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ご褒美転生
66. 想定外は予測不可能
しおりを挟む仮登録を終えたサガスシール。
まだ、“仮”なので、他の人が登録商品の詳細を見る事は出来ない。
先に登録したもん勝ちなところがあるから、ある程度出来上がった物には商会ギルドから仮登録を許可してもらえるんだ。
そこで。
仮登録したサガスシールに興味を持った商会ギルドの偉いさんが、モニターに立候補してきてさ。
いつも僕やトレネーク、タドットさんだけだと、魔力の多くない普通の人だとどうなるかって言うのを試すのが大変で、シャボン玉魔法玩具の時は、孤児院の子供たちに協力してもらったり、マジア工房の人たちに意見を聞いたりもした。
でもさ、いつもマジア工房の人に頼む訳にもいかないし、今回はその申し出を有り難く利用させてもらおう。
だから、そのギルドの偉いさんの知り合いにサガスシールを試してもらうことになったんだ。
コレで、工具どこしまった?とかあの玩具どこーー?とか、アレたまにしか使わないからどこにやったのかしら??
もう誰にも眼鏡を探させやしねーぜっ!
なーんてことをみんなから無くせるね!!って思って開発したシール。
……だったんだけど。
僕たちの想定外な使われ方し始めちゃったの!!どーしよ!?
そんな使い方想定してなかったよー!!
パピエ商会のサガスシールに興味を持ってくれた商会ギルドの偉いさん本人は、すぐにペンをどっかにやってしまう人で、シールはとっても重宝してた。
でもね、その想定外の使い方。
それをし始めたのは商会ギルドの偉いさんの奥様の方。
僕は実際にお会いする事は無かったんだけど、話を聞くに肝っ玉かーちゃんって想像が浮かんでくる。
「とーちゃん見て見て!コケて顔面ぶつけたら歯あ抜けた!!」
「マジおれいけっから、階段の一番上から飛べっから、まじで」
「オレさ、すげー良いこと思いついたんだ…川から水路引いたら俺らだけで泳いで良い湖作れね?」
と、この偉いさんのところは育ち盛りの悪ガキが三人もいて、そりゃもう毎日がてんてこ舞い!
一人でもシュアクーン様のように落ち着いた子が居たら良かったのですが、と話している間は、いつもは頼り甲斐のあるオーラを纏った威厳のある振る舞いの人が、うらぶれたおじさんって雰囲気だったよ。
察するところ、よっぽど手を焼いているんだろうね。
で、そのうらぶれおじさんの奥様が、なんと!子供に貼っつけちゃったの!シールを!!
とんでもない場所まで行ってたり迷子になったりした前歴が山ほどあるから、奥様ってば「まあ!なんて便利なっ!!これは使わない手は無いわ!」とばかりにこれ幸いとお子様に使いになられたってぇ訳です。
最初は服の裾とかにバレないように貼ってたらしいんだけど、服だと直ぐに剥がれちゃうから直に子供に貼るようになっちゃってさ!
最初は一枚、腕とか顔とかに貼ってたんだって。
剥がしちゃダメよ!って言い含めてさ。
でもさ、そんなやんちゃ小僧に貼ったシールなんて一日持ちゃしない。
そこで、奥様は一人に三個ずつ貼った。これで仮に一個剥がれたとしてもあと二つある。
でも三個も貼られれば子供も気になる。
そこで三兄弟がやった事は。
「お前ら」
「は?」
「何兄ちゃん」
「シール俺の腕に全部貼れ」
「「…………おう!」」
一人に全部を貼り付けた。
わーーい、奥様の注目を独り占めだねっ!
一日中一塊りで過ごす我が子。
いつもはすぐにケンカが始まりバラけるのが常の三兄弟がいつまでも団子でいる訳がない。
奥様がサーチ点に向かってすっ飛んでいってみると、全員のシールを貼り付けた長男が一人、友人とゲラゲラ笑っている。
お小言よりも早く拳骨が降ったことは想像に難く無い。
何の説明も無しに身体に付けられてたシール、邪魔だしなんか痒いし、位置によってはカッコ悪い。
それでちょこっと遊んだだけで拳骨を喰らうとは彼等も思わなかったろう。
ああ、親ってなんて理不尽な生き物なんだ。
でもさ、子供って案外親の喋ってる事聞いてんだよ?
直ぐにこれは自分たちの所在確認のためのモノなんだって三兄弟も看破しちゃったわけ!
でさ、悪戯すんじゃん?そんなのわかったなら尚更。
三男が、通りかかった野良犬に面白がって自分のシールを付け替えた。
「おーっしゃっしゃっしゃっしゃっ、良いもん付けてやろう、特別だぞー」
「ワウ!!」
「達者でなー、俺の位置情報」
そしたら犬がぐんぐん走り出しちゃって、奥様大慌て!!泡を食って一緒にいる他の子供たちのサーチ点に向かってダッシュした。
「あいつその辺の犬に貼ってたぜ」
「下兄ちゃんシールつけたの犬の背中だった」
そして、やらかした次男以外の兄弟から明かされる真実。
「人攫いにあったのかとっ!それはそれは心配したんだよッ、次やったらわかってるねっ!」
“次やったら”と言いつつもう既に拳骨貰うのは子供にとっては世の常なり。仲良くその日もタンコブを作ったらしい。
「いやさぁ、汗でさぁ、なんか剥がれてたみたいでさぁ、今日たっっくさん動いたからさぁ、剥がれたの気付かなくってさぁ」
次兄はそれでも剥がれたのに気づかずにいて、それが野良犬にくっついたと必死に主張弁明した。
いや、もうお前の兄弟チクッた後だからそれ無理やろ。
ところで実はモニターになっていたのはその奥様だけでは無い。
奥様の妹様も、奥様が便利なモノを主人が見つけてきたの!と誘われてモニターに参加していた。
奥様が三兄弟とやり合っていたある日。その妹様が奥様のところに飛び込んできた。
「大変なの!あの子が!あの子の体が三つに分かれてっ!」
外に遊びに行く我が子が心配で三つもシールを貼った妹様は、おろおろするばかりで一向に要領を得ない。
とにかく急いでシールをサーチして点を追っかける奥様と妹様。
奥様がとっ捕まえたモノは、仔猫三匹。
それも近くの家の軒下で産まれたばかりの仔猫たち。
「シャッ!シャァーー!」
「ぴゃーー!ぴゃぁーー!!」
「フシャーーッ!」
「どこかに行っても分かるって聞いたから……」
仔猫だったのは不幸中の幸い。
これが成獣の野良猫ならば捕まえるどころか近づいて確認するのも大変だった。
人攫いに捕まって、助けを呼ぶ間もなくバラバラにされてしまったのかと思ったと、それはもう化粧が全て落ちるほど号泣していたらしい。
妹様は子供がお一人。
彼は大事な大事な一粒種。
サガスシールを貼りたくなるのも少しだけわかる。
奥様たちの心情は理解できても使用量と使用方法は守って欲しい。
魔力量が僕達ほど無くても十分使用出来るという事実は立証されたんだけど!されたんだけど!!
ともかく、仮登録のままで他の人にはまだ開示されてないから、それ以上騒ぎが大きく広まる事は無かったんだ。
けれど、何処からか騒ぎを察知したのか、王宮の方から製造販売ストップのお達しが商会ギルドに来ちゃった。
やっぱり仮登録された名前が良くなかったんだよね!?ねっ?ねっ?
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