ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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ご褒美転生

28. 教えたい人々と僕

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自立型魔法創作物は実在する。
代表的なのは、土魔法の最高峰、ゴーレム。
与えられた命令を遂行する土から出来た人形。

重い物を運ばせる用途等に広く利用されているが、土魔法で創造されるその身体は大きなものが多い。

だが、なかには小型の物も存在したという記録はある。

あるにはあるが、恐らくシュアクーン様の“レッド”のような軽く手のひらに乗るほど小さな物。そのような物は未だかつて存在したとの記録は無いと思われる。


初めて姪のシェイラからシュアクーン様の話を聞いた時には興奮した。

あまりのシュアクーン様の話の聞きたさに、毎日靴下を両足分、ちゃんとシェイラに用意された洗濯かごに入れてしまうほどだった。

自分の創造する形に折った紙に魔力を込めて動かす。
私も試してみたが、よくみかけるゴーレム並みにしか動かせなかった。


「もしかしたら、ある種の能力上限解放、とか?確か最高レベルと言われている人たちの出来たことは……
いやいや、今この世にいない人間の事を考察しても始まらん。
仮に能力の上限解放が条件の一つならば私にもその可能性が、」

「ほら、私もそうそう来れるわけじゃないんだから!ぶつぶつ考え込んでいないで、キリキリ動いて片付けるっ!」


これはもう。
五歳になったら任命される教師の一員として、第三王子と直接話しをするしかないだろう!!!

それまでは、シェイラから具(つぶさ)に話を聞きだし、シュアクーン様の魔力を伸ばせるようにシェイラを通して指導する。それしかないッッ!!


「何だか最近、その辺に洗濯物が落ちていることが少ない気がします。非常に良い傾向なので、必ず、が難しくても、なるべく、この、私が用意したカゴに入れてくださいね」

ああ。いいとも!
お前がシュアクーン様の話を聞かせてくれるならば!このタドット洗濯物をカゴに入れる事すら厭わない!


「なあ、シェイラ。シュアクーン様には自由にそのオリガミとやらで遊んでもらってくれよ?」

「あーー!ほら!飲み物飲んだら片付ける!!このまま渇いたら洗っても落ちなくなるの!!」

シェイラに怒鳴られながら私はいつものように渋々と少しだけ、いつもよりもほんのちょっぴり頑張って部屋を片付けた。


▫️▫️□▫️□▫️



三歳の昼餐会の時、飯事感覚で商会を所望した変わり者の第三王子の教師を希望する者は少なく、私は易々とシュアクーン様の魔法の教師の座を射止めることができた。

ふっふっふ、皆見る目が無いものよな!


「できました!僕にも出来ましたよ!タドットさん!!」

「では、次に光魔法です。これは暗い場所での光源確保に非常に有用であり……」

現在、片っ端から初級魔法を教えている。

砂が水を吸うように、とはこの事をいうのかと思わせるほど、いくらでも次々と覚えていく。

素晴らしい。
大変大変素晴らしい。


しかし、シュアクーン様はまだ五歳。

攻撃魔法はまだ早い。早いが教えてみたい。しかし、何かあったら大変だから、と自分自身に言い聞かせる毎日。

しかし、彼に不測の事態が降り掛かったその時に、役に立ちそうな物は全部教えておくつもりだ。
────但し攻撃魔法は除く。だぞ?自分。



光魔法。
灯りが手元に無い時に便利。

サーチ魔法。
索敵魔法ともいう。
森など人気の少ない場所で敵味方どちらでも無いをサーチできる。人混みには向かないが、森など郊外で隠れた敵、例えば盗賊が潜んでいそう時などに有効。

火魔法。
焚き付けに火をつける時などに有効。野外の煮炊きには必須。
炎を閉じ込めたタイプの灯りをつける時にも使う。
炎魔法は攻撃魔法に分類されるので七歳までおあずけであるが……くぅぅぅ、教えてみたい!が我慢、我慢………。

硬化魔法。
物の硬度を上げる魔法。
これは、強化魔法との違いを理解しておく必要があるが、手近な物を硬化して代用品とする時に便利。例えば野外で肉を焼くときに木の枝に硬化魔法をかけると塊肉にも刺しやすく、肉の中に木の破片が残るような事態もさけられる。

などなど。
どれもこれも基本中の基本ばかり。

攻撃魔法を見てみたい!と強請られてこっそり訓練場で炎魔法をみせたのは私とシュアクーン様だけの秘密だ。



▫️▫️□▫️□▫️




「そうなんです!それなんですよ!」

扉の中から興奮気味の声が漏れ聞こえてくる。
ソルーゼンの声が廊下にまで届いてきているのだ。

うんうん。
わかる。わかるよ。
シュアクーン様は我々とは違う視点をお持ちだから、お話しするのが大変楽しくある。


今、シュアクーン様は古語の授業中。
古語の授業は同じ魔法省に所属しているソルーゼンが担当している。

奴とは同じ魔法省に属していても畑違いも甚だしく、存在は知ってはいたが、まともに顔を合わせたことはないような関係だ。

しかし、同じ魔法省の仲間。

なのでこの後シュアクーン様と私に約束があろうとも、もうとっくに授業の時間が終わっていようとも、同僚のよしみで区切りが良いところまで待ってやることは吝かではない。


……吝かではない、そう考えてはいたのだが。

遅い。
おそいおそいおそいおそい!
遅すぎる。

私は早くシュアクーン様とアレやこれやと論議を重ねたいのだ!

シュアクーン様の送迎担当の男性も暇を持て余し、うつらうつらとしているではないかッ!!

これは、もう。やるしかない。
私は意を決して扉に手をかけた。

がッ、バタン!!!

「シュアクーン様!約束の時間はすぎましたぞ!!いつまで経ってもいらっしゃらないから来てみればっ、外でお迎え係が立ってましたぞ!!」

「なんだ!勝手に入ってくるな!!タドット!」

「授業の邪魔は流石に良くないと暫く待ってみましたが、なんでいつまでも出てこないのですかッ!」

私は正当性を主張して、シュアクーン様を確保することに成功した。

お迎え係には私の用事が終わったらまた呼び出すことを約束し、一度帰ってもらうことにする。


「すいません、タドットさん。なんだかどんどん話が膨らんでしまって……」

「わかってますよシュアクーン様の所為ではありません。年寄りの話はしつこくて長いのが相場ですから。さあ、約束です!昨日の続きを話しましょう!」

「ああああ~、あのあの、今日はこれで失礼しますソルーゼンさん~~」


この規格外な王子となら何か新しいモノが私にも生みだせるとそう信じている。

私はソルーゼンの刺々しい視線を背中一面に受けながら、王子を小脇に抱え早足で退出したのだった。


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