【13章まで完結】25人の花嫁候補から、獣人の愛され花嫁に選ばれました。

こころ ゆい

文字の大きさ
6 / 59
ジャッカルはひたすらに愛を囁く

5

しおりを挟む
 翌日。美波と玄翠が初めて会ってから8日目。

 玄翠は、緊張した面持ちで門の前に立っていた。

「...よし!」

 拳をにぎって気合いを入れて、美波が出てくるのを待った。

 ...カチャリ。

 小さく音を立てて、遠慮がちにドアが開いた。
 5センチほどの隙間から、愛らしい目がちょこんとのぞく。

(...はぁ。最高)

 もうそれだけで、玄翠の目はまた締まりなく目尻が垂れ下がる。
 いつも通り、デレデレしそうになって....ハタと持ちこたえた。

「こ、こんにちは!ま、毎日毎日、申し訳ない!どうしても、あなたとお話ししたくて...もし良ければ、こ、こここ、これを!!どうぞ!!」

 緊張で回らない舌を、必死に動かして....勢いよく男性然とした大きな手を差し出す。

 美波は、開いた隙間からじっとその手を見つめた。

(...白い、手紙?)

 と、突然ーー。

 パン!

「......っ!!」

 小さく音をたてて、その手紙が消えてなくなった。
 いや、消えたというよりもーー。

「どうぞ!あ、あなたのことを考えて選んできました!どうか、僕に...少しだけでも、あなたとお話しするチャンスを頂けないでしょうか!!」

 そう言って、手紙に代わって差し出されたのは、大きな花束。

 美波の両腕でも抱えるのがやっとなほど、たくさんの...色とりどりの綺麗な花が咲く、可愛いらしい花束だった。

 美波の好きな色合いだ。
 淡いグリーンや薄紫...水色、ピンク、白。

 もしかして、手品だろうか。


「......素敵」

 思わずポツリと漏らした声に、玄翠が下げていた頭と肩をぴくりと揺らす。

 そして、おそるおそる視線をあげて...美波を見つめた。

「...良かったぁ~」

 ふにゃっと笑った顔が、さっきまでの凛々しい...緊張した顔と違って、なんだが可愛らしく見えてーー。

 美波は、ドアノブを握る手にそっと力を込めた。

 ....カチャリ。

「..........」

 ゆっくりと開かれたドア。

 その先に、両手もじもじさせながら、恥ずかしそうに頬を赤らめている、玄翠の愛しい女性が現れる。


「...やっと会えた。ありがとう、出てきてくれて」

 どうすれば良いのかわからない様子の彼女に、玄翠は優しく微笑んで、慎重に話しかけた。
 今度こそ、怖がらせないように。

 その笑顔を見て、やっと少し安心してきたのか、彼女の表情が柔らかくなって...すっと玄翠からの贈り物に手を伸ばした。

「...ありがとう、ございます。すごく、綺麗」

 耳から溶けてしまいそうなほど可愛らしい声で、美波はお礼を言ってくれた。

「良かった。...改めまして。この間は驚かせてしまってごめん。僕は伴田玄翠。玄翠って呼んでほしい」
「...私は、友村美波、です。...美波で、大丈夫です」
「可愛い名前だね。...美波ちゃん。よろしくね」
「...よろしく、お願いします」

 二人の視線が絡まって...ふふっと笑い合う。
 それは、やっと玄翠がまともに美波と対面できた瞬間だったーー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

孤独なもふもふ姫、溺愛される。

遊虎りん
恋愛
☆☆7月26日完結しました! ここは、人間と半獣が住んでいる星。いくつかある城の1つの半獣の王と王妃の間に生まれた姫は、半獣ではない。顔が『人』ではなく『獣』の顔をした獣人の姿である。半獣の王は姫を城から離れた塔に隠した。孤独な姫ははたして、幸せになれるのだろうか。。。

婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~

ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」  中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。  そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。  両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。 手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。 「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」  可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。 16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。  13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。 「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」 癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。

お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。  初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。 それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。 時はアンバー女王の時代。 アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。 どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。 なぜなら、ローズウッドだけが 自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。 ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。 アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。 なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。 ローズウッドは、現在14才。 誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。 ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。 ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。 その石はストーン国からしか採れない。 そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。 しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。 しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。 そして。 異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。 ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。 ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。  

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり
恋愛
ノーマン王立学園に通う貴族学生のクリスマスパーティー。 突然異様な雰囲気に包まれて、公開婚約破棄断罪騒動が勃発(男爵令嬢を囲むお約束のイケメンヒーロー) 私(ティアラ)は周りで見ている一般学生ですから関係ありません。しかし… 断罪後、靴擦れをおこして、運悪く履いていたハイヒールがスッポ抜けて、ある一人の頭に衝突して… 関係ないと思っていた高位貴族の婚約破棄騒動は、ティアラにもしっかり影響がありまして!? 「私には関係ありませんから!!!」 「私ではありません」 階段で靴を落とせば別物語が始まっていた。 否定したい侯爵令嬢ティアラと落とされた靴を拾ったことにより、新たな性癖が目覚めてしまった公爵令息… そしてなんとなく気になる年上警備員… (注意)視点がコロコロ変わります。時系列も少し戻る時があります。 読みにくいのでご注意下さい。

声を聞かせて

はるきりょう
恋愛
動物の声が聞こえる彼女と冷たい第二王子の物語。完成しました。 「……反対されない、というのは、寂しいことだと思いますの。だから…私が反対してさしあげます」  サーシャは最上級の笑顔を浮かべた。そして、思い切り息を吸い込む。 「何でも思い通りいくと思うなよ、くそ王子!!」 「サ、サーシャ様!?」  なりゆきを見守っていたハリオが慌てたようにサーシャの名を呼んだ。一国の王子への暴言は不敬罪で捕まりかねない。けれど、言わずにはいられなかった。  そんなサーシャの言動にユリウスは一瞬目を丸くし、しかしすぐに楽しそうに笑った。  「お前面白いな。本当に気に入った」 小説家になろうサイト様にも掲載してします。

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

最後の魔法は、ひとを待つための魔法だった

まるねこ
恋愛
「忌み子」として忌避された少女クロエを拾い、大魔法使いユーグは『次代の魔法使い』として育てる。 ユーグはクロエが最愛の人の生まれ変わりだということを告げぬまま、次の生へと旅立った。 残されたクロエは、ユーグが遺した記憶の断片から自分が最愛の人の生まれ変わりであることを知る。 師への恋心を抱くことはないと自らを戒めながらも、やがて再び生まれ変わってくるユーグを待つ決意を固める。 何百年もの時を経てついにユーグは転生する。 その時、クロエは……。 Copyright©︎2025-まるねこ

処理中です...