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過去と現在
33.ホワイト&ブラック
しおりを挟む「新たな伝説作るため!」
「新たな名物生み出すために!」
「「二人手をとり頑張ります!!」」
「シチューは薄茶と誰が決めた!」
「カレーは黄色と誰が決めた!!」
「魂消る美味しさ!ホワイトシチュー!!」
「弾けるスパイス!ブラックカレー!!」
カレーは黄色と誰が決めた?
うーーん。聖女と勇者かなぁ。僕ら日本人が家庭で食べるカレーってほぼほぼみんな黄色いから。
「「みなぎる旨さ!ほと走る美味しさ!ホワイト&ブラック!!」」
二人で手繋ぎポーズ決めてるとこ悪いんだけど、早くオーダーとってくんないかな。
白黒コンビのデザインがほぼお揃いのコーデでポーズを決めた給仕のお嬢さんが2名。…コレ突然変身したりしないよね??
僕以外のみんなは?というと何かのショーが始まったと大人しく静かに観覧。どうやら見せ物だという認識でいるみたい。
自分たちの売り込みたいモノを叫んでいるのだから一応オススメメニューの宣伝?ではあるのかな??
本日のお宿の名前は“木陰鳥の木”
この辺に生息している木陰鳥(こかげどり)という鳥は、大きさが雀くらいで青灰色の背中と濃い紺色の尾っぽを持ち腹側が白く、尾っぽと同じ紺色の帽子を被ったなんとも可愛らしい小鳥だ。
木陰鳥は一つの木に集団で巣を作る。そのためどんなにハゲた木でも鳥の巣で木陰が出来ることから木陰鳥と呼ばれていて、子孫繁栄、結束、団結などの象徴とされている。
集団で囀るから、しばしば女性の陰口に使われることもあるんだけど、宿としては閑古鳥が鳴くよりも木陰鳥が囀る方がいいものね。
テーブルNo.代わりにしているそれぞれのテーブルの上に置かれた彩色された飾りの木陰鳥。
小首を傾げた木彫りの木陰鳥がこっちをくりくりとした目で見てきて、さっきから視線が合って仕方がない。
メイド服っぽい白黒の二人が再度ステップを踏み台詞とポーズを決めている間にメニューをくれた利発そうな女の子が僕に向かって宿のお勧めをアピールしてくる。
「いかがですか?ホワイトオススメの白いシチューは毎朝届く新鮮な牛の乳を使っています!ブラックオススメは他ではみない黒いカレー!スパイシーでとっても美味しいですよ!」
勿論、黒カレーにはじゃがいも三種類がゴロゴロと入っていて名物の“じゃがカレー”の条件は満たしているのだという。
“スパイシー”がどの程度のものなのか、メニューを見ても彼女の説明でもよくわからなかったから僕は甘人参入りの普通のじゃがカレーにしておいた。
アンテルーレが彼女たちを気に入って黒カレーを頼んでいたから一口もらったけど、マジで相当辛かった。僕は辛いの平気だからなんとか大丈夫だったけど、どうせなら珍しい物をと同じく黒カレーを頼んだクリソッカが牛乳がぶ飲みしていたくらいには辛い。
後で宿の人に、どのカレーがどのくらい辛いのか目安になるマークをメニューにつけた方がよいと伝えてこよう。ほら、良くあるじゃない?辛さの度合いを唐辛子の数で表したり数字で示したりさ。
一目で判断できたら、食べたこと無い人には選ぶ時の指針になるよね。
あーー、クリソッカが牛乳3杯目を頼んでる。そんなに飲んであとでトイレとお友達にならなきゃ良いけど。
アンテルーレは辛さが酒に合う!と喜んでチビチビたべてるね。
フェジンは僕と同じ物をラルクラートはタンドリーチキンみたいなカレー味のチキンを焼き野菜と一緒に食べている。
名物でもなんでも無い白いシチューを僕たちの誰も頼まなかったからか、食事を運ぶホワイトお姉さんの笑顔が心なしか沈んでいたよ。
▫️▫️□▫️□▫️
一晩過ごして翌日の朝食の時に知ったけど。
昨晩。クリソッカはやっぱりトイレにこもることになったみたい。
辛さ振り切りフルゲージのブラックカレーが原因か、それとも辛さ緩和の為にがぶ飲みして飲み過ぎた牛乳が原因か。
廊下の突き当たりにあるトイレとお友達を超えて親密になっちゃってなかなか出てこなかったってさ。
で。どうでもいいっちゃどうでもイイんだけど、この世界のトイレ事情なんだがウンプゥの実と呼ばれる植物の硬い実がうんぴやしーしーの溜まっている便槽に投げ入れられている。
その実はトイレの清掃兼回収業者が実の回収後、加工して畑の肥料として活用されている。水に含まれる雑多な物(糞尿)を取り込んだ後、ウンプゥの実と水だけが便槽に残るってな寸法。
…まあ、排泄物は実が吸収しても匂いまでは吸収してくれないからさ、刑罰代わりに罪人に罰として回収の仕事をさせている国もあるんだけどね。
実は。ウンプゥの実って、僕が勇者だった頃は綺麗な飲み水が手に入らない時に、容器に汲んだとても飲めないような水の中に乾燥させたウンプゥの実を入れて、浄水して飲み水を確保するという使われ方をしていた。
流石にトイレの水は飲む気にはなれないけれど、元々乾燥させたウンプゥの実は飲み水を確保する為の旅人の携帯必需品であり、井戸の無い場所でもどんな泥水でも水源さえあれば村がやっていけるくらいには大切な品だった。
それを研究し多少の品種改良を経たのちに、トイレの糞尿処理に使われる様になった。……と、禁書庫で読んだ気がする。
確か臭いトイレに我慢できなかった聖女が人を大勢使い知恵を絞って取り組んだ成果だった様に思う。
なんでもその聖女はトイレを自室のように飾り付け、色々物を持ち込んで日中そこで長い時間を過ごしていたのだと、禁書庫の本に記述が載っていた。……一人きりになれる空間がそこしか無かったのかもな。
勇者はちゃっちゃとほっぽり出されるけど聖女は大概、神殿か王城にガッチリ囲われるからなー。
「それでクリソッカはもう大丈夫なの?」
「はい。前脚三刻の頃にふらふら部屋に戻ってからベッドに倒れ込む様にして眠ってしまいましたから」
デュエルジャンケンに負けてまたもやソリクッカと同室となったラルクラート。
なんかフェジンは旅の最中に異様にジャンケン強くなってないか?
「それじゃあねぇ。さすがに朝食は食べにこられないさねぇ。勿体無いことで、可哀想だねぇ」
次々と平らげているその姿はちっとも可哀想がってる風には見えない。アンテルーレは朝から食べすぎだと思う。
「後で様子を見に行った時に、ついでに何か持ってってやろうと思います」
「うん、フェジン。そうしてあげて」
きっとクリソッカの搾り出したモノも畑の肥やしとなって、この地の畑で育まれる80種類のじゃがいもを立派に育ててくれることだろう。うんうん。
▫️▫️□▫️□▫️
ここハバモントは観光で人が集まるくらいの大きな町だ。折角なので物資の補給も兼ねて僕らは2、3日滞在することにした。
ここまでぶっ飛ばして来たわけだから(ネーロをロストした)傷心のアンテルーレの事もあるし、たまには良いだろうとなったのだ。実際、消耗品の補給や道具の新調は大切だ。
それに。
町一番!のは無理でも、宿以外のお店で他のカレーも食べてみたいし。
そこで!ジャカジャン!!突然ですが質問です!
カレーといったら何カレー?
グリーンカレーだとか、バターチキンカレー。いろんな豆カレー、キーマカレー、ドライカレーやスープカレー。とかなんとか。僕はそんな本格的な素敵カレーではなく、何のお肉が入っているのか?を問うているのだ。
豚さん牛さんニワトリさん。ニワトリは胸肉か、モモ肉か。牛や豚だとしても、塊肉か薄切りか。豚コマなんてのもアリだね。
シーフードなんて僕にとっては滅多に食べないオサレな高級カレーの部類なのだよ。(親が作らなかったから)
「うーーん。羊肉のは食べたこと無いなぁ。ああ!缶詰のカレーなら熊と鹿肉のを食べたことがあったっけな」
「何をぶつぶつ言ってんですか?迷子にならないように気をつけてくださいよ!」
なんだよ。ちょっと年上だからって兄貴風吹かせやがって。
確かに観光シーズン真っ只中なだけあって人出は激しく往来は夏祭りかのようにごった返している。
アンテルーレはフェジンと買い出しに。
僕とラルクラートは食べ歩きをしに町へと繰り出した。
「そんなに買い食いばかりして、旅費を浪費するのは如何な物でしょう?……みっともない」
うるさいなあ。
調味料の種類減っちゃったから色んな味に飢えてるんだよ!今!!僕は!…この口煩いクリソッカは僕とラルクラートの食べ歩き組にくっついてきたんだ。
実は。
クリソッカが旅に必要な物を購入するときにくっついてって、時々その土地で見つけた本をとても物欲しそうに眺めていたりしているのは知っていた。
自分が欲しい物が買えないからって楽しんでいる僕に八つ当たりしないで欲しい。
え?欲しいならなんで買わないのか?って?
物流考えれば分かるよね。トラックも飛行機も転移転送魔法も無いんだよ?国に送るのにどんだけお金かかるのよってな話ですよ。
旅の間持って歩く?ブラックを使えばそれも可能かもだけど、ブラックがいないクリソッカの場合は自分で本を背負って移動しなくちゃならないんだから、もしも購入するにしてもそこは厳選しなくてはならないところ。
まだエルフの里にも到着してないのに、今から増やしていったら帰る頃には一体何冊背負っていくの??ってぇー話ですよ。……本、って重いからね。
「だからって八つ当たりは良くないと思う」
「?なんですか!?何か僕に文句でも??」
あーー、うるさいうるさい。
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