ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

46.人類ってすごいね

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エルフの里へと近くなるにつれて森が増え地形の高低が激しくなってきている。
川を渡って入国したモリリミドは強いて言えば農業、林業、狩猟の国。


今までの宿とは趣がガラリと変わって林の中に静かに建つログハウス風のお宿。町から少しだけ離れた場所にそんな風な宿が多少の距離を置いて点在している。

僕らの宿“喬木と鏃”は朝食しか出していなくて他は町まで行って食べるか調達してくる形式。この辺で宿といえばみんなこの様なスタイルなんだってさ。
ちょっとペンションテイストな雰囲気の宿屋群だけど朝食しか出ないとか色々違う。

勿論、予約して高めの料金を払えば調理してくれはするんだけどね。
でも通常の宿屋みたいに専門の料理人が調理する訳じゃないから家庭料理以上の物は期待できない。なにせこのお宿。一般家庭が旅人相手にお部屋を貸しているという形態なのだから。

その代わり、といってはなんだが
林の中に生息する獲物を狩ってくれば無料で調理して出してくれる謎サービスがある。
アンテルーレが張り切っていたけど、そんなの獲物を捕って処理して調理して、僕らの口に入るまでどんだけ時間かかるんだって話だよ。僕は普通にご飯を食べたいんだ!!






という事で。
早速お昼ご飯を食べに町まで足を伸ばした僕ら。
町とログハウス群とを低料金の巡回馬車が走っているからそれに乗った。ポッコポッコと荷台に屋根かけた簡単な馬車を粛々と大人しく引く馬。…今までで一番観光してる気分を味わったよ。

町に着いて僕らの選んだお店は定食屋さん。しかもご飯がメインのお店なんだ。

大昔。まだ宿屋をしていた頃。投宿した聖女がご飯物ばかりを所望してご飯料理ばかりを作って出していた名残り?でずっとパンではなくてご飯のついた定食屋さんをやっている……という触れ込みのお店。

言い換えればご飯(に合う)料理専門店。純粋な“ご飯”屋さんだ。



「ハイよっ!あんぽんたん一丁、お待ちっ!」

いやいや。悪口じゃないよ?
“あんぽんたん”はどんぶりに入ったあんかけ料理全般を指す。
餡をポンとかけてタン!と出す。
簡単な料理ってことみたい。

あんぽんたんの他にメニューには普通な感じの〇〇定食もあるし、単品料理もそれなりにのっている。けど断然あんぽんたんの種類が多い。
それは良いんだけど……。

ラルクラートが定食の追加で頼んだ焼き魚の切り身。
アンテルーレの頼んだ三種具材の卵焼き。クリソッカの温野菜。すべての単品料理全部にも餡がかかっている。

運ばれてきた卵焼きはまんまんるに焼かれていて、それにたっぷり餡がかけられてて。
それならばいっそ天津飯にしてくれと思ったよ。アンテルーレが美味しそうに食べてたから、いいけどね。

極め付けはフェジンの野菜炒め定食の皿にこんもり盛られた野菜炒めにまでも餡がかかってるのが……うーーんコレ野菜炒め?って感じ。これが丼なら中華丼だろうけど。中華のない世界で中華丼とはこれいかに??

因みに白飯にもやしあんかけをかけた物が一番低料金で、それは“かけぽんたん”と呼ばれている。
いやいや、“かけ”ってうどんか蕎麦でしょうが。



「シュアクーン様のは茶色一色なんですね……」

「そ、そうでもないよ?ここに紅生姜乗せて食べるんだから」

多分フェジンがこっちを睨んでいるのは緑の野菜が僕のところに無いせいだろう。玉ねぎだって立派な野菜だぞ!!フェジン!

僕のは牛丼、じゃなくて“牛あんぽんたん”。なので汁だくならぬ“あんだく”である。上に餡がかかってると料理が冷めにくいからアチアチあちちとフーフーしながら食べたよ。

そして僕の頼んだ単品ポテトフライにも、しっかり餡掛けかかってた。ウソみたいなホントの話。


「そうだ!こんな時こそグリーンに手伝ってもらおう!」

僕は料理を冷ますのと汗の出る体を冷やすのとでグリーンから風を送ってもらった!うーん、ナイス判断!僕!


「あら、ごめんなさいねー」

給仕の年嵩のお姉さんの腕に弾かれてフェジンのあんかけ野菜炒めにペタッと落ちるグリーン。
グリーンはへんにょりんドロどろんになってしまった。

「……ぐ、グリーン?」

もう彼のライフはゼロよ。…もしかしたらマイナスかも?



ご飯を食べて宿に戻ってもまだ日は高い。
僕は殉職したグリーンを折り直してから宿の裏庭に宿のご主人と一緒にきていた。

クリソッカとフェジンはアンテルーレが見つけた“甘味処アマントカ”ってお店に吸い込まれていったよ。僕はラルクラートと二人で馬車に揺られて宿に戻ったんだ。




この森林に包まれた国モリリミドには地走り鳥の他にも特徴的な鳥が生息している。…というか、野生の鶏?

僕らの宿“喬木と鏃”のご主人がその鶏を飼って卵をとってるというからお願いして見せてもらう事にした。


「卵をとるために飼っている鶏が見たいだなんて変わった坊ちゃんですね」

お父さん、って雰囲気の宿の主人が含み笑いで先導する。
宿屋の裏手に建てられている小屋の中にそれは居た。

「こちらですよ」

小屋の中で飼われているのは巳骨鶏。
首が細長く筋肉質なのが特徴。
その蹴る力は地走り鳥よりも強力。
小集団を形成して生息していて地走り鳥が風魔法を使うならこの巳滑稽は脚のみに身体強化魔法をかけて外敵から家族や身を守る闘う武闘派だ。

それを卵をかえし育てて飼い慣らしたのがこの小屋の巳骨鶏。その名の通り尾っぽに蛇が付いている。

宿の裏手から時折聞こえてくる長く尾をひく鳴き声とこの姿から(尾っぽに蛇ついてるし)巳骨鶏とすぐにわかった。
僕がアキクーンの時に見た身体の羽根が輝く様に真っ白という特徴的な姿も変わらない。

顔は黒っぽい緑色で目つきは鋭い。
体つきは細く筋肉質でその身は他の鶏よりも締まっておりやや硬め。深く濃い旨味の強い味わいが、硬めのぷりっとした歯応えと共に酒飲みに愛されている。
……アンテルーレには黙っておこう。群れの生息地探して飛んでいっちゃいそう。


「うわ、目つきすげぇ」

「もっと近くで見ても大丈夫ですよ?」

それなりの広さのある小屋の扉を開き、僕を招き入れてくれる。
巳骨鶏たちが見慣れぬ不審者の僕の姿に一斉に警戒を強めるのがわかった。


「爪にご注意を。
地走り鳥よりも鋭い爪で、風魔法こそ打って来ませんが硬化魔法を使った爪から繰り出される蹴りは木に穴を穿つほど強力ですから」

キリリと立つ立派な尾羽。
時折長鳴きする声や羽根ほ美しさ特に尾羽は帽子の羽飾りなどに使われるほど光沢と筋が美しい。

僕がそっと触ろうとするとふさふさの尾羽から鎌首を擡げて蛇が立つ。

「ひっ」

「巳骨鶏の尾には、一本から五本の蛇がついています。
こいつは自慢の鶏で、過去最高の五本の蛇がついています」

ピンと立った蛇が孔雀の尾羽のように丸く開く。
蛇は手足のように自分の意思で動かせるらしくちろちろ舌を出して本体後方を警戒している。
目は擬似で模様。なので視覚ではなくて蛇と同じく舌のセンサーで後方の情報を把握。…僕の知っている通りならね。

「毒の出る牙はぬいてありますから、万が一噛まれても大丈夫です」

宿の主人の差し出した指があぷッと尻尾蛇に噛まれてるけど全然痛そうにしていない。
彼の話では尻尾蛇の毒は神経毒で、噛まれると手が痺れて指が動かせなくなるくらいの強さ。
うん。僕の知っているのよりもかなり弱体化してるね!

小屋の中で放し飼いにされている
地鶏、という形だが、相手は元は鳥魔獣。
マヨウコウに続いて巳骨鶏まで家畜化してるだなんて人類って本当にすごいねー。





翌日。町で買い足したい物を買い足し、出立前に昨日三人が来てた“甘味処アマントカ”に立ち寄る事にした。…すごく美味しいってクリソッカが自慢するんだもん。僕だってなんか食べてみたくなっちゃうよ!

でも、入ってびっくり。てっきりお菓子屋さんかと思ったら食事もできるお店だった。なら何故“甘味処”???

「甘いは旨いがオレの信条さ!
どの料理にも少量の砂糖を入れるってぇのがオレの秘伝のレシピよお!!」

料理を持ってきた店の主人が豪快に笑う。
でもさ、そんな大声で喋ってたら秘伝でもなんでも無いと思うんだけど??



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