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第24話 ②
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「その点に関しては全く問題ないと、私が保証しましょう」
難色を示す大臣たちに声を掛けたのはフィリベルトだ。
彼はアンの店を利用したことがあり、その花の品質を高く評価している。
「確かに『ブルーメ』は店自体は小さいのですが、売られている花の色は鮮やかで、しかもかなり花持ちが良いのです。品質だけで言うなら『プフランツェ』よりも上でしょう」
「ほほう、そんなに……」
「あの『プフランツェ』よりも?」
「フィリベルト殿がそこまで仰るなら問題はありませんな」
初めは否定的だった大臣たちも、フィリベルトが太鼓判を押すのを聞いて安心したらしく、反対する者はいなくなった。
「では、生花の方は『ブルーメ』に依頼するということで決まりですね」
「異議なし」
そうして、会議は滞りなく終了し、国王や大臣たちは会議室から退出して行く。フィリベルトが同じように退出しようとした時、背後から声を掛けられた。
「フィリベルト殿、少しよろしいですか?」
「ああ、ディーステル殿。もしかして『ブルーメ』の件ですか?」
フィリベルトに声を掛けたディーステルは、国王を補佐する行政官で、王家の栄典及び公式制度に関する実務を担っている。大臣の位こそ無いが、立場的には上位に格付けされている人物だ。
「はい。その『ブルーメ』は、若い女性が一人で切り盛りしている店だと小耳に挟んだのですが、本当でしょうか」
「ええ、その通りです。ディーステル殿の心配もわかりますが、私だけでなくリーデルシュタイン卿──騎士団長も懇意にしている店なのですよ」
「なんと! リーデルシュタイン卿が?!」
「はい。王女殿下とローエンシュタイン卿に留まらず、私や私の友人も『ブルーメ』はお気に入りの店ですよ。もし気になられるのなら、一度店を訪れてみては如何でしょう」
王女たちが推薦しているとはいえ、新しい店との取引にディーステルは消極的であった。しかし、国の英雄であるリーデルシュタイン騎士団長まで認める店ならば、信用しても良いかもしれないと考える。
「……なるほど。どちらにしろ、一度は会わなければなりませんからね。でもお陰様で気が楽になりました」
ディーステルはフィリベルトに礼を告げると、自身の執務室へと戻り、今日は帰宅すると補佐官に伝えた。
自宅へ向かう馬車の中で、ディーステルは「そう言えば……」と思い出す。
最近、息子が娘たちの誕生日によく花束を贈っていた。その花束を受け取った娘達は大喜びで、大切に部屋に飾っていたのだ。
あの時見た花束は色鮮やかで、娘達の雰囲気にも良く合っていた。さぞや腕が良い職人がいる店なのだろうと感心したのを覚えている。
(念の為『ブルーメ』以外の店も調べておいた方が良いだろうな……)
慎重な性格のディーステルは、不測の事態が起こった時のことを考え、評判が良い生花店をリストに加えることにした。
そうして、屋敷に戻ったディーステルを末の娘が出迎えてくれたのだが──……。
「お父様! わたくしお花屋さんで働きたいんですの!! とっても可愛いお店で、店主のアンさんがとても素敵な人ですの!! それはもう素晴らしい花束を作って下さるのよ!! お兄様も応援してくださるって!! わたくしをアンさんのお店『ブルーメ』で働かせてくださいまし!!」
「え? え? な、何だって?!」
──溺愛していると言っても過言ではない末っ子の言葉に、ディーステルはしばらく混乱したのだった。
難色を示す大臣たちに声を掛けたのはフィリベルトだ。
彼はアンの店を利用したことがあり、その花の品質を高く評価している。
「確かに『ブルーメ』は店自体は小さいのですが、売られている花の色は鮮やかで、しかもかなり花持ちが良いのです。品質だけで言うなら『プフランツェ』よりも上でしょう」
「ほほう、そんなに……」
「あの『プフランツェ』よりも?」
「フィリベルト殿がそこまで仰るなら問題はありませんな」
初めは否定的だった大臣たちも、フィリベルトが太鼓判を押すのを聞いて安心したらしく、反対する者はいなくなった。
「では、生花の方は『ブルーメ』に依頼するということで決まりですね」
「異議なし」
そうして、会議は滞りなく終了し、国王や大臣たちは会議室から退出して行く。フィリベルトが同じように退出しようとした時、背後から声を掛けられた。
「フィリベルト殿、少しよろしいですか?」
「ああ、ディーステル殿。もしかして『ブルーメ』の件ですか?」
フィリベルトに声を掛けたディーステルは、国王を補佐する行政官で、王家の栄典及び公式制度に関する実務を担っている。大臣の位こそ無いが、立場的には上位に格付けされている人物だ。
「はい。その『ブルーメ』は、若い女性が一人で切り盛りしている店だと小耳に挟んだのですが、本当でしょうか」
「ええ、その通りです。ディーステル殿の心配もわかりますが、私だけでなくリーデルシュタイン卿──騎士団長も懇意にしている店なのですよ」
「なんと! リーデルシュタイン卿が?!」
「はい。王女殿下とローエンシュタイン卿に留まらず、私や私の友人も『ブルーメ』はお気に入りの店ですよ。もし気になられるのなら、一度店を訪れてみては如何でしょう」
王女たちが推薦しているとはいえ、新しい店との取引にディーステルは消極的であった。しかし、国の英雄であるリーデルシュタイン騎士団長まで認める店ならば、信用しても良いかもしれないと考える。
「……なるほど。どちらにしろ、一度は会わなければなりませんからね。でもお陰様で気が楽になりました」
ディーステルはフィリベルトに礼を告げると、自身の執務室へと戻り、今日は帰宅すると補佐官に伝えた。
自宅へ向かう馬車の中で、ディーステルは「そう言えば……」と思い出す。
最近、息子が娘たちの誕生日によく花束を贈っていた。その花束を受け取った娘達は大喜びで、大切に部屋に飾っていたのだ。
あの時見た花束は色鮮やかで、娘達の雰囲気にも良く合っていた。さぞや腕が良い職人がいる店なのだろうと感心したのを覚えている。
(念の為『ブルーメ』以外の店も調べておいた方が良いだろうな……)
慎重な性格のディーステルは、不測の事態が起こった時のことを考え、評判が良い生花店をリストに加えることにした。
そうして、屋敷に戻ったディーステルを末の娘が出迎えてくれたのだが──……。
「お父様! わたくしお花屋さんで働きたいんですの!! とっても可愛いお店で、店主のアンさんがとても素敵な人ですの!! それはもう素晴らしい花束を作って下さるのよ!! お兄様も応援してくださるって!! わたくしをアンさんのお店『ブルーメ』で働かせてくださいまし!!」
「え? え? な、何だって?!」
──溺愛していると言っても過言ではない末っ子の言葉に、ディーステルはしばらく混乱したのだった。
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