152 / 230
過去と現在
40.千切っては投げ千切っては投げ
しおりを挟む細くうねった道。
両脇からは雑草たちが勢いよく飛び出てきている。そんな道をその辺の茎の長い花を毟り取ってぶん回しながら歩くシュアクーン。
今彼らはずっと走らせていた馬を休ませながら近くにあるという村を目指して徒歩で進んでいる最中だ。
道端の茂みの中の目立つ黄色い花。
茎の長いのを見つけるたびに千切っては捨て千切っては捨て、栄光の茎長最長一輪に輝いた物をぶん回しながら歩くシュアクーン。
「シュアクーン様はお花摘みが大変お好きなようで、手を草の汁で汚す王子など前代未聞ですね」
「シュアクーン様は生態系という言葉はご存知でしょうか?その花を棲家にする虫たちも居りますし、もしかしたら養蜂家がミツバチにその花の蜜を集めさせているかもしれないのですよ?」
手を替え品を替え、定期的に嫌味を投げてくるソリクッカを無視して一番長い茎の黄色い花選手権に勤しむシュアクーン。
細い道の時の馬とはまた別の賢さを持つ茶色の引き馬は、道草も食わずに大人しくひたすらシュアクーンにしたがって歩みを進める。
一行の通った後にはシュアクーンのムシってポイした黄色い花の道標が点々と、まるで通ってきた道標のよう。
シュアクーンの行手に待ち受けるのは、お菓子の家かはたまた魔女か。それとも強盗した品を手に持った仲良し兄妹か。
町というには小さく村と呼ぶには住民の多めなニミンスキ村にシュアクーンたちは到着した。
主要な道に石畳の道は一本も無い。ニミンスキとはそんな村だ。
「ようこそおうじさま!」
「ありがとう。これあげるよ、僕が歩いてきた道中で一番綺麗なお花だよ」
「わあ!可愛いお花!ありがとう!!」
村に到着したシュアクーン一行。宿屋など無いのでと、迎えられた村長宅の小さなレディはシュアクーンからの花一輪に飛び上がるようにして喜んだ。
へへんって顔をしてクリソッカを横目で見るシュアクーン。
伊達に元勇者を名乗ってないぜ!…って名乗ってはいなかったな、ソレ秘密だった。
コホン、兎に角豚の羽。
一輪の花を白馬を連れた王子様然とした美麗な少年からもらった村長の娘はそりゃもうご機嫌。
娘がご機嫌なら親も悪い気分では無い。
村長が当たりよく招き入れた客にわざわざ嫌がらせをする村民はいない。
そんな感じでシュアクーンたちは即座に村の人々に歓迎されたのだった。
▫️▫️□▫️□▫️
腹を空かしていた僕らは早速村に一軒だけある食堂へと向かった。
「いやあ!この“ウードン”とやら噛みごたえがあって実に旨いですねえー。アウス地方で食べた〆のうどんとはまた違って非常にコシがあって……」
アンテルーレがうどんをたべちょる。
「いやいや。この何とも言えない美味さ。私は“ザルソーバ”にして正解でした!こっちは酒にも合うので」
ニコニコと蕎麦を手繰るラルクラート。…飲んでる酒は日本酒では無いけれど。あ、アンテルーレがうどんを一気にかき込んでザルソーバを注文した。
「二人とも何を仰るか。この“ソメーン”はサッパリしていて最高ですよ?」
濃いめの昆布出汁醤油で素麺をゾゾゾとしているフェジン。周囲には小皿が並んで薬味の種類が結構多い。
アンテルーレは給仕さんを物理的に捕まえて蕎麦、じゃなかったザルソーバに合う酒の種類を尋ねてた。
……皆んな、麺啜って食べるの上手だね。全員フォークだけど。金属製ではなく、木の三又フォークで食べている皆んな。僕?僕は当然────。
「おや、お前さん器用だねえ!このあたりの人間でも無いのに箸を使う人なんてアタシャ見たことないねぇ」
ハイ。トレネークが監修し、タドットが製作したMy箸です。
毒検知に加え、殺菌効果も有るのだとか??ちょい眉唾モノとは思うけど、旅路で腹を壊したく無いから食事の時にはいつも使用してます。
僕は、きしめんよりもずっと幅広の“ホウート”を口にいれる。ほうとうっぽいけれど記憶にあるソレよりも幅が広い。
「その“ホウート”を細かく千切らずに食べるなんて!中々粋な坊ちゃんだねぇ!そんな坊ちゃんにはおばちゃんサービスしちゃう!」
こ、こんなことで、ほ、褒められも嬉しくなんか無いやいッ!だって産まれる前から出来てたことなんだもんっ!箸を上手に使えるのなんてさっ!
コトンと小気味の良い音を立て小鉢が目の前に置かれて。どうやら中身はお漬物の盛り合わせ。
これ、子供に出すって、どうなんだろう。…浅漬けとか味噌漬けとか好きだから食べるけどさ。
「ホント、二本の棒で食べ物食べられるだなんて信じられません!そこの器用さだけは僕も認めるところですね!」
お前に認められても嬉しかねーぜ。因みにクリソッカが懸命にフォークに引っ掛けてるのは“ウーメン”だ。温麺だけはそのまんまなんだな、名前。
「なんでッ僕のだけッこんなにッ短いンだっっ!」
僕も“ウードン”にしとけば良かった!!とぐちぐち言いながらも食べる手は止まらないのだから“ウーメン”も美味しかったに違いない。
この食堂には、稀に訪れる旅人が泊まれる部屋が少しだけ用意されていたから、僕らはそのままそこに宿泊することにした。
ご飯も食べてお腹も満たされ、村長にあてがわれた部屋に一人で戻った僕。今回の同室はラルクラート。
食堂に出発する前に二人でこそこそデュエルジャンケンしてた。僕らは先に歩いていたから現場は見てないけどね。…ついにフェジンの不敗神話は終わったらしい。
その部屋で一休みしていたらアンテルーレがやってきた。
「シュアクーン様、ちょっとご相談が」
他の人?僕が食事の席を立つ頃にはフェジンは“ザルソーバ”を、ラルクラートは“ホウート”を頼んで食べていた。
クリソッカ?まだ“ウーメン”と格闘してたよ。
0
あなたにおすすめの小説
剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~
島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!!
神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!?
これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~
gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。
なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。
一人称視点、独り言多め、能天気となっております。
なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。
ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A
ご指摘あればどんどん仰ってください。
※2017/8/29 連載再開しました!
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる