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ご褒美転生
42.アンジー孤児院長の驚愕
しおりを挟む「最初はみんなでお魚を作ってみよーー!!」
順番の番号を振った折り方の見本の板を並べて出来上がり見本を一緒に置く。
完成見本はお留守番のシェイラが作ってくれた物だ。
僕とトレネークで見て回って、つまずいているところを教えてあげる。
ほどなく全員が折り終わり、それぞれが自慢気に高く掲げている。
「できたぁーー」
「上手でしょお」
「今は他のものを折ってみたり、違う色のお魚を折ったりしてもらうけれど、後でお魚に目を書いたり鱗や模様を描いたりしてあげてね!」
更に自分好みに出来ると知り、目を輝かす子供たち。
普段から下の子の面倒を見る事に慣れているから、何も言わなくとも年上の子が下の子に教えたりしながら、また新しく手にとったオリガミを折り始める。
「わからない所があったらトレネークか、僕に声をかけてね!」
見てると上手くきっちり折れなかったり隣の子に教えているうちに手順がわからなくなったりと、少し険悪な雰囲気が漂い始めた。
「最初のひと折りから角をしっかり合わせないと、どんどん折り難くなるから慎重に、丁寧に、ゆーーっくりやってね!!」
僕がにぱっと笑うとさっき抜けたばかりの歯の穴が見えて、顔を上げてこっちを見てたみんなも笑う。
出来なくて半泣きだった子も。
最初は優しく教えていたのに理解できなくて上手く折れない子にイライラしていた子も。
「順番通りにいっこずつやれば誰でもちゃんと出来るからね!」
お魚も、第四回オリガミ会合の時にみんなで折ったカブトの作り方からできる物と、あんまり簡単でしかも綺麗にトレネークが折るから、トレネークだけに教えた風船の折り方から作るふうせん金魚も追加して二種類にしてみた。
カブトの作り方から作るのよりは難しいけれど、水玉風船が折れれば作れるからね。
ふうせん金魚はふっくらしていて可愛いんだよ!だから、名前はふくら魚にしたんだ。
「お魚なら私でも簡単に折れそうです。お魚を折りたい子は私とキシュカの所においでなさい」
アンジーさんもお魚ならもう折れるってさ!
一部の子供たちがアンジーさんとキシュカさんの所に殺到するのを眺めながらトレネークさんと頷きあう。
僕の使命は折り紙の良さを伝えること!この使命の為ならばこのお間抜けな歯抜け状態も使い熟してみせるぜッ!
あ、ゴールドは内ポケットにステイしてます。ここで出てたら孤児院長室の二の舞ですよ、ハウス!ですよ、ハウス!
▫️▫️□▫️□▫️
王子様方は、たくさんの折り紙と折り方の見本板と完成見本、そして寄付金を置いて帰って行かれた。
一時はどうなるのかと心配していたけれど、終わってしまえばとても楽しい時間であった。
「これで今年の冬は暖かく、そして静かに過ごせそうですね」
キシュカの言う通り。
冬の間、子供たちは外に遊びに出られる日が少なくなり、喧嘩や言い争いが絶えない。冬とはそんな季節。
でも、折り紙が有れば今年からは比較的静かに過ごせそうです。
「あの“屑入れ”も、簡単で、畳んで保管できて、他人に喜ばれて!最高のオリガミですよね!!」
折り方の見本板こそ無かったけれど、王子様は私とキシュカに長方形の紙で作る屑入れの作り方を教えてくれた。
「私なんか、すぐ拾ってくる石とか、持ってくる花とかを宝物入れだよ!って言って入れさせてますもん」
花や草なんかは枯れたり酷いとカビが生えたりするから、捨てる時難儀をすることもある。
それをそのまま丸めて捨てられるから、とても助かっている。
近隣住人からもらった綺麗な柄の包装紙で作った屑入れを、衣類などの寄付のお礼に渡すようになった。
家庭にある要らない包装紙を譲って欲しいとお願いした時には、住人たちからは捨てる物なのにこんなの欲しいの?と初めのうち訝しがられたけど、今では作った屑入れをお礼に渡すと大変喜ばれるようになった。
捨てる物を利用する。それだけでもすごいのに、何よりすごいのは折り紙が折れるような年齢の子供なら誰でも作れること。
シュアクーン様は作り方を教えたのは自分の母の侍女と自分の周囲の人間だけだと仰っていた。
それは、私たちは王宮の極々限られた一部の人間と同じ物を作りそして活用している、ということだ。
そして、作り方を知っている人は市井にはまだ居ないのだという。
それが、どんなにすごいことなのか、あの五歳の王子様は果たして知っていてやっているのだろうか?
「出来たー!!ゴールドとおんなじだよ!」
「まあ!端っこまでキチンと折れてて、とっても凛々しい白鳥が出来ましたね」
「私の宝石箱も見てぇーー!次は紫にするのぉ」
「こんどわねぇ、赤いお魚つくってぇハートもよーにするの!」
作り方の番号が振られた木の板を頂き、お天気の悪い日にはこうして大人しくみんなで遊んでいる。
しかも、出来上がった不思議な形の紙は、欲しがる人もいて安価ながらも買い取ってもらえている。主に寄付で成り立っている孤児院にとってとても有難い臨時収入だ。
持参された折り紙の他にも、定期的に王子様の専属工房から譲っていただけるというし、本当にシュアクーン様は神様みたいな王子様だ。
「ねー、院長せんせぇー。オリガミの王子、またくるぅー?」
「しっ!あんまり王子王子言わないのっ!不敬罪とかって言い出す面倒な人って何処にでもいるんだから!」
「えーー!!じゃあ、なんて呼ぶのさー」
「じゃあさ!オリガミの人ってどう?オリガミのこと教えてくれたもん!」
「そうだね!オリガミの人だ!オリガミの人ぉ!!」
その後。
孤児院では幾度となくシュアクーンの呼び方についての論争が巻き起こり、王子→オリガミ王子→オリガミの人→カミの人。
そして最終的に“カミサマ”に落ち着いた。
人→様になったのは王子様は偉い人だから、やっぱり様をつけないと!と全会一致で採択されてしまったから。
後日、セルリーナス孤児院へと正式な契約を結びに行って来たトレネークから、シュアクーンに報告があった。
「折って遊ぶ紙だから、オリガミ。という名前は子供たちに素直に受け入れられているようです。
しかし…………」
え?なんかマズイことでも?
折り方わかんなくて出来ないのがあったとか??
「あの孤児院では現在、子供たちがシュアクーン様を“カミサマ”と呼んでいるそうです」
「カミサマ?」
「はい、カミサマ、と」
オリガミは紙を折るからオリガミであって、決して神様を折ったりしないし、神様が降りたりもしない!!そして。
「僕は神様じゃなーーい!」
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