ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

41.耳年増

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僕はこの旅でアンテルーレという人間をよーーーく知ることが出来たと思う。
国を出立した直後の隣国での昼餐会の時からアンテルーレはアンテルーレだったなぁ。

隣国カラリュリコの昼餐会では唯一の女性同行者としての役割を立派に果たしてくれたアンテルーレ。

しかし、昼餐会が終わった途端「これもう必要ないですよね?」と、ドレスや靴など装飾品一式、実に爽やかな笑顔で母国に送ってしまおうとしていた。いやいや。まだエルフの里でも使うから!まだ必要だからソレ。


「……ダメじゃね?まだ、エルフの里で着なきゃでしょう?」

そんなの12才の僕でも気がつくのに。


「しかし……それではこの先色々と、その、えと、シュアクーン様のブラックと違い私のネーロは、あの、その、容量が少なく……」

ガックリとしているアンテルーレが少し可哀想になっちゃって、僕のブラックに荷物を引き取ってあげた。
使役者が貸してる状態だから、ブラック一号から四号は僕のブラックよりも全然モノの入る量が段違いで少ないんだ。


「じゃあさ、僕のところで預かろうか?僕のブラック、まだまだ余裕だしさ」

「え!?良いのですか!!困っている部下の荷物を持ってやるだなんて!なんて出来た上官なんだ!!」

って感動してるけど僕、上官では無いよね?上司でも無いし、んーーと、主?だよね??多分??


「よーーし、これでネーロに空きができた!もっと食糧を詰めることができる!」

と、喜んでるアンテルーレは早速食事と摂るために入った宿の向かいのお店にとって返しておかみさんを大声で呼んでた。

「おかみさん!ちょっと調味料などを分けてくれないかい!?勿論代金は払うからさ!」


僕が引き取ってドレスやそれ周りの関連物を仕舞った後。
空いたスペースに、アンテルーレは調味料やニンニク、生姜など味付けに使えそうな物を仕舞い込んでいたみたい。あと、お酒。
……道中のご飯が美味しくなるんだから、そりゃ僕も協力するよね?

その後、アンテルーレのブラックがあんなことになっちゃうだなんてその時はちっとも思ってなかった。



「それで?相談って?」

「そ、そのですね。な、なんとですね!ウードンやソメーン、ザルソーバは乾麺があるそうなので、是非是非買ってネーロに入れておきたくって!!」

ああ、ホウートは幅広で皆んなには食べにくいだろうからな。僕は好きなんだけど残念。そしてウーメンはクリソッカがあんなだからやめといた方が無難。
前世から食べ慣れてる僕なら上手に食べられるんだけどね。






▫️▫️□▫️□▫️


騒ぎはその翌朝に起こった。


「ぎゃあぁああああ!!」

物凄い叫び声で目を覚ました僕。
すわ殺人事件か?密室なのか?とラルクラートと飛び起きて悲鳴の上がった部屋に走り込んだ。

まさか!ネーロ事件再びか!?と構えてた僕だけど、このやたら高音の悲鳴の主はフェジンだった。

朝目覚めると布団の中に食堂兼宿屋の次女が、飼い猫を抱っこして潜り込んでいた。と、言ってもまだ三歳。
とてもおしゃまなお嬢さんで聞けばラルクラートに一目惚れをしたんだそうな。なんて罪作りな男。

しかし、相手は旅人。これは逃してなるかと女の最終手段(?)を発動したのだという。…コノミミドシマめッ。


「……フェジン。一応聞くけどここに婿入りとか」

「しませんよッ!!!」




▫️▫️□▫️□▫️



さっさと国境だけは越えてしまいたかった僕らは、旅路を急ぎ今は
旅人が良く利用する街道沿いの開けた場所に野宿の準備をしているところだ。


「さあ、今日はここで野営にしましょう。街道沿いなので魔獣の心配はあまりありませんが、荷物を狙う悪人の心配をしなくてはなりません」

「そうだな。夜は一人ずつ見張りを立てた方がよいだろう」

だんだんメーダロソン連山に近づいていくと徐々に町と町、村と村の間隔が離れてきて宿泊場所が大地そのものというパターンも増えてきた。
決して以前、宿屋でフェジンにイベント起きた所為ではない。…多分。



「シュアクーン様は気にせず朝までお休みください。明日もまたなるたけ進まねばなりませんから」


善良そうな顔した盗賊や泥棒なんて世の中にごろごろしている事は勇者時代に知ったから。

貧すれば鈍するって言葉があったけど、まさにそれ。食べる物が無かったり自分の子供が死にかけてるのに人のことまで気にかけていられない。そんな人々も勇者時代の旅の中でたくさん見てきた。

でも、それでもそんな中で自分が大変でも勇者だと名乗る僕に良くしてくれた人々もたくさんたくさんいたんだ。
だから僕は途中で投げ出すことなく最後まで女神様に課せられた仕事を全うして、世界への魔力供給過多の元凶まで辿り着けた。

今、思い出してみても大大大冒険だったと思う。


勇者じゃ無くなった僕は無茶して体を動かすことも、あれこれ魔法を行使する事もしない。そんな必要が無いから。

なんなら旅路でも今みたいに見張り免除!とか優遇されてるしさ。お金の心配も要らないもんね。お金が無いからと短期で働いて稼ぐ必要も無い。

それでも、もしもそれを“やりたい”って言っても決してやらせてはもらえないだろう。

そんな風になんでも思い通りには出来なくなって、自分で決めて取れる行動、選択肢にも自由が無くなってしまった。…その代わりに色々恵まれているのも事実なんだけども。



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