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本編
狂乱
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お気に入りの木陰でポール夫人、ケインズ夫人といつものようにお茶をしながら、シーリアが思案していた。いつリヒトールに言おう、いつ医者の診察を受けようかと。
リヒトールが先か、医者が先か、それにしても眠い、身体がたるい。
ポール夫人は出産経験者だ、相談するには最適である。
「シーリア様、体調が悪いなら直ぐに診察を受けるべきです。もし妊娠でなければ、受診してますでしょ。」
一番年長のケインズ夫人が優しく諭す。
「恥ずかしいお気持ちはわかりますが、不安を取り除くことが最優先ですわ。」
シーリアの様子が普段と違う事を気づかない侍女達ではない。体調が優れないのではないかと相談していた、月のものも滞っていてもしかしてと。
「お医者様をお呼びしてもらいたいの。」
シーリアの言葉に反応したのは侍女達だけではない、伝え聞いたリヒトールが医者より早く駆けてきた。
シーリアに月のものもがきてないことを、毎夜抱いているリヒトールも気づいていた。
みんながわかっていながら、医者の一歩が踏み出せずにいた。結婚して4年間できなかったからだ。
「期待させて間違ってたらどうしましょ、お医者様にみてもらうの恥ずかしいわ。」
リヒトールにもたれて、シーリアは頬を染めながら言う、
「間違いでもいいよ、体調が優れないのは心配だ、医者に診てもらう必要がある。」
すぐにやって来た医者の診察が始まった。
「おめでとうございます、ご懐妊でごさいます。
お妃様は普段から運動の少ない方なので、体力をつけるために無理しない程度の散歩をされる事をお勧めします。」
「よくやった、シーリア、愛してるよ。」
シーリアを抱きしめたリヒトールは頭の中で、これで完全に私のものだ頑丈な鎖をつけた、と思っていた。
お妃さま懐妊の話はすぐに王宮を駆け巡り喜びで包まれた。特にリヒトール信者達の間では狂喜乱舞だ、次代だ。
各国にもマクレンジー皇妃懐妊の話はすぐに流れ、デュバル公爵家やセルジオ王家からは早々にベビー用品が届いたが、周りはかたずを飲んで様子をみていた。王子と王女では対応が大きく違う。
先に王子を産んでいたハリンストン王国アンヌ妃からは興奮覚めやらない書簡が届いた。
メーソンがアンヌを連れ帰り、4ヶ月後の結婚式の時にはすでにアンヌは妊娠していたのだ。
リヒトールが側近達をみて考えた。
「おまえたち、ケインズとポール以外は結婚してないな。
私の子供にお前達の子供が欲しい、すぐ作れ。」
とんでもない事を言うが、リヒトール信者にとっては次代に自分の子供が従うというのは確定事項である、直ぐに行動を起こした。
側近達が次々と結婚し、新婦が妊婦であったというのは有能であると言うべきか。
王宮では恐ろしい事が起こっていた、シーリアが散歩を始めたのだ。
「お医者様から散歩を勧められたの。」
微笑みつきである、ただし散歩に選んだコースがよくなかった。普段は行かせてもらえない地域を散歩コースに選ぶのだ。
「だって、赤ちゃんの為にお散歩がいるのよ、今までと違うとこは新しい感動があるわね。」
シーリアの確信犯に誰も逆らえない、次代を人質に取られているのと同じだ。
武器庫に向かった時はリヒトールが飛んできた、地下室のワインセラーのさらに下の階段を降りると言われた時はソムリエが泣いて止めた。
側近の新しい嫁達とシーリアがお茶するようになって、妊婦同士だと不安も共有できるらしいと安心できたのは束の間だった。
側近と結婚するほどの女たちだ、強者である。結婚のタイミングなく長く付き合っていた者が多かった、一番若くおとなしいのがシーリアである。
妊婦4人とこれから妊娠予定の妻2人が噴水の魚を追いかけている、貯蔵庫でかくれんぼをしている、街で買ってきたお菓子を毒見なしで食べている、次々とリヒトールと側近達に報告が来る。
おかげでシーリアにとって順調に体力がつき、楽しい妊娠時期を過ごすことができた。
そしてとうとうシーリアに陣痛がきた、リヒトールは気が気でない。
シーリアの手を握って離さず、部屋から出て行かない、苦しむシーリアの指がリヒトールの手に食い込む。
もう誰もがリヒトールを部屋から追い出すのを諦めていた、医者も侍女たちも夫が出産の部屋にいるのを初めてみた。
長い時間の後、皇女が誕生した。
第1皇女リデル・マクレンジーの誕生である。
まっさきに皇女を抱いたのはリヒトールだ、これが前例となりマクレンジー帝国で夫が出産に立ち会う事があるようになった。
「シーリアよくがんばったね、私達の子だ、うれしいよ。」
リヒトールにとって子はうれしいが、それよりシーリアが無事なのが何よりうれしい。
シーリアを写したような皇女の誕生に国中が湧いた、単性繁殖と思うほどそっくりだ。
シーリアの髪が薄いピンク色に見える時があるのに比べ、皇女はリヒトールと同じ黒髪に見える時があるぐらいの違いしかないのだ。成長するにつけ、銀の髪が光によって銀に黒を溶かしたような色に輝くようになるのは先の話である。
生まれたての皇女に縁談が数多く舞い込んだ。マクレンジーの力を持ち、皇妃そっくりな容姿、なんとしても手に入れたい。
皇女の誕生に世界中の狂乱が始まった。
特に極東首長国とハリンストン王国が有力候補であり、力が入っている。命名式に参列という名目で王自身が面会に来た。
王が王太子を連れてきたが、王達の興奮に比べ、王子達は赤ん坊より年の近いお互いが気になる。
赤ん坊を見て恋情をだくような年齢ではない、極東首長国王太子ガサフィがもうすぐ6歳、ハリンストン王太子レオナールが3歳である。だが、すでに知性が高いと誉れのガサフィは状況がわかっていた、そしてリデルの容姿も。「君は僕のものだよ。」父譲りである。
シーリアは2年後にリヒトールにそっくりな第1皇子ジェラルド、その3年後に黒髪緑の瞳でシーリアに似た第2皇女サーシャを出産することになる。
リヒトールが先か、医者が先か、それにしても眠い、身体がたるい。
ポール夫人は出産経験者だ、相談するには最適である。
「シーリア様、体調が悪いなら直ぐに診察を受けるべきです。もし妊娠でなければ、受診してますでしょ。」
一番年長のケインズ夫人が優しく諭す。
「恥ずかしいお気持ちはわかりますが、不安を取り除くことが最優先ですわ。」
シーリアの様子が普段と違う事を気づかない侍女達ではない。体調が優れないのではないかと相談していた、月のものも滞っていてもしかしてと。
「お医者様をお呼びしてもらいたいの。」
シーリアの言葉に反応したのは侍女達だけではない、伝え聞いたリヒトールが医者より早く駆けてきた。
シーリアに月のものもがきてないことを、毎夜抱いているリヒトールも気づいていた。
みんながわかっていながら、医者の一歩が踏み出せずにいた。結婚して4年間できなかったからだ。
「期待させて間違ってたらどうしましょ、お医者様にみてもらうの恥ずかしいわ。」
リヒトールにもたれて、シーリアは頬を染めながら言う、
「間違いでもいいよ、体調が優れないのは心配だ、医者に診てもらう必要がある。」
すぐにやって来た医者の診察が始まった。
「おめでとうございます、ご懐妊でごさいます。
お妃様は普段から運動の少ない方なので、体力をつけるために無理しない程度の散歩をされる事をお勧めします。」
「よくやった、シーリア、愛してるよ。」
シーリアを抱きしめたリヒトールは頭の中で、これで完全に私のものだ頑丈な鎖をつけた、と思っていた。
お妃さま懐妊の話はすぐに王宮を駆け巡り喜びで包まれた。特にリヒトール信者達の間では狂喜乱舞だ、次代だ。
各国にもマクレンジー皇妃懐妊の話はすぐに流れ、デュバル公爵家やセルジオ王家からは早々にベビー用品が届いたが、周りはかたずを飲んで様子をみていた。王子と王女では対応が大きく違う。
先に王子を産んでいたハリンストン王国アンヌ妃からは興奮覚めやらない書簡が届いた。
メーソンがアンヌを連れ帰り、4ヶ月後の結婚式の時にはすでにアンヌは妊娠していたのだ。
リヒトールが側近達をみて考えた。
「おまえたち、ケインズとポール以外は結婚してないな。
私の子供にお前達の子供が欲しい、すぐ作れ。」
とんでもない事を言うが、リヒトール信者にとっては次代に自分の子供が従うというのは確定事項である、直ぐに行動を起こした。
側近達が次々と結婚し、新婦が妊婦であったというのは有能であると言うべきか。
王宮では恐ろしい事が起こっていた、シーリアが散歩を始めたのだ。
「お医者様から散歩を勧められたの。」
微笑みつきである、ただし散歩に選んだコースがよくなかった。普段は行かせてもらえない地域を散歩コースに選ぶのだ。
「だって、赤ちゃんの為にお散歩がいるのよ、今までと違うとこは新しい感動があるわね。」
シーリアの確信犯に誰も逆らえない、次代を人質に取られているのと同じだ。
武器庫に向かった時はリヒトールが飛んできた、地下室のワインセラーのさらに下の階段を降りると言われた時はソムリエが泣いて止めた。
側近の新しい嫁達とシーリアがお茶するようになって、妊婦同士だと不安も共有できるらしいと安心できたのは束の間だった。
側近と結婚するほどの女たちだ、強者である。結婚のタイミングなく長く付き合っていた者が多かった、一番若くおとなしいのがシーリアである。
妊婦4人とこれから妊娠予定の妻2人が噴水の魚を追いかけている、貯蔵庫でかくれんぼをしている、街で買ってきたお菓子を毒見なしで食べている、次々とリヒトールと側近達に報告が来る。
おかげでシーリアにとって順調に体力がつき、楽しい妊娠時期を過ごすことができた。
そしてとうとうシーリアに陣痛がきた、リヒトールは気が気でない。
シーリアの手を握って離さず、部屋から出て行かない、苦しむシーリアの指がリヒトールの手に食い込む。
もう誰もがリヒトールを部屋から追い出すのを諦めていた、医者も侍女たちも夫が出産の部屋にいるのを初めてみた。
長い時間の後、皇女が誕生した。
第1皇女リデル・マクレンジーの誕生である。
まっさきに皇女を抱いたのはリヒトールだ、これが前例となりマクレンジー帝国で夫が出産に立ち会う事があるようになった。
「シーリアよくがんばったね、私達の子だ、うれしいよ。」
リヒトールにとって子はうれしいが、それよりシーリアが無事なのが何よりうれしい。
シーリアを写したような皇女の誕生に国中が湧いた、単性繁殖と思うほどそっくりだ。
シーリアの髪が薄いピンク色に見える時があるのに比べ、皇女はリヒトールと同じ黒髪に見える時があるぐらいの違いしかないのだ。成長するにつけ、銀の髪が光によって銀に黒を溶かしたような色に輝くようになるのは先の話である。
生まれたての皇女に縁談が数多く舞い込んだ。マクレンジーの力を持ち、皇妃そっくりな容姿、なんとしても手に入れたい。
皇女の誕生に世界中の狂乱が始まった。
特に極東首長国とハリンストン王国が有力候補であり、力が入っている。命名式に参列という名目で王自身が面会に来た。
王が王太子を連れてきたが、王達の興奮に比べ、王子達は赤ん坊より年の近いお互いが気になる。
赤ん坊を見て恋情をだくような年齢ではない、極東首長国王太子ガサフィがもうすぐ6歳、ハリンストン王太子レオナールが3歳である。だが、すでに知性が高いと誉れのガサフィは状況がわかっていた、そしてリデルの容姿も。「君は僕のものだよ。」父譲りである。
シーリアは2年後にリヒトールにそっくりな第1皇子ジェラルド、その3年後に黒髪緑の瞳でシーリアに似た第2皇女サーシャを出産することになる。
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