葉に詰まるモモネリア。
そんな様子をみて、リードネストは徐々に喜びの感情をあらわにする。
三角耳は嬉しげにピクピクと揺れ、尻尾はバサバサ音がするほどはちきれんばかりに振られている。
そんなリードネストをみて、怒っていた気持ちが萎んできて、モモネリアは小さな声で力無く答えた。
「.....そう、なの。ごめんなさい。こんな醜い、感情.....。私のこと、嫌になった?」
「....どうして嫌になるんだ?俺がモモネリアのことを嫌になるわけがないだろう」
心底わからない、とでもいう風にリードネストは首を傾げる。
「.....だって、わたし.....」
モゴモゴと口籠もるモモネリアに、もう一度リードネストは力強く告げる。
「例えどんなことがあっても、何をされても、俺がモモネリアを嫌うことなど絶対にない。俺は、モモネリアが好きで、誰よりも愛しているんだ。......俺の勘違いでなければ....嫉妬、してくれたんだよな?」
改めて確認されて、羞恥にかられる。
躊躇いがちにコクンと頷けば、リードネストはぱぁっと表情を明るくした。
しばらく余韻に浸るように、噛み締めるように拳を胸にあて目を閉じていたリードネストだったが、気が済んだのか目を開き「コホン」と小さく咳払いをしてから再び話し始める。
「.....さっき庭で一緒にいたのは、リンツ・マクラーヴィン。俺の仕事相手で.....男だ」
モモネリアの時が止まった。
「.........え?........男、のひと?」
たっぷり間をおいて、信じられないという風に聞き直す。
リードネストが真剣な表情で大きく首を縦に振り、コクンと頷く。
「.....え?え?....だ、だって。腕を絡めて、優しく笑いかけてたし」
モモネリアの頭の中は色んなはてなマークが飛んで、忙しない。
「腕を絡めていたのは、ただあいつが調子に乗ってふざけていただけだろう。笑っていたのは......お前の話しをしていたんだ。俺はお前のことになると、いつも口元が締まりなくなる。自然と緩むんだ。誤解させてすまなかった。事情を知らないモモネリアが見たらどう思うか、俺が考えるべきところだったな」
「........」
「詳しくは言えないが、奴が今日来たのは王から頼まれた仕事の件だ。内密に進めなければならない事情があって、リンツの変装は王の使者だと気づかれないための狙いがあった」
「......そう、だったんだ。私、勝手に勘違いして.....嫉妬、して......ごめんなさい」
事実をやっと理解して、モモネリアはしゅんと項垂れた。
キツく問いただす前に、きちんと理由を尋ねるべきだったと恥ずかしくなった。
「いや、モモネリアが謝ることはない。俺の落ち度だ。これからはお前の気持ちをもっと考えて行動する。......そっちに、行ってもいいか?」
リードネストが、視線でモモネリアの隣を示す。
モモネリアはリードネストの意図がわかり、素直に頷いた。
......もっと、リードを近くに感じたい。
リードネストは静かに立ち上がり移動すると、そっとモモネリアの隣に腰掛けた。
モモネリアとリードネストの視線がぶつかる。
体格差から、座っていてもリードネストの方が頭二つ分ほど高い。
「.....お前には、ずっと笑っていてほしいと思っていたのに、泣かせてしまったな」
リードネストが、苦しげに眉を下げ力無く笑う。
ゆっくり腕を伸ばし、モモネリアの白く滑らかな頬をゴツゴツした大きな手の甲でスルリと撫でる。
その柔らかな刺激が心地よくて、モモネリアは目を細めた。
もっとリードネストの体温を感じたくて、モモネリアの華奢な手をふわりとリードネストの手に重ねる。
リードネストは目を見開き、驚いていた。
その顔を見たら何だかもっと甘えたくなって、そっと目を閉じて自分よりも体温の高い手のひらに頬を擦り寄せた。
「......私も......本当は、とても会いたかったの」
さっきリードネストが「会えて嬉しい」と言ってくれたのに、冷たく突き放してしまったことを後悔していた。
モモネリアは、大切に言葉を紡いだ。
小さな声で恥じらいながら告げる、その愛らしい唇を、赤く染まる頬を、潤んだ透き通る瞳を、リードネストは一心に見つめた。
しばし、二人の間に甘い沈黙が流れる。
言葉は要らなかった。
リードネストの表情で、身体で、体温で。
全身でモモネリアへの愛を伝えていたから。
モモネリアの全てで、その愛情を感じていたから。
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