51 / 126
それぞれの結末
第42話 この花びらに、口づけを―― A
しおりを挟む
「……ンッ、――ンンッ、んぐ。――プハッ、ハァ、ハァ、がはぁ、はー……」
私は深い眠りから、目を覚ました。
長い間、呼吸が止まっていたようだ。
苦しかったので、酸素を求めて荒い呼吸をくり返す。
落ち着いてから目を開くと、一筋の光が空から差していて眩しかった。
空は厚い雲に覆われていたけれど、光の差す雲の小さな穴が、どんどんと急速に広がっていき――
あっという間に、澄み渡る青い空に変わった。
不思議なことも、あるものだ。
私の視界の端には、誰かが居た。
私が目を、覚ますと――
嬉しそうに、安堵しているようだ。
そんな雰囲気が、伝わってきた。
私は全身が痛くて、だるくて、頭がぼんやりして、身体を思うように動かせないが、それでも心だけは――
上空の空のように、なんだかとてもスッキリしていた。
「大丈夫――? ではないな。治療して、身体を休めないと――抱き上げるけど、平気か――?」
私を見つめる男の子が、優しく気遣いながら、声をかけてくれる。
その男の子の顔を見た瞬間に、私の胸はときめいた。
ドクンと――
胸の鼓動が高鳴った。
私の心は空っぽで、そこには何もなかったけれど、『それ』だけはあった。
そして『それ』は急速に広がって、私の心が満たされる――
ああ、そうか……。
私はきっと、この人に――
恋をするために、生まれてきたんだ。
…………。
――だとすると、ここが正念場だ。
目を覚ましていきなり、勝負どころを迎えている。
この人に、気に入って貰えるような――
『私は可愛らしい、女の子なんですよ』というアピールを、しなければいけない。
いや、まて――
カッコよく知的で、クールな――
デキる女で、攻めるべきか?
いずれにせよ、第一印象は大事だ。
それでこの、恋の行方が決まると言っても、過言ではない。
慎重に、第一声を考えていると――
――グギュルルっぅうう~~
私のお腹が、大きな音を鳴り響かせる。
『――平気か?』という、男の子の問いかけに――
私は大きな、お腹の音で答えてしまった。
恥ずかしかった、が――
まあ、いいか。
――と安堵する。
男を魅了し、虜にする。
『魔性の女』に、ならずに済んだ。
デキる女も、私には似合わない。
カッコいい女性には憧れるけれど、どう転んでもなれそうにない。
慣れないことは、するものじゃない。
そう思って、安堵する。
それに――
口を動かす力もない、私が――
『お腹が減ってますよ』という状態を、アピールすることができた。
私の身体は、栄養と休息を必要としている。
それは生きるために、必要なことだ。
私の心と身体は、生きようとしている。
それは、当たり前のことなのだけれど――
そう思えたことが、少し嬉しかった。
男の子も優く――
少し笑う。
「今は邪竜王の呪いも、使い果たしているから――大丈夫だろう」
そう言うと男の子は、私を両腕で抱きしめるように、抱え上げて歩き出す。
辺りには死んでいる人が、たくさん倒れている。
なんで私は、こんなところで眠っていたのだろう?
それに手首についている、この手枷は何?
私は誰かに、捕まっていたのだろうか?
そして――
なぜこの男の子は、会ったばかりの私に、こんなに優しくしてくれるのだろう?
疑問は沢山あったが、口を開くのも億劫だし、目を閉じてじっとしていた。
男の子が歩くたびに、私の身体も少し揺れて、その揺れが心地よくて――
私はそのまま、眠りに落ちた。
次に目を覚ましたのは、ふかふかのベットの上だった。
天井も高くて、内装も豪華な部屋に、私は寝かされていた。
身体の痛みや筋肉の張りも、以前に目を覚ました時と比べれば、ずっと良くなっている。ただ――お腹だけは、空いていた。
そういえば、手首に付けられていた、手枷が無くなっている。
私は上半身を起こして、部屋を見渡す。
「あっ、お目覚めですか? ソフィ様!!」
部屋にいたメイド服の、小柄な可愛らしい女の子が――
私が起き上がったのを見て、声をかけてきた。
「すぐにアレス様に、使いを送って知らせますね」
どうやら、私の名前はソフィというらしい。
キュウゥ~~ッ
私がなにか返事をする前に、お腹の虫が空腹を主張する。
私は顔に血が上って、熱くなるのを感じる。
きっと今、私の顔は真っ赤になっているだろう。
「あっ、そうですね。ずっと寝ていて、何も召し上がってませんから――何か食べられるものをお持ちします。消化に良いもの……お粥で良いですか?」
私がコクっと頷くと、少女は部屋を出ていった。
――おかしい。
私はずっと、小食だった。
――ガツガツと、食事をいっぱい食べるタイプではない。
だというのに――
目覚めて、初めて会う――
初対面の人たちに、お腹の音を聞かせて『ご飯が欲しいです』アピールを連続している――
これではまるで、私が食いしん坊キャラみたいではないか。
違うんです!
そうじゃないの、私はもっとこう――
清楚で、お淑やかな――
――あれ?
なんだっけ――??
私は深い眠りから、目を覚ました。
長い間、呼吸が止まっていたようだ。
苦しかったので、酸素を求めて荒い呼吸をくり返す。
落ち着いてから目を開くと、一筋の光が空から差していて眩しかった。
空は厚い雲に覆われていたけれど、光の差す雲の小さな穴が、どんどんと急速に広がっていき――
あっという間に、澄み渡る青い空に変わった。
不思議なことも、あるものだ。
私の視界の端には、誰かが居た。
私が目を、覚ますと――
嬉しそうに、安堵しているようだ。
そんな雰囲気が、伝わってきた。
私は全身が痛くて、だるくて、頭がぼんやりして、身体を思うように動かせないが、それでも心だけは――
上空の空のように、なんだかとてもスッキリしていた。
「大丈夫――? ではないな。治療して、身体を休めないと――抱き上げるけど、平気か――?」
私を見つめる男の子が、優しく気遣いながら、声をかけてくれる。
その男の子の顔を見た瞬間に、私の胸はときめいた。
ドクンと――
胸の鼓動が高鳴った。
私の心は空っぽで、そこには何もなかったけれど、『それ』だけはあった。
そして『それ』は急速に広がって、私の心が満たされる――
ああ、そうか……。
私はきっと、この人に――
恋をするために、生まれてきたんだ。
…………。
――だとすると、ここが正念場だ。
目を覚ましていきなり、勝負どころを迎えている。
この人に、気に入って貰えるような――
『私は可愛らしい、女の子なんですよ』というアピールを、しなければいけない。
いや、まて――
カッコよく知的で、クールな――
デキる女で、攻めるべきか?
いずれにせよ、第一印象は大事だ。
それでこの、恋の行方が決まると言っても、過言ではない。
慎重に、第一声を考えていると――
――グギュルルっぅうう~~
私のお腹が、大きな音を鳴り響かせる。
『――平気か?』という、男の子の問いかけに――
私は大きな、お腹の音で答えてしまった。
恥ずかしかった、が――
まあ、いいか。
――と安堵する。
男を魅了し、虜にする。
『魔性の女』に、ならずに済んだ。
デキる女も、私には似合わない。
カッコいい女性には憧れるけれど、どう転んでもなれそうにない。
慣れないことは、するものじゃない。
そう思って、安堵する。
それに――
口を動かす力もない、私が――
『お腹が減ってますよ』という状態を、アピールすることができた。
私の身体は、栄養と休息を必要としている。
それは生きるために、必要なことだ。
私の心と身体は、生きようとしている。
それは、当たり前のことなのだけれど――
そう思えたことが、少し嬉しかった。
男の子も優く――
少し笑う。
「今は邪竜王の呪いも、使い果たしているから――大丈夫だろう」
そう言うと男の子は、私を両腕で抱きしめるように、抱え上げて歩き出す。
辺りには死んでいる人が、たくさん倒れている。
なんで私は、こんなところで眠っていたのだろう?
それに手首についている、この手枷は何?
私は誰かに、捕まっていたのだろうか?
そして――
なぜこの男の子は、会ったばかりの私に、こんなに優しくしてくれるのだろう?
疑問は沢山あったが、口を開くのも億劫だし、目を閉じてじっとしていた。
男の子が歩くたびに、私の身体も少し揺れて、その揺れが心地よくて――
私はそのまま、眠りに落ちた。
次に目を覚ましたのは、ふかふかのベットの上だった。
天井も高くて、内装も豪華な部屋に、私は寝かされていた。
身体の痛みや筋肉の張りも、以前に目を覚ました時と比べれば、ずっと良くなっている。ただ――お腹だけは、空いていた。
そういえば、手首に付けられていた、手枷が無くなっている。
私は上半身を起こして、部屋を見渡す。
「あっ、お目覚めですか? ソフィ様!!」
部屋にいたメイド服の、小柄な可愛らしい女の子が――
私が起き上がったのを見て、声をかけてきた。
「すぐにアレス様に、使いを送って知らせますね」
どうやら、私の名前はソフィというらしい。
キュウゥ~~ッ
私がなにか返事をする前に、お腹の虫が空腹を主張する。
私は顔に血が上って、熱くなるのを感じる。
きっと今、私の顔は真っ赤になっているだろう。
「あっ、そうですね。ずっと寝ていて、何も召し上がってませんから――何か食べられるものをお持ちします。消化に良いもの……お粥で良いですか?」
私がコクっと頷くと、少女は部屋を出ていった。
――おかしい。
私はずっと、小食だった。
――ガツガツと、食事をいっぱい食べるタイプではない。
だというのに――
目覚めて、初めて会う――
初対面の人たちに、お腹の音を聞かせて『ご飯が欲しいです』アピールを連続している――
これではまるで、私が食いしん坊キャラみたいではないか。
違うんです!
そうじゃないの、私はもっとこう――
清楚で、お淑やかな――
――あれ?
なんだっけ――??
36
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる