ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

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ご褒美転生

91.踊るのは誰

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「ハイッ!
足の運び、覚えましたか?」

いいえ、全然。
───なんて言えるわけもなく。


ひたすら足運びを反芻しながらステップを踏む。

以前言ったように、謁見の間に通されることもなく放り出された前世、放ったらかし勇者だった僕。

そんな僕は、当然、舞踏会なんて物にも縁などあるはずもなく。

こうして、懸命に覚えている最中なのです。


「はい、宜しい。
鍛えているようで、体幹は悪くなさそうね」

ダンスの教師は若い女の人で、名前はニティティー 。
言葉は厳しくないけれど、中々ハードな授業だと思うよ、僕。

動いている時は全力疾走するよりも辛い。
姿勢を保つための普段使わないような筋肉をつかうからさー。

少しでも姿勢が崩れたり悪い箇所があると、少し固めのしなる指示棒みたい物で直す場所を軽くツンツン押されちゃうし。

振るとヒュン!って音が出て、僕の股間もヒュン!ってなっちゃうよ。


「後は次の授業まで、自然に流れるような足運びが出来るよう毎日練習して下さいね?」

最上級の微笑みで最大級の宿題を課すニティティー。


ダンスの教師は少し特殊で、他の教師のように授業する教室や自室、実験研究室などは持たない。

少し広い、お茶会室くらいの部屋で練習する。

多目的に使用される部屋で、何かの説明会とか、それなりの人数の集合場所としても活用されているらしい。


週に一度、家を訪れる家庭教師とでも思ってもらえればそれが一番近いだろう。


「はい、わかりました。頑張って覚えます!」

てか、頑張らないとマジで覚えられない。


「我が国でもデビュタントは女性だけのものですが、かと言ってデビュタントのダンスのお相手を頼まれないとも限りませんので、しっかりとお勉強してくださいね?」


ぐえ!?そうなんだ。
男だからとタカを括って居たんだけれど。

恥を掻くのは貴方一人では済まないのですから、ね?という副音声がしっかりと僕には聞こえたよ。



▫️▫️□▫️□▫️






「シュアクーン様、夏の季節のカーテンのお色はこちらとそちら、どちらがお好みでしょう?」

自室へと戻ったら。
シェイラとアミネットがステレオで聞いてきた。

女性ってこーゆーの楽しそうにしてるよね。
二人もとってもいい笑顔。

でも、僕はそうじゃないから。


えーー。んーー。面倒くさーい。

そんなん聞かれても、それとそれの違いがあんまりわかんないし。


「カーテンはシェイラに任せるよ!ハイ、一任!!
僕には最終確認だけして貰えば良いからさ。
コレに致したいのですが、宜しいでしょうか?ってさ」

そこで嫌な色だったら、変更して貰えばいいしさ。


まだ、机や椅子とかベッドなら実際使うのは僕だし、見せられた中から実際触ったり座ったりして選べるけど。

一々壁紙はどうとか、カーテンの色味が、とか。
もう細かすぎて。

先日見せられた天蓋用の布類なんか、部屋に広げられた布の海に溺れそうだった。

選択肢って、たくさんありすぎても選び難いもんだよね。


「落ち着いて過ごせる部屋の雰囲気!それを守って貰えば大概は何でも良いよ!」

僕は叫ぶ様にしてその場から逃げ出した。

“よしなに”って言葉の存在意義を今突然理解したよ。

そして何で最近トレネークとフェジン、タドットが部屋に寄り付かないかも理解した!!



▫️▫️□▫️□▫️





「いち、に、さん
いち、に、さん」

すぐに繰り返さないとステップ忘れちゃうから、ちょっと復習しておくことにした。


ロンディに見てもらって足捌きの練習をしていると、そこにトレネークがやってきた。

トレネークって僕に発信機でも仕込んでるんじゃ無い?って時々そう思う。


「シュアクーン様、こちらにお出ででしたか」

ハイ、部屋には居たくなかったので。


「前にご相談のあった件についてなのですが」

足元では僕の真似をしてレッドとブルー、グリーンとイエローが組みになってダンスのステップを踏んでいる。

君たち、女性パートなんていつ覚えたの??

ゴールドが翼をフリフリ、リズムを取ってるけど、もしかしてゴールドが教えてる?のか??


「やっと外出許可が下りまして、町に店舗を見に行けることになりましたよ」

ひゃっはーー!!
飛んで叫んで喜びたいけれどここは部屋の外。
誰が見ているかわからないからグッと我慢。


「そ、そうか。よくやった。見せてもらえる場所の選定は済んでいるの?」

でも、口元がにやけるくらいは許して欲しい。


「はい。商会ギルドに話は通してあります」

さすが辣腕トレネーク。
下準備もバッチリ!


実は。
そろそろ実店舗を考えてる。
商会ギルドの登録商品でお金を得るだけでなく、ずっと、品物を売って稼ぐことをしたいと思っていた。

八歳までに引っ越しの準備を終えて、諸々落ち着いてからになるだろうから、店を構えるのはもう数年先になりそうだけれど。

それでも。
実際のお店に入って見たことも無ければ、空き店舗がどの様な物かも知らないのでは、計画も予定もあったもんじゃないからね。


「いつ頃行けそうかなあ?」

「そうですねぇ。
シュアクーン様はどうせならマジア工房の様子も見たいでしょうから、あちらとも連絡をとって……それと、授業の方も調整しなくてはなりませんね」

「そこんところは、よしなに!トレネーク」


「日程が煮詰まり次第お知らせ下されば、護衛の人員確保は私にお任せください」

「わかった。そこは頼むよ、ロンディ」

二人の話し合いがこの場で立ったまま始まっちゃったから、僕はまたステップを踏み始めた。

僕と並んで男性パートのステップをなぞって足を踏み出すツルレンジャーたち。


ん?ゴールドがまた翼でリズム取ってるけど……。

もしや、お前。
実は、踊れないのか???




その時の。

外でしていた僕たちの会話を盗み聞きされていただなんて、僕たちはまったく気がつけていなかったんだ。


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