ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

25. いしの力で願い叶える

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ほっそーーい道。
片側は緩やかな崖。

崖の反対は結構切り立った斜面。
以前はこんな道じゃなかったんだけど少し前に崖崩れを起こして道幅がここだけ狭くなってしまったのだという。

そんな所々が細くなった道。念の為騎乗せずにシュアクーンたちは馬を引いて進んでいた。


「うわー、草の上に土が被ってる!」

シュアクーンが下の方を覗き込んだりしながら危ない崖側を歩いていると。

「…?っ、とっ、おっと、と、とと……」

手綱を持つ馬に襟首を咥えられ強引にぐいんと危なくない奥側へと引き摺られる。


「うわー!この辺なんか崩れた跡がある!」

次に抉れた部分にシュアクーンが近づくと。


「?…………ととっ、と、と、おっと、と…??」

また襟首を咥えられ強い力で引き戻される。
引く馬の顔をそっとを伺えば、ぶるぶるふしゅりと息を吐く音。

蹄で地面を強く掻いて、ここからこっちは危ないから出てきちゃダメ!と、まるで仕方のない子ねっ、めっ!と叱っているような雰囲気の目つき。
多分、群れとして認識している中で一番小さいシュアクーン様が心配なのだろう。首を大きく上下させる優しくて賢い馬。


それに対して不服そうな顔をするシュアクーンがポツリと呟く。

「……やはりナメられている…?」






細くなっていた山道から下り、山あいを抜け、シュアクーン一行は眼下に見えていた川の流れに逆らう様にしてポクポクと蹄を響かせ進んでいた。

空は快晴。気持ちの良いお天気。
ゆったりとした歩みの馬を道脇に寄せて止め、んーーっ、と、馬上で伸びをしていたシュアクーンに馬首を向けてラルクラートが話しかけた。


「明日にはこの先に在る牧場に行って替え馬手配しようと思っています」

「え?牧場!!羊とかいる??」

「いますよ。人懐っこい牧羊犬もね」

「僕、羊見るの初めて!!」

「そこらは牧畜が盛んな一帯で、祭りでは子供が羊の背にしがみついて走るレースが開催されます」

「えーー!!僕もやりたい!やりたい!」

「残念ながら、今は祭りの時期ではありません」

ラルクラートはくすくす笑うけど、僕なら絶対に一等取れるのに!


「確かにシュアクーン様は乗馬がお上手になられましたね。もう基礎はバッチリです。
恐らく、長く連なるパレードの一頭になっても周囲と合わせて上手に行進なさることでしょう」

旅の間にそれなりに乗ってるからねっ!並足も速足も駆け足もギャロップも全然イケますよ!!習うより慣れろを実践しましたから。
なんなら今すぐ手綱をかえして華麗にターンをキメテやりますとも!!


「もう、国に帰ったらあの先生クビにしちゃおぅかなぁー」

「おやおや、不穏当な発言ですね。しかし、帰ったら本当に教師は替えてもいいのかもしれませんね」

今後は障害物を飛んだり、馬車の操作を習ったりしたい。そんな希望をラルクラートに伝える僕。


「そうですね。この旅の中で、馬の基本的な扱いは習うことが無いくらいにはなるでしょうからね。
あとは少し特別な走らせ方とか影の使っている方法とか、そのようなモノをレクチャーして差し上げた方が良いのかもしれませんね」

これはワンチャン僕の乗馬の教師がラルクラートにぃ!?というアツい展開が帰国後に待っている?かも!??


そこに先に進んでいたフェジンが戻ってきて、再びぽっくりぽっくりと話しながらゆっくり馬を動かしていた僕らに歩調を合わせ馬首を並べてきた。


「この道をだいぶ行った先に牧場がありますが、今はそのすぐ先に見える脇道に入って下さい。そこでお昼にいたしましょう」

それだけ告げると軽く馬を走らせ少し先行して「シュアクーン様こちらに」と分かれ道で手招きするフェジン。
シュアクーンの頭の中は??でいっぱいだ。


「?なんで牧場へ行く道から逸れてわざわざ河原まで下りたの?」

馬から下り、フェジンの後について河原におりて行くと、先に到着していたアンテルーレとソリクッカが石を積み上げて竈を作っていた。

ラルクラートに馬を預けて案内されるまま、フェジンの後に続くシュアクーン。


「ここは勇者アキクーンが願掛けをした場所と伝えられている岩があります」

え?ここ?石がゴロゴロしている何の変哲も無い河原だけど??
勇者アキクーンだった頃の記憶を掘り起こして探ってみてもなーーんも思い当たる節はなく、首を傾げるシュアクーン。


「ほら、対岸に大きな赤っぽい岩があるでしょう?」

真っ直ぐ指す方を見ると。
ふむふむ。確かにあるね。大きな岩が並んでいる中に赤っぽいのが。

「あの岩は希積岩と呼ばれており、願いを込めて石で水切りをして、あそこに届けばその願いが叶う、と云われているのです。
強く願う意思の力がその願いを叶える力となってあの岩まで届くのだと」

うーーん。この場所かどうかわからないけれど確かに何度か河原で水切りして遊んだ記憶はある。
今も何も言われなくとも無意識のうちに地面を見ながら水切り用の平たい石を探してたもの。


「ほら、岩の下部分が削れているでしょう?それはここを通った勇者の方々の当てた跡だと云われています」

あーー、勇者の皆さんも水切りしたんだ、ごめん、僕の言った適当がそんな事になると思わなかったや。


「今では勇者もおりませんが、旅人が旅路の安全祈願に、商人は旅先での商売の成功を祈って水切りしていくそうですよ」

ほうほう。そんなに願いが叶うよ!なんてラッキーポイントになっているなら、今の僕もやるべきだよね?ね?届いたら願い叶うんだもんね?ね?

足元の手頃な石を拾ってピュッとカッコよく水面に放つ。


「とりゃっ!………………、当たったー!!」

「シュアクーン様、身体強化は使ってはいけない決まりとなっておりますよ」

「えっ?そんな決まりあるの??僕知らないよ??」

「決まりごとは守りませんと、願い事も叶いませんよ」




あ、なんか思い出してきた。
あの赤褐色の大岩。

勇者アキクーン時代。
ここで水切りに夢中になってムキになっていた時に。

護衛していた商隊の人に「対岸のあの岩まで水切りで届いたら願いが叶うんですよ」と適当嘘こいたら
それがまだ伝説として残っていたんだ。


「て、ことは!岩に当てた人の願いが叶った、ってえ事だよね?」

その後しばらく身体強化をせずに頑張ってみたものの。
シュアクーンの石が対岸に届くことはなかった。




「くっそぉーー!当てたのって勇者だけなんじゃないのっ!?」

魔昆虫避けを焼べた火を囲みながら昼食を取るシュアクーン一行。


「それでも川の中ほどまで飛んだではないですか。素晴らしいと私は思いますよ」

「きっと良い石が見つかればシュアクーン様でも、…もう少し成長なされば当てることが出来ますよ」

フェジンが慰めラルクラートが元気づける。
しかし、成長した後でなんてここには来れないだろうということは皆んな分かっている。自由に行動出来ない立場のシュアクーンには“今”しか無い。


「どぉれ、後で私もやってみようかね!でも今はご飯を食べてしまおう、サシバシが飛んできたら敵わないだろ?」

「そうですよ、そのようなことよりも早くご飯を食べてしまいましょう。冷めてしまいます」

ソリクッカにまで注意されてぐぬぬぬぬと唸るシュアクーン。

そして────噂をすれば影がさす。



「ぅわあーーー!!」

ガッ!とソリクッカの食器に背後からサシバシの長い嘴が差し込まれる。


「な!なんで!なんで僕のに!!」

サシバシは人を見る。
食べ物を取りやすそうな人に忍び寄り盗み食いするのだ。
時には空から、時には背後から。

焼べてあるのは魔昆虫避け。
魔鳥相手には何とも無い。


「……サシバシをこんな近くで見るのなんて、初めてだ」

しかし、そこはソリクッカ。自分の知識にあるサシバシのデータをボソボソと垂れ流しながら少し離れた場所まで運んだソリクッカの昼ごはんを突いているサシバシの観察を始めた。


「貴族の子息がサシバシに食べ物盗られるだなんて、普通ありえんことだからな。好きなだけ観察させてやろうさね。…シュアクーン様、サシバシに盗られ無いように早くお食べな?」

このサシバシという魔鳥。恐らく気配を薄くする魔法の使い手なのだろう。
僕も初めて目にする忍者みたいなサシバシをぼーっと見ていたらアンテルーレから再度叱られてしまった。







「さあて!ひと当てするかね!!」

まるで競馬か宝くじを当てるような言いぐさで肩をまわすアンテルーレ。


「ふふん!僕の華麗な手際をとくとご覧あれ」

たっぷり時間をかけて選別した石を手に自信あり気なクリソッカ。


「そおれ!」

「とりゃあああああーー」

それぞれが其々のフォームでそれぞれに掛け声をあげて川に水切り石を放つ。

かッカーン、カッツーん、と見事に石は二個とも当たった。


「……二人とも。身体強化はダメなんだって!!」

「ええーー、そうなのですかぁ?」

「そんなの!無理だろッ!!」


その後、身体強化なしで全員が挑戦したが、当てられたのはラルクラートのみ。


「ねぇねぇ、ラルクラート。何か願い事したの?」

「それは秘密ですよ、シュアクーン様」

シュアクーン一行の目的地、エルフの里まではまだまだ遠い。



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