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第一章 回想
受験①
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花乃は、13歳の誕生日を迎えた。
転院していった瑠璃とは、定期的に文通している。
瑠璃は転院先での治療が体に合ったらしく、一時帰宅が許されるほど快方に向かっていると書いてある。
手紙を母に読んでもらって、花乃は笑顔になった。
返事を書きたくて母にねだる。
「はいはい。ちょっと待ってね?」
「......」
「うん!いいわよ。何て書きましょうか?」
「えっと...『瑠璃ちゃん、こんにちは。私は変わらず元気です。一時帰宅、おめでとう。涙が出そうなほど嬉しいです。私は、病院で勉強頑張っています。まだ先だけど、もう少し勉強が進んだら高卒試験を受けるんだ。応援してくださいね。千春とも仲良くやっています。心配しないでね。またお手紙書きますね。花乃』...こんな感じかな?」
母は、花乃に言われたことを便箋にしたためていく。
瑠璃と文通するようになって、便箋や封筒を選ぶのが、花乃の密かな楽しみになっていた。
初めは院内の売店で買っていたのだが、そのうち成長した瑠璃の好みに合う大人っぽいものが欲しくなり、母にインターネットで購入できるものを買ってもらうようになった。画面の中に並んだ色とりどりの可愛らしい便箋の柄を母が教えてくれ、花乃が選んだものをその場で注文してくれるのだ。
ひとつで注文するよりもお得だからと数セット購入して、時々で便箋の柄を変えて瑠璃に送る。
瑠璃も、可愛らしい文具類が好きらしく、好みの柄のお手紙が届いた時、文面で「かわいいね」と言ってくれるので、より選び甲斐があった。
そうして出来上がった手紙を、母が病院近くのポストに投函してきてくれた。
「ありがとう。お母さん」
「いいのよ。あら、そろそろ千春くんが来る頃じゃない?」
「何時?」
「もう10時よ。今日は休みだからって千春くんと約束してるんでしょ?」
「うん、そう」
「じゃ、お母さん、少し飲み物でも買ってくるわね」
「わかった」
母が退室してほどなく。千春が病室に入ってきた。
「千春?」
「よくわかるな」
「わかるよ。千春の歩き方、もう覚えた。音でわかる」
「なんだそれ。すごいな」
そう言うと、千春がカツンとサイドテーブルの上に何かを置いた気配がした。
「ん?なに?」
「あぁ。貝殻。この間海に行ったら、綺麗な貝殻見つけたからお土産。花乃喜ぶかなって」
「うわぁ!ありがとう千春!嬉しい!どんな色?」
「白。でもオーロラみたいに、光が当たるたびに色んな色がキラキラしてるんだ」
「へぇ~。綺麗だろうなぁ。わ、すべすべだね。気持ちいい」
「あぁ、肌触りもいいだろ?」
「うん!」
千春は、外の世界を運んできてやるという宣言通り、花乃に様々なものを持ってきてくれた。図書館で借りた面白そうな本。もちろん千春が読み聞かせしてくれる。そして、季節の花や、小さな石。雪が降れば、雪の塊に...一度、霜の降りた葉を持ってこようとして、途中で溶けたとがっかりしていた。そりゃ、そうだろう。
花乃は、千春が運んでくる外の世界が楽しみで仕方なかった。
「あ、あとこれも。本なんだけど、花乃の好みなんじゃないかって買ってきた。点字に訳してるのはないみたいで。だから、俺が来た時に少しずつだけど、読んであげるよ」
千春は、花乃の手に一冊の本を握らせてくれる。千春は花乃の好みをよく理解していて、彼が持ってきた本はどれも面白い。一回じゃ足りなくて、千春が読めない時は花乃の母に読み聞かせてくれと頼むことだってあるほどに。
ワクワクしながら、本に触れていると、花乃の手に触れる千春の手...肌の感触が気になった。
「...あれ?千春...これ、どうしたの?」
それは、発疹のような感触だった。ざらざらしていて、一部でこぼこしている。
「あ....」
千春は慌てたように、手を引っ込めてしまった。
「...千春?」
「...何でもない。ちょっと痒くてかいてたら、思ったよりも荒れちゃっただけ。こんなのすぐ治る」
「...でも、腕全体に出てるよ?...他にも出てるんじゃない?」
花乃は、心配でもう一度確かめようと手を千春の方に伸ばした。
しかし、千春がその手をわざと避けるようにさっと立ち上がった気配がした。
「何でもないって。俺、ちょっとトイレに行ってくるから」
そう言って、千春は病室から出て行ってしまった。
転院していった瑠璃とは、定期的に文通している。
瑠璃は転院先での治療が体に合ったらしく、一時帰宅が許されるほど快方に向かっていると書いてある。
手紙を母に読んでもらって、花乃は笑顔になった。
返事を書きたくて母にねだる。
「はいはい。ちょっと待ってね?」
「......」
「うん!いいわよ。何て書きましょうか?」
「えっと...『瑠璃ちゃん、こんにちは。私は変わらず元気です。一時帰宅、おめでとう。涙が出そうなほど嬉しいです。私は、病院で勉強頑張っています。まだ先だけど、もう少し勉強が進んだら高卒試験を受けるんだ。応援してくださいね。千春とも仲良くやっています。心配しないでね。またお手紙書きますね。花乃』...こんな感じかな?」
母は、花乃に言われたことを便箋にしたためていく。
瑠璃と文通するようになって、便箋や封筒を選ぶのが、花乃の密かな楽しみになっていた。
初めは院内の売店で買っていたのだが、そのうち成長した瑠璃の好みに合う大人っぽいものが欲しくなり、母にインターネットで購入できるものを買ってもらうようになった。画面の中に並んだ色とりどりの可愛らしい便箋の柄を母が教えてくれ、花乃が選んだものをその場で注文してくれるのだ。
ひとつで注文するよりもお得だからと数セット購入して、時々で便箋の柄を変えて瑠璃に送る。
瑠璃も、可愛らしい文具類が好きらしく、好みの柄のお手紙が届いた時、文面で「かわいいね」と言ってくれるので、より選び甲斐があった。
そうして出来上がった手紙を、母が病院近くのポストに投函してきてくれた。
「ありがとう。お母さん」
「いいのよ。あら、そろそろ千春くんが来る頃じゃない?」
「何時?」
「もう10時よ。今日は休みだからって千春くんと約束してるんでしょ?」
「うん、そう」
「じゃ、お母さん、少し飲み物でも買ってくるわね」
「わかった」
母が退室してほどなく。千春が病室に入ってきた。
「千春?」
「よくわかるな」
「わかるよ。千春の歩き方、もう覚えた。音でわかる」
「なんだそれ。すごいな」
そう言うと、千春がカツンとサイドテーブルの上に何かを置いた気配がした。
「ん?なに?」
「あぁ。貝殻。この間海に行ったら、綺麗な貝殻見つけたからお土産。花乃喜ぶかなって」
「うわぁ!ありがとう千春!嬉しい!どんな色?」
「白。でもオーロラみたいに、光が当たるたびに色んな色がキラキラしてるんだ」
「へぇ~。綺麗だろうなぁ。わ、すべすべだね。気持ちいい」
「あぁ、肌触りもいいだろ?」
「うん!」
千春は、外の世界を運んできてやるという宣言通り、花乃に様々なものを持ってきてくれた。図書館で借りた面白そうな本。もちろん千春が読み聞かせしてくれる。そして、季節の花や、小さな石。雪が降れば、雪の塊に...一度、霜の降りた葉を持ってこようとして、途中で溶けたとがっかりしていた。そりゃ、そうだろう。
花乃は、千春が運んでくる外の世界が楽しみで仕方なかった。
「あ、あとこれも。本なんだけど、花乃の好みなんじゃないかって買ってきた。点字に訳してるのはないみたいで。だから、俺が来た時に少しずつだけど、読んであげるよ」
千春は、花乃の手に一冊の本を握らせてくれる。千春は花乃の好みをよく理解していて、彼が持ってきた本はどれも面白い。一回じゃ足りなくて、千春が読めない時は花乃の母に読み聞かせてくれと頼むことだってあるほどに。
ワクワクしながら、本に触れていると、花乃の手に触れる千春の手...肌の感触が気になった。
「...あれ?千春...これ、どうしたの?」
それは、発疹のような感触だった。ざらざらしていて、一部でこぼこしている。
「あ....」
千春は慌てたように、手を引っ込めてしまった。
「...千春?」
「...何でもない。ちょっと痒くてかいてたら、思ったよりも荒れちゃっただけ。こんなのすぐ治る」
「...でも、腕全体に出てるよ?...他にも出てるんじゃない?」
花乃は、心配でもう一度確かめようと手を千春の方に伸ばした。
しかし、千春がその手をわざと避けるようにさっと立ち上がった気配がした。
「何でもないって。俺、ちょっとトイレに行ってくるから」
そう言って、千春は病室から出て行ってしまった。
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