ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿

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04月夜の宴①

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 ルイとレオポルド王子の婚礼から半月過ぎた。新たに王族として加えられたルイは、まだ宮殿の色に染まりきることができていない。

 夫妻は別々に暮らしていて、ルイは婚礼の日以降は夫と会っていない。もちろん、王宮のなかでは単独行動が基本となる。侍女たちがいなければ心細くて辛い。

 ここに来てから今日の日まで、祝宴が立て続けに行われている。何をお祝いしているのかは知らされていないが、毎日が酒盛りというのはおめでたいことである。
 婚礼では雑な扱いをされたかと思えば、このような宴には律儀に招いてくれたりする。ルイは静かに暮らしたいと望んでいたが、王族からの誘いとあっては一度は受けておくべきだ。
できるだけ宴席の端のほうにちょこんと座る。目立たないように辺りに視線をやらずに存在感を消す。

「やぁ、これはルイ妃」

 それでも話しかけてくる相手はいる。
 声を掛けてきたのは老年の国王、フェリペ王である。レオポルドの実父だが顔はあまり似ていない。いや、王が老け顔すぎてわからないだけかもしれない。覇気のない老人のような風体であった。

「レオポルドの妃なのに、たしか君は男だったな。それとも実は君は女性なのかな」

「恐れながら、身も心も男でございます」

 こちらの返答に大爆笑する王は、宴でかなり飲み過ぎているらしい。最近は酒と女に現を抜かしているという宮内の噂のとおり。王は俗物であった。

「もったいない‼その美貌で男とは、さぞや両親は長男であったかと嘆かれただろう」

「さぁ、どうでしょう」

「はははっ。いやはや、まぁ飲みたまえ。エスペランサの姫君よ」

 わざとらしく姫などと呼んでくる。人を小馬鹿にしながら王は宴席に戻っていった。新たな仲間のことにはあまり興味がないらしく、ルイとは数回やり取りを重ねただけであった。

 ルイと同じように端でひかえていた王妃からも挨拶がなされた。だがこちらも、彼のことはあまり関心がない様子であった。
 「レオポルドをよろしくね」と声は柔らかいものだったが、こちらに向ける表情は素っ気ない。石ころでも見るかのような冷めた視線に、周りの従者も慌てだす始末である。
 ルイは自分が王や王妃に嫌われていることを雰囲気からわかってしまった。

(予想はしていたけど、やはり歓迎されているはずがない)
 
 他にもレオポルド王子の兄君であるマルクス王子、ロイド王子といった同世代の相手からも、ルイはもてなしを受けた。
 ただ特に長男マルクスからはあらかじめ厳しく釘を刺された。「王宮で変な気は起こすなよ」とか「弟にはあまり近づくな」とか言われる。敵意むき出しの彼にも、ルイは朗らかに受け答えをした。

「レオポルドに変な色目でも使ってみろ、ただでは済まさないからな」

 脅迫めいたことを言われたが、そのような危ないことをする気力はない。そんな趣味も経験も持ち合わせてはいない。まぁ故郷で母にさんざん知識を入れ込まれたが。

 マルクス王子もロイド王子も外見だけならもう立派な大人のように見える。年齢はわからないが、弟のレオポルド王子があれだけ幼いため、大事に思っているのだろう。

「ご忠告ありがとうございます」

 笑顔を絶やさずに、王族からの攻撃をすべて回避していく。ルイは早々に宴の席から抜け出したかった。面倒な人たちとの交流は、これ以上は気持ちが耐えられない。自分の心が擦り切れる前に気分転換に出かけたくなる。


 幸いなことに外は静かで、鳥の声が響くほど穏やかな月夜であった。王宮のちょうど真裏には、張りつくように天然の湖が広がっている。知る人ぞ知る憩いの場として有名だ。
王宮暮らしのなかで発見したルイも、この湖畔を頻繁に訪れていた。

「ここだけはいいな」

 湖は暗闇に満ちていた。
 虫の羽音と、植物が風に揺らされる音。
 水のせせらぎが耳にこもると心が洗われる。自然のなかで悦に浸りながら、片手間で自分の至らない点を考えてみた。人間関係を良好にできないのはどうしてか。どのように人と接していくべきか。

 父と母から授けられた助言を思い起こしてみるが、今はそれらがまるで役に立っていない。やはり実際には難儀なことばかりで、言葉にできるほど単純なことではない。

「息が詰まるなぁ」

 やるせなさにため息が漏れていく。弱音をはいた途端、近くの木々からガサガサとかすかな物音がした。
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