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聖女を追放した国の物語
第13話 前哨戦
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俺達はアルデラン領の東の町で、補給を行っている。
ここまで来る途中に、ゾポンドートの軍勢がアルデラン伯爵の館を包囲しているのを見た。数は報告にあったように千で間違っていないだろう。
傭兵ギルドに依頼した敵への陽動攻撃が始まるまで、まだ時間があったので敵を迂回してこの町まで来た。
東の町は、空気が張り詰めている。
まだ本格的に戦端が開かれていないとはいえ、他領の軍隊が入り込んで領主の館を包囲しているのだ。心穏やかではいられないだろう。
街には人通りが少ない。
そんな中で、馬に乗った騎士が二十ほど連れ立っている。
敵の斥候でもいれば不審に思われ、報告されているだろう。
いや――
ここに斥候を放つ意味は無いか――
敵はもうこの街を、通り過ぎている。
物資の調達にやってくる部隊はいるかもしれないが、いたら蹴散らすか、隠れるか、逃げるか、状況に応じてその都度判断する。
敵に発見されないに越したことはないが、完全な隠密行動など無理な話。
敵兵に遭遇したら、その時はその時だ。
どのみち、俺に綿密な戦術などない。
せっかく町まで来たのだから戦闘前に補給をしておこうと、俺が懇意にしているサイザース商会に物資の補給を手配したのだ。
スピード優先で補給部隊を連れてきていないので、自分たちで現地調達する。
サイザース商会をはじめこの町の商人たちは、ゾポンドートの先遣部隊からも物資の提供を要請されていたらしい。
だが代金は支払われていない、無償供与だ。
商人たちは泣き寝入りするしかなかった。
そのため、早く奴らを追い払って欲しいと思っている。
密告はしないだろう。
情報ギルドと暗殺ギルドの構成員とも会った。
敵将の暗殺は無理そうだが、情報は仕入れることが出来ている。
敵が包囲に使っている部隊はおよそ二百、残りの八百が屋敷の前に布陣している。
突撃するのに八百は多いか?
傭兵部隊の陽動で数を減らせればいいのだが――、
そう思っていたところに報告が入る。
敵軍に動きがあった。
西の町で手配しておいた傭兵隊が、手筈通り包囲中の敵に攻撃を加え、即座に撤退した。それに対して敵部隊三百が迎撃に当たり、次いで追撃に移っている。
さらに二百の軍勢が街道を通り、別方向から西へと移動を開始した。
逃げる傭兵部隊の先に回り込んで、確実に殲滅する気のようだ。
さて、これからどう動くか?
敵の動きや思考を読むような能力は、俺にはない。
敵を分散させるために傭兵部隊を使ったが、こっちの誘いに乗らずに動かない可能性だってあった。
その場合はその状況に応じて、作戦を立てていく気でいた。
敵がどう動くのかを見て、こっちの出方を決める。
後の先を取る。
それが俺の方針だ。
そして敵は動いた。
こっちにとって都合よく、上手い具合に分散してくれた。
これからどう戦うか?
戦い方だけは決まっている。
俺の率いる騎馬隊に出来ることは、突撃だけだ。
問題はどこに突っ込むか……。
アルデラン伯の館前に残っている補給部隊に突撃するのが一番安全で、しかも敵に損害を多く与えられそうだが――
「敵の大将は?」
「街道を進む二百の部隊に、旗がありました」
「よしっ!」
「……また無茶を考えていますね?」
親衛隊長のリスティーヌが呆れたような目で、こちらを見つめる。
「まあそう言うな。早く決着がつくなら、それに越したことはないだろう?」
俺は親衛隊を集めて戦闘準備を命じる。
敵軍は歩兵と騎馬の混成部隊だ。
すぐに追いつけるだろう。
休息は十分に取った。
武装も完了して、いつでも出発できる。
俺は全軍を引き連れて、まっすぐに敵軍の将を目指す。
二十分ほど馬を走らせると、移動する敵軍の最後尾が見えてきた。
街道を進む敵は、まだこちらに気付いていない。
俺たちは騎兵用の槍、ランスを構えて敵の背後から突撃した。
敵軍の悲鳴と、自軍の馬が敵を蹴散らす音が響き渡る。
騒ぎが広がり、敵もこちらの存在に気づきだす。
よく見ると槍をまとめて運んでいる荷車があった。
騎馬隊と戦う想定で、用意していたのか?
しかし、移動中のこの混乱状況では、槍衾を構築して迎撃を行う余裕はない。
俺は無防備な敵軍を蹴散らしながら走り、騎乗している敵をターゲットにして槍を構えて突進する。
槍で攻撃した敵兵は、そのまま押し出されるように宙を舞い落馬する。
スピードを緩めない為に、全力で槍で敵を貫くのではなく、あしらうような感じで敵のバランスを崩し落馬させていく。
それでも衝撃はあるが、馬の走る勢いは衰えない。
混乱状態の敵の中にも、攻撃態勢に移った敵も現れる。
槍や剣や弓矢が散発的に襲ってくるが、問題なく盾で捌いていく。
続けて進行方向にいる、中隊長クラスの騎乗兵を槍で弾き飛ばす。
こちらの騎馬隊の勢いが衰えた時には周囲の敵は恐怖で混乱し、散り散りに逃げ出し始めた。
敵軍の先頭の方まで、混乱は広がっている。
ここから一息入れて、再度突撃を行えば敵軍を壊滅させられるだろう。
「おのれぇええええ!!! 尋常にっ勝負しろっ!!!!!」
敵軍の中でも、ひと際デカイ体躯の騎士が叫びながら突進してくる。
恐らくこの部隊の指揮官だろう。
自軍の雑兵を馬で蹴散らしながら、槍を構えて俺を目がけて突進してくる。
俺も槍を構え直して、敵を目指す。
お互いのランスが敵に向かって、一直線に飛ぶように進み――
ガァアアアアアンンン!!!!
金属がぶつかり合う、大きな衝突音が戦場に響き渡る。
俺は敵のランスを盾で受け流し――
俺のランスは敵の盾を弾き飛ばした。
敵将を一撃で仕留められなかったが、問題は無い。
体勢を大きく崩した敵将の胸のど真ん中に、俺の後ろを影のようについて来ていたリスティーヌの槍が突き刺さった。
周囲でも突撃してきた親衛隊員たちが、敵兵を屠っていく。
こうして――
背後からの奇襲に浮足立った敵軍は、指揮官を失ったことで崩壊した。
ここまで来る途中に、ゾポンドートの軍勢がアルデラン伯爵の館を包囲しているのを見た。数は報告にあったように千で間違っていないだろう。
傭兵ギルドに依頼した敵への陽動攻撃が始まるまで、まだ時間があったので敵を迂回してこの町まで来た。
東の町は、空気が張り詰めている。
まだ本格的に戦端が開かれていないとはいえ、他領の軍隊が入り込んで領主の館を包囲しているのだ。心穏やかではいられないだろう。
街には人通りが少ない。
そんな中で、馬に乗った騎士が二十ほど連れ立っている。
敵の斥候でもいれば不審に思われ、報告されているだろう。
いや――
ここに斥候を放つ意味は無いか――
敵はもうこの街を、通り過ぎている。
物資の調達にやってくる部隊はいるかもしれないが、いたら蹴散らすか、隠れるか、逃げるか、状況に応じてその都度判断する。
敵に発見されないに越したことはないが、完全な隠密行動など無理な話。
敵兵に遭遇したら、その時はその時だ。
どのみち、俺に綿密な戦術などない。
せっかく町まで来たのだから戦闘前に補給をしておこうと、俺が懇意にしているサイザース商会に物資の補給を手配したのだ。
スピード優先で補給部隊を連れてきていないので、自分たちで現地調達する。
サイザース商会をはじめこの町の商人たちは、ゾポンドートの先遣部隊からも物資の提供を要請されていたらしい。
だが代金は支払われていない、無償供与だ。
商人たちは泣き寝入りするしかなかった。
そのため、早く奴らを追い払って欲しいと思っている。
密告はしないだろう。
情報ギルドと暗殺ギルドの構成員とも会った。
敵将の暗殺は無理そうだが、情報は仕入れることが出来ている。
敵が包囲に使っている部隊はおよそ二百、残りの八百が屋敷の前に布陣している。
突撃するのに八百は多いか?
傭兵部隊の陽動で数を減らせればいいのだが――、
そう思っていたところに報告が入る。
敵軍に動きがあった。
西の町で手配しておいた傭兵隊が、手筈通り包囲中の敵に攻撃を加え、即座に撤退した。それに対して敵部隊三百が迎撃に当たり、次いで追撃に移っている。
さらに二百の軍勢が街道を通り、別方向から西へと移動を開始した。
逃げる傭兵部隊の先に回り込んで、確実に殲滅する気のようだ。
さて、これからどう動くか?
敵の動きや思考を読むような能力は、俺にはない。
敵を分散させるために傭兵部隊を使ったが、こっちの誘いに乗らずに動かない可能性だってあった。
その場合はその状況に応じて、作戦を立てていく気でいた。
敵がどう動くのかを見て、こっちの出方を決める。
後の先を取る。
それが俺の方針だ。
そして敵は動いた。
こっちにとって都合よく、上手い具合に分散してくれた。
これからどう戦うか?
戦い方だけは決まっている。
俺の率いる騎馬隊に出来ることは、突撃だけだ。
問題はどこに突っ込むか……。
アルデラン伯の館前に残っている補給部隊に突撃するのが一番安全で、しかも敵に損害を多く与えられそうだが――
「敵の大将は?」
「街道を進む二百の部隊に、旗がありました」
「よしっ!」
「……また無茶を考えていますね?」
親衛隊長のリスティーヌが呆れたような目で、こちらを見つめる。
「まあそう言うな。早く決着がつくなら、それに越したことはないだろう?」
俺は親衛隊を集めて戦闘準備を命じる。
敵軍は歩兵と騎馬の混成部隊だ。
すぐに追いつけるだろう。
休息は十分に取った。
武装も完了して、いつでも出発できる。
俺は全軍を引き連れて、まっすぐに敵軍の将を目指す。
二十分ほど馬を走らせると、移動する敵軍の最後尾が見えてきた。
街道を進む敵は、まだこちらに気付いていない。
俺たちは騎兵用の槍、ランスを構えて敵の背後から突撃した。
敵軍の悲鳴と、自軍の馬が敵を蹴散らす音が響き渡る。
騒ぎが広がり、敵もこちらの存在に気づきだす。
よく見ると槍をまとめて運んでいる荷車があった。
騎馬隊と戦う想定で、用意していたのか?
しかし、移動中のこの混乱状況では、槍衾を構築して迎撃を行う余裕はない。
俺は無防備な敵軍を蹴散らしながら走り、騎乗している敵をターゲットにして槍を構えて突進する。
槍で攻撃した敵兵は、そのまま押し出されるように宙を舞い落馬する。
スピードを緩めない為に、全力で槍で敵を貫くのではなく、あしらうような感じで敵のバランスを崩し落馬させていく。
それでも衝撃はあるが、馬の走る勢いは衰えない。
混乱状態の敵の中にも、攻撃態勢に移った敵も現れる。
槍や剣や弓矢が散発的に襲ってくるが、問題なく盾で捌いていく。
続けて進行方向にいる、中隊長クラスの騎乗兵を槍で弾き飛ばす。
こちらの騎馬隊の勢いが衰えた時には周囲の敵は恐怖で混乱し、散り散りに逃げ出し始めた。
敵軍の先頭の方まで、混乱は広がっている。
ここから一息入れて、再度突撃を行えば敵軍を壊滅させられるだろう。
「おのれぇええええ!!! 尋常にっ勝負しろっ!!!!!」
敵軍の中でも、ひと際デカイ体躯の騎士が叫びながら突進してくる。
恐らくこの部隊の指揮官だろう。
自軍の雑兵を馬で蹴散らしながら、槍を構えて俺を目がけて突進してくる。
俺も槍を構え直して、敵を目指す。
お互いのランスが敵に向かって、一直線に飛ぶように進み――
ガァアアアアアンンン!!!!
金属がぶつかり合う、大きな衝突音が戦場に響き渡る。
俺は敵のランスを盾で受け流し――
俺のランスは敵の盾を弾き飛ばした。
敵将を一撃で仕留められなかったが、問題は無い。
体勢を大きく崩した敵将の胸のど真ん中に、俺の後ろを影のようについて来ていたリスティーヌの槍が突き刺さった。
周囲でも突撃してきた親衛隊員たちが、敵兵を屠っていく。
こうして――
背後からの奇襲に浮足立った敵軍は、指揮官を失ったことで崩壊した。
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