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ご褒美転生
4.僕、みっちゅです
しおりを挟む数日前に僕は三歳のお誕生日を迎えた……らしい。
三歳になると両親と晩御飯を一緒に食べる……らしい。
三文字で表すと昼餐会。
本日、その日がやってきた……らしいです。
と、いってもパーティとか誰かを招待するという訳でもなく、三歳まで無事に育ったお祝いに成人した家族と一緒にお昼ご飯を食べる。
ただそれだけの貴族の仕来たり。
とはいえ。
僕の両親は王様とその妃。
無様で無作法は許されない。
なのでシェイラはご飯を食べる時には付きっきりで指導がてら面倒を見てくれていた。
先程“成人した家族”と述べたが、僕のまだ見ぬ兄弟は全員まだ成人前なので僕がお昼を共にするのは父と母たちだけ……だそうだ。
いつもとは違う上等な服、装飾の施されたボタンやキラキラしたクラバットピン。そしてキズや汚れの無いかっちりした靴を履かせられる。
そんな支度をされながらシェイラから聞かされた情報ばかりなので全てらしい、だそうだ、の伝聞なのは勘弁して欲しい。
最後に髪の毛に塗られた何かは正直匂いが嫌いだ。
その顔を合わせた事もない未成人の兄弟については、大人の中に子供が一人な昼餐での家族の会話から詳しく知ることとなった。
僕には兄が二人いて、僕が第三王子なのだとは知っていた。
王様には僕を含めて王子が三人いるわけなのだが、第一王子は僕の3つ年上でリシャーデンといい、第二王子のサフィジョンは僕の一つ上だ、といことが判明した。
きっと、まだ見ぬ兄のサフィジョンも昨年はこうして両親の真ん中にお座りさせられてご飯を食べたのだろう。
そして。もう一つ知った事は、妹の存在。
兄弟がいることは漏れ聞く周囲の会話から薄々わかってはいたけど、妹のことはこの昼餐会までまったくちっとも存在を知らなかった。
妹は一つ年下で、名前はロゼルーテ。母親は王妃様で第一王子と同腹というやつだ。
大人とは少し違った子供に合わせたカトラリーを駆使し、注意しながら食事を進め、音は立てないように努力するが聞き耳だけはしっかり立てとく。
「シュアクーン。お前は何歳になったのだ?」
デザートや食後の飲み物が供される頃。
昔「パーパー」と呼びかけた時に見せた顔とおんなじ顔をして王様が隣に座る僕に問いかけてきた。
知ってるくせに子供にあえて聞いてくる。それが子供を構いたい大人の遣り口だ。
しかし。
“三歳”は指で示すのが難しい。
どうしても薬指がいうことを聞いてくれないから。
なんとか左手で押さえながら指を3本立てて「さんさーい」と言ってみせる。……どうだコレで満足か?
僕の渾身のポーズを見て相好を崩した父が賢いのぉーと頭を撫でてくれながら、興がのったのかこんなことを言い出した。
「シュアクーンよ、其方のお誕生日の祝いに何か欲しい物はあるか?
なんでもいうてみなさい」
ですってよ、皆さん。
反対隣の母の眉間に少し皺が立つが、僕はこのチャンスを逃しませんよ!
僕はずっと考えていた事を思い切ってダメもとでお強請りしてみた。
「えーとねぇ、あのねぇ、僕、僕の商会が欲しー」
ニコニコしていた顔のまま動きを止めて父が上手く飲み込めない言葉を繰り返す。
「ぼくのー?しょーかいー?」
「うん!商品を作ったりー、売ったりするのーー!!」
なるべく無邪気に見えるように両手を広げてアピール、アピール、猛烈アピールッ!
お金の自由は心の自由!ひいては身体の自由に繋がると僕は確信しているッ!僕は自由に使えるお金を欲っするのです!
向かい側に座る第一王子の母親である王妃と、その隣に座る第二王子の母親が口を半開きでフリーズしているのがおかしくて堪らず僕はキャッキャと笑ってしまった。
大丈夫ですよ!
ピッカピカのツルッツルに丸めた、かった硬の泥団子を並べて売ろうとなんてしてませんからッ!
後日このプレゼントはちゃんと父から贈られて、僕付きの人間が一人増えた。
僕の商会の立ち上げの為に財務部から一人男性が移動させられてきたのだ。
ちなみに。
実母からは本棚と各種本が贈られてきた。幼児が読めそうな絵本から小学校一年生が読むような軽い物語までがぎっちり詰まっている。
中には今の僕には到底読めそうも無い重い(分厚い)物語も混じっていたが、これは寝れない時に活用することにしよう。
どうせなら国の領地の地図とか、特産品がわかる物とかそーゆーのにして欲しかったなー。
まだまだ僕は自分の住んでいる世界のことについて知らない事だらけなんだから。最新情報のアップデートは大切とおもう。
あと、王妃様からは木剣。
もう一人のお妃様からは食器のセットを頂きました。
……食事のマナー頑張れってコトっすね?あいあいさーー。
▫️▫️□▫️□▫️
「銭は身を助く」
ちゃった。“芸は身を助く”ですね。
僕の幼児芸の猛烈無邪気アッピールが上手くいった成果として、商会の立ち上げ人員として男性の従者が新たにやって来た。
「何かおっしゃいましたか?シュアクーン様?」
「ええとぉ、よろしくおねがー、しま、すぅ??」
小首を傾げて見上げる対面の相手は元財務部所属のトレネークさん。
彼は僕みたいな子供相手にすごく丁寧にお話ししてくれる。
中々優秀で、彼はあっという間に商会を立ち上げる下準備を終わらせてきた。
ただ。足りないものがひとつあるのだと今日は僕のもとを訪れていた。
「ええとぉ、なに、でしゅかぁ?足りないもこ、……んっ、足りないもの、って??」
わーー、噛んだ!噛んだ!
上司として威厳を!!なんて考えてたらおもくそ噛んじゃった。
恥ずかしくなって視線を逸らして絨毯の模様を見てたらトレネークさんが優しく説明してくれた。
「ええとですね、書類は一通り揃えたのですが、肝心の商会名をまだお聞きしておりませんで……」
あー。しまった。
そうですね。会社には会社名が必要っすね。こらまた参りました。
どこをどう探しても名前の無い会社なんてぇものは有りませんもんね。こりゃてへぺろしながらペンと額を叩くしか無い。
「うーーん。シェイラ、何かいいおなまえ、ありゅ??」
あ、ごめん。
お茶出ししてたシェイラがフリーズしちゃった。
お?流石シェイラ、秒で復帰したわ。
「……どの様な物を販売になられるのかも存じ上げませんので」
だから自分じゃ名付けられない、とな?
どんな感じが良いか参考までにひとつくらい捻り出して欲しかったんだけど、こう上手く躱されちゃあ無理はいえねー。
うーーーーん。
「じゃ、“パピエ”で」
なるべく短くしかも可愛げな名前の方が良いかな?と思ったんだけど?
そーっと二人の顔色を窺うとニコニコしてるから合格なのかな。
「では、商会名は“パピエ”で申請をあげておきますね」
「ええとぉ、あのぉ、前に頼んでおいたことは?」
「それについては目星はつけて有りますが、一体どのような思惑があってシュアクーン様がそのような事をお頼みになられたのか、正式な契約を結ぶ前に今一度はっきり詳細を知っておきたいと思うのですが」
僕の頼みとは、ある程度粗悪品で構わないからなるべく安く紙を手に入れられるような工房を探して欲しいというお願い。
そして契約する工房は何かしら紙を作っている工房なら何でも構わないというもの。
仮にも第三王子の取引する専属工房に“粗悪品でも構わない”なんて条件、不思議に思ったのだろう。
しかも紙を作ってる工房なら何でも良いとか。
てか、不思議よりこの子供阿呆なのでは??と疑問を持ったという方が正解かな。
あとは言い包められて金毟られるとかすごく騙されそうとかさ。
「シェイラ、集めてもりゃってたありぇ、だしてきて」
しょうがない。
僕が何をしたいのか具体的に見せるしかないね。
でも、理解してもらえるかは五分五分かなーー。
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