93 / 126
リーズラグドの叡智
第69話 一秒先の未来 2 A
しおりを挟む
吾輩がこの国で、殺すべきターゲット。
それは、『リーズラグドの叡智』と称される、四大貴族のご令嬢。
ケンドリッジ領の姫、ローレイン。
コイツを殺せば確実に――
この国の政界は、一時的に機能不全に陥る。
我らに協力していた大司教のグループは、すでに死に体となっている。だが、ローレインさえ始末すれば、息を吹き返すであろう。
吾輩は神殿関係者の協力で王宮に忍び込み、ローレインの居室へと向かう。
ここまでは順調――
協力者と別れて、変装用の司祭服を脱ぎ捨てる。
……?
ターゲットの部屋の前で、違和感を覚える。
部屋の中に、気配が一つしかない。
大貴族の姫が、部屋に一人……?
――罠か?
部屋の中の気配も、女のものとは思えぬ。
吾輩を案内した神官は、すでに裏切っておったか――
中に居るのは、吾輩を返り討ちにするための手練れだろう。
――さて、どうするか?
決まっている。
中の手練れを殺し、裏切り者を殺し、ローレインを殺すのだ。
吾輩は部屋のドアを開けて、中へと入る。
そこに居たのは、一人の青年だった。
「おー、本当に来た。流石はローレインだな! 予想を外したことが無い。――胸がデカいだけではなく、頭も良い」
その男は、部屋のベッドに腰かけながら――
こちらを見て、何やら軽薄なことを口走った。
「着痩せして見えるが、触ってみると大きくて、柔らかくふわふわで、それでいて重量感もある。そんな胸なんだ。いいだろう? ――だがな、あれは俺の女だ。お前にはやらん」
その男は、そう言って――
ゆっくりと立ち上がると、こちらにすたすたと歩いてくる。
腰には、剣が差してある。
剣士――
その男の目の奥には、抑えつけられた殺気が漲っている。
無造作に近づいてくるが、歩く様を見ればわかる。
軽薄な言葉とは裏腹に、かなりの技量を備えた武人だ。
吾輩は精神を一気に、臨戦態勢へと移行する。
ここには女を一人、殺す気できたが――
達人との、死闘になる。
闘争心を極限まで高めて、目の前の獲物を殺すことだけに集中する。
どのような犠牲を、払おうとも――
此奴だけは、殺す。
吾輩は奴の前進を迎え撃つために、剣を抜こうとして――
手首から先が、無いことに気付いた。
それを見てから、遅れて傷みがやってきた。
腕の先に、激痛が走る。
「ッグ……グッぁっぁあ――ッ!!」
悲鳴を飲み込む。
――何があった?
攻撃、されたのか?
見えなかったぞ……。
馬鹿な!!
一秒先の未来が見える吾輩が、敵の攻撃を見逃すなど――
とにかく反撃を――
吾輩は残った方の左手で、隠し持った暗器を放とうとして――
その時には左腕が、肩から切断されていたので、結局何もできなかった。
「ばかなッ、こんなこ――グバッ」
頬を真横に斬られて、顎を割られる。
喋れぬようにされた後は、両足を斬られてバランスを崩し――
吾輩は、ドサリと床に倒れ込む。
速いだけではない。
吾輩の意識を誘導して、視線の外から攻撃していた。
なんだ、この化け物は――
それは、『リーズラグドの叡智』と称される、四大貴族のご令嬢。
ケンドリッジ領の姫、ローレイン。
コイツを殺せば確実に――
この国の政界は、一時的に機能不全に陥る。
我らに協力していた大司教のグループは、すでに死に体となっている。だが、ローレインさえ始末すれば、息を吹き返すであろう。
吾輩は神殿関係者の協力で王宮に忍び込み、ローレインの居室へと向かう。
ここまでは順調――
協力者と別れて、変装用の司祭服を脱ぎ捨てる。
……?
ターゲットの部屋の前で、違和感を覚える。
部屋の中に、気配が一つしかない。
大貴族の姫が、部屋に一人……?
――罠か?
部屋の中の気配も、女のものとは思えぬ。
吾輩を案内した神官は、すでに裏切っておったか――
中に居るのは、吾輩を返り討ちにするための手練れだろう。
――さて、どうするか?
決まっている。
中の手練れを殺し、裏切り者を殺し、ローレインを殺すのだ。
吾輩は部屋のドアを開けて、中へと入る。
そこに居たのは、一人の青年だった。
「おー、本当に来た。流石はローレインだな! 予想を外したことが無い。――胸がデカいだけではなく、頭も良い」
その男は、部屋のベッドに腰かけながら――
こちらを見て、何やら軽薄なことを口走った。
「着痩せして見えるが、触ってみると大きくて、柔らかくふわふわで、それでいて重量感もある。そんな胸なんだ。いいだろう? ――だがな、あれは俺の女だ。お前にはやらん」
その男は、そう言って――
ゆっくりと立ち上がると、こちらにすたすたと歩いてくる。
腰には、剣が差してある。
剣士――
その男の目の奥には、抑えつけられた殺気が漲っている。
無造作に近づいてくるが、歩く様を見ればわかる。
軽薄な言葉とは裏腹に、かなりの技量を備えた武人だ。
吾輩は精神を一気に、臨戦態勢へと移行する。
ここには女を一人、殺す気できたが――
達人との、死闘になる。
闘争心を極限まで高めて、目の前の獲物を殺すことだけに集中する。
どのような犠牲を、払おうとも――
此奴だけは、殺す。
吾輩は奴の前進を迎え撃つために、剣を抜こうとして――
手首から先が、無いことに気付いた。
それを見てから、遅れて傷みがやってきた。
腕の先に、激痛が走る。
「ッグ……グッぁっぁあ――ッ!!」
悲鳴を飲み込む。
――何があった?
攻撃、されたのか?
見えなかったぞ……。
馬鹿な!!
一秒先の未来が見える吾輩が、敵の攻撃を見逃すなど――
とにかく反撃を――
吾輩は残った方の左手で、隠し持った暗器を放とうとして――
その時には左腕が、肩から切断されていたので、結局何もできなかった。
「ばかなッ、こんなこ――グバッ」
頬を真横に斬られて、顎を割られる。
喋れぬようにされた後は、両足を斬られてバランスを崩し――
吾輩は、ドサリと床に倒れ込む。
速いだけではない。
吾輩の意識を誘導して、視線の外から攻撃していた。
なんだ、この化け物は――
3
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる