ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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過去と現在

48.山麓の宿①

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エルフの里に行くには超えなければならないメーダロソン連山。見渡せば、高い山々が間近に聳り立つ雄大な風景が広がっている。

真っ直ぐ直線的に突き進みたいところだが、標高の高い山々に阻まれ、予定では地図上で見ると少し北方へ移動しながら山の低めな部分を通り抜けることになる。


道の先。高く空を見上げると頭上には険しい山肌。


「いよいよメーダロソン連山を超えますよ?皆さん覚悟は良いですか?」

この先はより一層山道が多くなってくる。なので一つ手前で宿泊した町で、川を越えてから手に入れた馬を売却してしまった。
馬に手間をかけるよりも魔法を駆使した方が移動が早いし使い勝手が良いと判断したからだ。


「あれに見えるのがその昔、多くの強い魔獣が住処としており、ドラゴンもその頂に住んでいたとされる高くて険しいイノチラ山です」

連なる山の中に一際高く聳えるのがイノチラ山。
そうそう。だからそこが“魔王”のいる場所の候補の一つだったんだよね。


「今日の宿泊予定地はメーダロソン連山の麓の町にある宿で、昔は魔獣討伐隊や瘴気を祓ってくださる聖女様方の逗留場所として維持管理されていた建物です」

「今では観光に訪れる人々の宿泊施設となっている場所ですね?僕でも耳にした事のある、とても有名な場所なのですよ!」

おっと、ソリクッカの解説蘊蓄マシンガンが火を吹くぞ!その前に僕の意見を聞いて貰おうか。

「そこは却下で!!」

「え?」
「何故でしょう?」
「他に泊まれる様な場所はございませんが……」

「天気も悪くないし、私は野宿でも構わないよ。どうせそこ以外は全部野営だろ?」

勇者アキクーンがメーダロソン連山を超える前に泊まったとされる宿屋は、定説では聖女の利用していた方だとされているけど、僕は転生しても絶対にその宿にはとまらないよッ!

そこの宿。勇者時代にお金が足りなさそうな見た目だからって僕を泊めてくれなかった宿なんだ。…正確にはつまみ出された。
今は別の人が経営してるのかもだけど、正直気分良くない。


「何故なんです!?歴代の聖女の投宿したとされるッ由緒正しい宿屋なんですよ!」

アー、クリソッカがうるさくなっちゃった。





エッヘン!主の意向には誰もが従わなくてはなりません!!
と、いうことで。聖女御用達の宿ではない、もう一軒の宿“高嶺の葉”に宿泊が決定致しました。


「まったく横暴ですよ。二度とこんなところまで来られないだろうというのに……」

いつまでもうるさいねぇ、君は。


「じゃあさ、クリソッカだけアッチに泊まったら?あ、一人が不安ならアンテルーレ、一緒に着いてってあげてよ」

「……わたくしの守らなくてはならない主はシュアクーン様なのですが?」

こっわ。なんでそんなドスきかせてくるんだよぉ。ちょっとした冗談じゃあ無いですか!


「お待ちどおさま、蕪のとろとろ煮込みと地走り鳥のロースト、ミモザサラダそして盛り合わせのパン二つ、お待たせ致しました!」

手早くテーブルの上に置いていくお姉さん。


「残りも直ぐにお持ちします!」

ミモザのサラダは日本式。グリーンサラダに潰したゆで卵を散らしたタイプだ。…フェジンが頼んだに決まってるでしょ?フェジンと仲良く半分こ!だよ!!


「シュアクーン様は何を頼まれたのですか?」

「僕はコレ!」

メニューの一番最後の部分を指差す僕。


「ほう、コースなどというモノがあったのですね?」

アンテルーレの目が光る。コース料理はドリンクが選べてその中にはお酒の文字が。


「僕はりんごジュースにしたよ?」

一応、特にアンテルーレに伝えておきます。山の中腹にある果樹園から新鮮な季節のフルーツを取り寄せています、とおすすめに書いてあったんだもん。
今の時期なら
いちごの様な三角錐っぽい形の“とんがりんご”が食べごろだもの。


「ハイよ、お待たせ!指魚のスープに卵とトマトのチーズ焼き、カリカリポテト揚げに厚切りステーキ肉だよっ!」

今度は年嵩のお姉さんが料理を運んできてくれた。…クリソッカはまだ少し膨れっ面をしている。そんな顔でご飯食べても美味しくないよ?

ゆで卵をスライスしてトマトと交互に挟んでチーズをかけて焼いたものを引き寄せてタバスコの様な辛みソースを一振りするアンテルーレ。


「こりゃ美味そうだ!すまんがこのコース料理を追加で一つ頼む!飲み物は……」

お酒、だよね。



「はーー、食った食った!」

コース料理(といっても定食に毛が生えた様な品数なんだけど)に地走り鳥の燻製肉が入っていて僕は大満足!!

お部屋でベッドにごろりと転がる。
周囲ではツルレンジャーたちがあそ…警戒中。この部屋を出る予定はもう無いからゴールドも一緒になって絡れるようにしてじゃれまわっている。

「では少しラルクラートと打ち合わせしてきますね。…大人しく部屋に居て下さいよ?」

ハイハイと手を振って答える僕。今回はフェジンが勝利を収めたようだ。ジャンケンつええな。



「流石に宿の名前はそのまんまじゃ無かったか」

僕が昔、勇者アキクーンだった頃に泊まったときは“シリシシプの蹄”って名前だった。

この先に進むと突きあたる切り立った崖に住むアイベックスみたいな脚を持つ山羊、シリシシプの生息地があったはず。

そのシリシシプのように切り立った崖みたいな困難でも、どんなギリギリな状況でも切り抜け生き抜いて見せる!って気持ちを込めてつけられた名前だと言ってたんだけどな。…コルンが。


「高嶺の花ならわかるけど高嶺の葉って何考えてつけたんだか」

シュアクーンは大きな欠伸を一つして、ベッドの掛布に潜りんだ。


「……それにしても宿泊者全員に早朝目覚ましサービス付きって言ってたけど、朝に大きな鐘かドラでも鳴らすのかな……」

お腹が一杯なシュアクーンはそのままとろとろと眠ってしまった。



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