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過去と現在
31.一時離脱って物語の定番だよね
しおりを挟む鎮痛な面持ちで僕の部屋に入って行く面々。
僕とフェジンとの相部屋は、みんなよりも少しだけ広い部屋でベッド以外にも小さめのテーブルが一つに背もたれの無い椅子が四脚置かれている。
部屋の中に三人が腰を下したのを見計らい、僕は僕のブラックをテーブルの上に取り出した。
「ブラック。アンテルーレのファイルを出して」
ブラックの目の前にポサンとクリアホルダーが現れる。そこには旅に出る前に作ってもらったアンテルーレ専用の黒色折り紙が挟まっている。
書類や書状がしわしわのぐしゃぐしゃになったりしたら嫌だからと、父から書状を渡された時にクリアホルダーを作らせたんだ。
以前から素材に目星はつけていたし、こんなのあると便利だよねーって話はトレネークにしてたからすぐにクリアホルダー自体は完成した。ただね、全然クリアなホルダーでは無いんだけど。……透明って難しいんだね。
いうまでもなく、商品登録はトレネークに任せてきたよ。
まだお通夜ムードの中、透明では無いクリアホルダーからオリガミを一枚引き出し、どんどん折っていく。ちゃんと出発前に裏の白い部分には先代ブラックの裏側と同じモノをアンテルーレから書いてもらってある。
「ふんふふ~~ん♪でーきた!ツルレンジャーブラック!!降!臨!」
「!!ネーロ!!!」
アンテルーレに向かって走り飛び込むネーロ。それを手を広げて迎えるアンテルーレ。うんうん。仲良きことは美しきかな。
互いの頬をすりすりさせる姿を見て、フェジンとラルクラートも口元が綻んでいる。その様子を眺めながらブラックに不透明クリアホルダーを片付ける。
「多分ネズミが出たんでしょ。王宮ならそんなことも無いだろうけど、旅の間は寝る時は一緒に寝るか、どこかに仕舞っておいた方が懸命みたいだね」
あのアンテルーレが涙ぐみながら何度も何度も何度も僕の言葉に頷いていた。
僕はツルレンジャーと仲良くなってもらえてジワジワと嬉しい気持ちが込み上げてきて、悲しい出来事の後だというのに僕の頬は手で押さえてもにやにやと綻んできてしまっていた。
▫️▫️□▫️□▫️
「ねぇねぇ!これから行くのアウス地方なんだよね?カレーが有名なんだって“家鴨の嘴亭”の男の子が言ってたよ!」
「そうですね、アレはとってもスパイシーで素晴らしい香りでした。私もステーキでは無くカレーを頼めば良かったな、と少し後悔しましたよ」
「これから食べれば良いじゃん!アウス地方の有名料理なんだからさ!」
僕らは牧場で買い取った馬に跨り順調に旅の歩みを進め、そして期待に胸を膨らませアウス地方に向かって出発した。
「アウス地方はじゃがいもが有名ですよ」
ラルクラートの説明してくれた通り周囲を見渡すと、じゃがいもの葉っぱが生い茂っている畑が前より増えてきた気がする。
今度カレーを食べる時には、こんがりと焼き目がうまそうな大きなソーセージ乗っけてさ。うーーん。朝カレーも良いよね!!僕は朝に食べるなら目玉焼きを乗せて食べたいな!
「あの“カレー”すっごく良い匂いだったねぇ。あの香りは空きっ腹にはひどく暴力的だ!酒にはあまり合わなそうだけど、今度は私も食べてみようかねぇ」
カレーとお酒が合うかは謎だけどあの香りが食欲を唆るのはよーーく、わかる。人ん家から漂ってくる夕飯の匂いがカレーだとものすごくお腹が減ってくるよね。
「カレーが有名だというならば、ひとつ僕も賞味しなくてはならないでしょう」
アンテルーレもクリソッカもどうやら今晩はカレーの口になっちゃってるみたい!!
「アウス地方の中でも宿泊する予定の町ハバモントは、じゃがいもたっぷりのじゃがカレーが美味しいと有名ですからね、みなさん楽しみにしていてくださいね」
では!失礼!と、道中の昼食をとる場所、野宿する場所などのあたりをつける為に馬を走らせグングンと離れて小さくなっていくラルクラート。
今の所、ラルクラートの選んだ宿にハズレは無いから僕もカレーに対する期待値がグングンと上がっていってるよ?
ラルクラートと入れ替わるようにして僕の横についたフェジンからの情報だけど、アウス地方には太めの川が一本流れていて、その川を多くの船が行き来をしていて内陸の国なのに割と魚介類も入ってくるんだって。
下流の、海に面した隣国に近いエスビル地方ではシーフード入りカレーが有名だけれど、僕らの通過するのはアウス地方。残念ながら急ぐ旅なので国の端っこまでシーフードカレーを食べに!なんて寄り道は出来ないんだよね。
アウス地方のなかでも特に、僕らの今回滞在する予定の町、ハバモント周辺はじゃがいもが特産品。
じゃがいもって品種が結構あるんだよ?僕が知ってるのはメークインとか、男爵、キタアカリくらいだけど。…こっちでも名前が同じかどうかまでは知らないけどさ。
大根だってネギだって同じようでいて実は色々品種があるんだよ?知ってた?僕は知らなかったよ。
茄子なんかは大きさや形が違うからわかりやすいけどさ。
「知っていますか?シュアクーン様」
ああ。ついに始まってしまった。
大変申し訳ないが“アウスのジャガカレー”について暫しの間ソリクッカの蘊蓄に付き合ってやって欲しい。
「このアウス地方のじゃがいも。何種類あるか知ってます?」
こうなったら止まらないのがクリソッカ。もうわかっているから僕の隣をスッと譲るフェジン。そこはブロックして僕を守って欲しかった。
「あー、んー、さ、30種くらい?」
「残念ーー。外れです!」
生き生きしてんなぁ、と思いながらもクリソッカに何種類なのか聞いてみたら。
「正解は!なんと!80種類も作られているのです!!それにですねぇ~」
これには僕も驚いた。
80種類ってスゴクね?
……クリソッカの知識ひけらかしモードはラルクラートが戻ってくるまで続いたよ。フゥーー。
▫️▫️□▫️□▫️
日本からじゃんじゃか人間を持ってきた女神様。
ましてや、そこらの一般人としてじゃない。
聖女と勇者だ。権力者だ!
そうしたらどうなる?まずは食を改善しようとする。
漏れなく召喚された全員が。
だから、僕の知っている食べ物が普通にある。
地域によってちょっとアレンジが効いてたりもするけれど。
今日のお宿の名物はジャガカレー。
実はカレーは普通にどこの国にでもある。国によってよく食べられているか、そうでもないかの違いはあるけれど。
店や地域によって味もそうだけれど具も変わる。
アウス地方。この辺は比較的に痩せた土地が広がり育つ作物が限られていて、一番収穫量が見込めるのがじゃがいも。保存も効くしね。
で、名物がじゃがいもたっぷり“ジャガカレー”。
その時期その時期に合わせて厳選された三種類のじゃがいもがゴロゴロ入っているのだと言う。
さて。ここらでは一体何種類のジャガイモが栽培されているのだろうか??
正解はー?約80種類のじゃがいもが採れます。
はい、そうです。ソリクッカが言ってましたね。
しかも、同じ品種でも採れた地区によって別物と扱われる、なんてモノは無く、純粋に80種類あるって言うから驚いちゃう。
それだけ色々品種改良して、よく育つ物を探してるんだね。
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