お妃さま誕生物語

すみれ

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本編

再生

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王宮の裏手がシーリアは苦手だ。
クーデターで亡くなった戦士達の共同墓地があるから。
どんな顔をして行けばいいかわからない、リヒトールのせいで亡くなった。

リヒトールの言葉一つで世界は変わる、たくさんの命を犠牲にして。
犠牲があるとわかっているのに指示をする、それが必要なことだとしても恐い。
犠牲なんて言うけど、結局はたくさんの人を殺す指示だ。
その指示を出す要因の一つが私だってことぐらいわかってる。
私が殺させた、何百という人間を。それが敵だったとしても、私は背負っていかなければならない。
王宮の中でこの数、この国全体でみると、いかほどの数か。リヒトールは同時に地方の制圧もしている、マクレンジー商会の流通網を使えば難しい事ではなかった。

自分はリヒトールのように戦場に身を置いたわけでもなく、安全なところで守られていた。

「ううん。後ろ向きにならない、って覚悟したじゃない、頑張れシーリア。」
自分で自分に叱咤しったしながら、立ち上がった。
「姫様どうかされましたか?」侍女のセシルが駆け寄ってきた。
正式な戴冠式たいかんしきになるまで、姫様と呼びたいらしい、奥様でもお妃さまでもお嬢様でも何でもいいわ、中身は同じ私だもの。
「共同墓地に行きます。お花を用意して欲しいの。」


黒衣に身を包み、花の絶えない共同墓地に行く。女性の姿が多い、残された家族なんだろう。
リヒト様にもしものことがあったら、私もこの一人だった、きっと何もすることができず、嘆き悲しんでいた。
石碑せきひが欲しいわ、この意味を風化しないように。」

「夫を返せ!!」大きな声が届いた、警備に取り押さえられた女性が叫んでいる。
あの姿は私だったかもしれない、
下級兵士にとって、王とマクレンジー商会が決裂けつれつしたことなど知らないままにクーデターが起こったのだろう。
彼らに選ぶすべなどない、命じられるままに戦闘に入って亡くなった。
戦力の優勢がどちらかなんて知らされることなく、無謀な命令だったのかもしれない。
リヒトールは負ける土俵に立たない、負けないように準備をしたはず。

「時を戻すことはできないわ、だから貴女の御主人の命に恥じない皇妃になります。」
別に答える必要はなかったけど、自分自身に言いたかった。
警備兵に向かう「あなた達にも、イヤな役をさせてしまっているわ。あなた達がほこれる皇妃になります、それが何かはわからないけど、生きてる私の責任だわ。」
元ヒステン国兵士にとって、取り押さえてる女性は仲間の家族かもしれない。


この国が私の国、リヒト様と生きて行く地。
持ってきた花を墓碑ぼひそなえる、私にしかできない事なんてない、私は特別な人間ではない。でも私にはリヒト様しかいない、私のために、ここにいる。
命を奪ったことへの罪悪感を持ってしまうのは当然かもしれない、けれど止まってられないんだ、これがこの国の始まりなんだから。

胸をはって前を見つめる、たくさんの女性が見てる。
「それでも私達は生きて行くの、貴方達もよ。この国の国民だからよ。」
冷静になれ、私、今何が必要なのか。
「救護棟では、まだまだ人出がたりないわ、包帯を洗ったり、症状にあった食事を作ったり、手伝って欲しいの。話をしておくので、手伝ってくれる人は直接救護棟を訪ねてほしい。」
侍女のセシルを見ると、救護棟に皇妃の名で指示の準備をすると言ってくれた。

私は歩いて行く、その先にリヒト様がいるから、私の後に幾多いくたの人々が続くから。



腐敗と汚職と献金の帳簿がゴロゴロしている、商人なら倒産してる。
リヒトールはマクレンジー商会の仕事をこなしながら、国内機関の改革にのりだしていた。
商会の流通網がそのまま政府機関となり、動き出している、地方で指導者となる人間は十分に育ててあった。
他にもやることはたくさんある、不穏分子ふおんぶんしの貴族達や、水利開発、直属領土となった土地の活用。


まだまだ、処分が必要らしい、首をねるから、宮殿に参上せよと言っても来る者などいないだろう。さっさと国から逃亡して欲しいぐらいだ、とリヒトールは思っていた。
どこかに逃亡ルートを作るか、わざと穴のあいた、逃亡先はどこの国にしようか。
逃亡先で管理のしやすい国はどこだ。
復活を夢見ながら他国で野垂れ死にしてくれるのが、一番手間がかかからない、警備の増員をする程度で済む。
旗印になる王族はもういない、たっぷり踊ってくれ。


北のアルハン元伯爵領の道を拡大補強すれば、さらに北へと繋げられる。アルハンが使えない奴でよかった、すでに処分したから、すぐにできるな。
北の山脈は一大水源地だ。この山から流れる水の一つはヤムズ大河となって、各国に支流が別れていき、大きな利権を狙える。管理構造と人が問題だな、現地で使える奴はいるのか。腐敗しなかったやつが必要だ、腐敗する人間は能力のないやつが多い。

「ウィリアム、アルハンの地図と系図はあるか?」
「すぐに出せます、処刑の時に調べましたから。」
「ケインズ、軍ですぐにアルハンに出せる隊はいるか?」
「地域調査と不要人物の判断、処理を兼ねるなら、要人警護2部隊がすぐにまわせます。」
「ポール、それとは別で、西のローラン王国への穴のあいた逃走ルートを作れ、それを元貴族達に密かに流れるようにしろ。ルートの要所には諜報部隊を待機させておけ。」
「ダーレン、ローラン王国に潜むものと繋げろ、陽動が必要だ」

側近それぞれも必要な人員の確保と指示に動き出す、新しい国が機動する。

国は破壊された、再生は破壊を上回る規模で行われようとしている。
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