聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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リーズラグドの叡智

第70話 失敗 B

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「これが、お父様の策略――」

 リィクララ様が、犯人を特定した。

 だが、リィクララ様のお父様は、とてもいい人だった。
 私のことを殺そうとしていたらしいが、私が死ぬような事故は一向に起こらない。

 きっと、自分の娘と友達になった私を――
 殺さないでおこうと、思い直してくれたのだ。


 それなのに、なぜこんなことを――??

 ――そうか!

 この魔物の襲撃が、私を殺すための策略なんだわ!!
 でもその為に、自分の領地や娘までも犠牲にするなんて――

 そんな悲しいことを、させてはいけない。




 私は決めました。
 メデゥーサとは、私が戦います。

 ディーに確認すると、私の存在の力の半分で、勝てるだろうと言っていました。

 ……半分くらいなら、いいでしょう。


「その魔物の群れは、私が退治します!! 心配はありません、私には神様の加護があるのです」


 


 
 そして、反対した人を説得して、押し切って、魔物を退治してやろうと、一人でこんなところにやって来てしまった。


 一緒に来ようとしてくれた人たちを、押し留めて、『一人で大丈夫ですから』と大見得を切って――



 

 私は、格好をつけたかったのだ。
 お友達に、良いところを見せたかった。


 半分くらいならいいだろうと、軽く考えていた。



 その結果――

 襲い来る大蛇と、戦うことになり――
 少しずつではあるが、自分の存在が減っていく。

 それを実感すると、怖くて仕方がない。




 暗殺者に襲われても、まったく怖いと感じなかった。

 リィクララ様や、ローレイン様のような叡智の人達から、凄いと褒めて貰えて、図に乗ってしまっていた。

 スザンヌさんの様なしっかりした人から、『ソフィ様ほどの聡明なお方が大丈夫と仰るのですから、心配はありません』なんて――

 太鼓判を押されて、得意になっていた。



 皆に凄いと言われて、自分だったら魔物の群れも、どうにかできると軽く考えた。


 だから私は――

 失敗した。


 

 迫りくる大蛇に対して、『拒絶』の発動が遅れた。
 心を削られていく恐怖に、躊躇が生まれた。

 どれだけ強力な能力を持っていようと――
 それを扱う人間が、使いこなせなければ意味は無い。



 私の目前に、迫りくる巨大な蛇。

 次の瞬間、私は―― 
 自分の意思とは無関係に、空を舞っていた。

 私の身体は、風を切って宙を飛んでいる。





 アレス様の、腕に抱かれて――

 大蛇に丸吞みにされる直前に、駆けつけたアレス様が私のことを抱き上げて、跳躍し空中を走るように飛んでいる。

 私はアレス様に、片腕で『お姫様抱っこ』されていた。

 そして、アレス様のもう片方の手には、剣が握られている。

 



 着地と同時に襲いくる、大中小の様々なサイズの蛇たち――
 アレス様は片腕で剣を振るい、その全てを一振りで蹴散らしていく。

 あの大きな蛇を、よく一回で斬れるなぁと、私は感心する。





 感心している、場合ではない。

 ピンチに駆けつけてくれたアレス様に、私は無茶をしたことを謝ろうとしたけれど、咄嗟に言葉が出なかった。

 ――なんて謝れば、いいのだろう?
 久しぶりに会ったのだから、その嬉しさを伝えるのが先だろうか?

 どっちが正解なのか判らずに、私の口からは何も言葉が出てこない。


 やっぱりな――。
 前々からうっすらと、そうではないかと思っていたが――

 今、確信した。

 私は頭が、悪いのだ。
 


 ローレイン様は私のことを『底が知れませんね』なんて言って褒めてくれていたけれど、それは、ただ頭が悪くて、底が浅すぎて良く見えなかっただけなのだ。



 馬鹿な私が――
 アレス様になんて声をかけるか、迷っていると――


 アレス様から優しく――          

「遅くなって済まない。怪我はないか、ソフィ――?」

 そう言って、気遣ってくれた。
 だから、私は――

「……はい」

 というだけで、よかった。


 アレス様にこうして抱きしめられていると、心に力が湧いてくる気がする。

 大きな蛇を吹き飛ばすのに、使った分の力があっという間に回復した気がする。
 不思議だなぁ、と思った。


 それから――
 私のことをじっと見つるアレス様から目を逸らして、その胸に顔を押し付けた。

 なんだか知らないが――
 ちょっと、照れ臭かったのだ。



 辺りには相変わらず大きな蛇が沢山いて、この先には親玉のメデゥーサが居るのだが、こうしてアレス様に抱かれていると、不思議ともう怖くは無かった。
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