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聖女暗殺事件
第51話 鉄壁のライザ 2
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彼女と知り会ったばかりの頃――
俺の強くなる目標は、彼女だった。
俺が転生前の記憶を取り戻して、少し経った頃だ。
街歩きの時の護衛として、情報ギルドに所属している酒場の看板娘、ライザを紹介された。
彼女は俺より、六つ年上のお姉さんだった。
彼女の働いている酒場を見学に行った時に、俺は『それ』を見た。
その酒場は王都でも治安の良い区画にあったが、それでも客には荒くれ者もいて、女性店員の身体を触ってやろうという客も入っている。
そんな店で給仕をしながら、ライザは酔った客の魔の手を――
ことごとく、木製のトレイで防いでいた。
俺は目を見張った。
ライザは後ろに目が付いているのか?
あの攻撃を防ぐとは――
ん、いま――?
あのトレイは、どこから出したんだ?
そんな、あの連携を防ぐだと……。
――ライザの防御は完璧だった。
後で詳しく聞いてみると、酒場の給仕にはごく稀に、ディオニュソスという神様から加護が付与されることがあるらしい。
デュオニュソスから加護を与えられた娘は、オートガード機能が備わり、自動で身体を守ってくれるようになるそうだ。
――なんだそれ?
そんなの、ありなのか……。
最初聞いた時は唖然としたが、実際に加護があるのだから、そういうモノとして受け入れるしかない。
オートガード機能のない給仕と、男との間では――
「やだっ、お客さんのエッチ」
「わりぃ、わりぃ、この手が勝手に――」
という、やり取りが行われていた。
――手慣れたものだ。
さらによく観察すると、気前がいい、もしくは、見た目の良い客にはわざと触られて、自分が快く思っていない相手からのセクハラは、きっちりガードしていた。
女性店員たちは、不埒な客を軽くあしらっていた。
ここで働いている女性の強かさに、俺は感銘を受けた。
そして――
ライザは彼女たちのやり取りを、どこか羨ましそうに見ていることに気付く。
彼女は、この酒場の常連客から『鉄壁のライザ』と呼ばれている。
強力な加護に守られていて、手の届かないアイドル。
そんな彼女が、触られたがっているのか……?
俺はライザに尋ねてみた。
「えっ? 別にさわられたいという訳ではありませんけど……そうですね。ちょっとなんていうか、――神様の加護は有り難いんですけど、私だけ、蚊帳の外にいるような――そんな感じは、時々しちゃうんです」
そうか……
今の彼女は、握手会で列が出来ないアイドルのような状態なんだ。
グループの中で、自分だけ人気がない――
――それは、辛いだろうな。
よしっ!!
ライザが客とのコミュニケーションを求めているのなら、俺がそれを叶えてやる。
俺は彼女の鉄壁を突破して、胸と尻をさわろうと決めた。
彼女の務める酒場で、食事を取る。
そこで給仕をしている彼女の尻に、手を伸ばす。
――しかし、俺の手は彼女の持つトレイに阻まれる。
「――くっ!」
「甘いですよ王子さま――。私は働きながら、常にお尻と胸を狙われ続ける女。日々繰り出される攻撃を、凌ぎ続けて培った『酒場の看板娘』のレベルは58。私の防御能力は、もう達人の領域に到達しているのです」
「そんなっ、ここまでの差があるとは――」
彼女のセリフの合間にも、俺の手はその豊満な胸をさわろうと手を伸ばすが――
ことごとく、鉄壁のトレイに阻まれ続けた。
そんなことがあってから、ライザの鉄壁を突破することを目標の一つにして、俺は身体を鍛えて強くなった。
厳しい訓練を重ね、魔物討伐に従事して、見違えるように強くなった。
今ならライザの鉄壁も、突破することが出来るだろう。
俺はそんな自信を持って、ライザの働く酒場へと赴く。
だが、俺の攻撃はライザの鉄壁に、ことごとく防がれてしまった。
あんなに頑張ったのに……
――まるで成長していない。
そんな、自己嫌悪に苛まれる。
「そんな、バカな――」
気落ちする俺を見て、調子に乗ったライザは――
お澄まし系のドヤ顔で、俺を煽ってきた。
「ふっ、その程度ですか王子様? 以前と変わったようには見えませんね。もっと強くならなければ、私にさわれませんよ。……邪なる痴漢の魔の手、我が体に触れること敵わず――」
なんか――
決めポーズまで取って、挑発してきた。
イラっとした俺は、奥の手を使うことにする。
――悪いな、ライザ。
俺にはまだ、この力があるんだ。
「ライザよ。リーズラグド第一王子として命ずる――」
俺は手を前にかざす。
そして、その手に……
ライザが自分から、膨らみを押し付けるように命じた。
「あっ、はい……」
ライザは自ら俺に近づき、その豊満な胸部を…………
ライザのオートガードは、攻撃を防ぐ機能だ。
自分から触らせる場合は、発動しない。
俺は権力を行使して、ライザの鉄壁を突破した。
――懐かしい思い出だ。
俺の強くなる目標は、彼女だった。
俺が転生前の記憶を取り戻して、少し経った頃だ。
街歩きの時の護衛として、情報ギルドに所属している酒場の看板娘、ライザを紹介された。
彼女は俺より、六つ年上のお姉さんだった。
彼女の働いている酒場を見学に行った時に、俺は『それ』を見た。
その酒場は王都でも治安の良い区画にあったが、それでも客には荒くれ者もいて、女性店員の身体を触ってやろうという客も入っている。
そんな店で給仕をしながら、ライザは酔った客の魔の手を――
ことごとく、木製のトレイで防いでいた。
俺は目を見張った。
ライザは後ろに目が付いているのか?
あの攻撃を防ぐとは――
ん、いま――?
あのトレイは、どこから出したんだ?
そんな、あの連携を防ぐだと……。
――ライザの防御は完璧だった。
後で詳しく聞いてみると、酒場の給仕にはごく稀に、ディオニュソスという神様から加護が付与されることがあるらしい。
デュオニュソスから加護を与えられた娘は、オートガード機能が備わり、自動で身体を守ってくれるようになるそうだ。
――なんだそれ?
そんなの、ありなのか……。
最初聞いた時は唖然としたが、実際に加護があるのだから、そういうモノとして受け入れるしかない。
オートガード機能のない給仕と、男との間では――
「やだっ、お客さんのエッチ」
「わりぃ、わりぃ、この手が勝手に――」
という、やり取りが行われていた。
――手慣れたものだ。
さらによく観察すると、気前がいい、もしくは、見た目の良い客にはわざと触られて、自分が快く思っていない相手からのセクハラは、きっちりガードしていた。
女性店員たちは、不埒な客を軽くあしらっていた。
ここで働いている女性の強かさに、俺は感銘を受けた。
そして――
ライザは彼女たちのやり取りを、どこか羨ましそうに見ていることに気付く。
彼女は、この酒場の常連客から『鉄壁のライザ』と呼ばれている。
強力な加護に守られていて、手の届かないアイドル。
そんな彼女が、触られたがっているのか……?
俺はライザに尋ねてみた。
「えっ? 別にさわられたいという訳ではありませんけど……そうですね。ちょっとなんていうか、――神様の加護は有り難いんですけど、私だけ、蚊帳の外にいるような――そんな感じは、時々しちゃうんです」
そうか……
今の彼女は、握手会で列が出来ないアイドルのような状態なんだ。
グループの中で、自分だけ人気がない――
――それは、辛いだろうな。
よしっ!!
ライザが客とのコミュニケーションを求めているのなら、俺がそれを叶えてやる。
俺は彼女の鉄壁を突破して、胸と尻をさわろうと決めた。
彼女の務める酒場で、食事を取る。
そこで給仕をしている彼女の尻に、手を伸ばす。
――しかし、俺の手は彼女の持つトレイに阻まれる。
「――くっ!」
「甘いですよ王子さま――。私は働きながら、常にお尻と胸を狙われ続ける女。日々繰り出される攻撃を、凌ぎ続けて培った『酒場の看板娘』のレベルは58。私の防御能力は、もう達人の領域に到達しているのです」
「そんなっ、ここまでの差があるとは――」
彼女のセリフの合間にも、俺の手はその豊満な胸をさわろうと手を伸ばすが――
ことごとく、鉄壁のトレイに阻まれ続けた。
そんなことがあってから、ライザの鉄壁を突破することを目標の一つにして、俺は身体を鍛えて強くなった。
厳しい訓練を重ね、魔物討伐に従事して、見違えるように強くなった。
今ならライザの鉄壁も、突破することが出来るだろう。
俺はそんな自信を持って、ライザの働く酒場へと赴く。
だが、俺の攻撃はライザの鉄壁に、ことごとく防がれてしまった。
あんなに頑張ったのに……
――まるで成長していない。
そんな、自己嫌悪に苛まれる。
「そんな、バカな――」
気落ちする俺を見て、調子に乗ったライザは――
お澄まし系のドヤ顔で、俺を煽ってきた。
「ふっ、その程度ですか王子様? 以前と変わったようには見えませんね。もっと強くならなければ、私にさわれませんよ。……邪なる痴漢の魔の手、我が体に触れること敵わず――」
なんか――
決めポーズまで取って、挑発してきた。
イラっとした俺は、奥の手を使うことにする。
――悪いな、ライザ。
俺にはまだ、この力があるんだ。
「ライザよ。リーズラグド第一王子として命ずる――」
俺は手を前にかざす。
そして、その手に……
ライザが自分から、膨らみを押し付けるように命じた。
「あっ、はい……」
ライザは自ら俺に近づき、その豊満な胸部を…………
ライザのオートガードは、攻撃を防ぐ機能だ。
自分から触らせる場合は、発動しない。
俺は権力を行使して、ライザの鉄壁を突破した。
――懐かしい思い出だ。
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