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ご褒美転生
80. サフィジョン第二王子①
しおりを挟む「なんだと?それは本当か?
マネギン、ソートル」
「はい。そう決まったとお聞きしました」
シュアクーンの算術教師がターゲテンに決まったのだという。
あの厳しいと有名な?
そもそも。
家庭教師を断り続けていることでも有名な人間だ。
兄上もテストを散々やらされた上に断られている。
そんなふざけた人間には教わりたく無いと、僕は初めから教師候補から外していた。
それが。
シュアクーンの教師になるだとぉ??兄上でも断られたのに?
どんな手を使ったのだ!アイツは!!
幾ら金を積んでも首を縦に振らないと知られている人間をヤツは一体どうやって動かしたのか。
「きっと汚い手を使ったのでしょう」
「そうですよ。だって、第一王子を断っておいて、第三王子を教えるだなんて、明らかにオカシイと思いますよねぇ?」
僕も二人の言う通りだと思う。
伯父はこうして僕に同い年の側近も与えてくれた。
二人は僕の味方だ。
彼らは僕のことを肯定してくれ、嫌味や陰口をきくような周囲の人からも遠ざけてくれる。
伯父の選んだ二人はとても信のおける側近なのだ。
「それにしても! サフィジョン様の剣術はすごいですね!」
「さすがはあのナリアガスに丸一年扱かれただけありますね!!
聞きましたか?
シュアクーンはたった一ヶ月足らずで根を上げてしまわれたのだそうですよ?」
くすくすと笑う二人。
そうなんだ。
アイツはたった一ヶ月も持たなかった。
「マネギン、ソートル。
お前たちも良かったら習いたい教科や教師が有れば、僕に言えばいい。僕が頼んであげるよ」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。サフィジョン様」
三人で庭を眺めながら飲むお茶のなんと美味しいことか。
「おい、メイデラ。お菓子の追加持ってきてくれ」
「……かしこまりました。 サフィジョン様」
メイデラの後ろ姿を暫し見送る サフィジョン。
「このお菓子、とても美味しいですね」
「本当です。ウチではこんな物食べられませんから!」
「そうか。たくさん食べてくれ、まだまだあるからな?」
シュアクーンのヤツに新しく付けられたのは侍女も従者も年寄りばかりだからな。
しかも同じ年くらいの側近は一人もいない。
つけてもらえないのか、はたまた集まらないのか。
それとも集められないのか。
それか、これから探すのか。
「シュアクーン様は金儲けは得意そうですけど、それって王子の仕事なんですかねぇ?」
「まったくさ!マネギン。孤児院に行ったのもアレ一度っきりですからねー」
「結局、あの催し物も孤児院の為じゃなくってぇ、自分の商会の為だったって話ですしねー」
「そのような噂があるのか?マネギン」
「ええ、そうですよー サフィジョン様ー。僕の家に出入りしている商会の人間が言ってましたしー」
その後も。
色々な話をたくさんしてくれた。
この二人は僕の知らない噂話を仕入れては聞かせてくれる。
伯父は僕に素晴らしいモノをいつも与えてくれるのだ。
▫️▫️□▫️□▫️
「まだお茶の時間は終わらなそうかい?メイデラ」
「はい、アモドナ。お二人ともおべんちゃらが大層お上手で」
「まあ良いじゃ無いか。仲良しってことだろ?」
ソファにだらし無く座る若い男は新参者の侍従のソンカー。
シュアクーンのところに財務省出の人間が居ると聞きつけて、坊ちゃんがウジーネ伯爵に願って最近付けてもらった人間だ。
「な?アンタもそう思うだろ?メイデラちゃん」
メイデラは冷たい視線をソンカーにひと浴びさせて、追加のお菓子を持って庭の方へ戻って行った。
「おおー怖。折角の美人が、だーい無しっ!」
肩をすくめるソンカーに、アモドナの向ける視線も決して温かいものではない。
「メイデラちゃんってば、半年違いで俺と同期だってぇのに、いつも冷たいねぇ。
────さあて、俺も仕事しますかね!」
「そうしていただけると有り難いわ」
ソンカーも勢いをつけて立ち上がり部屋から出て行った。
主の姿の無い場所では、だらけた態度のソンカーを、アモドナはあまり良くは思っていなかった。
「はやく明日になって休みのスチュワートが出てきてくれないかねぇ」
誰も居なくなった部屋でアモドナは一人深いため息を吐きだした。
▫️▫️□▫️□▫️
今日は伯父が会いにきてくれた。
離宮で会う伯父は、いつも僕に対して親切で紳士的だ。
そこで、我が弟の話になった。
商会を強請り、どうせ上手く行かないだろう王も酔狂な、という大方の見方に反して、今では年々稼ぎを増やしているのだという。
更に孤児院訪問をして、王子として立派な事だ!と周囲が思ったら、それは結局自分の商会の為だったのだとか。
一体、僕の弟は何をしたいんだ?
僕にはさっぱり理解出来ない。
王を目指してでもいるのか?
だとしたら政治経済を何故学ばない?
「だったら少し大人しくしていてくれよッ!」
今は二分されている評価も、優秀だという方に傾きつつある。
「くっそ!お前が変にできるヤツだと俺が苦労するんだよッ!!」
古語の成績については絶賛されていたが、古語が素晴らしい出来であってもそれは然程影響がない。
「だけどなッ、算術はダメだ!頼むからせめて普通であってくれよ」
「お悩みのご様子で」
「ソンカー?」
「こういう時には側近に胸の内をお話しされるのが宜しいかと」
「……そうだな、良い提案だ。ありがとう、ソンカー」
少しの間、本当に話すかどうか悩んだが、結局僕はどろどろした胸の中のモノを全て吐き出し、それにマネギンもソートルもじっと耳を傾けてくれた。
「すまない。こんな不甲斐ない第二王子で。幻滅しただろう?」
僕は悟った。
こんな僕に誰が仕えようと思うだろうか?きっと二人も離れていってしまうのだろうと。
ところが。
そのような事は現実に起こらず、二人は悔しくて悲しいです!と涙まで流してくれたのだ。
「ソンカー。僕に良き助言をありがとう」
「勿体無い御言葉で」
僕の前に進み出て、首を垂れて片膝をつくソンカー。
「いつ何時でも一言このソンカーに一言ご命令くだされば、私めは自主的に影に日向に主の為に動くでしょう」
「一言?」
「ええ、たった一言“よしなに”と」
なんだか酷く緊張してきて僕は生唾を飲み込んだ。
「…………よしな、に」
「はい。かしこまりました」
立ち上がったソンカーはコチラに背を向けて部屋から出ていった。
去って行くソンカーの口元が歪んだ笑みの形に見えたのは目の錯覚か。
その時。
僕の心の中にシュアクーンが少しは痛い目に遭えばいいんだという思いが確かに存在していた。
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