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過去と現在
67.子どもは寝ろと言われても
しおりを挟む「さあ、今宵はご存分に舌を楽しませてくださいね」
エルフが開いた僕たち使節団を歓迎する宴。
並べられた料理の中にウブリアーコッコを使ったエルフの里で客を歓待する時に必ず出すという料理の説明がされた。
それは“大虎鶏”という料理。
日本酒に半日漬けた後、シードルや葡萄酒などの果実酒で煮込み料理にする。使う果実酒により多少レシピとウブリアーコッコの肉以外の材料が変化するが、肉を二回も酒に漬けるのと、そもそもウブリアーコッコ自体が酔っ払いの様に顔が真っ赤だからとその様な名前が付けられたのだと説明してくれた。
今、僕のお皿に取り分けられたのは蜂蜜酒とピーチリキュールの“小虎鶏”で、鶏肉と一緒にもちもちとした白玉団子の様なものが添えられていた。
米があるなら日本酒があってもおかしくは無いんだけどさ。今回通過してきた国では見られなかったし、まさかエルフの里でお目にかかるとは思わなかったよ。
────で。
そんな歓迎の宴の真っ最中。
退席した僕とクリソッカは当てがわれた部屋へと向かっていた。
僕につけられた案内人の歩みに従って静かな廊下を歩く。
「ふぉい!」
突然後ろで変な音がして振り向いて見れば、部屋までの案内につけられた綺麗なオネイさんにクリソッカが庭をみてみたいとお願いしていた。
あー、まー、そうか。エルフは美人ばかりだからな。
そんなクリソッカは放っておいて僕は真っ直ぐ部屋に戻ることにする。今日は歓迎の宴のみ。
どうせ使節団との話し合いは明日から。
▫️▫️□▫️□▫️
室内が喧騒に包まれるよりも以前。
宴の冒頭で子供相手にもわかり易いような昔話の謳い語りが披露された。
大昔のこと。
人は人の領土には無い薬草を求めどこまでも森に入り込み、エルフは自分たちの生活圏が荒らされることを疎んだ。
そうしたエルフと人間の国で諍いがあったのち。
魔力の嵐が吹き荒れる。
豊かな森であった場所が今の様な草原と化し、エルフの森は削り取られた。人間側の森も少なからず被害を受けた。
その時にエルフの里に滞在していた聖女の力により、エルフの里は救われて、人間とエルフとの話し合いにより草原を緩衝地としてどちらの国のものでもないとし、互いの国の国境を定めた。
勇者と聖女の力によって定められた国境線は今もいきていて、それが永遠に破られないようにと、そこを通ると壁を越えた様な不思議な感覚がするという言い伝え。
実際、その聖女がまだいた大昔には何かを通り抜けて反対側にでるようなそんな感覚がしたのだという。というか僕がアキクーン時代に通った時にはよく分からんかったな。
エルフたちは自分たちを救ってくれた聖女に深く感謝して、元からの薬草園の他にも植物園を作って現在も聖女の世界の植物を集めてたくさん育てている。
それがこちらの魔力の影響を受けて変質し、効果の高い薬草となったりしている。
その聖女の世界の植物の一つ、露草を持ち帰るのが僕の使命!なんだけど。
兎に角豚の羽。
緩衝地帯は不干渉地帯。
でも動植物にはそんなのは関係ない。
鳥は種や花を啄みどこにでも運んで糞をする。
そう思っていた通りにフセマテ平原でも昔薬草だと教えられた草花を見つけることが出来た。
エルフ側の森。
モルドリにも零れ種から根付いた植物がちょこちょこ見受けられた。
セイタカアワダチソウなんてあんなにでっかくなっちゃっててさ。
日本の植物なんてここにいる人間の中では僕にしか判断出来ないだろうけどさ。
「ブラック。本を一冊出してくんない?あ、図鑑とか絵の多いやつにしてね」
12才の王子なんてどうせお飾り。
盛り上がる歓迎の宴から早々に部屋に引きとり、ご飯を食べたあとクリソッカが買った本をブラックから出して読んでみる。…正直まだ眠気のくる時間じゃあない。
食器を下げるエルフが来た時に寝るから後は放っておいてとお願いして、ツルレンジャーたちを室内に放った。
「部屋から出ちゃダメだからね!」
新しい遊び場に最初は団子になってわちゃわちゃしていたツルレンジャーたちは、それぞれが違う事をし始める。…おっと!隙間にだけは入らない様に言っておかなきゃ。
僕はイエローをふん捕まえて開いた本を照らさせた。
「あ、クリソッカ。本、借りてるよ」
クリソッカも僕(お子様)側にカウントされて不服そうにしているが、役職も交渉するタネも無い君があそこに居てもしょーがない、とも思う。
クリソッカは、この区画ならば自由に見てまわっても良いと許可を出されているのでその辺をぐるりと散策して部屋に戻ってきたところだ。
「中庭はとてもとても自然を感じられる造りをしていたよ」
うーん。それって伸び放題のぐちゃぐちゃな庭だ、ってこと?
確かに王城やクリソッカのお家の庭と比べたらそうかもだけど、植っている物はちゃーんと吟味されているんだよ?コレでも。…なにせ見たのは二度目だからね、僕。
「ブラック。本、別のと交換して」
暇つぶしに開いていた本を閉じると、気になる箇所に栞がわりに挟んでいたイエローが抗議して点滅を激しく繰り返す。
「あ、挟んだままだった。そのまま片付けるところだったね、ごめんごめん」
僕とクリソッカの二人は一応の顔見せの後、フェジンからの合図によって早々に部屋に引っ込められてしまった。…クリソッカは残っていたそうだったけど。
どーせ僕一人だと碌な事しないとか考えての事でしょう?もう!信用ないなあ。
「うーーん、少し喉が渇いたかも」
整えられた部屋には水差しが置かれ、シュアクーンはその水をコップに注ぐ。
「あっ、危ないよ?ブルー」
毒がないか見ようとしてるのか覗き込みすぎ、あえなくコップ内に水没するブルー。
ブルーは旅の間シュアクーンの身の回りの水に関心を寄せていてつっついては、よく嘴を濡らしていた。
「こら、ブルー。それじゃ乾くまで遊べないぞ?」
コップからブルーを救出して取り出した箸をコップに突っ込むシュアクーン。
「眠り粉、かな?」
箸は直ちに変色し、水に何かが入っている事を示す。
「全員の部屋の飲み物に入ってるんだろねー」
でも、その方が都合がいい。
「さて、疲れたし今晩は僕ももう寝よう」
ブラックに収納していたレモン水で喉を潤し、シュアクーンは身支度を整えてゴールド以外のツルレンジャーたちを片付けて寝る準備をした。…ブルーだけはタオルと紙に挟んで本で重しをしたままにして。
寝支度を始めたシュアクーンを見て、クリソッカももう寝ることにしたようだ。
「シュアクーン様。私はもう休む」
「うん。おやすみ、クリソッカ。
さて、枕元にはゴールドを置いてっと」
旅の間中。
ゴールドには夜警をお願いしてた。不審な事が起こればゴールドが弾けて音で知らせてくれる。
「慣れてるから大丈夫だと思うけど、ネーロみたいにネズミにやられるなよ?」
こくこくと小刻みに頷くゴールド。ここはエルフの里。ネズミも人の里のものとは違うかもだから。
ゴールドをセットしていたら、フェジンたちが部屋に来た。
みなさん遅くまでごお疲れ様です。
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