【13章まで完結】25人の花嫁候補から、獣人の愛され花嫁に選ばれました。

こころ ゆい

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ジャッカルはひたすらに愛を囁く

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「...君はいつも考えなしに、余計なことを言いすぎだ」
「...ぶぅ。だってよー...あの玄翠が隣に女の子連れてるんだぜ?興味湧くじゃん」

玄翠と美波とわかれてから、琥太郎と十治は来た道を戻っていく。
今日はこの神社の神主に用があり、二人でやって来た。だが、それも終わったので帰ろうと帰路につきかけたところで玄翠たちに遭遇したのだ。

「...まだ、話していないようだったぞ」
「...こじれてねぇかな?」

頭をぽりぽりかきながら、琥太郎が今更なことを言い出した。
十治は「はぁ...」と小さくため息をついてから、整えられた木々を見据えて言った。

「...あれでこじれるようなら、そこまでだ。我々と人間の...種族の違いは大きい。あんな馬鹿げた法にやられて、『花嫁』を選んだのは、彼だ」

冷えた声で、まるで突き放しているような言い方に、琥太郎が目を丸くして「やれやれ」と両手のひらを上にむけた。

「お前ってさ、前から思ってたけど...『獣人法』に対して手厳しいよな」
「.........」
「ずっと『花嫁選定会』、拒否してるんだろ?...俺、役人に言われたんだぜ?お前を連れてきてくれねぇかって。...無視するのもそろそろ限界じゃねぇ?一応法律だしよ」
「.........」

十治は、何も答えず表情も動かない。

「ま、お前の方がよくわかってるわな」

琥太郎はそれ以上言うのはやめにして、「あ~腹減ったなぁ」と両手を後ろに組んで言った。

そこかしこで寄り添い合うカップルを横目に、二人は車までの道を歩いていった。


****

「...美波ちゃん?」
「あ.....」

琥太郎や十治とわかれた後から、美波の口数は減った。玄翠には、その理由がわかっているが、どうにも触れることができない。

「....大丈夫?...疲れたなら、一休みしない?」

玄翠は、表情を取り繕って尋ねた。

「....はい」

美波は、渋々といった感じで頷く。玄翠は、事前に調べていた茶屋が近いことを確認して、美波の手をやや強引に握った。
さっき、琥太郎との一件があってから、何となく離れていた手だ。

「こっちだよ。おいで?」
「...は、はい」

グイッと力強く引かれ、美波は玄翠の後に続く。
握られた手の温かさに、先ほど感じた違和感で微かに冷えていた心はじんわり熱を取り戻す。

「...あのさ」

と、おもむろに玄翠が背中越しに小さく振り向いて、美波に視線を滑らせた。一旦足を止めたかと思うと、俯いて....勢いよく振り返る。
そして、二人の視線が絡まった瞬間。

「俺...美波ちゃんのこと、好きだよ」

トクン、と美波の心臓が高鳴る。

「...まだ返事はいいんだ。ただ伝えたかっただけだから」

玄翠は、伝えられたことに安心したみたいに、ふわりと表情を和らげ微笑んだ。

それを見て美波は小さく震えて、視線を下げる。
伏せられた長いまつ毛が、揺れていた。

「.....あり、がとう....ございます」

それ以上、美波は何も言わない。

「さ、行こう」
「はい」

切り替えるようにまた歩き出した玄翠に、美波もついていく。内心、小さなわだかまりを抱えて。



「...すっごい、美味しいです。玄翠さん」

抹茶ぜんざいを頬張る美波の姿を、玄翠が見つめていた。

落ち着きのある和風の店内で、この神社の名物だという甘味を味わう二人。
と言っても、玄翠はコーヒーだけで....美波が迷っていた『抹茶ぜんざい』と『あんみつ』を両方頼んでいた。「残ったら俺が食べるから、どちらも頼みな」と言って。

先ほどまでの雰囲気は消え去って、またのほほんと時が流れていく。

こうして、玄翠と美波の初デートは過ぎていった...はずだった。


****

「...美波?帰ったのかい?」

父が尋ねる声がする。ドアを開ける音と、人が入ってくる気配を感じ取ったのだろう。

だが美波は返事もせずに、急いで靴を脱いだ。
外から差し込む西日が小さな窓から差し込んで、一部だけオレンジ色に染まった薄暗い玄関。
電気をつけることさえしない。ただ、今すぐに2階の自室に駆け込みたかった。

パタン...。

静かにドアを閉め、もたれかかりながらズルズルとその場に腰を下ろした。

玄関同様、室内もすでに夕闇の空を受けて薄暗い。

「...花嫁、って...玄翠さん....もしかして獣人?」

誰も居ない部屋で呟かれた声は、妙に室内に響く。

「...“あの“?」

美波は、信じられないとでも言いたげな声音で言うと、おもむろに何かを探すような素振りを見せる。
そして見つけたものは、一冊の古びた本だった。

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