ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿

文字の大きさ
8 / 81

08騎士の願いごと①

しおりを挟む
 ルイの王宮での暮らしは単調だ。
 ベッドから起き上がったら、すぐに身だしなみを整えに洗面台へ向かう。小一時間をかけて肌や髪に潤いを与え、故郷から持ち込んだ万能クリームと香油を塗りたくる。

 朝食は日によって食べる日と食べない日がある。気だるい時には食事を抜いて、自室をさっさと出ていくことも。侍女からすると健康を気にして食事をしてほしいところだが、「私は動かないから」とルイは体型を理由に断ってくる。綺麗な肢体がよく映える、彼のスタイルの維持はこのようなところから来る。

 ルイは王宮で働く従者たちとは仲が良い。そのため朝はもっぱら彼らと世間話をして盛り上がる。勤務前の目の保養にちょうどいいと、ルイの周りには男女問わずに人が集まる。

 衛兵や侍従女官にはお世話になっているからと、彼らに日用品や故郷の品をプレゼントしたりする。交流には気を遣い始めた彼なので、この点には余念がない。

 正午前になると、図書館で読書をしたり持参金についての帳簿をまとめたりする。自室のお菓子のストックが切れていれば、そちらの補充を優先する。厨房の一部を貸し切って、侍女たちと共に、あっという間に焼き菓子を作ってみせてしまう。

「おすそ分けに来ました」

「やったぁーールイ様のほどこし!!大好きですーー」

 これもまた従者たちにあげると喜ばれるので、ルイは余分にお菓子を作ることとしている。


 昼下がりには軽食をとってから、中庭の方へと足を運ぶことが多い。王宮の内部にそなえられた運動場のようなところで、日光浴をしたり、読書を徒然とするようにぜいたくできる。
 また、王家の子どもたちが鍛錬に使用していることもある。それを期待して出向いているわけではないが、同世代の王子たちがどのように力を向上しているのか観察することもあった。

「ルイ様ですか?」

「これは、ロイド殿下」

 ルイはその姿を見て会釈した。レオポルドの兄で、第二王子のロイド。長男ほどではないが体格に恵まれており、目元の彫りが誰よりも深い。
 また16歳とは思えないほどに思慮深いと聞く。女性たちが好きそうな洗練された印象で、ひとり黙々と運動をしているだけでも華がある。まさしく文武両道を絵に描いたような少年である。

「レオポルドは元気にしていますか」

 会うたびにロイドは、弟レオポルドの調子を尋ねてくる。王族のなかでも彼はルイに対して好意的だ。

「ええ、元気すぎるといいますか。いつも外を無邪気に走っていますよ」

「もっとあの活力を勉強に分けてほしいところです」

 ふだん、兄弟で接する機会はあまり無いようである。兄弟といえど16歳と10歳の年齢の開きがあり、話題もそれぞれ違う。一緒にいてもどちらかが気を遣うのが目に見えている。

「学校に入ったら、レオポルドも変わってくれるでしょう」

 ロイドの呟きにルイは確かにと相槌を打った。王侯貴族の子どもは11歳になると王立学校に入学するのが決まりとなっている。もちろん、レオポルドもその例外ではない。
他の兄たちと同様に、勉強と鍛錬まみれの日々が待っている。レオポルドの忙しい学校生活ももうじき。「楽しみだ」と幼い彼自身が胸をときめかせていたことを、ルイはこっそり思い出していた。

「あいつの良き話し相手でいてやってください。よろしくお願いします」

 屋内に戻ろうとする王子に向かって、ルイはもう一度深く頭を下げた。ロイド王子も日々に追われているのだとわかる。かつてレオポルドがひとりで心細い思いをしていたが今なら理解できる。この王宮で10歳前後の男の子といったら、レオポルド以外は見たことがないからだ。


 ロイド王子が出ていったあとの中庭は、穏やかな風が続いて居心地が良かった。王子のお付きの従者だけでも10人以上いる。あんなに人が多いと、どこにいても落ち着かなさそうだ。

「おーい、ルイーーーーここにいたのかーー」

 ばたばたと奥から少年の声と足音がしてくる。兄と入れ替わるように今度はレオポルドが来たらしかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...