ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

40.千切っては投げ千切っては投げ

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細くうねった道。

両脇からは雑草たちが勢いよく飛び出てきている。そんな道をその辺の茎の長い花を毟り取ってぶん回しながら歩くシュアクーン。

今彼らはずっと走らせていた馬を休ませながら近くにあるという村を目指して徒歩で進んでいる最中だ。


道端の茂みの中の目立つ黄色い花。
茎の長いのを見つけるたびに千切っては捨て千切っては捨て、栄光の茎長最長一輪に輝いた物をぶん回しながら歩くシュアクーン。


「シュアクーン様はお花摘みが大変お好きなようで、手を草の汁で汚す王子など前代未聞ですね」

「シュアクーン様は生態系という言葉はご存知でしょうか?その花を棲家にする虫たちも居りますし、もしかしたら養蜂家がミツバチにその花の蜜を集めさせているかもしれないのですよ?」

手を替え品を替え、定期的に嫌味を投げてくるソリクッカを無視して一番長い茎の黄色い花選手権に勤しむシュアクーン。
細い道の時の馬とはまた別の賢さを持つ茶色の引き馬は、道草も食わずに大人しくひたすらシュアクーンにしたがって歩みを進める。

一行の通った後にはシュアクーンのムシってポイした黄色い花の道標が点々と、まるで通ってきた道標のよう。
シュアクーンの行手に待ち受けるのは、お菓子の家かはたまた魔女か。それとも強盗した品を手に持った仲良し兄妹か。



町というには小さく村と呼ぶには住民の多めなニミンスキ村にシュアクーンたちは到着した。
主要な道に石畳の道は一本も無い。ニミンスキとはそんな村だ。


「ようこそおうじさま!」

「ありがとう。これあげるよ、僕が歩いてきた道中で一番綺麗なお花だよ」

「わあ!可愛いお花!ありがとう!!」

村に到着したシュアクーン一行。宿屋など無いのでと、迎えられた村長宅の小さなレディはシュアクーンからの花一輪に飛び上がるようにして喜んだ。

へへんって顔をしてクリソッカを横目で見るシュアクーン。

伊達に元勇者を名乗ってないぜ!…って名乗ってはいなかったな、ソレ秘密だった。

コホン、兎に角豚の羽。

一輪の花を白馬を連れた王子様然とした美麗な少年からもらった村長の娘はそりゃもうご機嫌。
娘がご機嫌なら親も悪い気分では無い。
村長が当たりよく招き入れた客にわざわざ嫌がらせをする村民はいない。
そんな感じでシュアクーンたちは即座に村の人々に歓迎されたのだった。



▫️▫️□▫️□▫️

腹を空かしていた僕らは早速村に一軒だけある食堂へと向かった。


「いやあ!この“ウードン”とやら噛みごたえがあって実に旨いですねえー。アウス地方で食べた〆のうどんとはまた違って非常にコシがあって……」

アンテルーレがうどんをたべちょる。


「いやいや。この何とも言えない美味さ。私は“ザルソーバ”にして正解でした!こっちは酒にも合うので」

ニコニコと蕎麦を手繰るラルクラート。…飲んでる酒は日本酒では無いけれど。あ、アンテルーレがうどんを一気にかき込んでザルソーバを注文した。


「二人とも何を仰るか。この“ソメーン”はサッパリしていて最高ですよ?」

濃いめの昆布出汁醤油で素麺をゾゾゾとしているフェジン。周囲には小皿が並んで薬味の種類が結構多い。
アンテルーレは給仕さんを物理的に捕まえて蕎麦、じゃなかったザルソーバに合う酒の種類を尋ねてた。

……皆んな、麺啜って食べるの上手だね。全員フォークだけど。金属製ではなく、木の三又フォークで食べている皆んな。僕?僕は当然────。


「おや、お前さん器用だねえ!このあたりの人間でも無いのに箸を使う人なんてアタシャ見たことないねぇ」

ハイ。トレネークが監修し、タドットが製作したMy箸です。
毒検知に加え、殺菌効果も有るのだとか??ちょい眉唾モノとは思うけど、旅路で腹を壊したく無いから食事の時にはいつも使用してます。

僕は、きしめんよりもずっと幅広の“ホウート”を口にいれる。ほうとうっぽいけれど記憶にあるソレよりも幅が広い。


「その“ホウート”を細かく千切らずに食べるなんて!中々粋な坊ちゃんだねぇ!そんな坊ちゃんにはおばちゃんサービスしちゃう!」


こ、こんなことで、ほ、褒められも嬉しくなんか無いやいッ!だって産まれる前から出来てたことなんだもんっ!箸を上手に使えるのなんてさっ!

コトンと小気味の良い音を立て小鉢が目の前に置かれて。どうやら中身はお漬物の盛り合わせ。
これ、子供に出すって、どうなんだろう。…浅漬けとか味噌漬けとか好きだから食べるけどさ。


「ホント、二本の棒で食べ物食べられるだなんて信じられません!そこの器用さだけは僕も認めるところですね!」

お前に認められても嬉しかねーぜ。因みにクリソッカが懸命にフォークに引っ掛けてるのは“ウーメン”だ。温麺だけはそのまんまなんだな、名前。


「なんでッ僕のだけッこんなにッ短いンだっっ!」

僕も“ウードン”にしとけば良かった!!とぐちぐち言いながらも食べる手は止まらないのだから“ウーメン”も美味しかったに違いない。


この食堂には、稀に訪れる旅人が泊まれる部屋が少しだけ用意されていたから、僕らはそのままそこに宿泊することにした。

ご飯も食べてお腹も満たされ、村長にあてがわれた部屋に一人で戻った僕。今回の同室はラルクラート。
食堂に出発する前に二人でこそこそデュエルジャンケンしてた。僕らは先に歩いていたから現場は見てないけどね。…ついにフェジンの不敗神話は終わったらしい。

その部屋で一休みしていたらアンテルーレがやってきた。


「シュアクーン様、ちょっとご相談が」

他の人?僕が食事の席を立つ頃にはフェジンは“ザルソーバ”を、ラルクラートは“ホウート”を頼んで食べていた。
クリソッカ?まだ“ウーメン”と格闘してたよ。





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