ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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ご褒美転生

37.発泡樹の話と僕

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二羽の時には障害物競走をさせて遊んでいたけれどグリーンが加入して、ツルレンジャーが三羽になった。

そこで始めた遊びが指サッカー。
玉はレシート大の紙屑を丸めた物。
今までは三羽だったので、僕も指サッカーで参戦してた。

最初は二冊の本を使い、一冊を開げその上にもう一冊を乗せた本のゴールでやってたんだけど。

イエローが加入して2対2になってからは専ら観戦を決め込んでいる。


そして、ツルレンジャーだけなら僕がいない時でも自分たちでいつでも遊べるようにと、折り紙で折ったゴールを用意してあげた。

彼らは指のいなくなった指サッカーを足の繊細な動きを強化する訓練としてそのまま続けている。
本ツルたちも楽しそうだから、いいんだよ。



「じゃあ、僕は授業あるからね、仲良く鍛錬するんだよ?」

資料などを広げて書き物ができるようにと横に広めの僕の机をピッチに見立ててゴールを両端にセットしてやる。


「シュアクーン様、地理の授業のお迎えがきましたよ?」

「はいはーい、今いくよ」

パタンとドアが閉まるまで見送ったツルレンジャー五羽は、一羽が点数え係&審判、残りの二羽対二羽で指の居ない指サッカーを始めた。


グーとチーで別れましょ♪が出来ない彼らがどうやってチーム分けをしているのか謎である。



▫️▫️□▫️□▫️




地理の教師であるランチャミンさんは僕が王子だからか、国の中の問題を授業の中で教えてくれる。


「この辺りは、良質な木材が取れる事で有名な地区ですね」

「ええ、木を育て、その木を主なる財として、代々領地運営している場所ですね。
木を育てる方法は長い歴史の積み重ねにより、確立されており……」


僕が勇者アキクーン時代に立ち寄ったあの山間部の村みたいな感じかな?
丁度村祭り直前に到着して、えらい歓待をうけたっけ。
あの時出会った村娘はその後どういう人生を生きたのかな。


「……なのです。そういった土地柄もあり、住人は世話好きで辛抱強い性格の者が多くみられます」

いまだに瘴気は地表のそこここに留まっているという。
瘴気に晒されると普通では考えられない現象が生物に起きることがある。
魔力障害とよばれる現象だ。


「強い魔力障害を受けた木が、外側からは見分けられない変質を起こす事が判っています。
幹の中がたくさんの泡状の空洞となり、海綿スポンジのような構造となってしまうのです」

ランチャミンさんが、黒板に普通の木の年輪と、穴だらけの木の輪切りの絵を描く。


「なので、建築材として使用できず、伐採してもお金にならないので放置。そうすると更に繁殖して
という困ったことになるので、定期的に森を管理する木こりが折れた枝などから見つけ次第、伐採している現状です。
伐採し易い若木の頃には区別がつかないというのも問題ですね」

細かな気泡がびっしり詰まったような、スポンジ状の木の内部。
切り口を入れるまでわからないんじゃあ木こりは大変だな。


「種類は幾つか確認されており、建材として使用される種類の木に多く見られるのも特徴です」

もしも、木に考える力があったなら、最大の敵は大きく育つ前に伐採する人間、と思ってるかもね。


「昔はよく見かけられた現象ですが、数多の聖女の浄化の努力と、勇者の魔王討伐により、現在ではだいぶ少なくなったとお聞きします」

「薪にしたりはしないんですか?」

「確かに乾燥させやすく、燃えます。しかし、燃え終わるのが速いのです。薪に加工する労力と見合っているとは思えませんね」


瘴気の濃かった時代には薪にも事欠く有様で非常に大変だったとランチャミンさんが言う。

冬のさなか、勇者アキクーンの僕が行ったあの街がそうだったのかも。
しかし、彼女たちは物の無いなかで勇者である僕のことを精一杯もてなしてくれた。


変質した木を加工した木材は普通の木材よりも硬度は高く、穴が空いている分、軽いという。

「しかし残念ながら建材にも向きません。
いくら釘を打ってもぐらついてしまうのです。それに、柱や家の骨組みとするには軽すぎます」

普通の木材としての機能は果たせない。しかも薪としても役に立たない。本当に厄介な発泡樹。


「アクセントに使っているのを稀に見かけますが、埃が入りやすく掃除に手間がかかりますので、概ね不評ですね」

なにせ穴が空いていますからね。



────でもさ。
発泡樹は軽くて頑丈。
じゃあ船に!って思うじゃん?

「シュアクーン様は喫水線はご存知ですか?」

船が水に浮かんでいる時の船体の水面に接してる部分の線。だよな?

「ハイ。一応」

「その喫水線が無いのですわ」

ん?どゆこと??

「船全体が水面に出てしまい、従来の形の船を水に浮かべるとひっくり返ってしまったのですよ」

えーー?
撥水加工?それとも油??
あー、もしかして空気で膨らませた風船を水に浮かべるような物だから?とか?

それはバランスとれないわあ。

撥水加工を施したように水の上に浮いてしまう。
それは真っ平らな筏でもなきゃひっくり返っちゃうよね。

だって、船には人が、荷物が、食料や水を船に載せるだろう。
それがなくとも船室やマストなどを作るだろう。
そしたら重さが均一で無くなるからバランス崩してひっくり返ってしまう。

船は荷物や人を運ぶために水に浮かべる物なのに、少しの重心の傾きで転覆するから船には出来なかった。というわけなんだね。


「ですが、良く浮くことから、沈めた魚網の位置を知らせる浮きとして利用したり、輪切りの丸太の真ん中を丸くぬき、船の緊急脱出用の浮き輪として装備したり、貝の養殖などに使われております」

「海ばかりですね。川など水辺では使われないのですか?」

「そうですね、川では橋をかける際に少し下流にまずロープを渡し、そこに数珠繋ぎに括り付けた発泡樹を渡してから、作業を行ったりするそうです。

川に落ちたり流された時のセーフティロープ、というわけですか。

高所作業の時に、命綱をつけたりネットを張るようなものか。


「なのでまったく使用目的が無いわけではないのですが、やはり薪や木材として使えないのは領地を預かる領主としては頭の痛い問題なのですわ」


しかし。魔王亡き後も影響は計り知れず、今でもその現象は続いているのですね。

僕がしんみりしているとランチャミンさんが「今日はこれで終わります」と授業を早めに切り上げた。


「この後公爵家嫡男さんと、侯爵家次男さんが来るの。先月から地理の授業を受けてるのよ」

何故かランチャミンさんは僕のこと第三王子って呼んで、名前で呼ばないなとは思ってたんだけど、どうやら生徒は全員名前では呼ばないみたい。

あれ?家格や身分で呼び分けるって??王宮に働く者みな平等の御触れはどうした?

あ。僕たちは生徒で城で働いてないからノーカンなのか。



▫️▫️□▫️□▫️





引き続きツルレンジャー諸氏、寝室警備継続中。シュアクーンはまだ帰って来ない。

指の参加しない指サッカーも継続中。

迸る汗!も、高鳴る心臓!も、割れんばかりの歓声!!も何もない中、真剣に紙屑ボールを追って走るツルレンジャー。

あっ!エキサイトしすぎたか、紙屑ボールが机の上から叩き出され扉付近へと弧を描く。

タイミング最悪なことに寝室の扉が開いてシェイラが入室。
隠れる所もない机の上でピタリと動きを止めるツルレンジャー。



「まったく王子はこんな所にゴミを落としておいて」

ツルレンジャーたちのサッカー用紙屑ボールは何も知らないシェイラに没収されてしまった。

シェイラは床に落ちていた紙屑を拾うとそのまま部屋から出て行ってしまう。


「シュアクーン様にメモ紙を丸めて床に投げ捨てるのはお辞めになってくださいと申し上げておかなくては」

屑入れに投げながら、シュアクーンが将来叔父のようにならないかと不安な気持ちになる。
心配の種の尽きないシェイラだった。







かたや。
紙屑ボールを取り上げられたツルレンジャーたち。

部屋の隅っこから細長い紐状の紙を見つけて五羽の中で一番硬いゴールドが懸命に丸めます。

何とか翼を駆使して丸め終わると、ゴールドがホイッスルを吹く真似をして試合再開。

ホイッスルを吹く真似はいつもシュアクーンがしていたので、それを真似しているのです。


「無いわーー、??どこにやったのかしら……」

そこへシェイラがまた入ってきました。

ツルレンジャーたちはおかしいぞ??清掃は完了した筈だ!と思いつつも動きを止め、まるでおもちゃがそこに置いてあるだけですよぉーと言わんばかりに静止しました。

ずっと床に目を落として何かを探していたシェイラ。

じっと微動だにしない、ツルレンジャー。

長い長いだるまさんが転んだ、動いたのは君!の時間が過ぎて、片足立ちのイエローがそろそろ限界を迎えそうなその時に。

事態は動いた。


「え!?やだっ、なんであんなところに」

ツカツカと指サッカーのピッチに近づいてくるシェイラ。

焦るツルレンジャーたち。
イエローはグラつき始めてる。


「やだぁ。なんでこんなところに」

無情にも、またしても紙屑ボールはつまみ上げあげられ取り上げられてしまった。


「これこれ!引換券が無いと洗濯に出した叔父さんの服を取りに行けないのよねぇ」

探し物を見つけて喜ぶシェイラはくしゃくしゃになった紙をほぐして皺を伸ばしながら足取り軽く部屋から出て行った。

パタン!
ぱたん

ドアが閉まると同時に倒れるイエロー。危ないところだった。

彼らは虫かごの刑を免れたことに喜び、しかし、またボールを無くしてしまったことを悲しんだ。


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