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第一章 回想
受験②
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*******
しばらくして、千春は戻ってきた。
椅子に座って、ガサガサと何か取り出したかと思うとジーッとジッパーを閉める音がした。
「....寒い?」
上着を着たのだとすぐわかって尋ねると、千春は否定する。
「そんなことないけど...何となく」
「........」
「...さ、勉強すっか」
気を取り直すように、千春はパン!と手を打ち鳴らす。それで、花乃も頭が切り替わる。
「....あ、そうだった!...そういえば...千春?昨日はちゃんと寝た?」
「ん~...まぁぼちぼちかな」
「...ちゃんと寝なきゃ体壊すよ?」
「わかってる。心配するな」
そう言ってクシャッと大きな手が花乃の頭を撫でた。
千春は受験生だった。高校三年になり、大学受験が迫ってきていたのだ。そのせいか、声には覇気がないのを感じるし、疲れているのではないだろうか。
花乃の病室に来ても、持って来たお土産を見せると、だいたいは勉強を始めてしまう。
それでいて、花乃がわからないところがあれば勉強を見てくれるのだ。
どこの大学を受けるのかなど全く教えてはくれない。きっと難しい大学なのだろう。
「...ケホッ、ケホッ」
「...おい、大丈夫か?」
「うん、平気」
「...最近、またひどくなってないか?」
「....そんなことないよ。たまたま、風邪ひいちゃっただけ」
「........」
花乃の病状は良くならなかった。少しずつ悪くなっていて、5歳の頃より体調を崩すことが増えていた。
******
あっという間に、本格的な受験シーズンが到来した。
千春はピリピリ緊張感を漂わせ、試験や面接に臨んでいた。
花乃の病室を訪れることも、前後数ヶ月少なくなっていた。
花乃は、こんをつめて千春が倒れはしないかと気が気でなかった。
そしてーー。
千春は大学に合格した。
なんと、医学部を受験していたのだ。祖父や父と折り合いがよくなさそうに見えていたし、兄がいるから医者にはならないと子供の頃聞いた記憶があったのに。
「おめでとう!すごいね、医学部なんて」
「別にすごくない」
「照れちゃって。すごく勉強頑張ってたもんね。でも、どうして?てっきり千春は医者にはならないって思ってた」
「...別に。ただ、給料がいいから。後々生活も楽だろうって思っただけ」
「そうなんだ。...でも千春、お医者様向いてると思う。だって、すごく優しいし。私がしてほしいことすぐ気づいてくれるくらい、気遣いできる人だもん。あと頑張り屋さん」
「....いや、普通だろ。花乃は俺を買いかぶりすぎだ。俺は、そんなできた人間じゃないよ」
「えー、そうかな?」
「そうだよ。...俺は、みんなに優しくできる人間なんかじゃない」
「......?」
急にボソリと呟くように小さくなった声。
最後の言葉が聞き取れなくて、首を傾げても、その後すぐに話題が変わって、結局千春が何を言ったのかわからずじまいだった。
しばらくして、千春は戻ってきた。
椅子に座って、ガサガサと何か取り出したかと思うとジーッとジッパーを閉める音がした。
「....寒い?」
上着を着たのだとすぐわかって尋ねると、千春は否定する。
「そんなことないけど...何となく」
「........」
「...さ、勉強すっか」
気を取り直すように、千春はパン!と手を打ち鳴らす。それで、花乃も頭が切り替わる。
「....あ、そうだった!...そういえば...千春?昨日はちゃんと寝た?」
「ん~...まぁぼちぼちかな」
「...ちゃんと寝なきゃ体壊すよ?」
「わかってる。心配するな」
そう言ってクシャッと大きな手が花乃の頭を撫でた。
千春は受験生だった。高校三年になり、大学受験が迫ってきていたのだ。そのせいか、声には覇気がないのを感じるし、疲れているのではないだろうか。
花乃の病室に来ても、持って来たお土産を見せると、だいたいは勉強を始めてしまう。
それでいて、花乃がわからないところがあれば勉強を見てくれるのだ。
どこの大学を受けるのかなど全く教えてはくれない。きっと難しい大学なのだろう。
「...ケホッ、ケホッ」
「...おい、大丈夫か?」
「うん、平気」
「...最近、またひどくなってないか?」
「....そんなことないよ。たまたま、風邪ひいちゃっただけ」
「........」
花乃の病状は良くならなかった。少しずつ悪くなっていて、5歳の頃より体調を崩すことが増えていた。
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あっという間に、本格的な受験シーズンが到来した。
千春はピリピリ緊張感を漂わせ、試験や面接に臨んでいた。
花乃の病室を訪れることも、前後数ヶ月少なくなっていた。
花乃は、こんをつめて千春が倒れはしないかと気が気でなかった。
そしてーー。
千春は大学に合格した。
なんと、医学部を受験していたのだ。祖父や父と折り合いがよくなさそうに見えていたし、兄がいるから医者にはならないと子供の頃聞いた記憶があったのに。
「おめでとう!すごいね、医学部なんて」
「別にすごくない」
「照れちゃって。すごく勉強頑張ってたもんね。でも、どうして?てっきり千春は医者にはならないって思ってた」
「...別に。ただ、給料がいいから。後々生活も楽だろうって思っただけ」
「そうなんだ。...でも千春、お医者様向いてると思う。だって、すごく優しいし。私がしてほしいことすぐ気づいてくれるくらい、気遣いできる人だもん。あと頑張り屋さん」
「....いや、普通だろ。花乃は俺を買いかぶりすぎだ。俺は、そんなできた人間じゃないよ」
「えー、そうかな?」
「そうだよ。...俺は、みんなに優しくできる人間なんかじゃない」
「......?」
急にボソリと呟くように小さくなった声。
最後の言葉が聞き取れなくて、首を傾げても、その後すぐに話題が変わって、結局千春が何を言ったのかわからずじまいだった。
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