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白熊✖️迷子🟰愛の時間?(十章の『その後』です)
2 〔完〕
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◇
「詞葉さん、こっちおいで?」
「........?」
呼ばれて、素直に歩み寄る。
冬真が指し示した場所には切り株があり、そこにハンカチが敷かれた。
「はい。こちらへどうぞ。我が姫君」
すっと手を掬い上げると、流れるような仕草で手の甲に「ちゅっ」とキスされた。
「あ、ありがとうござ、います」
「ん。可愛い」
「も、もう。恥ずかしいから...」
冬真に、エスコートされながら腰掛ける。
「ごめん。でも、止まらない。思ったら口に出ちゃうんだ。はぁ....その顔もいいな。本当残念だ」
ーーもっと、君を俺でいっぱいにしたいのに。
「~~~っ」
思わず、と言った雰囲気でうっとり呟かれて....詞葉は頬を押さえてぎゅっと目を閉じた。
頭や手を撫でられ、耳や頬、瞼、額。色々なところにキスの雨が降ってくる。
「...むぅ。名残惜しいけど、仕事しなきゃ」
「.....仕事?」
「うん。大切な詞葉さんが、お腹空かせたりしたら嫌だから、食料調達してくるよ。...少しだけ離れるから、念のため火おこしとくね」
「......え」
冬真は素早く、燃えそうな薪を集めて火をおこす。
ライターも何もないのに手間取ることなく、原始的な方法でやって退けてしまう冬真にただただ感嘆した。
あっという間に目の前で、ぼうっと炎が上がって、薪をくべていく。
「す、すごい」
「そうかな?多分、獣人ならこれくらいはできるやつが多いよ?」
「そう、なの?」
「うん。あ....なんか居るな。....ちょっと待ってて?すぐ戻るけど、危ないからここから動いちゃダメだよ?」
「は、はい」
サッと走り去る背中を見送って、火にあたった。
急にシンと静まり返り、詞葉の胸に少しだけ恐怖感が芽生える。ブルブルと首を振って、自分の心を誤魔化しているとーー。
ガサッ!
「...きゃっ」
「....あ、驚かせた?」
「...と、冬真さん~」
突然そばに茂る葉が音を立てて出てきたのは、さっき離れたはずの冬真だった。詞葉は、ガクッと力が抜けてしまった。
「うん。ごめん、一人怖かったよね」
もう大丈夫だから、と言いながら、冬真は両手いっぱいに抱えた、果物や獲物を下ろした。
「え、こ、こんなに?今の、一瞬で?」
「うん?足りなかった?」
「う、ううん、そんなことないです。十分すぎるくらい。...あの短時間でこの量ってことに、びっくりして」
「はは、そっか」
ニコニコしながら、手早く獲物を捌いていく。
ナイフがないから、何やら石をガリガリして...研いだ部分で器用に行っているようだった。
詞葉には見えない位置で、隠しながらしてくれるのでホッとした。
そして、火で炙ったものと果物でお腹を満たす。
「ん!美味しい!」
塩なんてなかったはずなのに。
冬真が調理してくれた夕食は、シンプルながら臭みもなく、塩っけもあり、パクパク食べられた。
「良かった。いっぱい食べてね」
冬真は、目尻を垂れて微笑んだ。
◇
「...冬真さんって、頼りになるね」
お腹も満たされて、ちょこちょこと冬真が薪をくべてくれる焚き火を前に、ほうっと息を吐いた。
夜の帳が下りた森は真っ暗で、絶対に一人だったら耐えられなかっただろう。
でも隣に冬真が居れば、鳥や生き物の鳴き声がしても、ガサッと葉が揺れても、恐ろしさは感じず安心感で包まれている。
「そう?...嬉しいな。...寒くない?」
「うん。冬真さんがもってきてくれたブランケットも全部、本当あったかいよ」
「良かった」
炎に照らされて、冬真の顔がほんのり赤く見える。
実は今、大きな布が焚き火を囲むように数本の木に結ばれて、大きな野営のテントに様変わりしていた。
夕食を終えて、一息ついた頃、冬真がガサガサと自分のリュックを漁り始めた。
すると、出てきたのだ。
冬真のリュックは、某有名キャラの二次元ポケットさながら、ほんの小さな空間に大きな布、ブランケット、上着、救急セット、ジュースなど沢山のものが詰め込まれていたのだ。
(...どうやって圧縮したんだろう)
疑問が浮かばなくもないが....獣人ならではの力と技術があるのかもしれない。
その持ち物で、サッとテントらしき空間をつくり、地面には別の布を広げてくれた。
そうして、森で迷子になっているはずなのに、何とも居心地のいい空間が出来上がって、それから、ふたりでまったり過ごしているのだ。
(...いいかも)
冬真の言った通り、たまにはこんな風にキャンプも悪くない。
詞葉は、もうすっかり状況を忘れて楽しんでいた。
「...綺麗だね」
隣にぴったり寄り添う冬真にもたれかかって、詞葉は夜空を見ながら呟いた。
三日月と、細かなガラス細工が散りばめられたみたいな星が煌いている。
「...うん、綺麗だ」
「...冬真さん...見てる?」
「...見てるよ」
うっとりした声で返事をした冬真だが、詞葉は納得のいかない様子だ。
「...嘘」
「...どうして?」
「...........」
「....ん?」
サラッと、詞葉のまっすぐ流れる髪を梳く骨ばった大きな手。
「だって....さっきから私しか見てない、ですよ?」
頬を染めながら恥ずかしそうに俯いて。
むぅと、詞葉は抗議の言葉を口にする。
だが、その声は何とも弱々しく、照れ隠しだとすぐにわかった。
ふっと冬真が笑った気配がする。
「....こっち向いて?」
「....だめ。...きっと真っ赤だもん」
甘く促されて....ふぃっ、とわざと顔を背けた。
すると、クイッと肩を掴まれる。
「...詞葉の可愛い顔、俺に見せて?」
「........」
拒否を許さない強引な口調と肩を掴む力強さ。
その男らしさに、トクンと胸が高鳴って....詞葉はそろりと振り向いた。
二人を包む空気が....妖しく艶っぽさを含み、今、彼に自分が求められている、ということを敏感に感じてしまう。
ゴクリ。
冬真の喉仏が上下してーー。
「は、ぁ...」と、耐えるような息づかいが聞こえた。
「....最高だ、詞葉」
そこにあったのは、興奮と欲望を滾らせた冬真の瞳。
目の前の獲物を見つめて高まる身体は、荒くなった息を吐きながら、今まさに愛しい人を喰らおうとしていた。
「...我慢できない。ねえ、少しだけ。いいよね?」
「.....んぅ」
「はぁ...詞葉、詞葉」
うわ言みたいに名前を呼びながら、角度を変えて口付けられて...詞葉の息は乱れた。
「だ、め...こんな、の...」
「...ん、どうして?...夫婦なんだから、これくらい当然だろう?」
ちゅっ、ちゅっ、と絶えずキスを落としながら。
余裕なさげに、言い募る。
「んんっ...だって」
感触に耐えきれず、詞葉は艶めかしい声と表情に彩られればーー。
「....っ、詞葉っ」
『待て』などできないと、冬真が勢いよく襲いかかった。
「.......だ、め~っ」
グイッと冬真の胸を押し返すと、何とか動きが止まる。
「よ、良かった」
と、詞葉がホッとしたのも束の間。
「....わかった」
「え?」
「....俺は君と...イチャイチャしたいけど。君は、俺が触れるのは嫌なんだね」
しゅんと、落ち込んだ声でいじけられて、詞葉は焦った。
「そ、そんな!わ、私だってしたいです!」
「.....本当?」
「う、うん!」
「.....例えば、どんなこと?」
「え...え、と....手、繋いだり。ぎゅってしたり。....キ、キキ、キスとかもしてほしいし、...本当は他にも」
「....他、にも?」
期待の眼差しで、先を促される。
詞葉は、誤解されたままなのは嫌でーー。
「わ、私の...全部に触れて、ほしい、って...いつだって、思って、ます...よ?」
カァ、と羞恥の滲む顔で途切れ途切れに言った。
「.....もちろんだよ」
「......へ?」
「俺だって、いつも君に触れていたいんだ。....すぐに、満たしてあげるからね?」
「え、え、え?...い、今のは、ただ...それほどの気持ちだって伝えたかっただけで」
「うん...わかってる。詞葉の気持ちは全部....わかってるから」
(ぜ、絶対、わかってない~!)
「だ、だめっ、...外ですっ」
「大丈夫。テントもあるし...それに」
ーーここ、貸し切りだから。
「....へ?か、かし?」
聞こえた言葉が信じられなくて。
全く状況のつかめない詞葉は、一瞬ポカンとなった。
「今、何て言っ....あ...だめっ、私まだ、ちゃんと話聞いて...ないっ」
「は、ぁ。これ以上、待てなんてできない。....ああ、こんなに期待して。話は後だ、いいよね?」
「んん...」
あっという間に、座る冬真の膝に乗せられ、大きなブランケットで身体を隠された。
そしてーー。
気づいた時には、支えてもらっていないとグラリと倒れてしまうほど、力が抜け切っていて。
上がる息と紅潮した頬で、詞葉はかろうじて尋ねる。
「冬、真さんは...いい、の?」
「ん。俺はいいんだ...残念だけど、ここだしね」
「う、うん...」
「君が満たされたら、それだけで俺は嬉しいよ。...その代わり」
ーー帰ったら...我慢できないから。詞葉の全てで....俺を受け止めてね。
「....っ!....う、うん」
「....愛してるよ、詞葉」
それから。詞葉は、冬真の大きくてあたたかな身体に包まれながら眠った。
◇
翌朝、目を覚ますとーー。
「起きて、詞葉さん」
「...ん?」
眠い目を擦り...そろりと開けた視界の先には、眩く光る朝日が顔を覗かせ始めていたーー。
ゆっくりと登ってくる太陽は、時が止まった感覚に陥るほど美しく...そして、目が離せなかった。
「すごく、綺麗....」
ポソリと溢すと、どうやら自分を抱き上げて連れてきてくれたらしい冬真が、すぐそばで言った。
「良かった、これが見せたかったんだ」
何と、あの森は冬真の家が所有する森で、少し歩けば朝日がとても綺麗に登るところも見られる場所だったらしい。
迷ったわけではなく、最初からそのつもりで冬真が来ていたことに驚いた。
そういえば、「月曜は有給をとっておいて」と言われていた。一気に謎が解けた気分だ。
「もう...言ってくれたら良かったのに。怖かったんですよ?」
「うん、ごめんね。本当は言うつもりだったんだけど、詞葉さんの反応が可愛くて、秘密にしちゃった」
少し眉を下げて謝ってくれる。
「...許します。キャンプ、楽しかったから」
「はぁ~、ありがとう。詞葉さん」
「ふふ、くすぐったいです」
抱きしめられて、いつも通り、たくさんのキスが落ちてきた。
「...よし。じゃあ、帰ろう」
「はい」
ニコニコと答えた詞葉に、冬真は表情を変える。
「詞葉さん」
「ん?」
ーー帰ったら、『約束』忘れないでね?
「........っ」
「詞葉さん、こっちおいで?」
「........?」
呼ばれて、素直に歩み寄る。
冬真が指し示した場所には切り株があり、そこにハンカチが敷かれた。
「はい。こちらへどうぞ。我が姫君」
すっと手を掬い上げると、流れるような仕草で手の甲に「ちゅっ」とキスされた。
「あ、ありがとうござ、います」
「ん。可愛い」
「も、もう。恥ずかしいから...」
冬真に、エスコートされながら腰掛ける。
「ごめん。でも、止まらない。思ったら口に出ちゃうんだ。はぁ....その顔もいいな。本当残念だ」
ーーもっと、君を俺でいっぱいにしたいのに。
「~~~っ」
思わず、と言った雰囲気でうっとり呟かれて....詞葉は頬を押さえてぎゅっと目を閉じた。
頭や手を撫でられ、耳や頬、瞼、額。色々なところにキスの雨が降ってくる。
「...むぅ。名残惜しいけど、仕事しなきゃ」
「.....仕事?」
「うん。大切な詞葉さんが、お腹空かせたりしたら嫌だから、食料調達してくるよ。...少しだけ離れるから、念のため火おこしとくね」
「......え」
冬真は素早く、燃えそうな薪を集めて火をおこす。
ライターも何もないのに手間取ることなく、原始的な方法でやって退けてしまう冬真にただただ感嘆した。
あっという間に目の前で、ぼうっと炎が上がって、薪をくべていく。
「す、すごい」
「そうかな?多分、獣人ならこれくらいはできるやつが多いよ?」
「そう、なの?」
「うん。あ....なんか居るな。....ちょっと待ってて?すぐ戻るけど、危ないからここから動いちゃダメだよ?」
「は、はい」
サッと走り去る背中を見送って、火にあたった。
急にシンと静まり返り、詞葉の胸に少しだけ恐怖感が芽生える。ブルブルと首を振って、自分の心を誤魔化しているとーー。
ガサッ!
「...きゃっ」
「....あ、驚かせた?」
「...と、冬真さん~」
突然そばに茂る葉が音を立てて出てきたのは、さっき離れたはずの冬真だった。詞葉は、ガクッと力が抜けてしまった。
「うん。ごめん、一人怖かったよね」
もう大丈夫だから、と言いながら、冬真は両手いっぱいに抱えた、果物や獲物を下ろした。
「え、こ、こんなに?今の、一瞬で?」
「うん?足りなかった?」
「う、ううん、そんなことないです。十分すぎるくらい。...あの短時間でこの量ってことに、びっくりして」
「はは、そっか」
ニコニコしながら、手早く獲物を捌いていく。
ナイフがないから、何やら石をガリガリして...研いだ部分で器用に行っているようだった。
詞葉には見えない位置で、隠しながらしてくれるのでホッとした。
そして、火で炙ったものと果物でお腹を満たす。
「ん!美味しい!」
塩なんてなかったはずなのに。
冬真が調理してくれた夕食は、シンプルながら臭みもなく、塩っけもあり、パクパク食べられた。
「良かった。いっぱい食べてね」
冬真は、目尻を垂れて微笑んだ。
◇
「...冬真さんって、頼りになるね」
お腹も満たされて、ちょこちょこと冬真が薪をくべてくれる焚き火を前に、ほうっと息を吐いた。
夜の帳が下りた森は真っ暗で、絶対に一人だったら耐えられなかっただろう。
でも隣に冬真が居れば、鳥や生き物の鳴き声がしても、ガサッと葉が揺れても、恐ろしさは感じず安心感で包まれている。
「そう?...嬉しいな。...寒くない?」
「うん。冬真さんがもってきてくれたブランケットも全部、本当あったかいよ」
「良かった」
炎に照らされて、冬真の顔がほんのり赤く見える。
実は今、大きな布が焚き火を囲むように数本の木に結ばれて、大きな野営のテントに様変わりしていた。
夕食を終えて、一息ついた頃、冬真がガサガサと自分のリュックを漁り始めた。
すると、出てきたのだ。
冬真のリュックは、某有名キャラの二次元ポケットさながら、ほんの小さな空間に大きな布、ブランケット、上着、救急セット、ジュースなど沢山のものが詰め込まれていたのだ。
(...どうやって圧縮したんだろう)
疑問が浮かばなくもないが....獣人ならではの力と技術があるのかもしれない。
その持ち物で、サッとテントらしき空間をつくり、地面には別の布を広げてくれた。
そうして、森で迷子になっているはずなのに、何とも居心地のいい空間が出来上がって、それから、ふたりでまったり過ごしているのだ。
(...いいかも)
冬真の言った通り、たまにはこんな風にキャンプも悪くない。
詞葉は、もうすっかり状況を忘れて楽しんでいた。
「...綺麗だね」
隣にぴったり寄り添う冬真にもたれかかって、詞葉は夜空を見ながら呟いた。
三日月と、細かなガラス細工が散りばめられたみたいな星が煌いている。
「...うん、綺麗だ」
「...冬真さん...見てる?」
「...見てるよ」
うっとりした声で返事をした冬真だが、詞葉は納得のいかない様子だ。
「...嘘」
「...どうして?」
「...........」
「....ん?」
サラッと、詞葉のまっすぐ流れる髪を梳く骨ばった大きな手。
「だって....さっきから私しか見てない、ですよ?」
頬を染めながら恥ずかしそうに俯いて。
むぅと、詞葉は抗議の言葉を口にする。
だが、その声は何とも弱々しく、照れ隠しだとすぐにわかった。
ふっと冬真が笑った気配がする。
「....こっち向いて?」
「....だめ。...きっと真っ赤だもん」
甘く促されて....ふぃっ、とわざと顔を背けた。
すると、クイッと肩を掴まれる。
「...詞葉の可愛い顔、俺に見せて?」
「........」
拒否を許さない強引な口調と肩を掴む力強さ。
その男らしさに、トクンと胸が高鳴って....詞葉はそろりと振り向いた。
二人を包む空気が....妖しく艶っぽさを含み、今、彼に自分が求められている、ということを敏感に感じてしまう。
ゴクリ。
冬真の喉仏が上下してーー。
「は、ぁ...」と、耐えるような息づかいが聞こえた。
「....最高だ、詞葉」
そこにあったのは、興奮と欲望を滾らせた冬真の瞳。
目の前の獲物を見つめて高まる身体は、荒くなった息を吐きながら、今まさに愛しい人を喰らおうとしていた。
「...我慢できない。ねえ、少しだけ。いいよね?」
「.....んぅ」
「はぁ...詞葉、詞葉」
うわ言みたいに名前を呼びながら、角度を変えて口付けられて...詞葉の息は乱れた。
「だ、め...こんな、の...」
「...ん、どうして?...夫婦なんだから、これくらい当然だろう?」
ちゅっ、ちゅっ、と絶えずキスを落としながら。
余裕なさげに、言い募る。
「んんっ...だって」
感触に耐えきれず、詞葉は艶めかしい声と表情に彩られればーー。
「....っ、詞葉っ」
『待て』などできないと、冬真が勢いよく襲いかかった。
「.......だ、め~っ」
グイッと冬真の胸を押し返すと、何とか動きが止まる。
「よ、良かった」
と、詞葉がホッとしたのも束の間。
「....わかった」
「え?」
「....俺は君と...イチャイチャしたいけど。君は、俺が触れるのは嫌なんだね」
しゅんと、落ち込んだ声でいじけられて、詞葉は焦った。
「そ、そんな!わ、私だってしたいです!」
「.....本当?」
「う、うん!」
「.....例えば、どんなこと?」
「え...え、と....手、繋いだり。ぎゅってしたり。....キ、キキ、キスとかもしてほしいし、...本当は他にも」
「....他、にも?」
期待の眼差しで、先を促される。
詞葉は、誤解されたままなのは嫌でーー。
「わ、私の...全部に触れて、ほしい、って...いつだって、思って、ます...よ?」
カァ、と羞恥の滲む顔で途切れ途切れに言った。
「.....もちろんだよ」
「......へ?」
「俺だって、いつも君に触れていたいんだ。....すぐに、満たしてあげるからね?」
「え、え、え?...い、今のは、ただ...それほどの気持ちだって伝えたかっただけで」
「うん...わかってる。詞葉の気持ちは全部....わかってるから」
(ぜ、絶対、わかってない~!)
「だ、だめっ、...外ですっ」
「大丈夫。テントもあるし...それに」
ーーここ、貸し切りだから。
「....へ?か、かし?」
聞こえた言葉が信じられなくて。
全く状況のつかめない詞葉は、一瞬ポカンとなった。
「今、何て言っ....あ...だめっ、私まだ、ちゃんと話聞いて...ないっ」
「は、ぁ。これ以上、待てなんてできない。....ああ、こんなに期待して。話は後だ、いいよね?」
「んん...」
あっという間に、座る冬真の膝に乗せられ、大きなブランケットで身体を隠された。
そしてーー。
気づいた時には、支えてもらっていないとグラリと倒れてしまうほど、力が抜け切っていて。
上がる息と紅潮した頬で、詞葉はかろうじて尋ねる。
「冬、真さんは...いい、の?」
「ん。俺はいいんだ...残念だけど、ここだしね」
「う、うん...」
「君が満たされたら、それだけで俺は嬉しいよ。...その代わり」
ーー帰ったら...我慢できないから。詞葉の全てで....俺を受け止めてね。
「....っ!....う、うん」
「....愛してるよ、詞葉」
それから。詞葉は、冬真の大きくてあたたかな身体に包まれながら眠った。
◇
翌朝、目を覚ますとーー。
「起きて、詞葉さん」
「...ん?」
眠い目を擦り...そろりと開けた視界の先には、眩く光る朝日が顔を覗かせ始めていたーー。
ゆっくりと登ってくる太陽は、時が止まった感覚に陥るほど美しく...そして、目が離せなかった。
「すごく、綺麗....」
ポソリと溢すと、どうやら自分を抱き上げて連れてきてくれたらしい冬真が、すぐそばで言った。
「良かった、これが見せたかったんだ」
何と、あの森は冬真の家が所有する森で、少し歩けば朝日がとても綺麗に登るところも見られる場所だったらしい。
迷ったわけではなく、最初からそのつもりで冬真が来ていたことに驚いた。
そういえば、「月曜は有給をとっておいて」と言われていた。一気に謎が解けた気分だ。
「もう...言ってくれたら良かったのに。怖かったんですよ?」
「うん、ごめんね。本当は言うつもりだったんだけど、詞葉さんの反応が可愛くて、秘密にしちゃった」
少し眉を下げて謝ってくれる。
「...許します。キャンプ、楽しかったから」
「はぁ~、ありがとう。詞葉さん」
「ふふ、くすぐったいです」
抱きしめられて、いつも通り、たくさんのキスが落ちてきた。
「...よし。じゃあ、帰ろう」
「はい」
ニコニコと答えた詞葉に、冬真は表情を変える。
「詞葉さん」
「ん?」
ーー帰ったら、『約束』忘れないでね?
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主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
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…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
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