ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

10.ウジーネ・ソナンタリア

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「すまんシュアクーン。悪いが追ってくれ」




本当なのか?
本気なのか?
父は何を言っている?

「お前なら出来ると私は信じているよ」

そんな信用今すぐ捨ててしまってさ、僕もどっかの貴族の養子に出してほしいよ。

王様からの呼び出し。
何かと思えば。




「シュアクーン様。今現在、使節団はこの辺りを移動中との報告が入っております」

ロプシンが一点を指し示す。
作戦司令室にありそうな大きなテーブルに広げられているのはこの世界の地図……と言っても本当の意味では“世界地図”なんかではなくわかっている部分のみの地図。

僕の王子として生を受けたこの国のある大陸と海を隔てた向こう側の隣国、ディアストンの国やその周辺国が書き込まれているだけの地図が広げられている。
禁書庫にはあちこち旅をする勇者が残した昔の世界地図があるけれど、王の治世に関係ない部分は省かれた地図が常用されるのは簡便性からかな。

そんな事よりも。
なんとなんと。
僕のいる国の大陸を斜めに横断した反対側にエルフの里と呼ばれている場所があるんだけれど、父はそこへ向けて出発した使節団に追いついて一緒にエルフの里を訪れよ、と無理難題を言っているのだ。……無茶振りも振り切って場外ホームラン級だよな。

いまから国を出て先行している使節団に追いつけ!だなんでさ。
僕、瞬間移動って出来たっけ??
どうせ行かなきゃならないなら理由ぐらいは知っておきたい。


「なんでまたそんな事を?」

「実はだな、先日の会議の折に……」

「よい、ロンディ。私からシュアクーンへ話そう」


こうして、父の口から詳しい説明がなされることとなった。


▫️▫️□▫️□▫️




そもそも。
会議が開かれたのは僕の想像の遥か斜め上を宇宙ロケットを打ち上げる勢いで飛んでいくとんでもない話からであった。

使節団はそんな簡単にほいほいと出すものでもない。考え抜かれた構成員、厳選された錚々たる顔ぶれを取り揃えて旅立っているはずなんだ。
それなのに、どうして今更追加で追いかけさせようなんで莫迦げた話が持ち上がったのかというと。

ロプシンの叔母のアンテルーレをクビにした我が妹、ロゼルーテが関係していた。
彼女が、夢の中で見たエルフの里にたくさん咲いているという薬草“露草”を欲しがっているから、だというのだ。

……親バカもここに極まれり??正直僕はそう思ったね。


百歩譲って妹の願いを叶える為に後追いさせるとしても、何も僕である必要性を見出せない。薬草の専門知識がある訳でもないし、隣国の王子の時は別にして、今まで他国の使者が来訪した時に仕事を任された事など一度も無いのだから。
確かに僕には勇者アキクーンの時の記憶がある。けどそんなの女神様以外は知らないことなんだし。


「それで、なんで僕なのですか?」


「それはだな、シュアクーンよ。
“夏になれば十二歳となられますし、良い機会なのでは無いかと。
今までは第三王子として好き勝手なされておいででしたので、ここで一つ第二王子として王族の責務を果たされても宜しいのでは?”
と、会議中に諸侯に向かってそう言うたのだ」

「ウジーネ・ソナンタリア伯爵が?」

「そうだ。しかもその前の話題が良くない」

「なんの話をしていたのですか?」

「王子が一人いなくなったことによる訪問先についての話だ。孤児院に関してサフィジョンが抜けた後、どの様にするのかが話し合われていたのだ」

そこでウジーネがぶち上げた。

“確かにあの子は許されない事をした!それでも私の血の繋がった可愛い甥なのです。
彼の行っていた孤児院には今後も私が支援をしていきたいと思うのです!
国の端まで自ら赴いた我が甥。
時には険しい道を進み、現地で孤児院の子供たちと同じ物を食べ、会話をし、励ましてきたのです!
私はその彼の意思を継ぎたい!そんな私に賛同した方々から寄付を募り、彼の代わりに彼の訪れた孤児院を支えて行きたいと思うのです!”

と、いう大演説があったそうで。
僕は次兄の行ってた孤児院には行かないというか行けない事となりましたとさ。……別にいいけど。


「それでウジーネに同情が一気に集まって 、サフィジョン……今はフィルションだったな。
そのフィルションにも気の毒だという空気が生まれてしまってな。もともとアレは兄をよく立て真面目に良く務めを果たしていたからなぁ────」

「そこで対比されて、シュアクーン様にはもっと王子としての自覚を促さなくては?という流れに持っていかれてしまったのです」

フィルションの事を思い出したのか鎮痛な面持ちで口を噤んでしまった父。
その父の話のロンディが継いで補足をしてくれる。


「確かに僕は第三王子でしたが、第二王子となった今では(必要最低限)努力してやってきているつもりなのですが」

「うむ。ちゃんとわかっておる。私に不満などないから安心してくれ」

父に不満が無くても他はあるってことっすかね。



元々三兄弟には当然ながらそれなりの貴族の派閥が存在した。殆どは長兄についているが、ウジーネが親戚にいることもあり次兄の派閥もそれなりに存在していた。

それが次兄があんな事になり、代わりに僕がそのポジションに収まったのだからそりゃあ面白いはずがない。

その様な背景もあって、誰もがウジーネのサフィジョン王子の手をかけていた孤児院は今後自分が面倒を見るという嘆願というか宣言が通ってしまった。

しかしそれだけじゃあ無い。
その美談くさい発言の後、僕がまともに第二王子の責務を果たせるのかと疑問視する貴族も多い中、ウジーネの発言の所為で僕は遥々エルフの里まで行かなくてはならなくなった。
しかも先行している使節団がエルフの里に到着する前に追いつかなくてはならないというリミット付き。


「まるで算数の問題のようですね」

点Aが使節団。点Bが僕たち。
さあ、問題です!一体追いつくのにどのくらい時間がかかるでしょうか??……答えなんてないよ。


「ん?シュアクーン、何か言ったか?」

「いいえ何もありません」

「シュアクーン様。早急に諸々の手配を済ませて出立する必要がございます。護衛の人選は私めにお任せを……」

「あ、結構です!急ぐんですよ?そんな大所帯では無理でしょう?」

超特急で動くのに大人数はいただけない。ロンディの申し出は有り難いけれどなるべく最低限の人員だけで移動したい。

「でも!それではシュアクーン様の御身が……」

「護衛はほら!ちょうどアンテルーレを召し抱えたことだし、彼女とロプシンがいれば充分さ!それで、あと、父上!」

「なんだ?シュアクーン」

「勝手に同伴者を選定しないで下さいね?僕、追いつく為に“速行”を多用するつもりですから、最低でも小鳥を飛ばせるくらいの魔力持ちで無ければどっかで逸れるか置き去りになっちゃいますよ?」

こんな無理を通されるならば国王としてではなくて僕の父として僕の無理も聞いてくれ。


「しかし、たとえ護衛がそれで良くても文官が……」

「フェジンがいます。彼なら元魔法省所属で魔力は申し分なし!しかも今では僕の侍従としての文官仕事してますからね」

父もロンディも、まだ何か言いたそうだけれど、気の合わない人間と一緒に旅なんてあんまりしたくないんだけど僕。



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