ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

26.勇者アキクーン〈三〉

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「あーあ…宿にはもう絶対戻れないもんなぁ……」


秋の背赤熊亭をでてすぐに商隊に行き合った。
魔獣や盗賊に出会う可能性の高い旅路だ。剣を持ったアキクーンは勇者基本セットを身につけていたこともあり、運良くその商隊に迎え入れられ同道することとなった。

今は、街道から少し外れた河原で商隊と呼ぶには少し小さなその集団は昼飯の準備をしているところだ。途中加入で役割も無くしばらく所在無げにしてたが、川の近く、水際まできて徐に石を拾い水切りを始めるアキクーン。



「あんな盛大に送り出されちゃったしなぁ……」

幾つもいくつもぼやきながら投げているうちに、だんだんと、平たい石を探し、投げるフォームを考え、川の向こうの大岩に当たるように調整を始める。

急に石を川に向かって投げ出したのを見て、商隊の子供が寄ってきた。


「くそ…っ!まだ届かないか…」

「おにーちゃん何してんの?」

「えっ?あ、あー…ここの川のね、あそこ、あの大岩に当てると願い事が叶うんだ、よッ!」

「当たったー!すげー!」

「あっ…はは、うん、君も頑張ってあの大岩に当たるよう頑張れ!」

「うん!おれ頑張る!!」

アキクーンの真似をして水切りをし始めた見習いだという少年。しかし、コツが掴めずに投げる石はなかなか上手く水を切ることが出来なかった。




少年に水切りに適した石を教えていたら、お昼が出来たと呼ばれ僕は商隊のみんなの所にもどった。


「はいよ、勇者アキクーンの分」

「その、いちいち勇者って付けるのやめてくれませんか?」

昼食の乗った皿を手渡してきたこの商隊のリーダーである商人に、なんでそんなにすんなり僕を同道させることを決めたのかを、ずっと気になっていたから聞いてみた。


「そりゃアナタ、勇者は強いですから。それに、その装備を見たら一発で勇者だとわかりますもの」

「でもですね。勇者の装備を真似する輩だっているでしょう?」

秋の背赤熊亭で勇者を騙る詐欺師紛いの奴らを幾人か見てきた。
中には本当に魔獣を倒したりして冒険者として旅している人もいたけれど。


「うーん。確かに勇者を騙る輩はそこそこ居りますがね。しかし、私ってば結構人を見る目には自信がありますので」

ニコニコしている商人さん。
商人さんたちにしてみれば、ご飯と寝床を提供するだけでお金をかけずに勇者を雇っているようなモノだから大変お得なのだという。
まあね、僕の方も一緒に居させてもらって助かってるから良いんだけども。


「なあなあ!みんな、知ってるか?あそこに見える赤っぽい大岩にさあ────」

「え?願いが叶うだって??」

「え?ほんとかっ??俺、プロポーズした彼女が俺のこと待っててくれます様にっつって、メシ食った後で願掛けてくるわ!」

「俺も俺も!家で待ってるかぁちゃんと子供たちが元気で居ますように!って!」

「俺だって!」

少年がいうのに、やいやいわーわーと飯を食いながら盛り上がる商隊の人たち。


なんか、エライ騒ぎになってしまったけど、水切りって慣れないとそう簡単に向こう岸までなんか届かないからな。…僕は身体強化すれば届いちゃうけどさ。

そういや僕の今の願い事って何だろう?

秋の背赤熊亭に戻れますように?
家に帰れますように?
これが夢なら早く目が覚めますように?

────それとも。
「…………魔王を倒すことが出来ますように、なのかな」


アキクーンは知らないことだが、この商人。秋の背赤熊亭で彼は食事を摂った時にアキクーンの事を知り、その為人も他の客から耳にしていたのだ。
己の手の内は明かさない。稼げる商人とはそういうモノだ。






▫️▫️□▫️□▫️
▫️▫️□▫️□▫️
▫️▫️□▫️□▫️


“シュアクーン”として転生して禁書庫に入り浸るようになってから、ある疑問が頭に浮かんだ。

何故日本人ばかりが……、呼ばれてしまうのか。

勇者の特殊能力に
好意が集まりやすい
好意的に受け止められる
という類のモノがある。

勇者基本スペックパックのうちの
好印象バフ・親切には親切が還るの二つがまさにそうだろう。



召喚されるより以前。
ある日三人でゲームセンターで景品をとっている時。
友人一名は動画をながら見しながら横から茶々を入れて僕のやる事になんやかや口出ししていた。
しかし、どうも残りのもう一名が静かすぎる。


「なんかもう一人静かじゃね?」

「あ?んーー。隣でとってるからじゃね?」

ん?自分も景品をとってる?から?と俺はその時思ったんだ。
だけど。
友人は僕のプレイを撮ってるから、と言ったつもりだった。
少し会話が進み互いに噛み合わないそれにアレ?と同じ方向に首を傾げたのにはちょっと笑いを誘われた。

『トナリデ、トッテル』
隣で(映像を)撮ってる
隣で(景品を)取ってる
隣で(音声を)録ってる
隣で(食物を)摂ってる
隣で(果物を)採ってる
隣で(獲物を)獲ってる

…まあ獲物を獲ってくるとか使う事なんてないかもだけど。

日本語は省略が多い言語だ。と、僕は感じている。文や言葉をすぐ略して短くして使おうとしたりもするし。

そして、今回のように。
違う場面で同じ《となりでとってる》という語列が用いられたとしてもその内容には違いが出る。
主語が無いのは話の流れで当然で。

しかも、“誰”がどころか“何を”まで省略してしまえる。さっきのシュチュエーションでなら、なんなら“どこで”も無くなって“トッテルヨ”だけになる可能性だってある。

よく考えると恐ろしいよな。
瞬時に理解して察せなくては相手の発した言葉が理解不能になるんだから。

それだから、僕らは周囲の状況を把握して相手の様子や気持ちを察して考慮して判断を下し、相手との会話を進める。
それが、召喚された勇者が知らない世界で旅をする一助となっていた。所謂チートの一つと図らずもなっていたのだと思う。


どうやら花畑の主(女神)は自分自らが手を下す事が出来ないらしい。

だから、投入した人物が目論見通りに世界を調整する事を期待して色々な人間をこの世界に呼んだ末に、この世界を管理?支援?見守って育てている?みたいで、女神は扱い易いと思った僕ら日本人ばかりを召喚するようになっていったんじゃ無いのか?と、僕は思うんだ。

魔王を倒す事が出来ないまでも、何かしらの原因を突き止め根本を解決出来なかったとしても、萎れかけた花の元気を保つ一助となる働きをしてくれるならばヨシ!としていたのでは無いのだろうか。…水槽をお掃除するエビみたいにさ。
そうしてエビ、じゃなかった僕らがどんどんと召喚されていった。


実際、何百年後かもわからない今の僕が生まれた世界でも聖女のもたらしたと伝えられる食や習慣やら何やらが廃れずに残っている。

加えて、禁書庫の資料を読む限り召喚されるのはみんな中学生か高校生くらいの年齢ばかり。無理と無謀を平気でやっちゃうお年頃。ついでに自分は特別!ってゆーのに滅法弱いお年頃だ。

俺なら、私なら、ヤレるんじゃね?行けんじゃね?と、なっても、ね?僕も実際そうだったから、ね?



こちらの世界では年齢での成人を認めるのは貴族ばかりで、圧倒的に多いそれ以外の人々、所謂庶民とか国民とか呼ばれる人々にはあまり“何歳から成人”という意識はない。

よくいう“一人前”的な考え方はするが、自分の働きや稼ぎで日々食べていけるのならば、それは大人とかわりない。

なので子供だからと容赦されることもなく、悪い事をすればそれに見合った罰を与えられたり報復をうける。
人ン家の家畜や農作物をイタズラしたり泥棒しといて“子供のやった事だから”は通用しない。そういう世の中が“勇者アキクーン”の目の前には広がっていたんだ。





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