ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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ご褒美転生

41.アンジー孤児院長の奮闘

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「ハイハイ、もうおしまい。お部屋から出ていってね?」

ぱんぱんと手を叩き、院長室から子供たちを追い出すアンジーさん。


「本当に申し訳ありません」

へにょったゴールドを手に持つ僕に向かって深々と首を垂れるアンジーさん。


「大丈夫ですよ。子供のする事ですから。でも、お客様のいる席にいたずらしないように叱っておくことは必要ですね」

そうだねトレネーク。子供だからってなんでも許されるわけじゃないからね。

何か壊したら弁償だし、粗相をしたらちゃんと謝れなきゃね。
え?僕?五歳にしてはちゃんとしてると評判ですよ?

重ね重ね申し訳ありませんと再び誤っているアンジーさんに、では、お話し始めても良いですか?と僕は問いかけた。

そろそろ本題に入ろうと思います。


「消費者は自分の手にしている商品が、どこの店で売っているかは知っていても、どこの工房の品かは知り得ません。そして、工房の方も自分の製造した品の使い心地などを直接知ることは叶わないのです」

神妙な顔をしてじっと話を聞いてくれている様子から、アンジー孤児院長は至極真面目な方なんだろうなと思う。


「以前、シュアクーン様はご自分のお抱えの工房を視察致しました」

見学ね、見学。社会科の工場見学みたいなもんね。


「その時に、工房の人間に、自分たちが作っている品をどのように思っているのかを職人から教えて欲しいと願われたのです」

聞かれたのは使用感じゃなくて使用目的だけどね。


「そして、我が主シュアクーン様はお抱えの工房を持つことによりそのことに気が付かれたのです。
工房の職人たちは、自分の作った物を使用している人々がその品に対してどう思っているのかを知りたがっているのだと!
しかし、職人たちに知る術はあまりにも少ない事にも」

直売所とか無いらしいからね。
この世界では製造業と小売業は完全分業。それを取り持ち、取りまとめているのが、商会ギルドと商人ギルド。


「きっと知りたいのです。
手触り、使い心地、色味の好き嫌い。色んなことを知りたいと思っているはずなのです」

きっと、ね。
職人の気持ちを推し量ったトレネークの考えってこと。

それにしても。
んーー、元居た財務省ってこんな詐欺師みたいに弁が立たないと務まんないところなんか???


「消費者側にも利点があります。
直接作っている人に改良点を示せるのです!

もっと可愛い色が欲しい!
ここに穴をつけてくれたら使いやすいのに!
この部分がもう少し柔らかな素材で出来ていたら!
そんなちょっとした希望を作っている方々に直接伝えられるのです。なんて素敵なことでしょう」

あ、それ。
シェイラがよくぶつぶつ文句言ってたやつ。よくそんな事まで覚えてるねートレネークは。


「……と、孤児院のバザーの開催と一緒に工房商品の即売会を開催したいとシュアクーン様はお考えなのです」

「まだ五歳ですのに。なんて御立派な……」

うん。今、喋ったのは全部トレネークだけどね!!



▫️▫️□▫️□▫️




トレネークの絶妙トークの後、即売会開催を了承してくれたアンジー孤児院長と、僕とトレネークの三人は、ロンディたちのいる外へと向かった。


「もうちょい右!後一歩!はいストーーップ!」

等間隔に赤い印のついたロープを持ち、作業をしているロンディさんと騎士たち。

孤児院側とは、後で覚え書き程度の仮契約書を一旦交わすらしい。

王宮での、孤児院の承諾を得てますよという証明のために必要なんだってさ。




外ではオヤツを食べ終わったのだろう子供たちが走ったり地面に何かを書いたりして遊んでいた。


男の子はもれなくリングベルトでズボンがずり落ちないようにしっかり締めて、ベルトの紐をパタパタと靡かせて走る。

女の子も皆多少大きめの服を着ている。
大きすぎるウエストのものには腰紐を脇に縫い付けて後ろで縛ったり、ぐるりと交差させて前でリボン結びするなどそれぞれ工夫して着用している。

ピッタリなサイズの物をあてがわれる事はなく皆が長く着れるような大きなサイズを着用しているのが見て取れる。


そんな中、建物の横手の階段の所に座ってる子供が二人いた。

気になって近くまで寄って隣に座る。彼らは丁度、僕と同じくらいの年に見えた。


「いいなー、それちょっとちょうだい」

彼の手にはオヤツの時間に配られたらしきお菓子が2個。孤児院の子供ってどんなオヤツ食べてるかちょっと興味がある。


「おうじさま、お菓子食べさせてもらえないの?」

「うん、町で売ってるのはとくに食べさせてもらえないの」

「かわいそー」

これは本当。ここに来るまでにお店や露店をたくさん見つけたけれどどれもこれも許されなかった。


「おうじさまがきたからお菓子2個もらえたんだし、ぼくのわけてあげるよ」


優しい子が一人、岩みたいな見た目のお菓子を石で叩いて割ってくれた。
……めっちゃ硬そうだね、それ。

「ありがとー」

「うん」

「こんな所に居たんですか。王子?そろそろ中に入って折り紙の説明を……」

ガリッッ

「ゔっ」

「王子!?シュアクーン王子!!?
貴方!王子に何を食べさせたんですか!?」


「ぼ、ぼくのお菓子……」

「お菓子!!?誰に頼まれて!」

「おうじ……」

震えながらシュアクーンを指差す二人。


「王子に!!?」

口を押さえていた手を離し、ポロリと僕の口内からこぼれ落ちる……

「抜けたー!!」

「は!!?」
「うん!歯!」

二本の指で落ちた歯を摘んで掲げる、唖然とするトレネーク。まばらに拍手をしてくれる子供たち。

この後、何事かと走って来たロンディさんに、勝手に飲食してはいけません!としこたま叱られた。

乾いて復帰したゴールドが一緒に並んで叱られてくれたよ。主思いの隊員だね!

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