お妃さま誕生物語

すみれ

文字の大きさ
51 / 96
本編

ジェファーソン・グラック

しおりを挟む
「皇妃にもう一度、お会いしたかったんだ、上手くいけば融資の件も話せるとそれだけだったんだ。」
こんな大事になると思わなかった、と第2王子が帰国の途でつぶやいた。
皇妃はたいそう美しいと聞く、男二人で何をしようとしたかは想像がつく。自分の欲望を叶え皇妃をはずかしめようとした、融資の事はついでであろう。
皇妃には護衛が付き従っているぐらいわかるだろう。
下心がなかったら侵入したりしない、失敗するとごまかして悪くないと言う。他国で皇妃の部屋への侵入が大事になるとは思わなかった、とはどうしてそう思えるのか。
自分の仕える王子が情けなくて悲しくさえ思える。

債務期限が過ぎており、マクレンジー帝国の対応は遅かれ早かれこうなったのはわかる。反対にキーリエ王家は未だに甘い考えでいる。これでいいのか、一番の被害者は国民だ、一所懸命働いて税を納めている。
債務がどこに使われているかは我々貴族にはわからない。明確になってないところに多くが使われているというこどだ。
ジェファーソン・グラックは王家の甘い考えにうれいを覚えざる負えなかった。
メイプ連合とは、マクレンジー帝国から借金したものの集まりだ、そして借金を返したくないものの集まりでもある。それでいいのか、マクレンジー帝国が怒るのも当たり前だ。
自分はこの戴冠式で何を見た、メイプ連合の国と他国の違いはなんだ。クリヨン王国は同じ債務国でありながら、メイプ連合に参加しなかった。
エメルダ連邦国も来ていたはずだ。自分では会う事もできないが話はきいている、国民が議会政治を始めたと。

負傷した王子を連れて急がすこともできず、焦る気持ち押さえながら国に帰り着くと王宮は崩壊していた。


残存している兵士の宿舎に多くの負傷者が収用されていた。
マクレンジー帝国の兵士が、見たこともない強力な小型爆弾を投げ込んだ、と聞くことができた。安全装置を外すと目標に投げるのだ、地に着く頃に爆発が起こるらしい、爆風の規模も桁違いに大きいようだ。
直撃だけでなく、壁や屋根の崩壊でたくさんの人が亡くなっていた。
それは突然のことで、爆音と共に天井が落ちてきたらしい。
王宮に勤める兵士も事務官もたくさんが亡くなっており、王の執務室であった辺りや謁見の間辺り、王家の住居部の損壊が特にひどかった。

瓦礫がれきをかきわけると王であろう、王の指輪をした腕を見つけることが出来た。
「父だ、これでは兄もすでに生きてはいないだろう、僕が王だ、次の王は僕だ。」
怪我から回復兆候にある第2王子が嬉々ききとして立ちあがった。
絶望に襲われた、この王子では生き残った国民にも地獄が待っている。債務が無くなったわけではないし、マクレンジー皇帝はこの王子を許しはしないだろう。


「貴殿はわかっておられよう。
貴殿が日参して自分の命より国民を守ろうとし、誠意をみせていたのを我々は知っている。貴殿があそこから逃げる事は容易かったはずなのにだ。」
いつの間にか私の後ろにマクレンジー帝国兵が立っていた、かなり身分が高そうな兵士だ。
「我が皇妃がキーリエ王国のリンゴでタルトを作ると言われた、キーリエの国民を守るために。
我々はキーリエの国民を守った、王家の悪政から。貴殿はどうする?」
考える前に身体が動いた、
「国民を守りたいなんて、おこがましいことは言わない、だが絶望から逃してやりたいんだ。」
王子を斬り捨て、返す刃で自身を突き刺そうとしたが、マクレンジー帝国兵に剣をはじき飛ばされた。
「死なせてくれ!!
あんなのでも、王子なんだ。私は貴族として生まれて王家を守るべき者だったんだ。」
生き恥をさらしたくない、王家の裏切り者は死なせてくれ。
「皇妃が守った国民は誰が守る、この国で生まれた者が守るんだ。
貴族も民を守るものだろう?
自分の領民だけでなく、今度は国民を守るんだ。」
この国の中枢機能はマヒしてる、すでに腐っていた、今はそれもいない。
王に進言した者は閑職かんしょくに追いられるような国だった。
この国の王家がないがしろにした国民を、他国の妃である皇妃が気にかけ守った。革命直後のエメルダ連邦国で聖女と呼ばれた方だ。

「主家の王子を斬った私でも許されるだろうか、皇妃に命をしたい、皇妃にリンゴを届けたい。」
涙があふれでた、立っていられず膝をついた。皇妃なら、王子を斬った私に許しをくれるのだろうか。
「俺はアンドロ・ペッパーってんだ、マクレンジー帝国で将軍補佐官の一人だ。」
高官と思っていたが、そんなに高位職と思わなかった、下級兵士と同じような戦闘服だから。
「俺もここで生まれた、マクレンジー隊はいろんな国の出身者の集まりだ。リンゴを持って帰るように言われてる、俺の記憶だと今年の収穫は終わったと思うが。」
「債務の期限がせまって王家は農家にも重税をかけ、強制労働に駆り出したので収穫が悪かった。質も悪いし量も少ない。」
「来年の収穫まで戻れないってことか。」
アンドロ・ペッパーが笑って言った。そうか全部わかってたんだな。
「さて、隊員を集めて政策会議をしようじゃないか。
少数精鋭で来たから人数が足りない、議長は俺でいいか。貴殿は内政参謀な、俺は国を出てから長いので現状がわからないんだ。
うちのチームはすごいぞ、それぞれの専門家にも負けない識者が揃っているぞ。
それでも人数が足りないな、使えそうなやつ知らないか。
国を作り直すのは2回目だ、俺は経験者だからな、頼りにしていいぞ。
王族は確実にやったから大丈夫だ、貴殿がやった第2王子が最後だ。」
待ってたんだとアンドロは続けた。


王宮の崩壊でたくさんの人が集まっていたが、恐れてか誰もでてこない、まだ爆発があるかと思っているのかもしれない。

「我々が王宮を制圧した、抵抗しなければこれ以上はない。もし暴動などが起これば同じように制圧する、新しい政府が立ち上がるので心配しないように。」
アンドロ・ペッパーの大声が響いた。
「ブリューダルの革命も経験者なんだ。
エメルダ連邦の任務が終わって戻ってきたら、この任務を与えられたんだ。我が主は人を見るのが上手いよ。」
と言ってる。
エメルダ連邦では代表の一人となり再建に尽くしたらしい。
恐ろしい人と有名なリヒトール・マクレンジーとはどんな人物なんだろうと興味がわいたが、今はそれどころではない。




キーリエ王国はマクレンジー皇帝を君主とする属国レルバンとしてマクレンジー帝国の全面指導の下で再生に向かった。
数ヶ月後、私は総領事となったアンドロ達とマクレンジー帝国におもむいていた。


皇帝と皇妃に拝謁はいえつすることとなり、咲き始めたリンゴの花を一枝献上した。
「白くてかわいい花なのね。」
両手でしっかり枝を持った皇妃がほほ笑む。
この皇妃が我が国を救ったのだ、隣国だったタッセル王国はすでにない。
王家と国名は無くなったが、それだけだ。リンゴ以外に果物を中心に支援され、税金が緩和かんわされたことで国民生活は格段によくなった。

「ありがたきお言葉。」
言いたいことはたくさんあるが、情けないことに涙で続かない。
「ジェファーソン・グラック、あなたが王家の裏切り者の汚名を被っていることを知っています。
でも、小娘の私でさえ、あなたが国を想い国の為に駆けずり回っている事も知っています。
それはキーリエ王家がしなかったことだわ、あなたの国の作るリンゴが楽しみなの。
このリンゴの花がたくさん咲いている風景は見事でしょうね、あなたが守ったのよ。」
ね、と笑う皇妃は光に包まれているようだった、この先の希望の光に。

何も考えず言葉がこぼれ出た。
「私の命と忠誠を皇妃にささげます、どうかどうか。」
泣きながら宣誓する私、皇妃がどうしましょ、と皇帝に言っている。
「皇妃に危険ある時は地の果てからでも駆けつけよ。」
「我が命つきましても。」
リヒトール皇帝が皇妃の代わりに答えてくれ、私の仕える姫君を与えてくれた。
この先何があっても騎士として死ねるのだ。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI
ファンタジー
魔法が当たり前に存在する世界で17歳の美少女ライファは最低ランクの魔力しか持っていない。夢で見たレシピを再現するため、魔女の家で暮らしながら料理を作る日々を過ごしていた。  低い魔力でありながら神からの贈り物とされるスキルを持つが故、国を揺るがす大きな渦に巻き込まれてゆく。 恋愛×料理×調合

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央
恋愛
【完結】 「なんでわたしを突き落とさないのよ」  学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。  階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。  しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。  ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?  悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!  黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...