ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

44.出戻り勇者の旅〈ニ〉

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エルフと過ごした宿屋を出立してから割と直ぐダニートが僕ら一行から抜けてしまった。


病気や怪我とかではなくて、旅の途中で立ち寄った村の村長の娘と恋仲になってしまったのだ。
村長も二人を認めていて、ダニートは門番から勇者パーティメンバーを経由して、次の村長候補となってしまった。

僕らは快く彼を祝福して、手持ちの路銀から御祝儀と調味料一揃えを餞別として、彼と別れて旅を続けた。

一人抜けて三人旅。
僕らは互いを補い合いって結構上手くやれてたと思う。






そしてダニートが抜けた半年が経つ頃のこと。

「そろそろ旅の資金が枯渇してきた。ここの町はそれなりの大きな町だからここでしばらく金を稼ごうと思う」

コジミンの言葉に僕とノミルは頷いた。
禁書庫で見つけた手がかりの場所まではまだまだ遠い。どうしても色々調達しながらの移動となるのは仕方のない事だ。

僕らは各々仕事を見つけそれぞれ別の場所で働いていた。



そしてまた一人パーティメンバーが減る。

ノミルが旅の資金調達のため短期働きに入ったところで商人に気に入られ、そのままその店で正式に雇われ、そこと取引のあった大手の卸問屋の娘から見初められて結婚しちゃった。

僕らはダニートの時と同じようにその町では扱われていない調味料と路銀の一部を差し出したのだけども、逆に彼から餞別にと持たされたお金と物資の方が多かったよ。



そして。そして。

最後にコジミンがこれから大きな山を越えるぞ!というところで僕ら一行(といっても二人)に親切にしてくれた家の村娘と良い仲となり、婿に入ることとなった。

三人の中でコジミンがいっちゃん大変だったかも。

コジミンは相手に好意を伝える時に手渡す、この辺りの風習である地走り鳥の頭の羽根で作ったブレスレットを手づくりして彼女に渡してた。ブレスレットは婚約指輪的なみたいなものなんだろうね。

その地走り鳥の冠羽を集めるのが結構大変でさ。括り罠を教えてもらって仕掛けたり、餌を仕掛けて森に潜んで狩ったりなんか色々してさ。
でもちゃんと自分で仕留めた鳥の羽根だけを使って作ったんだよ?凄くね?


僕は先に離脱した二人の時のように路銀からお祝いを渡そうとしたんだけれどコジミンから固辞された。…そんな申し訳なさそうな顔しないでよ。めでたい事なんだからさ、コジミン。




こうして勇者パーティ一行は最初と同じく僕一人となってしまったわけだ。
寂しく無いと言ったら嘘になる。けれども旅も二度めなら何も知らなかった頃とは違って、僕も慣れたもの。すぐに一人でも大丈夫になった。

一人はいいよ。何するにも自分で決められるから。…うるさい。これは心の汗が目から外にでできてるだけなのッ。


魔王を倒す旅で再び一人になった僕。でも大丈夫。最初に戻っただけで何もマイナス的要因は一切無いのだから。なんだったら二度目の旅路、既に色々経験している分プラスまである。

一人となった僕は自由になった。
そうさ!自由。もう同行者の目を気にしなくても良くなったのだ!!


「今日はここで野宿にしよう」

一人だから、どこで寝ようがいつ起きて出発しようが自由だ。
早めに居場所を整え、食事の準備を始める。

本日の寝床にと選んだ場所は街道沿いなので魔獣のことはそれほど心配しなくともよい。
よいがその代わりに、脇を通る人の中に悪人がいないか心配をしなくてはならない場所だ。

だんだんと遠くに見えていた山脈に近づいていくと徐々に町と町、村と村の間隔が離れてきて今日のように宿泊場所が大地そのものというパターンも増えてきた。


「さあて、今日は何を食おうかなーーっと」

火をおこし丸い草を乾燥させた固い塊を放り入れる。
火に焼べたのは魔昆虫避け。
魔鳥相手には何とも無いから気をつけないと手に持った食い物を掻っ攫われることもある。…これを僕に教えてくれた人は今元気にやっているだろうか。

持ち物を漁り、村でもらった保存食を引っ張り出して考える。一人なのでなるべく嵩張る物は持ち歩かず荷物は最小限を心がける。


「もらった弁当はその日のうちに食べちゃったしなぁ。美味かったよなぁサルタナの作ってくれたご飯は」




異世界に召喚されたと知った時よりも初めてモテてる自覚を持った時の方がテンション高かった。

もうさ、勇者らしくと引き結んだ口がムズムズして勝手に口角が上がってきそうになってさ、キリっとした顔でいたいのに気を抜くと顔が緩んできそうでさ。


城に出戻る前、一度目の旅をしている間によく「三代前の聖女様は~」「歴代の聖女様には~」とかいう話を散々っぱら耳にしてきた。

歴代の聖女がいるからには歴代の勇者がいなくてはおかしいと考えるのが当然。
いたよ。
俺の前にお歴々が。
代々のハーレム勇者様方が。

この世界に召喚される時、勇者と聖女は女神の声を聞く。物語によく在るあの白い部屋とか広い空間ではなくて僕も見たあの花畑。

勇者っつー男共は、どうも女神様から送り込まれる時にはチートスゲーとか俺つええーとか魔王!斃す!とかって俄然超絶張り切ってるんだけど、いざ異世界に降り立つと煩悩に負ける輩が多すぎて。

禁書庫で見つけたどの勇者も結果的には魔王(ではなく強力な魔獣)を倒したけれど、ご多聞に漏れず大なり小なりハーレム形成しちゃってたりしたし。
これはあれだ。
異世界人が愛嬌があって可愛くて美人揃いなのがイケナイ。そんなのが好き好きぃ~って寄って来たら、ね?ホラ、さ?人間の三代欲求的に耐えられるかっていうとね??

君は耐え抜くことができるか?
僕は無理でした。

物事がスムーズに捗るようにと勇者に魅了の力〈無条件に人に好かれる能力、人たらしの能力〉をモレナク与えるからいけないんだよ。



話し相手もいない一人旅。時折燃え上がる火に照らされてアキクーンはこのような時にはいつも過去の出会いを思い出してしまっていた。




月は雲に隠れ、かすかに灯る星の光りが彼女の輪郭に落ちる。

「今は私だけをみて。勇者のお仕事のことは忘れて」

続く彼女の優しい言葉が星の光りと共に僕に降り落ちてくる。

一人で旅をして、帰れる場所も無くて。そんな僕にかけられた君の言葉で僕の心は安まった。



「…………あの時のギルドの受付嬢。すっげぇ可愛かったよなー」

一人になった感慨は三歩歩いて忘れる鶏の如く頭からスッパリ抜け落ちて。勇者アキクーンはモテモテ勇者街道を一人でソレなりに満喫していた。
…それを咎めるような人物はもう彼のそばには居ないから。当たり前のことではあったのだが。


わからないことをわからないままにせず人に聞き自ら調べようとした賢き勇者だと後の世では評価されたが、当時の勇者アキクーンのことを何をしでかすかわからない問題児だと王様たち国のトップは考えた。

なので。
通常は一人で魔王討伐の旅に放り出すところを出戻り勇者アキクーンには三名の旅の同行者が国から付けられた。
もう、二度と城に戻ってきたりしないようにと同行者たちは強く言い含められて。

暫く経ち。
お供にとつけられた同行者たちが一人また一人と旅から離脱し、最後の一人の年長者が立ち寄ったある村に婿として残った後。

それでも勇者アキクーンは禁書庫で調べたことを基にして、目星をつけた目的地目指して一人旅を続けていく。





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